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第一章 黎明を喚ぶもの
第十二話 『緑髪の少女は朝日のように』
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アレンの朝は遅い。
「ん、ん……?」
ゲーマーの性として昼夜逆転生活を主としてきたアレンの生活リズムは完全に崩壊しており、起床はいつも昼間になってから。
だったのだが——その日は、まだ太陽の昇りきっていない朝のうちから、アレンは目を覚ました。
妙な寝苦しさとともに。
(……金縛り?)
なんだか息苦しく、体も起き上がらない。
寝ぼけまなこで見てみれば、明らかになにかが寝ているアレンの上に乗っていた。
金縛りではなく、胸の上のなにかが体を押しつぶしているせいで苦しいらしい。そう理解したアレンは、急速にはっきりとしてきた意識で、そのなにかの輪郭を見定める。
緑がかった、丸みを帯びたものが間近にあった。
「——人!?」
それは鮮やかな緑色の毛髪に覆われた、誰かの頭だった。
きちんと首もつながっており、毛布の上からアレンに覆いかぶさるようにして、その誰かは呑気に「ぐー」と寝息を立てている。
しかも彼女——髪の長さや毛布越しに触れる感触から若い女性のようだった——の背にはやけに巨大なバックパックがあった。外から見てわかるくらいにパンパンで、しかしながら、その重量もアレンにのしかかっているはずが不思議と人体以上の重さはそう感じない。
「誰だ、お前……っ、おい! 起きろ!」
「んむー……今日は学校休みだよぉ」
「寝ぼけてんじゃねえ! 誰だお前、どこから入ってきた! くそっ、鍵締め忘れてたのか俺?」
「誰って……もー……お母さん、娘のこと忘れたの?」
「まだ産んでねえよ! ……いやこれからも産まねえよ!! いい加減起きろ!」
無理やり毛布ごとはねのけると、少女はベッドから転落したものの、バックパックがぽよんとクッションになって衝撃を吸収した。
「……すやぁ」
「まだ寝るかお前——!!」
少女の顔は、アレンの見知ったものではなかった。知り合いではない。
PKKなんてことをやっている以上、人に恨みを買うこともあるだろうとアレンは考えた。そのため、簡単に宿の場所を知られないよう気を付けていた。
(襲われたら……死んでた)
だというのに、彼女はアレンの部屋にいた。これはアレンにとっても恐怖を覚える事実ではあった。
この世界はほとんどゲームに近しいシステムをしているが、なにも転移者を殺すのに必ずしもHPを削りきる必要などない。
呼吸もするし、食事もする。ならばそれらを断てば——酸欠や餓死といった死因で現実同様に殺すことは可能だろうと思われた。
首でも絞められればそれだけで終わる。どれだけレベルが高かろうと、HPが多かろうと、睡眠という状態の無防備さは現実となんら変わりない。
「ア、アレンさん……? 珍しく早起きですね?」
騒がしさを疑問に思ったのか、ドアを開け、先に起きていたミカンが部屋に入ってくる。やはり部屋の鍵は開いていたようだ。
彼女の身幅をゆうに超えるほど巨大な、パンパンになったバックパックをクッション代わりにしながら仰向けで眠る、端的に言って異常者の様相を呈した少女の存在に気づき、ミカンはぎょっとした。
「だ、誰ですか、この人?」
「知らん。起きたらいた」
「不法侵入……!?」
キメラに敷かれているのは法律の類ではなく、システムとしての法則のみ。言うまでもなく裁くことはできまい。
「——あ。寝ちゃってました? あたし」
天真爛漫であることが宿命付けられているかのように、少女はパッと唐突に目を覚ました。
勢いをつけ、身を起こす。バックパックはやはり、中身が詰まっているように見えるものの、軽々と背負われていることから重くはないらしい。
「……ようやく起きたか。言っておくが客室なんかでも住居侵入罪は成立するんだぞ」
「いやあ、ごめんなさいです。アレンさんを訪ねてきたはいいものの、まだおねむだったんで。気持ちよさそうに眠ってたから、起こすのも忍びないなあ……なんて思ってたら、あたしも眠くなって、つい」
