待てば恋路の日和あり!?

渡 幸美

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さてさて!本日は張り切って参りますよ!


久しぶりのコンスタイベント!キャラのライブ~♪テンション爆上がりです!!人手不足で仕事のシフトの休みがなかなか合わなくて、ようやく来れたのだ。


もちろん、今日も悠里と一緒だ。オタ仲間がいるのはありがたいわよね~!イベントで仲良くなった子たちとも会えるし、楽しみだな。


私はウキウキで待ち合わせ場所に向かう。今日は会場での待ち合わせ。周辺がコンスタ一色になっている幸せな道を、ふわふわと歩く。


「ねぇ、君、ちょっといい?」


もう少しで待ち合わせ場所、という所で見知らぬ男性に声をかけられた。


「はい?私ですか?」

「そうそう、君!へぇ、オタクばっかりだからどんなのかと思ったら、結構可愛い子もいるじゃん!」

「……は?」


何だ、この失礼な奴。


最近はこの界隈でも男性ファンも増えたから、男性がいること自体は珍しくない。ほぼ全身推しの色が散りばめられ、推し全開の痛バを持っているのだから、誰が誰推しかは一目瞭然だからね。私は同担拒否でもないので、そんな仲間に声を掛けられれば、そりゃあ盛り上がりますが。


コイツは違うな。サングラスかけてるから判りづらいけど、かなりの雰囲気イケメン。スタイルかなり良し。


誤解のないように言っておくけど、オタにだって普通にイケメンさんはいらっしゃる。最近はタレントさんも好きな人多いんだから!コンスタ。


でも、サングラス越しの表情で判る。この人はオタを馬鹿にしている。このオアシスにいるべき人間じゃない。


「……何がおっしゃりたいのでしょうか」

「え、何、何か怒ってる?俺、君を可愛いって言ったよね?」


私の冷たい声と表情に、雰囲気イケメンは少し怯んだ。


「可愛い、は、誉め言葉とは限りませんから」

「えっ、何でよ。誉め言葉でしょ~。ねぇ、何で君みたいな子がこんなライブに来てるの?」


………………は?


コイツ今、って言ったな?言ったよな?!


「俺、初めてで勝手が分からないから教えて欲しいんだよね。どうせなら可愛い子に教わりたいし。ああ、あと、いくつか質問したくて……」

「失礼します。他を当たって下さい。……もっとも貴方みたいに失礼な方に教えてくれる人がいるかは分かりませんが」


私は奥歯をギリギリと噛み締めながら、そりゃあもういい笑顔で拒否を伝え、待ち合わせ場所に向かって歩き出した。


「え、ちょっと待ってよ!いいじゃん!」


のに、雰囲気イケメンが後を付いてくる。え、ウザい。


「他を当たってください」

「え~、何にそんなに怒ってるのさ」

「貴方、コンスタファンじゃありませんよね?」


いつまでも付いてくるので、仕方なしに一旦立ち止まり、彼の目を見て聞く。サングラス越しだから、はっきりしないけど。


「……まあ、ね。何、ファンじゃなきゃ来ちゃダメなの?」

「そんなことはないです。少なくとも私は思っていません。……けれど、馬鹿にするような人には来て欲しくはありません」


私の気迫?に、雰囲気イケメンは一瞬たじろいだものの、気を取り直したようにまた嫌な笑みを浮かべた。


「だって、二次元だろ?現実にはいないじゃん。普通にアイドルとかで良くない?」

「アイドルとか三次元って、裏表があるじゃないですか」

「うっわ、純情なんだね?二次元コンテンツだって、裏ではたくさんのオッサン達が仕事を……」

「そんなことは認識しています!!さっきから、何が言いたいの?おかしいと思うならここに来なければいいじゃない!」


何だかんだ全否定してくる彼に、丁寧語もすっ飛ぶ。そもそもコイツも馴れ馴れしいし、ムカつく奴だから構わないだろう。当の本人は「そりゃそうなんだけどさあ、こっちも仕事で……」とかぶつぶつ言っていた。そんなもん知るか。


