歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜

珠宮さくら

文字の大きさ
48 / 50
エピローグ

しおりを挟む

ファバン国で大昔に皇帝に娘が生まれた。

その皇女たちは、それぞれ色んなことに秀でていて、心がとにかく透明で、それを体現したかのように美しい女性として成長した。

心が美しいからこそ、姿形も美しい。まるで、天女のような娘となり、皇帝も、2人の母親も、その国の国民みんなが、自慢していた。

あまりにもそっくりな見た目から、いつしか双子のようと言われていたのが、双子と呼ばれるまでになり、そしてあまりにも似すぎているが故に争いの火種となってしまった。

どちらの母たちも、自分の娘こそ、一番だと思うようになり、娘たちが相手の娘と仲良くするのを良く思わなくなり、遠ざけようとしたのだ。

片方は、それで母が人を悪く言うのが見ていられなくなり、その通りにしたいと言うのにもう片方も、それに納得した。その前にお互いが幸せになることを願った。

2人には不思議な力があって、それが叶うまで終わらないものとなったが、その時はこのあと待ち受ける悲劇によって、この誓いのような願いが呪いのようにつきまとうことになるとは思いもしなかった。

もっとも、2人はこれを呪いとは思うことはなかった。そのおかげで、相手が幸せになるまで終わらせられないことにある意味、おかしなことに意地になっていた。


「絶対に幸せになってもらわなければ」

「彼女こそ、幸せになるべき人なのよ」


本当に想い合っているからこそ、幸せになってほしいのだ。自分より幸せになってほしいが、それでは終わらない。

どちらも幸せにならねば、心が引き裂かれるように痛む。だから、どちらも幸せになるために2人は生まれ変わり続けた。

歴史の中で、幾たび生まれ変わっても、どちらかが皇女でなければ、上手くはいかなかった。

なにせ、国民が皇女のために祈りと感謝を捧げているため、それに応えなければならなかった。


「やめてくれと言うわけにもいかない」

「自分たちと周りをみんなが幸せにしたら、誰かに頼らなくとも幸せになれるのに」


でも、どちらも皇女だと知れ渡れば、これもまた最初と同じようになった。

そんな中で、皇女なのを隠して皇子となったこともあったが、上手くいくことなく、その時は皇子たちが争い皇帝となるための権力争いに巻き込まれて殺されることになった。

だから、どちらかが隠れる必要があり、もう一方は上手く生き延びて街を良くした。


「次こそは、会えずとも、幸せになってほしい」

「一目も会えずとも、彼女に幸せになってほしい」


そんな2人の強い思いと願いによって、幸せに近づいていると思いたかった。離れて行っているようでいて、自分たちが犠牲になって悪く言われようとも、よく言われようとも、2人の願いの本質はお互いが幸せになること、それだけだった。

そのことを2人以外が知らないことで、勘違いとすれ違いが起こっているのだが、それを正そうとしてもあまりにも歴史が歪められてしまっていて、本当にあったことが、嘘のようになってしまい、語り継がれるものが真のようになってしまって、益々2人の幸せが遠のきかけていた時に1人が母と父の皇女の両親になりたいと思う者の娘となり、もう1人が残された歴史からどちらも犠牲になった者として、どちらのことも悪くはない皇女として、自分が産んだ娘を守り、そしてもう1人の皇女をも守ろうとした。

それによって、悲恋のように見えて、2人は想い人と幸せになれた。

そこにたどり着くまでにどれだけ生まれ変わってきたことか。

それすら、ファバン国の者で知る者はいなかった。この2人もまた、今回は出会うことも、話すこともできなかったことで、これまでのことを思い出すことができなかったが、それでも周りが束の間と言える時間を幸せだと思えた。

でも、そのことをちゃんとわかってくれる者は一握りしかいなかったが、2人は確かに幸せになれた。

お互いが幸せになれたら、それでよかったでは終われない。2人が幸せにならねば、終われない。終わらせられないとして、この皇女たちは必死に生まれ変わり続けていた先で、出会えないまま終わることなっているが、悲恋のようであって、生まれ変わり続けた先の未来に希望が必ずあることをこの2人だけは信じていた。その絆を残したい。





