異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!

渡 幸美

文字の大きさ
68 / 84
第三章 建国祭と学園と

58.学園祭。now.3

しおりを挟む
エレナに感心しながらもちょっと鬱々して、しばし。

「55ー26!マリーア=サバンズの勝利!」

会場がまた、どっと沸く。
エレナもすごいが、ヒロインマリーアもさすがだった。
周囲の人たちも「初めての一年生優勝か?!」と盛り上りを見せている。

「リ、リリー。マリーもすごいね」
「ほっ、ほんとだね」

と、私たちはもう両手を繋いでいる状態だ。

お父様とお母様も、さすがにここまでとは思ってなかったらしく、驚きと喜びで顔が上気している。その隣でドゥルキス夫妻も興奮気味にマリーアをベタ褒めだ。

マリーア、カッコイイ!!

夜遅くまで魔力コントロールの練習をしてるなあと思っていたのだけれど、このためだったんだよね。さすがだなあ。
マリーアは確かに才能がある、あるけれど、さらに努力ができる人なんだよ。そもそも、努力できる人が才能のある人だって、私は思っているけどね!……私も見習おう。前世にちょっとサボった分も。

そんなこんなでトーナメントは順調に消化され、なんと本当にマリーアとエレナの決勝となった。

周りのざわめきがすごい。

初の一年生同士の決勝だし、それはそうか。

「素晴らしいね。お二人ともに全て50越えだ」
「まったくですな。聞こえて来たことによりますと、あのお二人に引っ張られて、他の子どもたちも例年より伸びたらしいですぞ」
「確かに、今年は皆30前後だものな。なかなかないぞ」
「これは上級生の部も楽しみですな」

ほうほうほう。

いいですね!できる人に引っ張られての、自分のガラスの天井破り!青春だわ~!
お互いに切磋琢磨し合ってのドキュメンタリーとか、大好きだったのよね。部活とかの。

ぶつかり合いながらも、最後には認め合う二人…!うん、これ、アリじゃない?

「お待たせ致しました!決勝戦を開始します!一年生初優勝は、エレナ=グリッタか?マリーア=サバンズか?」

おおおおっ、と期待感を表すような歓声。

二人はお互いを見ずに、的を見つめている。な、なんか、あんまり認め合うような雰囲気はないけども。

そして。

「決勝戦!始め!」

開始の合図とともに、会場はしんとなり、皆の視線がステージに集中する。

二人は次々と的を落としていく。
その内に、二人の邪魔をしないように息を潜めていた観客から、だんだんと戸惑いのようなざわめきが広がり出す。

無理もない。エレナも今までと同じように、いや、むしろ決勝の方がさらに精度が上がって見えるくらいなのに、マリーアがその上を行っているからだ。

「ま、まりーねえさま、ひとつも外してなくない……?」
「だ、だよね?すごすぎるわ、マリー」

イデアーレと前のめりで見てしまう。いや、よく見たら、観客の皆様のほとんどが前のめりだわ。

…3、2、1。

「そこまで!72-59!マリーア=サバンズの勝利!」

わあっ!!と、今まで聞いたことのないような大歓声が会場中に響き渡る。

「素晴らしい試合でした!二人からの感想は、全ての試合の終了後にまた!」

コメントは後ほどか~、と思ってマリーアを見つめていたら、視線に気付いてくれたのか、こちらを見て笑顔で手を振ってくれた。私とイデアーレもブンブン振り返す。
もちろん、後ろで泣き笑いの両親もだ。

エレナは今までの試合と同様に、さらっとステージから降りて去ってしまっている。

「いや~、驚いた!さすが聖女さま候補ってところですかな!」
「まさしく。グリッタ嬢は残念ですな。今年でなければ間違いなく優勝でしたのに」

そう興奮しながら話す観客の声が耳に入る。
……それは確かにあるよね~。神様どんな意地悪なのって言いたくなるくらいに。いつもの時代なら間違いなく天才と呼ばれるであろう人が、さらに突き抜けての天才が上にいて、2番手に甘んじてしまう時が。

きっとそれを、辛く感じてしまうこともあるだろうな、と思う。

けれど、その2番手は、胸を張っていいことのはずだ。少なくとも今回のエレナの記録は素晴らしかった。

「リリー!みんな!見てくれていた?」

そんなことをしみじみと考えていると、華やぐ笑顔の女神マリーアが、観客席へと来てくれた。

「もちろんだよ~!姉さますごかった~!」
「感動したわ、マリー!」
「うれしい。ありがとう、二人とも!頑張ってよかった」

ぶふぉっ、美少女の照れたハニカミ笑顔の破壊力よ。浄化されるわ~。

「マリー、おめでとう。お母様、途中で立ち上がりそうになってしまったわ」
「マ、マリー、なんて素晴らしいんだ……」

目にいっぱい涙を浮かべて喜ぶ両親に、マリーアも貰い泣きしそうになりながら、二人に抱きつく。

「お父様、お母様、応援ありがとうございます!アドバイスを役立たせていただきました!」

ふふっ、といたずらっぽく笑うマリーアに、また二人がそれぞれ抱き締める。お隣のドゥルキス夫妻も温かい目で見守ってくれている。

マリーアが、そんなご夫妻にもお礼を言おうとした時。


「やっぱりお前は何をしても中途半端だよなあ。2番手にしかなれんのか!」

という、あり得ない言葉が耳に入る。

妙に声が通るその人は、エレナを見下ろしながら「情けない」だの、「やはりこんなものか」だの、嫌な言葉を嬉々として言っているようにさえ見える。

「グリッタ侯爵…。あの方は変わらんのか…」

お父様が少しため息を吐きながらぼやき、ああ、やはりエレナの父親なのかと思う。残念なことに。

エレナがなんでマリーアに、私たちに絡むのかと思っていたけれど。

なんとなく、理由がわかった気がした。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。

亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。 だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。 婚約破棄をされたアニエル。 だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。 ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。 その相手とはレオニードヴァイオルード。 好青年で素敵な男性だ。 婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。 一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。 元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

ともボン
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

処理中です...