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18.私が仕事をしたい訳
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「まあ、それはさておき」
「ちょっと待って?!これ、さておいちゃうの?!」
「え、だってローズの闇魔法の練習とかしたくない?優先順位、上じゃない?」
「……エマ…………」
ローズがとても可哀想な子を見るように見ている。解せぬ。
「ほんとに清々しいほど、エマはエマだな」
ジークが笑いを堪えながら言う。解せぬ!
「エマ、ローズの魔法の件も進めたいが……さすがに今日は時間的にキツくないか?エマさえ良かったら、明日は学園も休みだし、ローズの魔法の試しやら諸々に付き合ってもらえると助かるのだが」
「私は大丈夫だけど、二人は忙しくないの?公務とか」
「今週末は、この問題解決に当たろうと思っていたから、空けておいたんだ」
お、準備万端ですね!
「それでしたら、私に異論はないですよー」
「やったー!じゃあ、今日はエマ、二人で城にお泊まりよー!」
「は?!」聞いてないけど!
「着替えとかは、私の王太子妃の部屋与えられている部屋にたくさんあるから気にしないで!」
いや、そこもだけど、そこじゃない。
「学園の寮にも連絡してあるぞ。心配するな」
いや、それもだけど、それじゃない。てゆーか、仕事が早い。
「いや……さすがに心の準備が……」
「エマとパジャマパーティーしたいの……」
うぐっ!ローズに下から上目遣いで見られると…もうっ!
「……パーティーする」
「やったー!」
まあいっか、喜んでくれてるし。
「エマ、俺と仲間になったな」
この、嫁溺愛王太子め。
「じゃあ、晩餐までもまだ時間があるし、話の続きができるわね!」
えーーー。
「ゲーム補正ではないの…?」
「でも、エマはキャンディーも知らなくて使ってないだろ?」
まあ……それはね。
「そもそも、スタートからしてバグってるようなもんだろう、エマの目的が違うんだから」
うっ、確かに。
「きっともう、イベント事みたいなことは無いような気しかしない」
マジですか……まあ、それはいいけどさ……。
「そしてきっと、スタートが妹分扱いのせいでスルーされているであろう、神官とスレン先生が不憫でならない……」「それよね」二人が何やらコソコソ話してるけど、私には聞こえなかった。
「ん?そうなると、何で纏わり付かれてるの……?」
「うわ、エマ本気で言ってるんだ。それはそれで怖っ!てゆーか、ほんとに何とも想われていないのね、あの人たち……ちょっと憐れだわ……」
「始めから、私は仕事がしたいんだって言ったじゃん…」
「そうだけどな。いわゆるギャップ萌えだろうなあ、エマの場合って」
「あー、解るかも」
「ギャップ萌え……?」
「知らない?」
「いや、意味は分かるけど……?」
「この無自覚さが恐ろしいよ。エマは黙ってれば、庇護欲を駆り立てられるような、いわゆるかなり可愛らしい外見だろ?黙ってれば」
ジーク……黙ってれば、を2回言ったな!
でもエマは、確かに可愛い。さすがヒロインですよ。
「それが、話してみると地に足の着いた、しっかりとしたご令嬢な訳だ。仕事をしたいと言うだけの事もあり、知識も豊富で発想も豊か。聖女だけあって、皆に平等」
そんなに褒められると、こそばゆいです……。
「あの四人が騒がしいから皆引いてるけど、エマとあわよくばと思っているご子息、結構いるわよ」
「更に、あの四人に対してはまた、そっけないのが余計に火をつけたんだろうなあ。それぞれ婚約者はいるが、言い寄ってくる奴等はたくさんいるから。靡かないエマをどうにかしたいんだろ」「ちなみに俺は寄られてないからな!ローズを寵愛なのを皆知ってるからな!」ハイハイ。
でも、と、言うことは……?
