6 / 11
閑話2.勤勉な聖女
しおりを挟む
「次代の聖女さまは殿下よりもおひとつお若くいらっしゃるのに既に聖女となるべく励まれているそうですよ」
教師の一人がいつになっても王子教育に身の入らない私に小言のようにそう告げたのが私が聖女セラフィに興味を持ったきっかけだった。
農業と観光を主体としている我が国は皆比較的温厚な気風で、国王陛下こと父上もまた類に漏れずお優しい方だ。私は第3王子という立場上、王位継承権からは遠く、また兄たちも優秀であることから自分は問題を起こさずに大人しく過ごしてさえいればそれでいいだろうと思っていた。
その為、王族として恥ずかしくのない程度の礼儀と教養さえ身についていればいいだろうと、甘く考えていた。
そんな幼く浅い考えがわかりやく透けて見えたのだろう、私をやる気にさせようと思っての言葉だったのだろうが、比較されるような物言いは気分の良いものではなかった。
ーーどうせ周りのものがどうにかしているのだろう。聖女なんて大役が6歳の少女に務まるわけがない。
そんな風に思っていた。
それから間も無く開かれた聖女継承の儀での彼女といえば、聖女の証の徽章を受け継ぎ民の前で手を振るだけだった。
ーーほら、それくらい私にだってできる。
我ながら情けのないことに最初はそんなふうに思っていたのだ。
けれど、その意識が変わるのにそう時間は掛からなかった。
そもそも聖女を引き継ぐのは先代の力が衰えてしまうことが大きな要因だ。そうでなければ現状安定しているものを変える必要などない。本来であれば力の衰えが見られればすぐに次代の聖女を見つけ、1年程度で代替わりしてしまう。しかし、今回は次代の聖女が幼すぎたために引き継ぐ為に3年の月日を要した。その間にも聖女の力は確実に衰えており、継承の儀を行う頃には地方でその影響が見え始めていた。
ある地域では作物の育ちが目に見えるほどに悪くなり、ある地域では流行性の疫病が蔓延した。6歳という幼さで聖女を受け継いだ少女は、その問題をひとつひとつ着実に解決していったのである。
最初の内は幼い聖女に不安の声が上がる事が多かったが、1年も経てばそんな声は聞こえなくなった。聖女は祈りを欠かさず、問題が起きれば地方まで訪れそれを解消する。民から乞われればその一人ひとりに惜しみなく力を尽くした。
さすがの私でも、あの小さな肩に大きな責任と期待を背負う少女に敬愛の情を抱かずにはいられなかった。
だからこそ、婚約の話が出たときはそれが自分で良いというのであればと喜んで承諾した。
彼女の助けになれたらとそう思ったのだ。
そうして間も無く、自分の憧れた聖女が思っていたよりも自分とそう変わらない普通の少女であることを知ることになるのである。
教師の一人がいつになっても王子教育に身の入らない私に小言のようにそう告げたのが私が聖女セラフィに興味を持ったきっかけだった。
農業と観光を主体としている我が国は皆比較的温厚な気風で、国王陛下こと父上もまた類に漏れずお優しい方だ。私は第3王子という立場上、王位継承権からは遠く、また兄たちも優秀であることから自分は問題を起こさずに大人しく過ごしてさえいればそれでいいだろうと思っていた。
その為、王族として恥ずかしくのない程度の礼儀と教養さえ身についていればいいだろうと、甘く考えていた。
そんな幼く浅い考えがわかりやく透けて見えたのだろう、私をやる気にさせようと思っての言葉だったのだろうが、比較されるような物言いは気分の良いものではなかった。
ーーどうせ周りのものがどうにかしているのだろう。聖女なんて大役が6歳の少女に務まるわけがない。
そんな風に思っていた。
それから間も無く開かれた聖女継承の儀での彼女といえば、聖女の証の徽章を受け継ぎ民の前で手を振るだけだった。
ーーほら、それくらい私にだってできる。
我ながら情けのないことに最初はそんなふうに思っていたのだ。
けれど、その意識が変わるのにそう時間は掛からなかった。
そもそも聖女を引き継ぐのは先代の力が衰えてしまうことが大きな要因だ。そうでなければ現状安定しているものを変える必要などない。本来であれば力の衰えが見られればすぐに次代の聖女を見つけ、1年程度で代替わりしてしまう。しかし、今回は次代の聖女が幼すぎたために引き継ぐ為に3年の月日を要した。その間にも聖女の力は確実に衰えており、継承の儀を行う頃には地方でその影響が見え始めていた。
ある地域では作物の育ちが目に見えるほどに悪くなり、ある地域では流行性の疫病が蔓延した。6歳という幼さで聖女を受け継いだ少女は、その問題をひとつひとつ着実に解決していったのである。
最初の内は幼い聖女に不安の声が上がる事が多かったが、1年も経てばそんな声は聞こえなくなった。聖女は祈りを欠かさず、問題が起きれば地方まで訪れそれを解消する。民から乞われればその一人ひとりに惜しみなく力を尽くした。
さすがの私でも、あの小さな肩に大きな責任と期待を背負う少女に敬愛の情を抱かずにはいられなかった。
だからこそ、婚約の話が出たときはそれが自分で良いというのであればと喜んで承諾した。
彼女の助けになれたらとそう思ったのだ。
そうして間も無く、自分の憧れた聖女が思っていたよりも自分とそう変わらない普通の少女であることを知ることになるのである。
0
あなたにおすすめの小説
「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに対して、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載しております。
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
正当な権利ですので。
しゃーりん
恋愛
歳の差43歳。
18歳の伯爵令嬢セレーネは老公爵オズワルドと結婚した。
2年半後、オズワルドは亡くなり、セレーネとセレーネが産んだ子供が爵位も財産も全て手に入れた。
遠い親戚は反発するが、セレーネは妻であっただけではなく公爵家の籍にも入っていたため正当な権利があった。
再婚したセレーネは穏やかな幸せを手に入れていたが、10年後に子供の出生とオズワルドとの本当の関係が噂になるというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる