私は仕事がしたいのです!

渡 幸美

文字の大きさ
52 / 92

51.またまたお茶会です その3

しおりを挟む
「ふふっ、さすがのエマ様もお二人には形無しですのね?」

セレナ様が楽しそうに言う。

「…恥ずかしながら……いつも助けてもらっています」

ちょっと恥ずかしい。けど、二人の存在に助けられているのは確か。

「やだわ、エマ。照れてしまうじゃない」

「私達こそ、助けられているわ」

ふふっ、と三人で目を合わせて微笑む。


「羨ましいですわ」

「あら、リーゼ様。これからは私達、同士でしょう?気楽にお声がけくださいな。勿論、皆様もよろしければ」

リーゼ様の言葉に、レイチェルが答える。

「よろしいんですの?!」

ソフィア様。

「当然ですわ。むしろ私など、家格が下ですのに」

カリン。

「天下のマーシル大商会のマーシル家が、何をおっしゃるの?私こそ、どうしましょう」

シャロン様。シャロン様のお家も、かなりの商会をお持ちだけれど。

「皆様、ここではその様なことを気にするのを止めにしませんか?で、できれば敬称もなく、出来たら嬉しいと……王族に準じるエマ様に、差し出がましいですけれど」

セレナ様……ううん、セレナが珍しく緊張の面持ちで話す。他の三人も、うんうん頷く。そんな様子も愛らしすぎる。


「もちろん構わないわ!改めてよろしくね?セレナ、リーゼ、ソフィア、シャロン!」

私は心の底から、嬉しさを全面に出して笑顔で言う。

「ありがとう、エマ!よろしくね!レイチェルにカリンも!」

セレナの花の綻ぶような笑顔は破壊力満点だ。

皆も、負けない笑顔で返してくれる。部屋中に花が咲いたよう。幸せだ。幸せで……まずい、また泣いちゃうかも。

「あら、エマがまた泣きそう」

「せ、セレナ!泣いて、ない!」

ま、またって言わないで~!

「エマは嬉しすぎると泣いちゃうのよね~、悲しいのは我慢強いのに」

「か、カリン!」

鋭い突っ込みは引っ込めてー!

「やだ、ホントに可愛い。愛でたくなる聖女様よね」

「分かるわ、ソフィア」

「レイチェルたちはずるいわ。こんな可愛いエマをずっと見ていたのね?」

「り、リーゼ、いつも、こんなじゃないっ、もんっ」

何だかもう、どうしていいか分からなくなってきた。

「もうだめ、抜け駆けするわ!」

そう言ってシャロンが席を立ち、私の所に駆け寄って抱きしめる。「きゃあ、ホントに抜け駆けだわー!」と、他の三人も駆けてきて皆に抱きしめられる。も、もうだめ。涙腺崩壊です。

「わあ~~~ん、う、嬉しいよぉ~!」

私も、私もと皆も言ってくれて、四人で気の済むまで泣いた。レイチェルとカリンは、とても安堵した、優しい顔をしてくれている。


こんな幸せな涙ばかりを流せる私は、世界一の幸せ者だ。


◇◇◇


「お茶を淹れ直してもらったわ。落ち着くし、いただきましょう?」

レイチェルが皆に優しく声をかける。

そういえば失念しておりましたが、今日は給仕のお手伝いで、カナとベルが部屋にいたのだった。は、恥ずかしい……けど、二人はお姉さんのように柔らかい笑顔で給仕をしてくれている。さすがだ。


