好き逃げ! = 好きですけど、逃げていいですか? × 俺の許容範囲は限界です!(連載版)

m.sei

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好きじゃない

28 二章〈2〉③ 野暮用と連れション*

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  * * *

「吉田、藤崎はどこに行った?」

 藤崎が席を外してしばらくたった頃、東條は主のいない机をコンと叩くと、吉田にそう尋ねてきた。問われた吉田は首を傾げ、一瞬考える。

「たぶん、トイレじゃないですかね。確か、頭を冷やしてくるとかって、言ってたんで」

 だが、そういえば席を立ってからだいぶ経つ。

「あ、でも――」
「そうか。分かった」

 まだ言いかけている吉田に背を向け、東條はさっさとオフィスを出ていく。

 吉田はその背中を見ながら、なにか急用でもあったのかと、首を傾げて見送った。

  ♢ ♢ ♢

 手洗い場に行く途中、聞き慣れた声が聞こえた気がした。東條が手洗い場の手前にある階段の出入り口を覗くと、見上げた先に見知った姿があった。

「岡野?」

 上り階段の踊り場にいた人物は名前を呼ばれ、一瞬だけ驚いたように動きを止めると、東條に視線を向けてくる。

「東條……」
「誰かいるのか? 邪魔したのなら悪い」
「いや、電話に出てただけだ。用件は済んだから、問題ない」
「そうか」

 誰かがいた気もしたが、岡野がそう言うのならそうなんだろうと、深く詮索はせずに東條は話題を変えた。

「こんなところで会うなんて、珍しいな。なにかあったのか」
「野暮用だよ、もう終わった。それより、おまえこそどうしたんだ」
「手洗いに行く途中だった」
「便所か。ちょうどいい、俺も行く」
「なんだ。この歳で連れションか?」
「それも、男同士でな」

 と、笑い合う。

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