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~にがっき!~赤色の新星

49話目:7月■日天星 赤祢の独白②

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 校舎に足を一歩踏み入れた瞬間、まるで見計らったかのように<遭難者>の人が宙から降りてきた。

「おかえり。学園生活は楽しかった?」
「……はい。新しい友達も、できました」
「へぇ~! ここから生き残った甲斐があったね!」

 まるで自分のことのように喜んでくれている。
 この人を信じれば、本当に元の世界が戻ってくると信じてしまいそうになる。

「じゃあ、あとはそのお友達を連れてくるだけだ」

 その人の言葉に悪意は感じ取れなかった。
 だからこそ、聞かなきゃいけないことがあった。

「連れてきたら、どうするつもりですか」
「約束通り時間を巻き戻して、ここで死んだ人を元に戻してあげるよ」

 意図的なのか、アタシの求める疑問に答えようとしない。
 だから語気を強めてもう一度聞いた。

「連れてきた人をどうするか、聞いているんです」
「ん~……それ、君に関係あるの?」
「アタシの……大切な友達なんです……関係あるに決まってる!」

 声が震えながらも、言葉を返す。

「答えてください! アタシの友達をどうする気なんですかっ!」
「そうだなぁ……分かりやすく説明してあげよう。君は自身の存在の確率が確定している。だから外の世界でも確立した存在としていられる」
「何を、そんな当たり前のことを……?」
「一方、ぼくは<遭難者>になって確率の海の中にいる。たまたま存在している状態で、このままじゃ外に出られない。だから、確定した確率を集めてぼくの存在を確定させて、ここから出たい。どう? 分かる?」

 少し考え、どうなるかを予想する。
 それでもそれが外れてほしくて尋ねた。

「じゃあ……その確定した確率を奪われた人はどうなるんですか」
「運が良ければ、ぼくと同じ<遭難者>。悪ければ可能性の変数になる……かな? あぁ、でもそっちの方が楽かもね。苦しみ抜いて死ぬとかよりも、マシでしょ?」

 何がマシなのかと声を大にして言いたい。
 死ぬこともできず彷徨い続けるか、在るか無いかの狭間に取り残さて亡霊のように成ることの何処がマシなのかと。

「……残念だけど、あの約束は果たせません。アタシは友達を犠牲にしない……たとえそれで、大切な人が二度と帰って来なくても……!」

 そもそも、帰ってくることがおかしいんだ。
 アタシは子供のようにそれを認められず、ただ駄々をこねて泣いていただけ。

「元の世界の友達や両親より新しいオモチャの方が大事なんだ、意外だったなぁ」
「……ッ!」

 思わず声を荒げそうになったけど、なんとか食いしばった。
 そもそもあまり間違ってない……アタシは大勢の命と今を生きている友達の命を天秤にかけて、そちらを選んだんだから。

「……で、話はそれだけ? わざわざ言いに来るなんて律儀だね」
「いいえ、このダンジョンを消します。その為に来たんです」
「なんで? 人工ダンジョンと違って、こっちだと死んだらオシマイだよ? わざわざ君がそんなことしなくったって、他の人に任せればいいじゃんか」
「そしてやってきた人の、確定した確率を奪うわけですね」

 そう答えると<遭難者>がわざとらしく拍手をした。

「せいか~い♪ 頭いいね、君。好きになってきたよ。友達にならない?」
「なりません。<時間簒奪者>とまで呼ばれたアナタが怖いので」
「あ、そこまで知ってたんだ。ねぇねぇ、ぼくのことなんて伝わってるの?」

 <時間簒奪者>、消失時代よりも前の時代に存在していた<探索者>。
 固有の<時術>によって様々な時間に干渉していた。

 おかげで各地で時間の流れが狂い、様々な混乱をもたらした。
 他にも<時術>を扱うには時間を消費する為、大勢の時間を奪うことも。

 これに対処すべくウラヌス神が彼の名前を奪い、ダンジョンへと隠す。
 名前を取り戻す為にダンジョンへと入った彼だったが、神の力によってダンジョンは閉ざされ、そのまま<遭難者>になってしまった……という話だ。

「うん、大体合ってる。でも悪いことばっかり書いてるね。ちゃんと世のため人の為にも使ってあげたのにな~」

 そうだとしても、大勢の時間を勝手に奪ったことは許されるようなことじゃない。
 そう思いながら目の前の<遭難者>を睨む。

「……で、君はそんなぼくを自由にさせるわけにはいかないってことで、このダンジョンを閉ざすと。そうすれば、ぼくはまた確率の海に流されるからね」

 その気になればアタシなんてスグに殺せるだろう。
 それをしないのは、時間というリソースが不足しているから、不確定な存在だから力を発揮できないから、もしくはアタシを気に入っているから……。

 どんな理由があるかは知らないけれど、手出しされないなら好都合だ。

「じゃあ君にかけてた魔法はもう解いちゃっていいワケだ」
「―――――え?」

 一瞬のまばたきすらしていないのに、<遭難者>がアタシの目の前に現れて額に手を触れる。
 ―――――瞬間、おぞましい負の濁流がアタシの中に流れ込み前から地面に倒れこんでしまった。

「ウアァッ! い、いったい何を……!?」
「君はここから逃げる時、かなり無茶をしていたみたいだ。おかげで器はボロボロ、ダンジョンに飲みこまれる寸前。だから、ぼくが魔法をかけて時間を止めていた。まぁもう解いちゃったけどね」

 乗り越えたと思っていた。
 克服したと思っていた。

 だからまたここに来たのに……それは、アタシの力じゃなかった……?

「じゃ、頑張って主のところまで来てね。応援はしてるよ」

 そう言って<遭難者>は一瞬で消えてしまった。
 妨害されなかったことを喜ぶべきなのに、立ち上がることすら満足にできない。

 いや……こうなることは予想していた。
 一度味わったことなのだ、二度目もあると覚悟していた。

 心の中にある赫色へ、思い出という名の燃料を焚べる。
 何度も何度も……挫けそうになる度にやってきたこと。

 赫色が滾る度に力が沸き上がる。
 立ち上がれる。
 歩ける。

 もう迷わない。
 もう挫けない。

 後ろを振り向かなくてもいい。
 誰も騙さなくていい。

 進んで、進んで、進み続けて――――アタシの命を使って、この悪夢を終わらせよう。
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