「残念なことに、頑張ったのが裏目に出ちゃった部分もあるのかもね…?」
ローズが遠慮がちに言う。
「そうなるわよね……」
悲しい。
「でも、自分に出来ることがあるのにやらないって出来ないんだよねぇ。性格的に。聖女になった以上は、って思うの」
「損な性分よね……でも、解るわ、それ」
「そもそも、なぜエマはそんなに仕事に拘るんだ?悪いことではないが」
「ああ、それは…」
ちょっと昔話をします。
私は前世では、いわゆる大企業ではなく、中小企業でそれなりにやり手の、イベント企画会社で働いていた。
企画するイベントもそんなに大規模なものは扱えなかったけど、成功すると皆喜んでくれるし、やりがいは十分で充実していた。
そして、ある町おこしのイベントで、初めて私は企画のリーダーを任された。子育て中だったから、今までサブは何度かやらせてもらってたけど、子どもたちも高校生になって、初のリーダー!嬉しかったなあ。忙しかったけど、順調に準備は進んでいたんだ。
準備も終盤に差し掛かった頃、それは訪れてしまった。
毎日微熱が出る。最初は疲れだろうと軽く見ていた。
けど、二週間経っても下がらないどころか、悪化していく。さすがに病院に行くと……悪性腫瘍であることが分かった。しかも、ステージ4。即、入院。
「病気で亡くなったというのはこの前聞いたけど……そんなタイミングだったのね…」
「そうなんだよ。健康診断も毎年受けてたんだけどねぇ。こればっかりは」
「それで、仕事のリーダーは別の人間が?」
「もちろんそうだよ!あったかい会社だったからさ、発案者として名前は残してくれたけど」
「そうか……」
「亡くなる前に、町おこしが大成功だったのは見届けられたんだけどね。でもやっぱり、自分で最後までやりたかったなあって」
「「……」」
「あ、もちろん会社の皆には感謝してるんだよ?!だけど、ね。ダメねぇ、器が小さくって」
「そんなことないわ。それだけ、一生懸命にやってたってことじゃない」
「そうだぞ」
「ありがとう。二人とも」
私は微笑んだ。
____________________________________________________
9話で言っていた、毎週末の神殿でのお勤めというのはお誘いを断る方便です。
エマは真面目なので、予定がない日には、強制でもないのにほとんど神殿に行ってるのも本当なのですが。
「ちょっと待って?!これ、さておいちゃうの?!」
「え、だってローズの闇魔法の練習とかしたくない?優先順位、上じゃない?」
「……エマ…………」
ローズがとても可哀想な子を見るように見ている。解せぬ。
「ほんとに清々しいほど、エマはエマだな」
ジークが笑いを堪えながら言う。解せぬ!
「エマ、ローズの魔法の件も進めたいが……さすがに今日は時間的にキツくないか?エマさえ良かったら、明日は学園も休みだし、ローズの魔法の試しやら諸々に付き合ってもらえると助かるのだが」
「私は大丈夫だけど、二人は忙しくないの?公務とか」
「今週末は、この問題解決に当たろうと思っていたから、空けておいたんだ」
お、準備万端ですね!
「それでしたら、私に異論はないですよー」
「やったー!じゃあ、今日はエマ、二人で城にお泊まりよー!」
「は?!」聞いてないけど!
「着替えとかは、私の王太子妃の部屋与えられている部屋にたくさんあるから気にしないで!」
いや、そこもだけど、そこじゃない。
「学園の寮にも連絡してあるぞ。心配するな」
いや、それもだけど、それじゃない。てゆーか、仕事が早い。
「いや……さすがに心の準備が……」
「エマとパジャマパーティーしたいの……」
うぐっ!ローズに下から上目遣いで見られると…もうっ!
