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現代神話の始まり
レイジングの目覚め
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杏奈「.......はぁ....(なんか今日...色々と疲れたな......)」
あの事件が終わった後、また午後に入ったばかりにも関わらず、すぐに校内放送で全校の生徒は強制的に下校させられた。助かったとはいえ、未だにかなりの恐怖を感じ、思い出すだけで泣きそうになってくる。
杏奈「あの人が来てくれなかったら私は今頃.....」
美琴と名乗る謎の少女は一体何者であったのかより、マルコスから性的暴行を受けそうになった記憶の方が強い為、必死に忘れようとベッドに潜り、強く目を閉じた。とにかく早くいつもの日常に戻りたかった。
ー翌朝ー
杏奈「.....。」
気がつくと朝になっていた。とりあえずベッドから降り、しばらく放心していると、下の階から聞き慣れた女性の声がした。
母親「杏奈.....?起きてるの...?」
杏奈「....うん」
母親「大丈夫....?学校から連絡があった時はびっくりしたわよ...でも無事で本当に良かったわ...朝ごはん用意してあるけど、食べたかったら食べていいわよ?」
杏奈「うん...」
母親「あまり無理しないでいいのよ?じゃあ、また何かあったら連絡してね...お母さん、お父さんのお弁当届けないといけないから...。」
すると、足音が遠ざかり、母親の声は聞こえなくなった。重い足をようやく持ち上げ、朝食を食べるため1階へ降りると、一瞬、背の高い人影が見えた。
杏奈「.....っ?」
すぐにそこを確認するが、誰もいなかった。きっと色々精神的に疲れているせいだと大して気にもとめず、母親の作ってくれた朝食のハムエッグとトーストを食べ始めた。
杏奈「...ん、本当に美味しいな」
朝食を食べると少しだけトラウマが薄れていくのを感じた。その証拠に彼女の顔から少し笑みが零れている。
杏奈「ふう...ご馳走さまでした。」
空の食器を片付け、部屋に戻ろうとすると、微かに右腕に違和感を感じた。ふと、袖を捲ってその腕を見ると、特に何もなかった。首を傾げて困惑するが、何もないとわかると安堵して再び自室へ入り、再びベッドにて眠りにつく。
そして...目を開けると、自分が立ち尽くしているのがわかった。そして視線の先にはいつもの自室の天井ではなく、燃え盛る街、逃げ惑う人々、赤黒い空、降り注ぐ隕石というおぞましい光景だった。
杏奈「.......え!?」
意識がはっきりしてくると、その光景に杏奈は驚愕するが、すぐに夢の中だと気付き、必死に覚めろと強く心の中で祈るが覚める様子が全くない。すると、向こう側から細身で高身長な人物が歩いてきた。
杏奈「だ、誰!?」
謎の人物「......最後は貴様だ。」
何故か半分シルエットに紛れて姿がよく確認できないが声で男性だとわかった。その手には...細長い剣を握っていた。それを見て杏奈はまた青ざめながら後退する。
杏奈「....お願い....殺さないで...」
謎の人物「.....」
その男は何も答えずに、持っている剣をかかげ、それを振り下ろす...
