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好きじゃない
28 二章〈2〉③ 野暮用と連れション*
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「吉田、藤崎はどこに行った?」
藤崎が席を外してしばらくたった頃、東條は主のいない机をコンと叩くと、吉田にそう尋ねてきた。問われた吉田は首を傾げ、一瞬考える。
「たぶん、トイレじゃないですかね。確か、頭を冷やしてくるとかって、言ってたんで」
だが、そういえば席を立ってからだいぶ経つ。
「あ、でも――」
「そうか。分かった」
まだ言いかけている吉田に背を向け、東條はさっさとオフィスを出ていく。
吉田はその背中を見ながら、なにか急用でもあったのかと、首を傾げて見送った。
♢ ♢ ♢
手洗い場に行く途中、聞き慣れた声が聞こえた気がした。東條が手洗い場の手前にある階段の出入り口を覗くと、見上げた先に見知った姿があった。
「岡野?」
上り階段の踊り場にいた人物は名前を呼ばれ、一瞬だけ驚いたように動きを止めると、東條に視線を向けてくる。
「東條……」
「誰かいるのか? 邪魔したのなら悪い」
「いや、電話に出てただけだ。用件は済んだから、問題ない」
「そうか」
誰かがいた気もしたが、岡野がそう言うのならそうなんだろうと、深く詮索はせずに東條は話題を変えた。
「こんなところで会うなんて、珍しいな。なにかあったのか」
「野暮用だよ、もう終わった。それより、おまえこそどうしたんだ」
「手洗いに行く途中だった」
「便所か。ちょうどいい、俺も行く」
「なんだ。この歳で連れションか?」
「それも、男同士でな」
と、笑い合う。
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