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■血に汚れた人形編
【18】
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人形館の1階にあるひとつの展示室の中で、ティアはそばにいるロゼンに聞こえるようにつぶやいた。
「……なんとか撒けたわね」
追ってきたはずの人形たちは展示室のなかには入ってこず、そのまま七色の花びらに釣られて廊下を走り去っていった。
とくにマリンを振り切るのが大変だった。さすが今回の呪いの元凶。
他の人形たちと出くわす階段運も悪かったため下に行くしかなかったが、3階から2階1階と逃げ降り、かなりの速度で逃げたのにそれでもなお付いて来るマリンには驚いた。
他の人形までマリンと視界を共有でもしているのか、距離をとっても見失わずこっちを追って来る。
さらにマリンが呼んでいるように、今までは反応もしない距離からも人形たちがこっちに向かって来た。
結果として、躱すのが難しいぐらいの数で挟み撃ちとなったため、ティアはとっさにロゼンに提案をした。
ロゼンは瞬時に剣を抜いて、業名を唱えた。
「──『魔法剣“百花繚乱”』」
ここでロゼンが発動したのは、魔法剣“百花繚乱”。
視界封じの業。これは人形館に入ったときにすでに試しているため、人形に効果がなかったことはわかっている。
しかし、マリンの影響なのだろうが、ここの人形は人間に対して異常なまでに攻撃性が高い。
あの時は、七色の花吹雪が舞うこの業は人形の目に映っておらず、もしかして目に映った人間を優先して襲ってきただけではないだろうか。
だからティアは、マリンに追われている最中考えた。
もし花吹雪を人間みたいに見せることができたら、人形にはどう見えるのだろう、と。
普通の人間には不気味に見えるだろう。花吹雪だから目を奪われるほど美しいのに、それが人間みたいな形になって舞いだしたら視界封じの効果どころではない。
だが、ここの人形相手なら──試した結果、人形たちは花びらを人間、つまり排除すべき敵だと見えたようだった。
人型の舞い散る幻影の花吹雪に人形たちは攻撃を始め、人型を風船のように飛ばせばあとを追いかけていった。
「で、大丈夫?」
人形たちがいなくなったのを確認してから、ティアは道具袋から薬草を取り出しながら尋ねた。
横にいたロゼンは、銀色の剣を握ったまま疲れたような顔をしている。
「ああ、花吹雪を人間っぽくするだけで、こんなに食らいつき方が変わるんだな。ようはやり方次第か……」
ロゼンは受け取った薬草を口に放り込んで咀嚼する。
その様子を見て、やっぱり疲労しているな、とティアは思った。
魔法剣“百花繚乱”。花吹雪を舞わせ、視界を封じる業。
だが今回は、その業に人間のように見えるよう花びらを集合させる効果も追加した。これは危険な行為だ。
業。その名の意味を忘れなかれ。
その業を思い出せ。技という技術だけでは語れない、その人間の集大成を業として完成させよ。
一度生みだした業の定義を変えるのは、作り上げた光力の集大成として愚の骨頂と知れ。
だからこそ、ティアはロゼンの状態を心配した。
人形たちを騙すためとはいえ、百花繚乱を人型にしたのは、ロゼンが最初に百花繚乱という業を作ったときに決めた効果の定義を超えてしまっているはずだから。
「いや、大丈夫だぞ。心配するほど、業の効果を捻じ曲げた反動はなかった」
ティアの視線から気づいたのか、ロゼンは握っている銀の剣を掲げた。
「この剣……やっぱ凄い。魔導具なんだろうけど、おそらく俺を守るような、なにか精霊の加護が宿ってるっぽい。さすが実体化した精霊からの贈り物なだけはある」
「それ、そんなに凄い剣なの? なんか森でなんだかんだ手に入れたみたいにはぐらかしてたけど、精霊から貰ったってこと?」
「ああ、じつは森のなかで素振りしている時に、湖からレオタードの女神が現れてさ」
「レオタードの女神? そこのところ、もっと詳しく教えてもらっていいかしら」
「……え……いや、そんなことよりマリンだろ! なんとかして対話できる方法がないか探さないと! マリンが飾ってあった……そう、5階の展示室まで急ぐぞ!」