杏奈「きゃあああ!」
杏奈はベッドから飛び起きた。涙と汗が大量に溢れ、夢から覚めたことに深く安堵している。そこで右腕に再びあの時と同じ違和感が生じた。捲って見てみると、薄く白い奇妙な模様が浮かび出ていた。
杏奈「ちょ...何これ!?」
コンコン
母親「杏奈~?どうしたの?」
杏奈「あ...えっとなんでも...なっ」
ガチャッ
母親「.....杏奈....それは...」
杏奈「...わ、私にも分からないの...」
杏奈の叫び声が、丁度帰宅していた母親の耳に届き、心配して扉をノックする暇もなく開き、押し寄せてきた。杏奈は心配させまいと必死に言い訳を考えたが時すでに遅し。母親は娘の右腕の浮かび上がった紋章に気がつき、飛びつくように右腕を掴んでそれを近目で見る。
母親「.....まさか.....貴女が....」
杏奈「い、いやっ!刺青なんかした覚えないよ!私は!?」
母親「そうじゃないわ...とりあえず今は落ち着いて...明日、お父さんにも見てもらうから...。」
杏奈「....なんでお父さん?」
母親「詳しいことは当日に話すわ」
杏奈「う、うん。」
ー翌朝ー
杏奈「はぁ...やっぱりあまり寝れなかった...あの事件なり昨晩の腕の変な模様なり...頭痛くなるよ...」
とりあえずベッドから立ち上がり、ドレッサーの椅子に座り、鏡で窶れた自分の顔と睨めっこしながら、櫛でボサボサに乱れた髪の毛を丁寧に揃える。ショートボブのヘアースタイルであった為、整えるのに普通の女性程手間がかからなかった。
杏奈「これでよし...」
ーダイニングー
母親「~♪」
父親「ん、おはよう。」
まだトラウマは拭い切っていないが、精神状態はある程度回復したので、階段から1階に降り、台所に向かうと、白いワイシャツにネクタイ、黒いズボンの服装で、新聞を読みながらコーヒーを片手に持っている父親と、鼻歌を歌いながら朝食の支度をしている母親の姿があった。席に座ると、父親が杏奈の存在に気づき、笑顔で優しく挨拶をしてきた。
杏奈「うん、おはよう、お父さん、お母さん。」
母親「早く学校直るといいわねー...」
父親「急に申し訳ないが杏奈.....昨晩、母さんから聞いたぞ...右腕の異変の事についてだいぶ混乱しているんだろう?」
杏奈「あ...うん...」
父親「それについて話があるんだ...2時間後にまた声を掛ける。連れて行きたい場所がある...。」
杏奈「...わかった。」
今まで見たことのない父親の険しい表情に杏奈な少し怖気付くが、とりあえず今言われた言葉を承諾した。
ー2時間後ー
そして2時間という短い時間が過ぎ、両親に呼び出され、軽く準備をしてから3人で外に出た。父親が運転する車に乗り、見知らぬ道を進んでいく。その間の両親は一切言葉を発する事はなく、杏奈もそれが怖くて終始黙り込んでいた。
ー???ー
そして暫くしてようやく目的地に到着したのか、父親は車を駐車し、3人共下車した。杏奈の眼に映ったのは、見るからに高級感が凄い、屋敷であった。外装は、血がベッタリとつけられたような深紅の壁、縁や屋根は真っ黒の大豪邸だった。門には厳つい顔の門番が2人いる。
父親「失礼します。」
門番A「ご要件を。」
父親「適正者候補を連れて来ました。私の娘ですが...」
門番B「...ふむ、そうか、あなた方が白石健殿と、配偶者の白石美里殿、そして一人娘の白石杏奈か。」
杏奈「し、知り合い...?」
若い男性の声「お通しして差し上げなさい。」
門番A「!はっ!」
健「ご無沙汰しております、大門殿。」
