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しおりを挟むしばらくして、父が知らせを聞いて仕事を切り上げてすっ飛んで帰って来た。
その頃には、姉の怪我が手首の酷い捻挫とヒビが入っているとして手当てを受けた後で、オーガスタはそれを知って大泣きしているところだった。
「オーガスタ。そんなに泣かないで」
「ぐすっ、でも、姉さん」
「それより、殴られそうになって、怖かったでしょ? どうして、避けようとしなかったのよ」
「そんなことしたら、姉さんが」
「それで、自分が殴られようとしたの? お馬鹿すぎるわ」
アミーリアは大丈夫な方の手で、オーガスタのほっぺたを引っ張った。
「そんなこと、二度としないで」
「~っ」
「アミーリア。そのくらいにしてやれ」
「でも」
父は、すっ飛んで帰って来たが、姉妹が片方は大泣きして、片方がほっぺたを引っ張りながら、説教しているのを見て苦笑しながら止めたのは、だいぶ経ってからだった。
その後、姉妹から何があったかを聞いて、怒りに燃えたのは、父だけでなく、母もだった。
先程、オーガスタが話した時よりも、怒っていた。
流石の父も、娘を怪我させ、殴ろうとまでしたと聞いたら、黙っていられなくなったようだ。
いや、妻の怒りのボルテージが振り切れているのに気づいて、そう動いただけかも知れないが。父親らしいところがあったのだと姉妹は思うことにした。
すぐさま、苦情と抗議をデイビーズ伯爵家にしてくれたが、次の日には両親が息子たちを伴ってやって来た。
怪我をしたと聞いて、両親もチェスターも誠心誠意、謝罪してくれていたが、バージルは……。
「あのくらいで、そんな怪我をするわけがない。わざと酷い怪我をしたと言っているんだろ? 最悪な令嬢がいたものだな」
「……」
「バージル!!」
「謝罪はしました。もういいですよ?」
「いいわけあるか!!」
バージルは、全く悪いとは思っていなかった。そんな態度でよく来たものだ。
こんな態度しか取れないのによく連れて来たとオーガスタのみならず、プレストン侯爵家の面々は思った。
「謝罪って、すればいいだけじゃないのよ。謝罪された方が許すかどうかを決めるものなの。謝罪しているあなたが、決めることじゃないわ」
「偉そうに何様のつもりだ」
「そっちこそ、何様のつもりなの? ご両親とお兄様にどれだけ迷惑かけて、恥をかかせていると思っているのよ。大体、怪我させた私だけじゃなくて、殴ろうとしたオーガスタにも謝罪する気はないの?」
「殴ってないんだから、謝る必要ないだろ」
オーガスタは、埒のあかない言い分にイラッとした。それは、両親と姉もだったはずだ。
「つまり、あなたの道理は、やった後できちんと謝罪したらいいのよね?」
「?」
「姉さん、私が代わっても?」
「やって」
オーガスタは、姉に同意を得てバージルを思いっきりと突き飛ばした。
「っ、な、何するんだ!!」
「ごめんなさい」
へらっとした顔で悪いなんて思っていない声音でオーガスタは謝罪した。もちろん、わざとだ。
「っ、そんなので謝ってるつもりか!!」
「あら、謝ったじゃない」
オーガスタは、ケロッと答えた。
バージルは、自分はよくて他人がすると駄目なようだ。
オーガスタは、自分が殴られそうになったのを仕返しせずに姉のみの仕返しなのにそれでも、怒るバージルを冷めた目で見た。
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