えっ、一ヶ月以内にエッチしないと死ぬ異世界転生!?

gulu

文字の大きさ
12 / 19

争いは、同じレベルでしか起こらない

しおりを挟む
《宿屋》

 ある程度、モンスターを倒して金策をしたので宿をとった。
 というかモンスターまで剣と盾を持ってるのはどうなのよ。

 しかもカニが強敵って何?
 ハサミが剣であり盾でもあるって卑怯だろう。
 まぁそれでも鈴谷さんがサクっと倒したので問題なかったが。

「随分簡単に倒してたけど、あれって何なんすか?」

 酒場で夕飯を食べながら尋ねる。

「ダイヤ様から授けられたチート能力”ステータス増加”です。瞬間的に任意のステータスが何十倍にもなります」
「じゃあ攻撃が当たる瞬間にだけ力を上げたり、回避するときだけ素早さをあげたり……?」
「できます。ちょっと大変ですけど」

 マジか、便利だなぁ。
 しかも汎用性もある。
 ただひとつ気になる点がある。

「それ、瞬間的に全ステータスが上がるとかじゃダメなの?」
「それについては私から説明しましょう。チート能力というのにも種類があり、ランクがあります。このランクが高いほど使用者に大きな負担がかかるのです。凜音ちゃんの”ステータス増加”はBで少し高めで、これ以上はまだ危ないですね」

 俺の疑問には省エネモードのダイヤ様が答えてくれた。
 ……小さな妖精の姿なのだが、小指の先よりも小さいせいで虫に見えてしまう。

「それで、陸奥さんはどういったチート能力なのですか?」
「あ、ごめん。苗字はあんま好きくないから名前で呼んで」
「す、すみません。次から気をつけます」

 鈴谷さんは悪くないんだけどね、ちょっと良い思い出がないからね。

「俺のチート"データアシスト"は凄いよ。色々なデータを参照できるから、あと何回の攻撃で敵が死ぬとか、何発まで耐えられるとか、全部計算してくれる!」

 まぁブレ幅があるデータと確率には滅法弱いけど。
 ダメージ下振れ三連続で敵のHPミリ残りとか、90%の命中率が外れるとか。
 その代わり固定値とか確定したデータは絶対に裏切らないのでそういったミスがなくなる。

 だというのに、対面の二人は凄く微妙そうな顔をしている。

「あの……言いにくいことですが、それランク外のチート能力……」
「ッスゥー……それ、強すぎって意味ですよね?」
「いえ、逆ですが……」
「ウソだろダイヤ様!? めっちゃ便利っすよ! 乱数さえ発生しなければ絶対にミスしないんすよ!?」
「乱数すらねじ伏せるチートの方が便利なのでは」
「………」
「というかそれ、現状の手札で勝てる相手にしか勝てないわけですし、それを何とかして逆転する為の手段がチート能力ですし……」
「ニェちゃま! 君の意見を聞こう!」
「お前にピッタリのチート能力でシ」
「クソがぁ! こんなことならリセマラしたかった!!」

 いや何度もリセットというか死んでるのにずっとこのチート能力だから意味ないのか。
 やっぱ異世界転生ってクソだわ。

「そんなことよりお前はモテる方法を考えた方が建設的でシ。たとえば今もそっちの女に名前呼びさせといて自分は苗字呼びとか距離を置きたいように感じるでシ。ここはお互いに名前呼びがいいでシ」
「なるほど、一理ある。そういうわけで俺も名前で呼んでもいいっすか?」
「え、あ、まぁ、お好きなように……」
「よし、完璧なコミュニケーションでシ」
「ニェ先生、なんか凜音さんの歯切れがすっごい悪かったように思えるんですが」
「ニェ先輩、名前呼びっていうのは自然と距離感を詰めてからやるものです。今みたいに追い詰めるようにやったら逆効果です」
「えっ!? じゃあもしかして俺嫌われた!? 凜音さん! 俺のこと嫌いになった!?」
「そ、そんなことは……」
「ふぅー、俺はセーフだったか」
「いえ、アウトですよ。普通は面と向かって相手に嫌いって言えません。ニェ先輩と同レベルです」
「なるほど……つまり俺は神と同じステージに立ったと?」
「だからお前はモテないんでシ」
「お前もだろうが! お前もよぉ!!」

 そんなこんなで騒ぎながらも夕食を終えて各自、部屋に戻る。
 ちなみに部屋割りは2:2というか1人用の部屋を2つとってある。

 本来なら女性組と男性組といった感じで別れた方がいいのだが――――。

「すみません。知らない人がいると眠れないので……」

 と言われたのでニェはこっちで引き取ることになった。
 ベッドは1つしかないが、まぁこいつちっちゃいし2人で使っていいだろ。

「むぅ、この身体は不便でシ。おい、ちょっと背中を洗うでシ」
「はいはい」

 ちなみにこの宿には風呂という贅沢品がないので、水の入った大きな桶を使って身体を拭く。
 そしてコイツは身体が小さいので丸ごと桶に入って身体を洗っている。
 俺もあとで使うこと考えてねぇだろ。

「それで、ときめいてるでシか? こういうシチュは好きでシ?」
「へぁ? あぁ、まぁ好きだけどなんか違う。なんかこう、ドキドキのドの字もない。ってかもう妹とか親戚の子を風呂に入れてる気分」

 俺の性癖ストラクな外見をしているというのに、一向におかしな気分にならない。
 距離感が近すぎて逆に変な目で見られない的なやつだろうか。

「ニェも同感でシ。もっと精進するでシ」
「へぃへぃ。背中洗い終わりましたよお嬢様っと」
「よくやったでシ。それじゃあニェは寝るからあとは好きにするでシ」

 そう言ってパパっと着替えたニェちゃまはベッドに潜ってしまった。
 好きにしろってことは今の内にこいつを外に放り投げてもいいってことだろうか。

 いや、普通に帰ってきてしばかれるな。
 もっと強くなったらこのメスガキを分からせてやる。

 ソクラテスの本とか読ませれば人間というものを理解できるだろうか。
 いや、武士の教科書である葉隠という手も?

 そんなことを考えながら桶の水を見ると解析できることに気付いたので興味本位でやってみた。

【神の浄水:神の穢れを洗い流したこの浄水は剣に特別な切れ味を約束する】

「凜音さん! ダイヤさん! ニェが使った残り水を剣に塗って! 攻撃力が二倍になるから!」

 あまりにも凄い効果だったので急いで桶をもって二人が部屋に入ったのだが、ドン引きされた。
 解せぬ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界リメイク日和〜おじいさん村で第二の人生はじめます〜

天音蝶子(あまねちょうこ)
ファンタジー
壊れた椅子も、傷ついた心も。 手を動かせば、もう一度やり直せる。 ——おじいさん村で始まる、“優しさ”を紡ぐ異世界スローライフ。 不器用な鍛冶師と転生ヒロインが、手仕事で未来をリメイクしていく癒しの日々。 今日も風の吹く丘で、桜は“ここで生きていく”。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...