健がお辞儀をした相手は、黒い前髪で両目が隠れて見えないが爽やかそうな感じの執事服を来た男性だった。彼が現れた途端、門番達はすぐに門を開けてくれた。道を過ぎ、入口の大扉が開くと、玄関にしては広すぎる光景が広がった。周りには名画や貴重品、床には赤いカーペットが満遍なく敷かれており、壁は純白だった。外装の不気味な色合いとは真反対だ。
杏奈「......なにこれ....豪邸?」
大門「まあ、そんなところでしょうね、ここは氷室邸、氷室財閥の本拠地であり、美琴お嬢様の家でございます」
杏奈「美琴お嬢様?」
大門「杏奈様、貴女とお嬢様は既に面識がございましょう?」
杏奈「え!?」
美里「あら、そうなの?」
健「なら話は早い、大門さん、早速我が娘の検査を。」
杏奈「え?!け、検査って...何を!?」
美里「大丈夫、痛いことは一切されないわよ。」
大門「では、こちらへ」
大門執事に案内され、着いたのは、地下室の扉だった。大門執事が扉の隣に設置されている装置にパスワードを打ち込むと、効果音と共に扉が左右に分割してスライドして開く。中は真っ暗で何も見えなかったが、明かりが付くと、巨大なコンピューターらしきものがたくさんあり、なにやら見たことない装置とそのすぐ傍の机とチェアが左端にあり、机の上にはサポーターらしきものが置いてある。
杏奈「これは...」
大門「さあ、お掛けください。」
大門に諭され、とりあえず椅子に座る杏奈。すると彼は置かれていたサポーターを杏奈に差し出す。
杏奈「これって?」
大門「大丈夫、人体には害は一切ございません。お付けください。」
そう言って大門は杏奈の右腕にサポーターを取り付け、すぐ傍にあるパソコンのキーボードをタイピングし始めた。そして暫く沈黙が続いた後、大門が指を止め、3人の方を振り向き、口を開いた。
大門「結果が出ました....彼女は....杏奈様は...."適正"です」
杏奈「....?」
健「....!....そうでしたか...」
美里「まあ...これから大変な事になりそうだわね...」
杏奈「え...?何?何なの!?」
大門「杏奈様、今から言うことを落ち着いてお聞きください。」
杏奈「へ?」
大門は真剣な顔で右腕の紋章について説明を始めた。
大門「.....貴方様の右腕に宿るその印は..."レイジング"の紋章でございます。」
杏奈「レイ...ジング....?」
大門「レイジングとは、ごく稀に利き腕に宿る特殊能力...太古の昔より、レイジングを携えて生まれた戦士達は、数々の戦いを繰り広げて行きました...その力は本来、神のみが所有するものでしたが...今では低確率で人間にも宿る事案がありまして...」
健「隠していてすまなかった.....レイジング能力は協力で使い方次第で神をも凌駕するやもしれん力だ...」
美里「それを︎︎巡って戦争を起こす事もあったわ...でも、心優しい貴女がその事実を知ってしまえば傷付いてしまうかもって...18年間ずっと隠し通してきたのよ。」
杏奈「そんな事が...」
健「本当なら.....お前には普通の女の子として何も知らずに平和に過ごして欲しかった...しかし、こんな形で覚醒してしまうとは予想外だった...。」
美里「ねぇ...杏奈?実の娘にこんな選択肢を迫るのは残酷でとても嫌なんだけど...よく考えてから選んで頂戴?1つは、レイジング能力を封印し、今回の事を全て忘れていつもの日常を送る、もう1つ、レイジングの力で、異世界から来た神々と終わりの見えない戦いに挑むか...どちらにする?」
杏奈「.........。」
突然迫ってきた美里からの重要な選択肢、杏奈は迷っていた。もし、1つ目を選べば、いつもと変わらない、何気ない日常生活に戻る事が出来る。しかし、それでは事実を知っている両親は当然、神とやらと戦い続けるだろう...そして自分が何も知らない間にいつの間にか命を落としてもおかしくない...かといって2つ目を選べばいつ終わるのか分からない戦いに一生巻き込まれるのかもしれない...その時