ロゼンはそう言って立ち上がる。ティアはこれはあとで追及しようと今は黙った。
2人は廊下に人形の姿がないことを確認して、階段に向かって走り出した。
「……なんとか撒けたわね」
追ってきたはずの人形たちは展示室のなかには入ってこず、そのまま七色の花びらに釣られて廊下を走り去っていった。
とくにマリンを振り切るのが大変だった。さすが今回の呪いの元凶。
他の人形たちと出くわす階段運も悪かったため下に行くしかなかったが、3階から2階1階と逃げ降り、かなりの速度で逃げたのにそれでもなお付いて来るマリンには驚いた。
他の人形までマリンと視界を共有でもしているのか、距離をとっても見失わずこっちを追って来る。
さらにマリンが呼んでいるように、今までは反応もしない距離からも人形たちがこっちに向かって来た。
結果として、躱すのが難しいぐらいの数で挟み撃ちとなったため、ティアはとっさにロゼンに提案をした。
ロゼンは瞬時に剣を抜いて、業名を唱えた。
「──『魔法剣“百花繚乱”』」
ここでロゼンが発動したのは、魔法剣“百花繚乱”。
視界封じの業。これは人形館に入ったときにすでに試しているため、人形に効果がなかったことはわかっている。
しかし、マリンの影響なのだろうが、ここの人形は人間に対して異常なまでに攻撃性が高い。
あの時は、七色の花吹雪が舞うこの業は人形の目に映っておらず、もしかして目に映った人間を優先して襲ってきただけではないだろうか。
だからティアは、マリンに追われている最中考えた。
もし花吹雪を人間みたいに見せることができたら、人形にはどう見えるのだろう、と。
普通の人間には不気味に見えるだろう。花吹雪だから目を奪われるほど美しいのに、それが人間みたいな形になって舞いだしたら視界封じの効果どころではない。
だが、ここの人形相手なら──試した結果、人形たちは花びらを人間、つまり排除すべき敵だと見えたようだった。
人型の舞い散る幻影の花吹雪に人形たちは攻撃を始め、人型を風船のように飛ばせばあとを追いかけていった。
「で、大丈夫?」
人形たちがいなくなったのを確認してから、ティアは道具袋から薬草を取り出しながら尋ねた。
横にいたロゼンは、銀色の剣を握ったまま疲れたような顔をしている。
「ああ、花吹雪を人間っぽくするだけで、こんなに食らいつき方が変わるんだな。ようはやり方次第か……」
ロゼンは受け取った薬草を口に放り込んで咀嚼する。
その様子を見て、やっぱり疲労しているな、とティアは思った。
魔法剣“百花繚乱”。花吹雪を舞わせ、視界を封じる業。
だが今回は、その業に人間のように見えるよう花びらを集合させる効果も追加した。これは危険な行為だ。
業。その名の意味を忘れなかれ。
その業を思い出せ。技という技術だけでは語れない、その人間の集大成を業として完成させよ。
一度生みだした業の定義を変えるのは、作り上げた光力の集大成として愚の骨頂と知れ。
だからこそ、ティアはロゼンの状態を心配した。
人形たちを騙すためとはいえ、百花繚乱を人型にしたのは、ロゼンが最初に百花繚乱という業を作ったときに決めた効果の定義を超えてしまっているはずだから。
「いや、大丈夫だぞ。心配するほど、業の効果を捻じ曲げた反動はなかった」
ティアの視線から気づいたのか、ロゼンは握っている銀の剣を掲げた。
「この剣……やっぱ凄い。魔導具なんだろうけど、おそらく俺を守るような、なにか精霊の加護が宿ってるっぽい。さすが実体化した精霊からの贈り物なだけはある」
「それ、そんなに凄い剣なの? なんか森でなんだかんだ手に入れたみたいにはぐらかしてたけど、精霊から貰ったってこと?」
「ああ、じつは森のなかで素振りしている時に、湖からレオタードの女神が現れてさ」
「レオタードの女神? そこのところ、もっと詳しく教えてもらっていいかしら」
「……え……いや、そんなことよりマリンだろ! なんとかして対話できる方法がないか探さないと! マリンが飾ってあった……そう、5階の展示室まで急ぐぞ!」
ロゼンはそう言って立ち上がる。ティアはこれはあとで追及しようと今は黙った。
2人は廊下に人形の姿がないことを確認して、階段に向かって走り出した。
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