☆なんちゃってクエスト★

Natsu

文字の大きさ
174 / 197
■血に汚れた人形編

【18】

しおりを挟む
 人形館の1階にあるひとつの展示室の中で、ティアはそばにいるロゼンに聞こえるようにつぶやいた。

「……なんとかけたわね」

 追ってきたはずの人形たちは展示室のなかには入ってこず、そのまま七色の花びらに釣られて廊下を走り去っていった。

 とくにマリンを振り切るのが大変だった。さすが今回の呪いの元凶。
 他の人形たちと出くわす階段うんも悪かったため下に行くしかなかったが、3階から2階1階と逃げ降り、かなりの速度で逃げたのにそれでもなお付いて来るマリンには驚いた。
 他の人形までマリンと視界を共有でもしているのか、距離をとっても見失わずこっちを追って来る。

 さらにマリンが呼んでいるように、今までは反応もしない距離からも人形たちがこっちに向かって来た。
 結果として、かわすのが難しいぐらいの数で挟み撃ちとなったため、ティアはとっさにロゼンに提案をした。

 ロゼンは瞬時に剣を抜いて、業名を唱えた。

「──『魔法剣“百花繚乱ひゃっかりょうらん”』」

 ここでロゼンが発動したのは、魔法剣“百花繚乱”。
 視界封じの業。これは人形館に入ったときにすでに試しているため、人形に効果がなかったことはわかっている。

 しかし、マリンの影響なのだろうが、ここの人形は人間に対して異常なまでに攻撃性が高い。
 あの時は、七色の花吹雪が舞うこの業は人形の目に映っておらず、もしかして目に映った人間を優先して襲ってきただけではないだろうか。

 だからティアは、マリンに追われている最中考えた。
 もし花吹雪を人間みたいに見せることができたら、人形にはどう見えるのだろう、と。

 普通の人間には不気味に見えるだろう。花吹雪だから目を奪われるほど美しいのに、それが人間みたいな形になって舞いだしたら視界封じの効果どころではない。
 だが、ここの人形相手なら──試した結果、人形たちは花びらを人間、つまり排除すべき敵だと見えたようだった。
 人型の舞い散る幻影の花吹雪に人形たちは攻撃を始め、人型を風船のように飛ばせばあとを追いかけていった。

「で、大丈夫?」

 人形たちがいなくなったのを確認してから、ティアは道具袋から薬草を取り出しながら尋ねた。
 横にいたロゼンは、銀色の剣を握ったまま疲れたような顔をしている。

「ああ、花吹雪を人間っぽくするだけで、こんなに食らいつき方が変わるんだな。ようはやり方次第か……」

 ロゼンは受け取った薬草を口に放り込んで咀嚼そしゃくする。
 その様子を見て、やっぱり疲労しているな、とティアは思った。

 魔法剣“百花繚乱”。花吹雪を舞わせ、視界を封じる業。
 だが今回は、その業に人間のように見えるよう花びらを集合させる効果も追加した。これは危険な行為だ。

 わざ。その名の意味を忘れなかれ。
 そのごうを思い出せ。わざという技術だけでは語れない、その人間の集大成をわざとして完成させよ。
 一度生みだしたわざの定義を変えるのは、作り上げた光力の集大成として骨頂こっちょうと知れ。

 だからこそ、ティアはロゼンの状態を心配した。
 人形たちを騙すためとはいえ、百花繚乱を人型にしたのは、ロゼンが最初に百花繚乱という業を作ったときに決めた効果の定義を超えてしまっているはずだから。

「いや、大丈夫だぞ。心配するほど、業の効果を捻じ曲げた反動はなかった」

 ティアの視線から気づいたのか、ロゼンは握っている銀の剣を掲げた。

「この剣……やっぱ凄い。魔導具まどうぐなんだろうけど、おそらく俺を守るような、なにか精霊の加護かご宿やどってるっぽい。さすが実体化した精霊からのおくり物なだけはある」

「それ、そんなに凄い剣なの? なんか森でなんだかんだ手に入れたみたいにはぐらかしてたけど、精霊から貰ったってこと?」

「ああ、じつは森のなかで素振りしている時に、みずうみからレオタードの女神が現れてさ」

「レオタードの女神? そこのところ、もっと詳しく教えてもらっていいかしら」

「……え……いや、そんなことよりマリンだろ! なんとかして対話できる方法がないか探さないと! マリンが飾ってあった……そう、5階の展示室まで急ぐぞ!」

 ロゼンはそう言って立ち上がる。ティアはこれはあとで追及しようと今は黙った。
 2人は廊下に人形の姿がないことを確認して、階段に向かって走り出した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

我らダンジョン攻略部〜もしも現実世界にダンジョンができて、先行者利益を得られたら〜

一日千秋
ファンタジー
昨今、話題の現実にダンジョンができる系の作品です。 高校生達のダンジョン攻略と日常の学校生活、ビジネス活動を書いていきます。 舞台は2025年、 高校2年生の主人公の千夏将人(チナツマサト)は 異世界漫画研究部の部長をしています。 同じ部活の友人たちとある日突然できたダンジョンに できてすぐ侵入します。 オタクは知っている、ダンジョンには先行者利益があることを。 そして、得たスキルでこつこつダンジョンを攻略していき、日本で影響力をつけていった先に待ち受ける困難とは!? ダンジョンの設定はステータス、レベル、スキルあり、ダンジョン内のモンスターの死体はしっかり消えます。 一話につき1000〜2500文字くらいの読みやすい量になっているので初心者には読みやすい仕様になっております。 キャラクターはところどころ新キャラが出てきますがメインストーリーは主に3人なので複雑になりすぎないように心がけています。 「いいね」頂けるととても嬉しいです! 「お気に入り」登録も最高に嬉しいです! よろしくお願いします! ※契約書、経済システムの書式、掲示板テンプレはAI生成を活用して制作しております。修正、加筆は行っております。ご了承下さい。

木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!

神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。 そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。 これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。  

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...