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
全員「!?」
突然、激しい地響きが起こった。
杏奈「え!?地震!?」
大門「いえ...この気配は恐らく..."神"が来ます!」
杏奈「さ、早速!?」
健「くっ...美里!杏奈を連れて屋上へ逃げろ!!外に出たら危険だ!!」
美里「わかったわ!杏奈!行くわよ!!」
杏奈「あ、うん!」
健は襲来してきた神を迎え撃つべく、玄関へ向かって走り出した。
美里と大門は杏奈を引き連れて屋敷の長い長い階段を上り、ようやく屋上へ着いた。
美里「....はぁ、はぁ...」
大門「鍵は閉めました。とりあえず一安心です...」
杏奈「な、何階だろ....ここ...今はどうでもいいけど...」
しかし、3人が安堵していたのも束の間、向こう側のフェンスの方から誰かが這い蹲る音がしてきた。やがて、その者の手が見え、フェンスの内側に入り込んで正体が顕になった。それは、全身が真っ黒肌でターバンを被った4本腕の怪物...マルコスだった。杏奈は瞬時に学校での出来事を思い出し、身体を震わせて怯え始める。
杏奈「ひっ.....いやぁ...」
美里「杏奈...!」
大門「くっ...まずいですね...私や美里さんのレイジング能力では敵いません...逃げ場もないし...後は...杏奈様が頼りですね...」
杏奈「そ、そんな...無理だよ...あいつ見ただけで腰が抜けて...」
美里「まさか、奴は杏奈を学校で襲った奴と同種族!?」
大門「仕方ありません、こうなれば、戦うしかありません!」
美里「そうね、杏奈、大丈夫よ!お母さん達が守ってあげるから!!」
杏奈「お母さん.....」
マルコス「くくく、あいつも情けないやつだ、赤髪の小娘1匹に殺られるとは...まあいい、まずはてめえらを血祭りにあげてやるぜぇぇ!!」
美里「くっ!」
マルコスの剣による攻撃を、美里が自身のレイジング能力を発動させ、バリアを貼り防いだ。しかし、それでもマルコスの攻撃力は計り知れず、バリアにひびが入ってしまっている。
大門「私がお相手を致しますよ!」
大門もレイジング能力で生成した魔法の杖を持ち、魔法弾を何発もお見舞いする。しかし、マルコスには蚊に刺されたようなもので全く歯ごたえがなかった。
マルコス「痒いねぇ!」
大門「なにっ!!ぐはっ!?」
マルコスの右上の腕に持っているハンマーに頭を殴られ、頭から血を流しながら吹き飛ばされた大門は壁にめり込んだ。
杏奈「大門さんっっ!!」
美里「きゃあっ!」
大門に気を取られていた美里もマルコスの剣によって腹を切り裂かれ、血を流しながらその場に倒れ伏せ、杏奈は1人になってしまった。
杏奈「お母さん!!!......嘘でしょ....こんなのって....!!」
マルコス「けっ、人間風情が!俺ら神に楯突くからそうなんだよ!」
マルコスはそう言うと、気を失っている美里に唾を吐いて飛ばし、頭を踏みつけた。それを見た杏奈は、恐怖心が嘘のように全て吹き飛び、代わりに激しい怒りが込み上げて来た。
杏奈「......けろ...(ボソッ)」
マルコス「あ??」
杏奈「その脚を...退けろぉぉぉぉぉぉ!!!!」
マルコス「な、なんだぁっ!?」
杏奈の叫びと共に、右腕のレイジングの紋章が強く発行し、空が黒い雲に覆われ、雷鳴が響いた。マルコスもこれにはかなり驚いていた。
マルコス「これは一体!?」
杏奈「.....はぁぁぁぁぁっっ!!」