「ついじゃねーよ」
へらりと人懐っこい笑みを浮かべる少女。目覚めはいい方なのか、まだ少し眠気を引きずったアレンに比べると眼差しをはっきりさせていた。
彼女の正体に、実のところアレンは先ほどから気づいている。
「なんの用だ、アイテム屋。まったく昨日の今日で会うことになるとは思ってなかったぞ……しかもこんな朝っぱらから」
「アイテム屋!? あっ、このID……!」
アレンの言葉に、慌ててミカンが少女の方を見る。
正確には、その頭上に浮かぶID表記を。
——Kazura。
カズラ。昨夜、やむなくPKに手を染めかけたマツが話題にも出していた。そしてアレンに出会う前のミカンが探していた、NPCのショップとはまた違った物を売るというアイテム屋だ。
「ふっふ、どーやらあたしのことは知ってるみたいですねー。話が早くて助かります。流石はプレイヤーキラーキラーにして、元プロゲーマーのアレンさんですね」
「PKKのことはともかく、現実の俺の経歴まで知ってるのか?」
「もちろん! あたしはアイテム屋であると同時に、情報屋でもありますから。知ってますよー、アレンさんのこと。チーター疑惑で界隈を追放されたことも」
「……! 俺は——」
「やってない、ですか? 残念ながら、そこまではわたしにはわかんないです。プレイしたことないですからねー、FPS。判断つかないし、ぶっちゃけどうでもいいんで、あたしの中ではグレーのままです」
FPSって人を撃ったりして野蛮じゃないですか、と悪気のない表情でカズラはぼやく。アレンとしては血の出ないスポーティさをウリにしたFPSもあるのだと反論したかったが、わざわざ口にはしない。
宿を探し当てたことといい、その情報収集力は本物だ。そう認めるしかなかった。
話題を変えるためと、それとなく探りを入れるために、アレンは別のことを訊く。
「……部屋の鍵はどうした? やっぱり思い返してみると、俺は確かに閉めてたはずだ。アバカムみたいに解錠のユニークスキルでも持ってるのか?」
「アバ……? あ、あの、アレンさん、アバカムって」
「いえ、普通にピッキングで。単純な作りでしたから」
「普通に、ね。普通の人間はそんなのできないと思うが」
「アレンさん……? あのっ、アバカムってなんですか?」
「あはは、確かにそーかもです。でもアレンさんってば、あたしがアイテム屋って知ってたんだから、あたしのユニークスキルがクラフト系だってことくらいはわかってたんじゃないですか? もしかして、カマかけてみた感じです?」
「どうだろうな? アイテム屋ってのは聞いたことあるけど、ユニークスキルまでは知らなかったなぁ」
「あ、あの……? アレンさん、アバカムって……?」
アイテム合成のユニークスキルを持つ、神出鬼没の商人。
初めてミカンに会った日に聞いた噂はどうやら間違いなさそうだった。
(それに……子どもだが、油断できる相手でもなさそうだ。たった一人でこのキメラで商売なんてやってるんだから当然か)
必然的な警戒が、寝ぼけたアレンの頭をすっきりとさせた。今この瞬間にカズラがボーナスウェポンを取り出そうとも、それにコンマ二秒以上の遅れなく抜き放たれたキングスレイヤーの銃弾が彼女の頭を撃ち抜くことだろう。
幸いにして、カズラは敵意を見せるようなことはせず、むしろ無防備とも言える所作でミカンの方を振り向いた。
「そっちは、ミカンさんですねー。初めまして!」
「あ、え、えと、はっ、初めまして……!」
「単独で行動してたプレイヤーキラーキラーが、最近いっしょに過ごすようになった相手……。あたし、ミカンさんのこと、率直に言ってとっても興味あります!」
「え、あ、その——」
「どういう経緯でいっしょに行動するようになったんですか!? もしかして戦闘になるとすっごく強くて……バトルジャンキーみたいな性格に豹変するとか!」
「ちが、そ、そんなことは……」
「それとも体で落としたとか? やっぱりこの大きな胸に秘密が!?」
「馬鹿言ってんじゃねえぞ」
どうやらアレンが男であることも知っているようだ。FPSゲーマーにでも聞いたのか。プロゲーマー時代のことまで調べたようだから、当然かもしれない。