「野々日!いたいた!珍しくなかなか来ないから、探しに来たのよ。……その人は?」

「悠里!ごめんね、ありがとう。知らない人に絡まれていただけよ。行こう」


集合時間を結構過ぎてしまったようで、悠里が様子を見に来てくれた。さすが悠里、ナイスタイミング。もうこんな失礼な奴は放っておくに限る。もう二人で夢空間に向かいたい。


「絡まれてたって、大丈夫?」


悠里が怪訝な顔で雰囲気イケメンを軽く睨む。


「お、友だちもわりと可愛いじゃん。絡むって失礼だな、ちょっと話を……」

「ちょっと、いい加減に……」

璃人りひと!いた!お前、一人で何やってんだ!」


悠里にまで絡みそうな奴に、さすがに怒鳴ろうと口を開いた所で、焦ったような別の声が割り込んできた。あら、また雰囲気イケメン。やはりサングラスをしている。


「おー」

「おー、じゃないだろ!ごめん、コイツが失礼なことをしなかった?」

「しましたね。保護者の方ですか?でしたら早めにここから連れ帰って下さい」


失礼イケメンを羽交い締めしているイケメンに、冷たい笑顔で答える。どう見ても年齢的に絶対に保護者ではないのだが、嫌みを込めて言ってやる。

保護者イケメンは一瞬驚いた顔をしたように見えたが、すぐによそ行きのような笑顔を浮かべた。


「ごめんね、良ければコイツが何をしたのか教えて欲しいのだけれど」

「これ以上、無駄な時間を取られたくないので本人から聞いて下さい。友人も待たせているので、失礼します」


保護者イケメンの爽やかよそ行き笑顔になんて絆されないわよ。私も負けじとよそ行き猫かぶり500%の微笑みで返す。

けっ、イケメンに誰でも絆されると思うんじゃねーぞ。せっかくの私のコンスタ時間を奪いやがって。心の中で盛大に悪態を吐きながら。


そして私は、悠里の手を取って歩き出した。


悠里は状況をイマイチ飲み込めていないのだろう、私と奴らをキョロキョロ見ながら付いてきた。


「の、野々日。いいの?このままで」

「いいも何も、知らない人たちだし、あいつ、マジ失礼だから……!」

「そうなの?……ねぇ、彼、ソルのリヒトじゃなかった?」

「そるのりひと?」

「もう!最近出始めたアイドルグループよ!歌もダンスもこだわってて、話題になってる。最初は気づかなかったけど、たぶん、迎えに来た人、リーダーよ」

「へぇ?」

「もう!三次元から足を洗いすぎ!……まあ、分かるけど」


私の事情を唯一知る友人は、眉を下げて困ったような笑顔を浮かべる。


「ごめん、野々日」

「気にしないで!彼らも本人かどうか分からないし、いや、でもアレがアイドルだったら嫌だわ~!」

「そうなの?確かリヒトってツンデレ枠みたいな感じだから、それもあるかもね?」

「そうなの?それを差し引いても、ないわ~!!本人じゃなければゴメンだけど!」


できれば本人でないことを祈りたい。アイドルってことは、誰かの推しだ。あんなのじゃ嫌すぎる。まあ、アレが好みな人もいるのかもだけれど。……って。


「止め止め!今日はせっかくのコンスタイベントよ!早く会場に入ろう!」

「そうだった!」


そうそう、それどころではないのだ。

私たちはちょっと小走りをして、会場へ向かう。


会場に入ったところでは、イベントでよく一緒するたくさんの仲間たちとも合流して。


皆できゃあきゃあ言いながらグッズを買い漁って。


ペンライトを振り回しながら、ライブを満喫した。


やっぱりコンスタ最高!


ライブが終わる頃には、あの失礼なイケメンたちのことなどすっかり忘れていた。


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