すると、突如、杏奈のレイジング能力が初めて開花した瞬間がやってきた。杏奈は空高くジャンプすると、彼女の右脚に雷が蓄電され、レッグアーマーのようにまとわりついた。そこからオーバーヘッドキックを繰り出すと、纏っていた雷が巨大な球体となってマルコスを飲み込んだ。
マルコス「ぎゃあああ!!」
流石のマルコスもこれを食らって大ダメージを受け、黒焦げになって倒れ、肉体が消滅し、魂のようなものだけが残った。
杏奈「はぁ....はぁ....」
バタッ
杏奈はレイジングが完全に目覚めた反動で、その場で倒れ、意識を手放した。
謎の少女「...ついに目覚めたのね...おめでとう...白石杏奈...。」
いつの間にか現れていた少女が、マルコスの魂を回収すると、杏奈に優しく労いの言葉を掛け、何者かを呼び出し、動けない3人を屋敷の病室まで運ばせた。
次回へ続く
あの事件が終わった後、また午後に入ったばかりにも関わらず、すぐに校内放送で全校の生徒は強制的に下校させられた。助かったとはいえ、未だにかなりの恐怖を感じ、思い出すだけで泣きそうになってくる。
杏奈「あの人が来てくれなかったら私は今頃.....」
美琴と名乗る謎の少女は一体何者であったのかより、マルコスから性的暴行を受けそうになった記憶の方が強い為、必死に忘れようとベッドに潜り、強く目を閉じた。とにかく早くいつもの日常に戻りたかった。
ー翌朝ー
杏奈「.....。」
気がつくと朝になっていた。とりあえずベッドから降り、しばらく放心していると、下の階から聞き慣れた女性の声がした。
母親「杏奈.....?起きてるの...?」
杏奈「....うん」
母親「大丈夫....?学校から連絡があった時はびっくりしたわよ...でも無事で本当に良かったわ...朝ごはん用意してあるけど、食べたかったら食べていいわよ?」
杏奈「うん...」
母親「あまり無理しないでいいのよ?じゃあ、また何かあったら連絡してね...お母さん、お父さんのお弁当届けないといけないから...。」
すると、足音が遠ざかり、母親の声は聞こえなくなった。重い足をようやく持ち上げ、朝食を食べるため1階へ降りると、一瞬、背の高い人影が見えた。
杏奈「.....っ?」
すぐにそこを確認するが、誰もいなかった。きっと色々精神的に疲れているせいだと大して気にもとめず、母親の作ってくれた朝食のハムエッグとトーストを食べ始めた。
杏奈「...ん、本当に美味しいな」
朝食を食べると少しだけトラウマが薄れていくのを感じた。その証拠に彼女の顔から少し笑みが零れている。
杏奈「ふう...ご馳走さまでした。」
空の食器を片付け、部屋に戻ろうとすると、微かに右腕に違和感を感じた。ふと、袖を捲ってその腕を見ると、特に何もなかった。首を傾げて困惑するが、何もないとわかると安堵して再び自室へ入り、再びベッドにて眠りにつく。
そして...目を開けると、自分が立ち尽くしているのがわかった。そして視線の先にはいつもの自室の天井ではなく、燃え盛る街、逃げ惑う人々、赤黒い空、降り注ぐ隕石というおぞましい光景だった。
杏奈「.......え!?」
意識がはっきりしてくると、その光景に杏奈は驚愕するが、すぐに夢の中だと気付き、必死に覚めろと強く心の中で祈るが覚める様子が全くない。すると、向こう側から細身で高身長な人物が歩いてきた。
杏奈「だ、誰!?」
謎の人物「......最後は貴様だ。」
何故か半分シルエットに紛れて姿がよく確認できないが声で男性だとわかった。その手には...細長い剣を握っていた。それを見て杏奈はまた青ざめながら後退する。
杏奈「....お願い....殺さないで...」
謎の人物「.....」
その男は何も答えずに、持っている剣をかかげ、それを振り下ろす...