新しく淹れてもらったお茶をいただき、皆でほっと息をつく。

「美味しい…私、お茶の勉強もしたいのよね。うちの茶寮の茶葉の種類も増やしたくて」

レイチェルが話し出す。

「いいわね!ね、そうしたら、緑茶も探せない?」

思わず食い付く私。

「緑茶?お米といい、遠い国のことを良く知ってるわね、エマ」

「しょ、食が趣味だから……いろんな本を読んだの」

「だからそんなに博識なのね。アイデアも素晴らしいし」

「あ、ははは。ありがとう、セレナ」

こ、心苦しい……これは、前世知識持ちあるあるだな。でも、使えるものは使うのだ!皆で楽しく暮らせるように。


「あ、それでね、この前セレナには少し話したけど」

「?他に何かあったかしら?」

「うん?ほら、お家の話」

「!ああ!きちんとエマの下に付くわよ?」

セレナが首を傾げながら言う。かわいい。じゃなくて。

「いや、その……本当にできるなら、それぞれのお家主催でやってもらえないかなあ…って」

「は?」セレナちょっと怖い。

「い、いや、もちろん言い出したのは私なので、聖女の名前はふんだんに使っていただいて構わないし、私の公費からも出資するし(聖女手当てみたいのがある)、仕事や研究にも参加をするけれど!聖女としての役目も入ることを考えると、会社……商会経営としては、その方が効率的かなあって……」

「一理ある……けれど、利益はどう分ける?」

カリン。さすがにスパッとしている。


「あ、だから私は名誉会長みたいな扱いでいいから、無しで。国から聖女報酬を出してもらえるから、心配しないで。その分商会と、もちろん従業員の方達に還元してくれたら嬉しい」

「エマ、本気で言ってるの?」

シャロン。

「え?やっぱりダメ?口だけ出すようじゃ。でも、陛下も乗り気でいてくださっているし、わりとすぐに軌道に乗ると思うの。それぞれのお家の得意分野で……」

「いやいや、そうじゃなくて……」

シャロンが困り顔を通り越した顔をしている。

「エマ、アイデアと発想には、きちんと報酬が発生するわ」

「レイチェル」

「そうね、陛下も乗り気で…公共事業のような側面もあることを考えると、ますます堅実に利益が出そうよね。それを、無しでいいと?」

リーゼまで。

「だ……だめなの……?」

む、無責任かしら……微妙な間が流れる。


「あ、ははは、ははははは!」

すると、ソフィアが笑い始めた。令嬢らしからぬ笑い方だ。

「は、はしたなくてごめんなさい。で、でも、報酬を辞退している方がしゅんとしているのが、おか、おかしくて。そういえば、セレナが驚いたと言っていたけれど……ほ、本気で……!あは、はははっ」

ソフィアにつられて、皆もやれやれ的な笑顔になる。

「ほんとにもう、笑うしかないわよね」

セレナ。

「初代のエミール様もこうだったのかしら……」

リーゼ。

「…そうかもしれないわね。だから聖女なのかしら」

レイチェル。

「ただのお人好しとも言うわよ」

ちょっ、カリン!

「でも、さすがエマ、よね?」

シャロン。

「「「「「そうね!」」」」」


「エマ。ありがたくお話をお受けします。聖女の名誉を損なわないよう、精一杯努めますわ」

セレナが姿勢を正して言う。他の皆も、同様に受けてくれた。

「ありがとうございます!」

「ホントに、ありがとうはこちらのセリフよ。……エマはどのように事業を分けようと考えてる?」

カリンが話を進めてくれる。

「大雑把になってしまうかもだけれど……みんなも意見を言ってね」

全員が頷く。何だか、わくわくしてきた!


「聖女商会、スタートね!」

「……エマ、ネーミングセンスはゼロね……」

「えっ、カリンひどい!」

「エマ、名前は後で考えましょうか……」

シャロンまで。皆も頷いてるし。いいもん、別に……。


こうして、楽しくありがたく幸せで充実したお茶会は、下校時間ギリギリまで続いたのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた

鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。 幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。 焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。 このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。気づかないロゼ。構わず迫るエドガー。 エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。 「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」 「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」 「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」 ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。 ※この話はカクヨム様、アルファポリス様、エブリスタ様にも掲載されています。 ※レーティングをつけるほどではないと判断しましたが、作中性的ないやがらせ、暴行の描写、ないしはそれらを想起させる描写があります。

処理中です...