とある親子が、こんなことを言っていた。2人の皇女が亡くなった話を聞かされたのだ。幼さが残る子供たちには納得いかない終わりだった。


「父様。これのどこが幸せなの?」
「ずっといられないのに幸せなんて変だよ」


父に皇女たちの話を聞いていた子供たちが、ムッとして不満そうにした。


「そうか? ずっと一緒にいられたからって、幸せとは限らないぞ。始まりには、終わりがつきものなんだ。終わりがなければ、どんな物語も始まらない。次が始まるために終わらせることも必要なんだ」


そんなことを言って子供たちに語る男は、優しい目をしていた。








皇帝は、2人の妹の墓参りをしていた。


「何もしてやれなかった」
「陛下。少なくとも、こちらの皇女様は、あなたに幸せにしてもらわなくとも、自分で幸せになるか心配する必要はないとお答えになられるかと」
「……そうか。そうだな」


皇太子の時から一緒にいる護衛の言葉に皇帝は笑った。

もう1人の皇女とは、後宮でそれなりに会う機会もあったのに頼られたこともなかった。


「どちらも、幸せにしてもらうのではなくて、幸せになるために奔走していたな」


こんな風に情けない顔などしてはいなかった。生まれ変わり続けても、たとえ言葉を交わすことがなくとも、変わらず幸せであり続けようとはせずに相手を気遣い続けた。


「そんな風に皆がなれたら、犠牲になる者もいなくなるな」


誰かを犠牲にしなければ保てない国より、皆がそれぞれを背負って負担すればいいのだ。

そんな思いを残された皇帝は、それを使命として国を変え続けた。

各国で天変地異が横行して、ファバン国でも起こり始めていくことになっても、ここではなく別の場所で生きられるように彼の後の皇帝たちは準備を続けた。

それによって、国が沈むことになっても多くの国民が他に移り住むことができた。

その要となっていたファバン国を皇女たちが、不思議な力で守り続けていたことを知る者は少なかったが、それでも生まれ変わっていない時でも、生まれ落ちている時でも、2人の皇女は自分たちが幸せになることを願いながらも、無意識のうちに皇族として、役目を続けたからこそ、多くの者が助かることになった。

だが、その頃には、2人の皇女がそこに関係していたことを知る者はいなくなっていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

傾国の王女は孤独な第一王子を溺愛したい

あねもね
恋愛
傾国の王女と評判のオルディアレス王国の第一王女フィオリーナが、ラキメニア王国の第一王子、クロードに嫁ぐことになった。 しかし初夜にクロードから愛も華やかな結婚生活も期待しないでくれと言われる。第一王子でありながら王太子ではないクロードも訳ありのようで……。 少々口達者で、少々居丈高なフィオリーナが義母である王妃や使用人の嫌がらせ、貴族らの好奇な目を蹴散らしながら、クロードの心をもぎ取っていく物語。

置き去りにされた恋をもう一度

ともどーも
恋愛
「好きです。付き合ってください!」  大きな桜の木に花が咲き始めた頃、その木の下で、彼は真っ赤な顔をして告げてきた。  嬉しさに胸が熱くなり、なかなか返事ができなかった。その間、彼はまっすぐ緊張した面持ちで私を見ていた。そして、私が「はい」と答えると、お互い花が咲いたような笑顔で笑い合った。  中学校の卒業式の日だった……。  あ~……。くだらない。  脳味噌花畑の学生の恋愛ごっこだったわ。  全ての情熱を学生時代に置いてきた立花美咲(24)の前に、突然音信不通になった元カレ橘蓮(24)が現れた。  なぜ何も言わずに姿を消したのか。  蓮に起こったことを知り、美咲はあの頃に置き去りにした心を徐々に取り戻していく。 ──────────────────── 現時点でプロローグ+20話まで執筆ができていますが、まだ完結していません。 20話以降は不定期になると思います。 初の現代版の恋愛ストーリーなので、遅い執筆がさらに遅くなっていますが、必ず最後まで書き上げます! 少しでも楽しんでいただければ幸いです。