杏奈「きゃあああ!」
杏奈はベッドから飛び起きた。涙と汗が大量に溢れ、夢から覚めたことに深く安堵している。そこで右腕に再びあの時と同じ違和感が生じた。捲って見てみると、薄く白い奇妙な模様が浮かび出ていた。
杏奈「ちょ...何これ!?」
コンコン
母親「杏奈~?どうしたの?」
杏奈「あ...えっとなんでも...なっ」
ガチャッ
母親「.....杏奈....それは...」
杏奈「...わ、私にも分からないの...」
杏奈の叫び声が、丁度帰宅していた母親の耳に届き、心配して扉をノックする暇もなく開き、押し寄せてきた。杏奈は心配させまいと必死に言い訳を考えたが時すでに遅し。母親は娘の右腕の浮かび上がった紋章に気がつき、飛びつくように右腕を掴んでそれを近目で見る。
母親「.....まさか.....貴女が....」
杏奈「い、いやっ!刺青なんかした覚えないよ!私は!?」
母親「そうじゃないわ...とりあえず今は落ち着いて...明日、お父さんにも見てもらうから...。」
杏奈「....なんでお父さん?」
母親「詳しいことは当日に話すわ」
杏奈「う、うん。」
ー翌朝ー
杏奈「はぁ...やっぱりあまり寝れなかった...あの事件なり昨晩の腕の変な模様なり...頭痛くなるよ...」
とりあえずベッドから立ち上がり、ドレッサーの椅子に座り、鏡で窶れた自分の顔と睨めっこしながら、櫛でボサボサに乱れた髪の毛を丁寧に揃える。ショートボブのヘアースタイルであった為、整えるのに普通の女性程手間がかからなかった。
杏奈「これでよし...」
ーダイニングー
母親「~♪」
父親「ん、おはよう。」
まだトラウマは拭い切っていないが、精神状態はある程度回復したので、階段から1階に降り、台所に向かうと、白いワイシャツにネクタイ、黒いズボンの服装で、新聞を読みながらコーヒーを片手に持っている父親と、鼻歌を歌いながら朝食の支度をしている母親の姿があった。席に座ると、父親が杏奈の存在に気づき、笑顔で優しく挨拶をしてきた。
杏奈「うん、おはよう、お父さん、お母さん。」
母親「早く学校直るといいわねー...」
父親「急に申し訳ないが杏奈.....昨晩、母さんから聞いたぞ...右腕の異変の事についてだいぶ混乱しているんだろう?」
杏奈「あ...うん...」
父親「それについて話があるんだ...2時間後にまた声を掛ける。連れて行きたい場所がある...。」
杏奈「...わかった。」
今まで見たことのない父親の険しい表情に杏奈な少し怖気付くが、とりあえず今言われた言葉を承諾した。
ー2時間後ー
そして2時間という短い時間が過ぎ、両親に呼び出され、軽く準備をしてから3人で外に出た。父親が運転する車に乗り、見知らぬ道を進んでいく。その間の両親は一切言葉を発する事はなく、杏奈もそれが怖くて終始黙り込んでいた。
ー???ー
そして暫くしてようやく目的地に到着したのか、父親は車を駐車し、3人共下車した。杏奈の眼に映ったのは、見るからに高級感が凄い、屋敷であった。外装は、血がベッタリとつけられたような深紅の壁、縁や屋根は真っ黒の大豪邸だった。門には厳つい顔の門番が2人いる。
父親「失礼します。」
門番A「ご要件を。」
父親「適正者候補を連れて来ました。私の娘ですが...」
門番B「...ふむ、そうか、あなた方が白石健殿と、配偶者の白石美里殿、そして一人娘の白石杏奈か。」
杏奈「し、知り合い...?」
若い男性の声「お通しして差し上げなさい。」
門番A「!はっ!」
健「ご無沙汰しております、大門殿。」
健がお辞儀をした相手は、黒い前髪で両目が隠れて見えないが爽やかそうな感じの執事服を来た男性だった。彼が現れた途端、門番達はすぐに門を開けてくれた。道を過ぎ、入口の大扉が開くと、玄関にしては広すぎる光景が広がった。周りには名画や貴重品、床には赤いカーペットが満遍なく敷かれており、壁は純白だった。外装の不気味な色合いとは真反対だ。
杏奈「......なにこれ....豪邸?」
大門「まあ、そんなところでしょうね、ここは氷室邸、氷室財閥の本拠地であり、美琴お嬢様の家でございます」
杏奈「美琴お嬢様?」
大門「杏奈様、貴女とお嬢様は既に面識がございましょう?」
杏奈「え!?」
美里「あら、そうなの?」
健「なら話は早い、大門さん、早速我が娘の検査を。」
杏奈「え?!け、検査って...何を!?」
美里「大丈夫、痛いことは一切されないわよ。」
大門「では、こちらへ」