「なんか、対照的だな二人は……」
「そーですかね?」
「わ、わたし……根暗ですから。アレンさんのいう通り、真逆かもしれません。カズラさんみたいな明るくて——」
「わわっ、褒められる流れ? いやぁ照れますねー」
「——なんにも考えずに喋れるお気楽な人、羨ましいです……」
「あれ? なんか微妙な褒め方してませんそれ? あれれ?」
「ミカンは結構こんな感じでナチュラルに失礼だぞ」
「むむ、知らない情報」
カズラは不快そうな反応は少しもせず、むしろ興味深いとでも言いたげにメモを取り始めた。なにかあるたびにインベントリからメモ帳を取り出し、書き込むのが彼女の癖だ。ただし見返すことはほとんどない。
ひとまず、彼女に敵意はないとアレンは判断した。その気があるのであれば、アレンを殺す機会などいくらでもあった。
しかし寝込みを襲いに来たのでないのなら、一体どういう目的でやってきたのか。
PKKの噂を聞きつけ、なにかと物入りだと踏んでセールスにでも来たのだろうか。そこを質さねばならなかった。
「——カズラ。単刀直入に訊くが、俺を訪ねてきた目的はなんだ?」
「あ、そうでした。伝言に来たんです、あたし」
「伝言? アイテム屋が?」
「情報屋でもある、って言いましたよ。<和平の会>からメッセンジャーとして、PKKのアレンさんに依頼の通達です」
「<和平の会>から……?」
再度疑問を口にしたのは、アレンではなくミカンだ。しかし同様のものをアレンも抱いている。
<和平の会>が、アレンに依頼をよこす。
間にカズラを噛ませたこと自体は理解できる。独自の情報網を持つであろう彼女でなければ、そう易々とアレンの居場所はつかめまい。
だがアレンとて、初日のあの広場以降、<和平の会>ギルドマスターのレーヴンとは顔を合わせたこともない。互いに頼みごとをするような間柄ではないはずだった。
アレンたちの疑問を見て取ったのか、カズラは人好きする軽い語り口で補足する。
「はいー。ギルドマスターのレーヴンさんから、PKKのアレンさんに。PKギルドの<アーミン>を壊滅させてほしい——という依頼です」
「ん、ん……?」
ゲーマーの性として昼夜逆転生活を主としてきたアレンの生活リズムは完全に崩壊しており、起床はいつも昼間になってから。
だったのだが——その日は、まだ太陽の昇りきっていない朝のうちから、アレンは目を覚ました。
妙な寝苦しさとともに。
(……金縛り?)
なんだか息苦しく、体も起き上がらない。
寝ぼけまなこで見てみれば、明らかになにかが寝ているアレンの上に乗っていた。
金縛りではなく、胸の上のなにかが体を押しつぶしているせいで苦しいらしい。そう理解したアレンは、急速にはっきりとしてきた意識で、そのなにかの輪郭を見定める。
緑がかった、丸みを帯びたものが間近にあった。
「——人!?」
それは鮮やかな緑色の毛髪に覆われた、誰かの頭だった。
きちんと首もつながっており、毛布の上からアレンに覆いかぶさるようにして、その誰かは呑気に「ぐー」と寝息を立てている。
しかも彼女——髪の長さや毛布越しに触れる感触から若い女性のようだった——の背にはやけに巨大なバックパックがあった。外から見てわかるくらいにパンパンで、しかしながら、その重量もアレンにのしかかっているはずが不思議と人体以上の重さはそう感じない。
「誰だ、お前……っ、おい! 起きろ!」
「んむー……今日は学校休みだよぉ」
「寝ぼけてんじゃねえ! 誰だお前、どこから入ってきた! くそっ、鍵締め忘れてたのか俺?」
「誰って……もー……お母さん、娘のこと忘れたの?」
「まだ産んでねえよ! ……いやこれからも産まねえよ!! いい加減起きろ!」
無理やり毛布ごとはねのけると、少女はベッドから転落したものの、バックパックがぽよんとクッションになって衝撃を吸収した。
「……すやぁ」
「まだ寝るかお前——!!」
少女の顔は、アレンの見知ったものではなかった。知り合いではない。
PKKなんてことをやっている以上、人に恨みを買うこともあるだろうとアレンは考えた。そのため、簡単に宿の場所を知られないよう気を付けていた。
