歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜

珠宮さくら

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(ズーウェイ視点)


父には、そんなことを言っていたが、私が皇女を絶対に産むと確信していた。

そのために幼い頃から、ありとあらゆる習い事をし、己を磨き続けたのだ。

あのおとぎ話のような話を信じているからにほかならない。叶えられるのも、自分しかいないと思っていた。


「お嬢様、少しはお休みになりませんと」
「煩い。私の邪魔をしないで」
「……」


小五月蝿い乳母は、休め、休めと言ってばかりいたが、そのうち言わなくなった。本当に余計なことしか言わない。私がやることなすことに一々、煩く言うが、私がやる方がみんなに受け入れられるようになっていくにつれて、自分の考えが古臭いとわかったようだ。

大体、休んでなどいられないのだ。他の女たちより、一歩どころか、何歩も先にいなくてはならない。そうでなければ、この先の予定が狂ってしまう。完璧であらねばならないのだ。

だって、私は皇女の母になり、皇妃となって、国母と言われるに相応しい者でなくてはならないのだ。

だから、あぁ言って父にも、私の良さをわかってもらった。父も、私を真似るようになった。

だって、そんなことを言う者は他にはいないでしょうから、インパクトは大きいはずだ。父も、そんな私に騙された。

父の周りも、私がそう言ったことに感心して、同じように真似始めたことで、評判は上々だ。


「日に日に母に似て来るな」
「……そう?」
「あぁ」
「……」


私の母は、私を産んですぐに亡くなった。だから、そんな風に言われても、私としては覚えていないことを蒸し返されても困る。

似ていると言われてもピンとこないのだ。だって、努力をしているのは、他の誰でもない私だ。

それを努力も何もしていないかのようによくわからない母のことを持ち出されても、似ているからなんだと言いたくなってしまう。

そんなことより、私がやっていることを最も褒めてほしい。認めてほしい。なのに父は懐かしむばかりで、そんな目で私を見た。

そんな目をしてほしいわけではない。でも、父は期待する言葉をかけてもらえたことはない。だから、そちらに頼るのをやめた。頼らなくとも問題はない。

父の周りには使えそうなのがいっぱいいるから、そちらを利用すればよかった。

私が、皇帝に見初められないはずがなかった。だって、皇帝も名を残したいはずだ。皇女の父親にたいしてこれまでの皇帝たちも、みんなそう思ったはずだ。


「そなたは、実に美しいな」
「恐れ入ります」
「何をしても、他の側妃とは違う」


そう言われるたび、当たり前だと言ってやりたかった。美しい人間になるために努力をどれだけしてきたことか。

そんな賛辞は、聞き飽きたものだったが、それを嬉しそうな顔をして聞いていた。さも、他ではそこまで褒められたことがないかのように初々しく、嬉しそうでいて、恥ずかしそうにした。

それだけで、皇帝は美しいだけでなく、可愛いと思ってくれた。皇帝も、男だ。男なんてちょろい。

皇帝の寵愛を一身に受けた。毎晩呼ばれるわけではないが、他の側妃たちよりも、呼ばれる頻度は多い。

ねちっこくて腰が痛いとか。下手くそすぎて相手が嫌だなんて思っているのをおくびに出さずに相手をした。

毎夜でないのは、私に満足しないからではなく、皇帝としての義務のため、他の側妃を寝所に呼ぶのをやめなかっただけだ。

それは仕方がない。あんなのを毎日相手にしていたら、こっちの身が持たない。他の側妃たちは、一度相手をしてしまえば、呼ばれはしない。

それが、羨ましいと思ってしまう。本当に相性最悪なのだ。それを皇帝は、欠片もわかっていない。下手くそだと誰も言えないのだろう。言えるほどの相手をしていないからだろうが、私はもう勘弁してほしいと最初の頃に思ってしまったが、とにかく最初に疲れさせて、身体を重ねる回数を減らすことにしたら、少しは楽になった。

そんなことをしていたから、寵愛は私にあると自負していた。皇帝とて男だ。魅了し続ければいいだけだ。

なのに嬉しい気分を台無しにされそうになったのは、こんなことを言われたからだ、



「あの、側妃が?」
「はい。懐妊したと」
「ふ~ん」
「恐らく、ズーウェイ様より早い出産になるかと思われます」
「……それで、皇帝陛下は?」
「喜んでおられるようです」
「……なら、私の懐妊のことは時期を見てからにするわ」
「よろしいのですか?」
「いいのよ」


だって、私が皇女を産むのは決まっているもの。

それにあの側妃は、よその国から来たせいで、何を話しても話が通じないのだ。

この国のことを理解する気がない気がする。そんなのに私が懐妊したと知られたら、何をされるかわかったものじゃない。

上手いこと誤魔化して懐妊を知らせるタイミングを調整したから、あの側妃からの嫌がらせは大したことなかった。

何もなかったわけではないが、思っていたより大したことはなかった。毒見役が、何人か使い物にならなくなっただけだ。

そんなの想定内で、私は怖がったフリをすれば、それでよかった。 

その後、天罰のようにあちらは、皇子を産んだ。ざまぁみろと私は思わずにはいられなかった。私の周りも、みんなそれにホッとしていた。

そして、私は待望の女児を産んだ。この国が、数百年待ち望んだ皇女だ。

これで、私は皇妃になれる。この子の母として、私は尊敬され続ける!

そう思ったのは束の間のことだった。そんな邪な思いを持って産んだから、罰が当たったようだ。

死に逝く時にディェリンは、私に力を使おうとした。こんな私を母と呼んで、助けようとしてくれた。

こんな私に皇女は優しかった。

だから、あぁ言ったのだ。そこにこれまでのような思惑ありきで言ったのではない。ディェリンこそ、このファバン大国を救う皇女だと思っているからこそ、言ったのだ。

それにディェリンが応えてくれたのが、どれほど嬉しかったことか。

でも、そんな思惑ありきで産んだ私の罰をディェリンが背負うことになるとは思わなかった。

あの遺言のせいで、ディェリンがそれに縛られることになって、思惑ありきな皇女として、周りの期待に応え続けることになるとは思いもしなかった。

ただ、最期の言葉に思惑なんてなかったつもりなのにそうやって生きてきた報いがあらわになってしまったようだ。

それを背負わせてしまった罰を私は、来世でも背負い続けるはずだ。

そう、優しい皇女は罪深き者も助けようとしてくれる。そう思い込んでいたからこそ、力を使う時は気を付けてほしかっただけなのだが、それをディェリンが誓ったことで大きく狂わせてしまったことを知ることはなかった。


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