異世界転生して主人公殺害RTAの最速タイムを更新してしまった僕はこれからどうすればいいんでしょうか!?

gulu

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17話:偉大なる竜とその言語

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 クレオに無理やり着替えさせられた時、衛兵さんが何事かと部屋に入ってきた。
 そこにはベッドの上で半裸になっていた僕と、服を剥ぐクレオの姿があった。
 しばらく沈黙が続き、衛兵さんは何も見なかったかのように扉を閉めてしまった。

「待ってくださいそちらの娘さんが危ないかもしれないんですよ!!」

 ちなみに危ないというのは身の危険だけではなく、性格という意味も含んでいる。
 実際に危険にさらされてる僕の事も含めるとトリプルミーニングだろうか。

「いやまぁ、いつもの事なので…。少年には悪いけど、遊んであげてください」

 そして衛兵さんの足音はドンドンと遠くへ行ってしまった。

「…よし、これでしばらくは誰も入ってこないから好都合だな!」
「僕の見た目が不都合だらけなんだけど!?」

 なにせ女物の服を半分着せられているのだ。
 もう半分を着せられたら完璧に見た目は女の子である。

「いいから着ろって! ちゃんと責任とってやるから!」
「女装でとれる責任があってたまるか!!」

 その後も二人でベッドの上でもみくちゃになりながらも、僕はクレオが引っ張り出した服に着替えさせられてしまった。
 そうして窓からこっそり外に出てみると、やはり何処もかしこも女性だらけだった。

「あの、なんかジロジロ見られてるんですけど…これバレてない?」
「大丈夫だって、安心しろよ。みんな男が来ているのは知ってるけど、顔は知らねぇんだ。だから、この服を着ているオレの事を見てんだよ」

 クレオは整った髪を崩し、上手に僕の上着とズボンを着こなしている。
 ちょっと胸が出ているようにも見えるが、そこはまぁ鳩胸だと主張できない事もない。

 そうして街を堂々と歩きながら、僕らは街を囲んでいる壁の側に到着する。
 そこには廃材などが乱雑に置かれており、クレオがうまく荷物を退かすと外に出る為の穴があった。
 先導するようにクレオが穴の中に入り、僕もその後に続くと、目の前にはズボンにピッチリ張り付いているお尻が見えてしまい、凝視してしまった。

「うわああああああああ!!」
「お…おい、どうしたんだ?」

 僕は地面に頭を打ちつけて正気に戻る。
 落ち着け落ち着け、クレオは男…クレオは男……。
 いやでも肉体は女の子なんだし釘付けになってもおかしくないのか?
 今の男装したクレオに興奮する事は男として正しいのか、間違ってるのか、どっちなんだ!?
 誰か教えて!!

 そんな葛藤と激闘を繰り広げながらも、なんとか僕らは外に出られた。
 そして近くにある森にこっそりと入り、クレオが指笛を吹くとそれにつられて大きな六足のトカゲモンスターが駆け寄ってきた。
 武器がないものの、僕が魔法を使おうと構えると、クレオがそれ制した。

「落ち着け、こいつはムコノって言ってオレの子分だ。なっ?」
「クルルゥ!」

 奇怪な鳴き声をあげながら、ムコノの呼ばれたトカゲがクレオに大型犬のようにのしかかる。

「ハハハ、どうした寂しかったのか? お前はオスのくせに甘えん坊だなぁ」
「ねぇ、クレオ。そのムコノ…なんか腰振ってない?」
「ん? 元の世界で飼ってた犬もやってたし普通だろ」

 そうだろうか…それとは違う気がする。
 取り敢えず僕の服とズボンに下半身をこすり付けられるのがイヤなので、強引に剥がす。
 ご主人様とのスキンシップを邪魔されて怒るかと思いきや、今度はこっちに擦り寄ってきて腰を振り出した。

「止めろ止めろ! 僕は男だ!」

 そんな事お構いなしかのようにムコノは僕に腰を打ちつけてく、怖い!

「ほらほらムコノ、それよりもお仕事の時間だ」

 クレオが引き離してくれたおかげで、僕の純潔はなんとか守られた。
 いやまぁ女装しているせいで大切なものを失った気がしなくもないけど、これ以上の損失がなかった事は幸運だったと言えるだろう。
 クレオはムコノに取り付けられていた鞄から鞍と手綱を取り出し、それを装着させる。
 すると、なんとなく騎乗できそうな格好となった。
 クレオが鞍に乗り、そして僕も恐る恐るその後ろに跨る。

「これ…大丈夫なの?」
「おいおい、馬でも一日以上掛かる所をムコノなら今日中なんだぜ?」
「待って! こいつそんなに早く走るの!?」
「違うって、ムコノは馬でも走れない場所を走れるから近道し放題なんだよ」

 超高速で移動するトカゲとか色々と不安だったけど、それなら安心だ。

「それと、ちゃんとオレに掴まってないと振り落とされるからな。ほらもっと強く掴めって」


 そう言ってクレオが思いっきり引っ張って身体を密着させてきた。
 僕の心拍数は初めてエッチな本を見つけた中学生の頃にまで再現されてしまう。
 待て待て待て、この気持ちはなんだどういうことなんだ!?
 僕は女の子の身体にドキドキしているだけで男の子にドキドキしてるわけじゃないはずだ!
 だから僕はノーマルだ、ノーマルのはずだ!
 クレオは男の子だけど身体が女の子だからこれはセーフのはずだ!