(襲われたら……死んでた)
だというのに、彼女はアレンの部屋にいた。これはアレンにとっても恐怖を覚える事実ではあった。
この世界はほとんどゲームに近しいシステムをしているが、なにも転移者を殺すのに必ずしもHPを削りきる必要などない。
呼吸もするし、食事もする。ならばそれらを断てば——酸欠や餓死といった死因で現実同様に殺すことは可能だろうと思われた。
首でも絞められればそれだけで終わる。どれだけレベルが高かろうと、HPが多かろうと、睡眠という状態の無防備さは現実となんら変わりない。
「ア、アレンさん……? 珍しく早起きですね?」
騒がしさを疑問に思ったのか、ドアを開け、先に起きていたミカンが部屋に入ってくる。やはり部屋の鍵は開いていたようだ。
彼女の身幅をゆうに超えるほど巨大な、パンパンになったバックパックをクッション代わりにしながら仰向けで眠る、端的に言って異常者の様相を呈した少女の存在に気づき、ミカンはぎょっとした。
「だ、誰ですか、この人?」
「知らん。起きたらいた」
「不法侵入……!?」
キメラに敷かれているのは法律の類ではなく、システムとしての法則のみ。言うまでもなく裁くことはできまい。
「——あ。寝ちゃってました? あたし」
天真爛漫であることが宿命付けられているかのように、少女はパッと唐突に目を覚ました。
勢いをつけ、身を起こす。バックパックはやはり、中身が詰まっているように見えるものの、軽々と背負われていることから重くはないらしい。
「……ようやく起きたか。言っておくが客室なんかでも住居侵入罪は成立するんだぞ」
「いやあ、ごめんなさいです。アレンさんを訪ねてきたはいいものの、まだおねむだったんで。気持ちよさそうに眠ってたから、起こすのも忍びないなあ……なんて思ってたら、あたしも眠くなって、つい」
「ついじゃねーよ」
へらりと人懐っこい笑みを浮かべる少女。目覚めはいい方なのか、まだ少し眠気を引きずったアレンに比べると眼差しをはっきりさせていた。
彼女の正体に、実のところアレンは先ほどから気づいている。
「なんの用だ、アイテム屋。まったく昨日の今日で会うことになるとは思ってなかったぞ……しかもこんな朝っぱらから」
「アイテム屋!? あっ、このID……!」
アレンの言葉に、慌ててミカンが少女の方を見る。
正確には、その頭上に浮かぶID表記を。
——Kazura。
カズラ。昨夜、やむなくPKに手を染めかけたマツが話題にも出していた。そしてアレンに出会う前のミカンが探していた、NPCのショップとはまた違った物を売るというアイテム屋だ。
「ふっふ、どーやらあたしのことは知ってるみたいですねー。話が早くて助かります。流石はプレイヤーキラーキラーにして、元プロゲーマーのアレンさんですね」
「PKKのことはともかく、現実の俺の経歴まで知ってるのか?」
「もちろん! あたしはアイテム屋であると同時に、情報屋でもありますから。知ってますよー、アレンさんのこと。チーター疑惑で界隈を追放されたことも」
「……! 俺は——」
「やってない、ですか? 残念ながら、そこまではわたしにはわかんないです。プレイしたことないですからねー、FPS。判断つかないし、ぶっちゃけどうでもいいんで、あたしの中ではグレーのままです」
FPSって人を撃ったりして野蛮じゃないですか、と悪気のない表情でカズラはぼやく。アレンとしては血の出ないスポーティさをウリにしたFPSもあるのだと反論したかったが、わざわざ口にはしない。
宿を探し当てたことといい、その情報収集力は本物だ。そう認めるしかなかった。
話題を変えるためと、それとなく探りを入れるために、アレンは別のことを訊く。
「……部屋の鍵はどうした? やっぱり思い返してみると、俺は確かに閉めてたはずだ。アバカムみたいに解錠のユニークスキルでも持ってるのか?」
「アバ……? あ、あの、アレンさん、アバカムって」
「いえ、普通にピッキングで。単純な作りでしたから」
「普通に、ね。普通の人間はそんなのできないと思うが」
「アレンさん……? あのっ、アバカムってなんですか?」