大門執事に案内され、着いたのは、地下室の扉だった。大門執事が扉の隣に設置されている装置にパスワードを打ち込むと、効果音と共に扉が左右に分割してスライドして開く。中は真っ暗で何も見えなかったが、明かりが付くと、巨大なコンピューターらしきものがたくさんあり、なにやら見たことない装置とそのすぐ傍の机とチェアが左端にあり、机の上にはサポーターらしきものが置いてある。
杏奈「これは...」
大門「さあ、お掛けください。」
大門に諭され、とりあえず椅子に座る杏奈。すると彼は置かれていたサポーターを杏奈に差し出す。
杏奈「これって?」
大門「大丈夫、人体には害は一切ございません。お付けください。」
そう言って大門は杏奈の右腕にサポーターを取り付け、すぐ傍にあるパソコンのキーボードをタイピングし始めた。そして暫く沈黙が続いた後、大門が指を止め、3人の方を振り向き、口を開いた。
大門「結果が出ました....彼女は....杏奈様は...."適正"です」
杏奈「....?」
健「....!....そうでしたか...」
美里「まあ...これから大変な事になりそうだわね...」
杏奈「え...?何?何なの!?」
大門「杏奈様、今から言うことを落ち着いてお聞きください。」
杏奈「へ?」
大門は真剣な顔で右腕の紋章について説明を始めた。
大門「.....貴方様の右腕に宿るその印は..."レイジング"の紋章でございます。」
杏奈「レイ...ジング....?」
大門「レイジングとは、ごく稀に利き腕に宿る特殊能力...太古の昔より、レイジングを携えて生まれた戦士達は、数々の戦いを繰り広げて行きました...その力は本来、神のみが所有するものでしたが...今では低確率で人間にも宿る事案がありまして...」
健「隠していてすまなかった.....レイジング能力は協力で使い方次第で神をも凌駕するやもしれん力だ...」
美里「それを︎︎巡って戦争を起こす事もあったわ...でも、心優しい貴女がその事実を知ってしまえば傷付いてしまうかもって...18年間ずっと隠し通してきたのよ。」
杏奈「そんな事が...」
健「本当なら.....お前には普通の女の子として何も知らずに平和に過ごして欲しかった...しかし、こんな形で覚醒してしまうとは予想外だった...。」
美里「ねぇ...杏奈?実の娘にこんな選択肢を迫るのは残酷でとても嫌なんだけど...よく考えてから選んで頂戴?1つは、レイジング能力を封印し、今回の事を全て忘れていつもの日常を送る、もう1つ、レイジングの力で、異世界から来た神々と終わりの見えない戦いに挑むか...どちらにする?」
杏奈「.........。」
突然迫ってきた美里からの重要な選択肢、杏奈は迷っていた。もし、1つ目を選べば、いつもと変わらない、何気ない日常生活に戻る事が出来る。しかし、それでは事実を知っている両親は当然、神とやらと戦い続けるだろう...そして自分が何も知らない間にいつの間にか命を落としてもおかしくない...かといって2つ目を選べばいつ終わるのか分からない戦いに一生巻き込まれるのかもしれない...その時
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
全員「!?」
突然、激しい地響きが起こった。
杏奈「え!?地震!?」
大門「いえ...この気配は恐らく..."神"が来ます!」
杏奈「さ、早速!?」
健「くっ...美里!杏奈を連れて屋上へ逃げろ!!外に出たら危険だ!!」
美里「わかったわ!杏奈!行くわよ!!」
杏奈「あ、うん!」
健は襲来してきた神を迎え撃つべく、玄関へ向かって走り出した。
美里と大門は杏奈を引き連れて屋敷の長い長い階段を上り、ようやく屋上へ着いた。
美里「....はぁ、はぁ...」
大門「鍵は閉めました。とりあえず一安心です...」
杏奈「な、何階だろ....ここ...今はどうでもいいけど...」
しかし、3人が安堵していたのも束の間、向こう側のフェンスの方から誰かが這い蹲る音がしてきた。やがて、その者の手が見え、フェンスの内側に入り込んで正体が顕になった。それは、全身が真っ黒肌でターバンを被った4本腕の怪物...マルコスだった。杏奈は瞬時に学校での出来事を思い出し、身体を震わせて怯え始める。
杏奈「ひっ.....いやぁ...」
美里「杏奈...!」
大門「くっ...まずいですね...私や美里さんのレイジング能力では敵いません...逃げ場もないし...後は...杏奈様が頼りですね...」