【完結】エリーの純愛~薬草を愛でる令嬢は拗らせた初恋を手放したい~

青依香伽
恋愛
伯爵令嬢のエリーは公爵令嬢である従姉のもとで侍女として働いている。 そんなエリーは、幼い頃からの想い人を忘れることができずに初恋を拗らせていた。 この想いが報われないことなど昔からわかっていたのに。 どんなに好きでも、叶わぬ恋は苦しいだけ。そんな思いから、エリーはついに初恋を手放す決心をした。 そんな矢先、離れて暮らす祖母が体調を崩したとの報せが届く。従姉からの後押しもあり、エリーは大好きな祖母のいる領地へと急いで向かった。 傷ついた心を癒しながらも、今は祖母と領地のために前に進もうと決意するが、長年持ち続けた想いはなかなか手放せるものではなくて......。 ※【完結】『ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~』のスピンオフです。本編の女学院卒業後の話になります。 ※単独でもご覧いただけるように書いています。 ※他サイトでも公開中

聖なる森と月の乙女

小春日和
恋愛
ティアリーゼは皇太子であるアルフレッドの幼馴染で婚約者候補の1人。趣味である薬草を愛でつつ、アルフレッドを幸せにしてくれる、アルフレッドの唯一の人を探して、令嬢方の人間観察に励むことを趣味としている。 これは皇太子殿下の幸せ至上主義である公爵令嬢と、そんな公爵令嬢の手綱を握る皇太子殿下の恋物語。

【完結】君を迎えに行く

とっくり
恋愛
 顔だけは完璧、中身はちょっぴり残念な侯爵子息カインと、 ふんわり掴みどころのない伯爵令嬢サナ。  幼い頃に婚約したふたりは、静かに関係を深めていくはずだった。 けれど、すれ違いと策略により、婚約は解消されてしまう。 その別れが、恋に鈍いカインを少しずつ変えていく。 やがて彼は気づく。 あの笑顔の奥に、サナが隠していた“本当の想い”に――。 これは、不器用なふたりが、 遠回りの先で見つけた“本当の気持ち”を迎えに行く物語

銀鷲と銀の腕章

河原巽
恋愛
生まれ持った髪色のせいで両親に疎まれ屋敷を飛び出した元子爵令嬢カレンは王城の食堂職員に何故か採用されてしまい、修道院で出会ったソフィアと共に働くことに。 仕事を通じて知り合った第二騎士団長カッツェ、副団長レグデンバーとの交流を経るうち、彼らとソフィアの間に微妙な関係が生まれていることに気付いてしまう。カレンは第三者として静観しているつもりだったけれど……実は大きな企みの渦中にしっかりと巻き込まれていた。 意思を持って生きることに不慣れな中、母との確執や初めて抱く感情に揺り動かされながら自分の存在を確立しようとする元令嬢のお話。恋愛の進行はゆっくりめです。 全48話、約18万字。毎日18時に4話ずつ更新。別サイトにも掲載しております。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

【完結】祈りの果て、君を想う

とっくり
恋愛
華やかな美貌を持つ妹・ミレイア。 静かに咲く野花のような癒しを湛える姉・リリエル。 騎士の青年・ラズは、二人の姉妹の間で揺れる心に気づかぬまま、運命の選択を迫られていく。 そして、修道院に身を置いたリリエルの前に現れたのは、 ひょうひょうとした元軍人の旅人──実は王族の血を引く男・ユリアン。 愛するとは、選ばれることか。選ぶことか。 沈黙と祈りの果てに、誰の想いが届くのか。 運命ではなく、想いで人を愛するとき。 その愛は、誰のもとに届くのか── ※短編から長編に変更いたしました。

処理中です...