「あはは、確かにそーかもです。でもアレンさんってば、あたしがアイテム屋って知ってたんだから、あたしのユニークスキルがクラフト系だってことくらいはわかってたんじゃないですか? もしかして、カマかけてみた感じです?」
「どうだろうな? アイテム屋ってのは聞いたことあるけど、ユニークスキルまでは知らなかったなぁ」
「あ、あの……? アレンさん、アバカムって……?」
アイテム合成のユニークスキルを持つ、神出鬼没の商人。
初めてミカンに会った日に聞いた噂はどうやら間違いなさそうだった。
(それに……子どもだが、油断できる相手でもなさそうだ。たった一人でこのキメラで商売なんてやってるんだから当然か)
必然的な警戒が、寝ぼけたアレンの頭をすっきりとさせた。今この瞬間にカズラがボーナスウェポンを取り出そうとも、それにコンマ二秒以上の遅れなく抜き放たれたキングスレイヤーの銃弾が彼女の頭を撃ち抜くことだろう。
幸いにして、カズラは敵意を見せるようなことはせず、むしろ無防備とも言える所作でミカンの方を振り向いた。
「そっちは、ミカンさんですねー。初めまして!」
「あ、え、えと、はっ、初めまして……!」
「単独で行動してたプレイヤーキラーキラーが、最近いっしょに過ごすようになった相手……。あたし、ミカンさんのこと、率直に言ってとっても興味あります!」
「え、あ、その——」
「どういう経緯でいっしょに行動するようになったんですか!? もしかして戦闘になるとすっごく強くて……バトルジャンキーみたいな性格に豹変するとか!」
「ちが、そ、そんなことは……」
「それとも体で落としたとか? やっぱりこの大きな胸に秘密が!?」
「馬鹿言ってんじゃねえぞ」
どうやらアレンが男であることも知っているようだ。FPSゲーマーにでも聞いたのか。プロゲーマー時代のことまで調べたようだから、当然かもしれない。
「なんか、対照的だな二人は……」
「そーですかね?」
「わ、わたし……根暗ですから。アレンさんのいう通り、真逆かもしれません。カズラさんみたいな明るくて——」
「わわっ、褒められる流れ? いやぁ照れますねー」
「——なんにも考えずに喋れるお気楽な人、羨ましいです……」
「あれ? なんか微妙な褒め方してませんそれ? あれれ?」
「ミカンは結構こんな感じでナチュラルに失礼だぞ」
「むむ、知らない情報」
カズラは不快そうな反応は少しもせず、むしろ興味深いとでも言いたげにメモを取り始めた。なにかあるたびにインベントリからメモ帳を取り出し、書き込むのが彼女の癖だ。ただし見返すことはほとんどない。
ひとまず、彼女に敵意はないとアレンは判断した。その気があるのであれば、アレンを殺す機会などいくらでもあった。
しかし寝込みを襲いに来たのでないのなら、一体どういう目的でやってきたのか。
PKKの噂を聞きつけ、なにかと物入りだと踏んでセールスにでも来たのだろうか。そこを質さねばならなかった。
「——カズラ。単刀直入に訊くが、俺を訪ねてきた目的はなんだ?」
「あ、そうでした。伝言に来たんです、あたし」
「伝言? アイテム屋が?」
「情報屋でもある、って言いましたよ。<和平の会>からメッセンジャーとして、PKKのアレンさんに依頼の通達です」
「<和平の会>から……?」
再度疑問を口にしたのは、アレンではなくミカンだ。しかし同様のものをアレンも抱いている。
<和平の会>が、アレンに依頼をよこす。
間にカズラを噛ませたこと自体は理解できる。独自の情報網を持つであろう彼女でなければ、そう易々とアレンの居場所はつかめまい。
だがアレンとて、初日のあの広場以降、<和平の会>ギルドマスターのレーヴンとは顔を合わせたこともない。互いに頼みごとをするような間柄ではないはずだった。
アレンたちの疑問を見て取ったのか、カズラは人好きする軽い語り口で補足する。
「はいー。ギルドマスターのレーヴンさんから、PKKのアレンさんに。PKギルドの<アーミン>を壊滅させてほしい——という依頼です」
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