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『認められた皇女』
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しおりを挟むディェリンは、雲一つない空を見つめていた。
成長するにつれて、美しさに磨きがかかって、近寄りがたい美しさがあった。
本人は、そんな風に周りに見えることを知らず、長雨続きだったが、それでも落ち着いた空を見上げていた。
それすら、見惚れるほどの美しさがあった。まるで、見る者を魅了する何かが作用しているかのようだった。
「今日も、美しいな」
「いつも、側にいるのが今日はいないな。今なら話せるかも知れないぞ」
「馬鹿言え。あんな顔をしてるのに間近で何話せって言うんだ」
年頃の男子たちは、遠くからこそこそとディェリンを見て、そんなことを言っていた。
「女子の学び舎に凄い美少女がいるって知ってるか?」
「は? それ、皇女がたまにそっちに行くからだろ?」
「いや、別らしい」
「どうせ、あっちの女共が、嫉妬してそんなこと言ってるんだろ」
「……だよな」
ディェリンは、その噂を知っていて、探したことはあるが見つけられなかった。
(私のことを疎んで、そんなことするなんて思わなかったわ。だから、あちらに居辛いから、こちらばかりに来てしまってるのよね。私は、別け隔てなく仲良くなろうとしているのに)
ディェリンは、そんなことを思っていた。
同じように街にも、評判の娘がいるとか。そっちも、大した噂になっていないから、そこまでではないのだろう。街には、ディェリンは行く気がなかった。
幼い頃と違い、あれから後宮のことや皇妃がやることを皇太子の母親が全てを差配している。
皇女がいる時は、例外なこともあるのだが、あちらがその話をしてきたことはない。だから、ディェリンは関わらないようにしている。
幼い頃より時間に余裕はあるはずなのだが、どうにもディェリンの身体は疲れが抜けなくなっていた。
(おかしいわね。昔より、睡眠時間もしっかり取れているのに。身体が怠く、重苦しい。……風邪でも引いたのかしら?)
何やらいつもと違うとジュエランが、侍医に診察させたりしても、疲れが蓄積しているかのように言うのだ。
それにジュエランが何もしないで、しばらく過ごすことを提案してくれたが、昔ほどの無茶はしていないからと学び舎に来ていた。
ジュエランも、学び舎に行くことをとめないようにしているのは、ディェリンが探している者が見つかるのを切望しているからだ。
気がかりがあるとすれば、聞こえて来る皇妃の評判の悪さだ。毎回やることなすことが酷いようだが、それに皇妃となった女性は欠片も気づいていない。ようだというのは、そこにディェリンが呼ばれていないからだ。
だが、周りはディェリンが皇妃のやることなすことに腹を立てて出席していないと思っているようだ。
(呼ばれてもいないのにどうやって出ろって言うのよ。なのに別のことで呼びつけられるし、もういい加減にしてほしいわ)
そう、これまで、ディェリンのことなどいない者のように無視をしていたのに最近になって、ディェリンのことを呼びつけるようになったのだ。
疲れていることがあるとすれば、そんな皇妃の話す内容のことだ。まるで、ディェリンの存在を認めていないかのように好き勝手なことを話すのだ。
皇妃と話していると自分の存在が、怪しくなっていく。皇女のはずなのに居場所を追われたかのように思えて、息苦しさが増す。
(私しか、皇女はいないのに。私にしか救えないはずなのに。私の存在を欠片も認めない。それに腹が立って仕方がない)
ディェリンは、そんなことを思うようになっていた。
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