「……パーティーする」
「やったー!」
まあいっか、喜んでくれてるし。
「エマ、俺と仲間になったな」
この、嫁溺愛王太子め。
「じゃあ、晩餐までもまだ時間があるし、話の続きができるわね!」
えーーー。
「ゲーム補正ではないの…?」
「でも、エマはキャンディーも知らなくて使ってないだろ?」
まあ……それはね。
「そもそも、スタートからしてバグってるようなもんだろう、エマの目的が違うんだから」
うっ、確かに。
「きっともう、イベント事みたいなことは無いような気しかしない」
マジですか……まあ、それはいいけどさ……。
「そしてきっと、スタートが妹分扱いのせいでスルーされているであろう、神官とスレン先生が不憫でならない……」「それよね」二人が何やらコソコソ話してるけど、私には聞こえなかった。
「ん?そうなると、何で纏わり付かれてるの……?」
「うわ、エマ本気で言ってるんだ。それはそれで怖っ!てゆーか、ほんとに何とも想われていないのね、あの人たち……ちょっと憐れだわ……」
「始めから、私は仕事がしたいんだって言ったじゃん…」
「そうだけどな。いわゆるギャップ萌えだろうなあ、エマの場合って」
「あー、解るかも」
「ギャップ萌え……?」
「知らない?」
「いや、意味は分かるけど……?」
「この無自覚さが恐ろしいよ。エマは黙ってれば、庇護欲を駆り立てられるような、いわゆるかなり可愛らしい外見だろ?黙ってれば」
ジーク……黙ってれば、を2回言ったな!
でもエマは、確かに可愛い。さすがヒロインですよ。
「それが、話してみると地に足の着いた、しっかりとしたご令嬢な訳だ。仕事をしたいと言うだけの事もあり、知識も豊富で発想も豊か。聖女だけあって、皆に平等」
そんなに褒められると、こそばゆいです……。
「あの四人が騒がしいから皆引いてるけど、エマとあわよくばと思っているご子息、結構いるわよ」
「更に、あの四人に対してはまた、そっけないのが余計に火をつけたんだろうなあ。それぞれ婚約者はいるが、言い寄ってくる奴等はたくさんいるから。靡かないエマをどうにかしたいんだろ」「ちなみに俺は寄られてないからな!ローズを寵愛なのを皆知ってるからな!」ハイハイ。
でも、と、言うことは……?
「残念なことに、頑張ったのが裏目に出ちゃった部分もあるのかもね…?」
ローズが遠慮がちに言う。
「そうなるわよね……」
悲しい。
「でも、自分に出来ることがあるのにやらないって出来ないんだよねぇ。性格的に。聖女になった以上は、って思うの」
「損な性分よね……でも、解るわ、それ」
「そもそも、なぜエマはそんなに仕事に拘るんだ?悪いことではないが」
「ああ、それは…」
ちょっと昔話をします。
私は前世では、いわゆる大企業ではなく、中小企業でそれなりにやり手の、イベント企画会社で働いていた。
企画するイベントもそんなに大規模なものは扱えなかったけど、成功すると皆喜んでくれるし、やりがいは十分で充実していた。
そして、ある町おこしのイベントで、初めて私は企画のリーダーを任された。子育て中だったから、今までサブは何度かやらせてもらってたけど、子どもたちも高校生になって、初のリーダー!嬉しかったなあ。忙しかったけど、順調に準備は進んでいたんだ。
準備も終盤に差し掛かった頃、それは訪れてしまった。
毎日微熱が出る。最初は疲れだろうと軽く見ていた。
けど、二週間経っても下がらないどころか、悪化していく。さすがに病院に行くと……悪性腫瘍であることが分かった。しかも、ステージ4。即、入院。
「病気で亡くなったというのはこの前聞いたけど……そんなタイミングだったのね…」
「そうなんだよ。健康診断も毎年受けてたんだけどねぇ。こればっかりは」
「それで、仕事のリーダーは別の人間が?」
「もちろんそうだよ!あったかい会社だったからさ、発案者として名前は残してくれたけど」
「そうか……」
「亡くなる前に、町おこしが大成功だったのは見届けられたんだけどね。でもやっぱり、自分で最後までやりたかったなあって」
「「……」」
「あ、もちろん会社の皆には感謝してるんだよ?!だけど、ね。ダメねぇ、器が小さくって」
「そんなことないわ。それだけ、一生懸命にやってたってことじゃない」
「そうだぞ」
「ありがとう。二人とも」
私は微笑んだ。
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