杏奈「そ、そんな...無理だよ...あいつ見ただけで腰が抜けて...」
美里「まさか、奴は杏奈を学校で襲った奴と同種族!?」
大門「仕方ありません、こうなれば、戦うしかありません!」
美里「そうね、杏奈、大丈夫よ!お母さん達が守ってあげるから!!」
杏奈「お母さん.....」
マルコス「くくく、あいつも情けないやつだ、赤髪の小娘1匹に殺られるとは...まあいい、まずはてめえらを血祭りにあげてやるぜぇぇ!!」
美里「くっ!」
マルコスの剣による攻撃を、美里が自身のレイジング能力を発動させ、バリアを貼り防いだ。しかし、それでもマルコスの攻撃力は計り知れず、バリアにひびが入ってしまっている。
大門「私がお相手を致しますよ!」
大門もレイジング能力で生成した魔法の杖を持ち、魔法弾を何発もお見舞いする。しかし、マルコスには蚊に刺されたようなもので全く歯ごたえがなかった。
マルコス「痒いねぇ!」
大門「なにっ!!ぐはっ!?」
マルコスの右上の腕に持っているハンマーに頭を殴られ、頭から血を流しながら吹き飛ばされた大門は壁にめり込んだ。
杏奈「大門さんっっ!!」
美里「きゃあっ!」
大門に気を取られていた美里もマルコスの剣によって腹を切り裂かれ、血を流しながらその場に倒れ伏せ、杏奈は1人になってしまった。
杏奈「お母さん!!!......嘘でしょ....こんなのって....!!」
マルコス「けっ、人間風情が!俺ら神に楯突くからそうなんだよ!」
マルコスはそう言うと、気を失っている美里に唾を吐いて飛ばし、頭を踏みつけた。それを見た杏奈は、恐怖心が嘘のように全て吹き飛び、代わりに激しい怒りが込み上げて来た。
杏奈「......けろ...(ボソッ)」
マルコス「あ??」
杏奈「その脚を...退けろぉぉぉぉぉぉ!!!!」
マルコス「な、なんだぁっ!?」
杏奈の叫びと共に、右腕のレイジングの紋章が強く発行し、空が黒い雲に覆われ、雷鳴が響いた。マルコスもこれにはかなり驚いていた。
マルコス「これは一体!?」
杏奈「.....はぁぁぁぁぁっっ!!」
すると、突如、杏奈のレイジング能力が初めて開花した瞬間がやってきた。杏奈は空高くジャンプすると、彼女の右脚に雷が蓄電され、レッグアーマーのようにまとわりついた。そこからオーバーヘッドキックを繰り出すと、纏っていた雷が巨大な球体となってマルコスを飲み込んだ。
マルコス「ぎゃあああ!!」
流石のマルコスもこれを食らって大ダメージを受け、黒焦げになって倒れ、肉体が消滅し、魂のようなものだけが残った。
杏奈「はぁ....はぁ....」
バタッ
杏奈はレイジングが完全に目覚めた反動で、その場で倒れ、意識を手放した。
謎の少女「...ついに目覚めたのね...おめでとう...白石杏奈...。」
いつの間にか現れていた少女が、マルコスの魂を回収すると、杏奈に優しく労いの言葉を掛け、何者かを呼び出し、動けない3人を屋敷の病室まで運ばせた。
次回へ続く
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5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
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おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
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パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
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精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
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これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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