「よーし、それじゃあ行くぞぉ!」

 急に黙ってしまった僕の事など気にする事もなく、クレオが合図をするとムコノが走り出す。
 シャカシャカと動く足が気持ち悪いのだが、それよりも馬のような速さで移動するコイツが怖い!
 しかも目の前に川があるのに躊躇なく突っ込んで泳ぐせいで、水飛沫が飛んでこっちまでビチャビチャである。

「ヒュー! 濡れた場所が風で乾いて気持ちいいな!」

 こんな暴れ牛よりも危ないものに乗りながらも、クレオは上機嫌で手綱を握っている。
 そして風に乗ってクレオの素肌から漏れ出す匂いが、僕の鼻腔をくすぐりだした。
 それに応じて、僕の下腹部にも熱が集まりそうになる気配を察知してしまった。

「ムコノ! もっと急いでくれ! 僕が間に合わなくなってしまう前に!!」
「おっ、フィルも乗り気になってきたな。よっしゃ! それじゃあ崖を登るか!」

 ムコノはその声に応じるように速度を緩めぬまま崖に突進し、壁に張り付いてそのまま登っていく。
 もちろん重力に逆らえない僕らは落ちそうになりながらもムコノに…そしてクレオにしがみつく。
 今までで一番その柔らかさを実感してしまい…。

「ヤバイヤバイヤバイ! これヤバイよ!!」
「大丈夫だ、オレとムコノを信じろ!」
「僕は自分が信じられないんだ!!」

 そんなこんなで…異世界ジェットコースターを何時間も体験したおかげで、なんとか竜が眠っているとされている洞窟の近くにまで辿り着く事ができた。

 そこは火口の近く、空気が薄く熱さのせいで呼吸がしづらい環境だった。
 途中でムコノが水辺を突っ切って水に濡れてなかったらもっときつかったかもしれない。

「え~っと……あれだな! あの洞窟の奥に、竜が眠ってるはずだ!」

 クレオが指し示す場所を見ると、確かに人工物のような入り口を見つける。
 ただ、これは……何かを祀る場所や祭壇というよりも、何かを封じたいかのように思えるデザインであった。

「ところでクレオ、どうして竜の居場所なんか知ってたの?」
「そりゃあ女主人公でプレイした時に、竜の弱点を調べる為にここに来る事があったからな」

 あ、タラークだけじゃなくてキリーク側でも竜を殺す事になるのね。
 そう考えるとちょっと可哀想な気も……いやいや、生贄を要求してくる時点でそんな事言ってる場合じゃないか。
 ムコノはいざという時の為に離れていてもらい、僕とクレオがその洞窟の奥へと進んでいく。
 道中に罠はなかったものの、何かの文字が壁一面にビッシリと書かれている。

「ねぇねぇ、ここには何が書かれてるの?」
「基本的には竜に対しての回顧録みたいなもんだ。どんな力を持っていたか、どれだけ強かったか、そして…どれほど恐ろしかったかってやつだな」

 僕は改めて壁の文字を観察する。
 筆舌に尽くしがたいだろうに、それでも過去の人々は何とか記録を残そうと頑張った事が窺える。

「今からオレ達が会うのはオグマ・ドグマ。竜言語を生み出した竜だ」
「竜言語…あの反則技か」

 ゲームで何度も戦ったからこそ分かる、あれは紛れもなくこの世界におけるバランスブレイカーのひとつだ。
 なにせ≪動地≫の二文字を詠唱しただけで大地震が起こり、その場にいた全員が地面に倒れ伏してしまったのだ。
 三文字や四文字の竜言語を使われてしまっては勝ち目がないくらいに強かった。
 まぁハメ殺したんだけどね、あとで復活するけど。

 問題はレックス達だから勝てたのであって、僕らじゃあ絶対に無理という事だ。
 一応、僕の身体に埋め込まれているアズラエルの肋骨でワンチャン倒せるかもしれないが、本当にワンチャンしかないので説得が成功する事を祈っている。
 失敗したらアズラエルの肋骨で死ぬかもしくは動きが止まってる最中に逃げよう。
 なんならそのままタラークの街まで逃げれば敵対勢力もなくなる、めでたしめでたし!

 そんな事を考えながら奥へと進むと、不意に大きな広間のような場所に辿り着いた。

「あれ、行き止まり?」
「いいや…ここで合ってる。フィル、こっちに来て跪いてくれ」

 そう言われて、僕はクレオと同じように跪く。
 ただし、念の為に懐に手は入れておく。

「かしこみ かしこみ も まおす。火と煙に禊ぎ祓へし言の葉を紡ぎし叡智の大竜。我らが祈りをどうか届け給へ―――」

 クレオが呪文のような何かを唱えており、それに合わせて徐々に周囲から異質な気配を感じ取る。
 もしも僕が普通の子供だったのなら今ごろ失神していたかも…いや、その方が楽だったかもしれない。
 存在階位が上がった今だからこそ分かる、今クレオが呼び出そうとしているのは、とてつもなく恐ろしい存在であるという事を。
 そして地面が揺れながらもなんとか姿勢を崩さずに待っていると、正面の壁が崩れていく。
 そして大きな亀裂が入り、それが開かれた時に僕は竜というものの恐ろしさを本能で嗅ぎ取ってしまった。
 亀裂から覗くその大きな瞳は、僕らの矮小さを表しているようだった。
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