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5-1.黒髪の騎士見習い
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毎年恒例の行事というものはいくつかある。今日行われる騎士見習いの入隊式もそのひとつだ。各地域から選抜されたり、志願した者の中から入隊試験が行われ、見事合格した者のみが見習いとしての入隊を許可される。騎士となるにはそれから更に数年の訓練が必要であり、訓練に耐えられず挫折するものも少なからずいる。
騎士は王家に属して王城を守るもの、各領地に派遣され治安を維持するものを主とし、一部教会に属して聖女の護衛を務める護衛騎士が存在する。
セラフィはそんな将来自分に仕えてくれるかもしれない彼らを激励する役割を担っている。各部隊長からの激励の流れで一言二言喋るだけだが、そう上手いことを言える方ではないので毎年これで大丈夫なのだろうかと不安に思っている。
それぞれの部隊長が堂々たる挨拶を終えてセラフィの番が回ってくる。会場の端まで響き渡るように勇ましく声を張る彼らの後に話すとなるとセラフィの声など本当に蚊の鳴くような声に聞こえるのではないかと思う。
壇上に上がり一呼吸、人前に立つことには慣れているので特段緊張はしない。習慣で端から端まで、語りかけるべき相手を見渡す。彼らは守るべき民であり、共に民を守る仲間だ。
大して声を張れはしないが、精一杯の声を届ける。
「皆さまがここに集われたことに心より感謝いたします。共に民の為に尽くして参りましょう。皆さまのこれからに、我らが女神の加護を」
手を組み、言葉の通りに女神さまへと祈りを捧げる。
――どうか、民を思う彼らが健やかで在れるようお守りください。
女神からの返答はない。基本的に教会、それも大聖堂でしかセラフィがその声を伺うことはできない。急を要する場合はその限りではなく、セラフィが初めて声を聞いたのは領内の教会だった。女神側に祈りは届いているらしいので、セラフィは一方通行の連絡手段のように思っている。
祈りを終えてその場を下がる途中、視界の端で見覚えのある深い黒が映ったような気がした。
この国では比較的色素の薄い人の割合が多い。髪色も濃くても焦げ茶くらいのもので、はっきりとした黒はかなり珍しい。
そういえばもしかすると彼もそろそろ入隊試験を受けられるような年齢になっているかもしれない、と過去一度だけ会ったことのある少年のことを思い出していた。
騎士は王家に属して王城を守るもの、各領地に派遣され治安を維持するものを主とし、一部教会に属して聖女の護衛を務める護衛騎士が存在する。
セラフィはそんな将来自分に仕えてくれるかもしれない彼らを激励する役割を担っている。各部隊長からの激励の流れで一言二言喋るだけだが、そう上手いことを言える方ではないので毎年これで大丈夫なのだろうかと不安に思っている。
それぞれの部隊長が堂々たる挨拶を終えてセラフィの番が回ってくる。会場の端まで響き渡るように勇ましく声を張る彼らの後に話すとなるとセラフィの声など本当に蚊の鳴くような声に聞こえるのではないかと思う。
壇上に上がり一呼吸、人前に立つことには慣れているので特段緊張はしない。習慣で端から端まで、語りかけるべき相手を見渡す。彼らは守るべき民であり、共に民を守る仲間だ。
大して声を張れはしないが、精一杯の声を届ける。
「皆さまがここに集われたことに心より感謝いたします。共に民の為に尽くして参りましょう。皆さまのこれからに、我らが女神の加護を」
手を組み、言葉の通りに女神さまへと祈りを捧げる。
――どうか、民を思う彼らが健やかで在れるようお守りください。
女神からの返答はない。基本的に教会、それも大聖堂でしかセラフィがその声を伺うことはできない。急を要する場合はその限りではなく、セラフィが初めて声を聞いたのは領内の教会だった。女神側に祈りは届いているらしいので、セラフィは一方通行の連絡手段のように思っている。
祈りを終えてその場を下がる途中、視界の端で見覚えのある深い黒が映ったような気がした。
この国では比較的色素の薄い人の割合が多い。髪色も濃くても焦げ茶くらいのもので、はっきりとした黒はかなり珍しい。
そういえばもしかすると彼もそろそろ入隊試験を受けられるような年齢になっているかもしれない、と過去一度だけ会ったことのある少年のことを思い出していた。
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