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現代神話の始まり
新たな仲間
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杏奈「.......ここは.....?」
杏奈がレイジングの覚醒の反動で気を失ってからどれだけ時間がたったであろう...一足先に意識を取り戻した美里、負傷はしたが大事には至らなかった健と大門がそう案じて見守る中、彼女は遂に目を覚ました。健と大門は安堵の溜息をつき、美里は涙ぐんで杏奈を強く抱き締めた。
美里「杏奈ぁっ!良かった...!本当に良かった...っ!!」
杏奈「お母さん....お父さん...大門さん...私...一体...」
健「嗚呼...レイジングの覚醒反動で昏睡状態に陥っていたそうだ...詳しくは、この御方から聞いたがね」
杏奈「...え?」
少女「...はじめまして...ではないわね、これで会うのは2回目ね♪」
杏奈「.....あーーーっ!!?」
いつの間にかいた赤い髪の少女を暫く見つめていると、杏奈は思い出したように声を上げた。
少女「ふふ...思い出してくれた?」
そう、学校で遭遇したマルコスの個体に襲われかけた所を助けてくれた"美琴"と名乗っていた少女だった。証拠に、片手に黒い日本刀を持っている。
杏奈「たしか...氷室...美琴...さん?」
健「なるほど、前に会ったことがあるとうのは真実だったのか。」
杏奈「ありがとう...ございます...また助けて貰っちゃって.....」
美琴「良いのよ、それより、貴女の診断結果の用紙を見て欲しいの。」
杏奈「?あー、あのレイジングがあるか調べてた時のやつ?」
美琴「どうも気になる結果が出てね...検査中に、大門にレントゲンを撮ってもらったの。」
美琴はそういうと、レントゲンで撮影した杏奈の体内の写真を何枚か机に置き、皆に見せた。どの写真も健康かつレイジングが発動する際のオーラのようなモヤがかかっている。しかし、とある1枚だけ、なにやら異常があるものを見つけた。それは、杏奈の胸の辺りに、白い球体のような物体が宿っていた。
杏奈「なんだろこれ?」
美琴「私にも分からないわね...ただ貴女、普通のレイジング使いとは少し違うようね...何か得体の知れない力が沢山眠ってるかも...」
健「......杏奈、母さんがさっき言った事をもう一度言うぞ?レイジングは封じて、普段通りの生活を続けるか、それとも、神々との厳しい戦いに挑むか...お前が選ぶんだ。」
杏奈「......私は.....戦うよ!!」
健「...その選択、後悔はしないな?もう後戻りは出来ないぞ?」
杏奈「うん、戦うよ....決めたんだ...お父さんとお母さんは、今までその力で私を守り続けてくれたんでしょ...なら、今度は私が守る番!!神様なんかに世界を滅ぼさせたりはしない!」
美里「.....杏奈.....立派になったわね...」
健「そうか...なら今からお前もレイジング使いとして、神々から皆を守って欲しい...未来あるお前を巻き込んでしまうのは辛いが...決めたからにはやり遂げてみせろ?」
杏奈「うん!」
大門「いやはや、ご立派な娘様で」
美琴「では...我々の目的をお教えしましょう...神が出現する扉、異界の扉は...この世界の至る場所に無数に存在しています。その中に入った人間は自力では2度出られない恐ろしい場所です、しかし、レイジングを扱える者なら自由に行き来出来ます。そして異界の扉を消滅させる為、どの神よりも最も力を持つ7体の神、化神を全て倒すのです!」
杏奈「なるほど...」
美琴「そして、レイジング使いはこの世界の何処かに何人か適正する者が存在します。」
健「なんと...他にも、何処にいるのかわかりますか?」
美琴「残念ですが...居場所までは分かりません...ただ1人だけ...ただ1人だけ、杏奈さん、貴女に近い人物に適正があるかと...」
杏奈「私に...近い人物...?」
美琴「さあ...誰でしょう...もしかしたら..."学校関係者"かも知れません。」
杏奈「.......学校関係者って.....先生...とか...?いや、生徒かも...?」
美里「...今は考えても仕方ないわ」
大門「さて、今日はもうお話は以上です、屋敷の外まで案内しましょう。」
こうして、白石一家は大門と美琴と別れ、再び車に乗り我が家へと帰宅した。杏奈は疲れていたのか、フラフラと自室へ向かい、ベッドに倒れ込み、寝入った。
ーその頃ー
サラリーマン「~♪」
子供が寝静まっている頃の深夜1時頃、静かな道を歩いて鼻歌を歌いながら自宅に戻ろうとするサラリーマンの中年男性だったが、次の曲がり角に近づいた瞬間、妙な音が聞こえてきた。
グチュッ....ゴリッ....クチャッ...
サラリーマン「....なんだ、この音?」
まるで生ものを咀嚼しているかのような不快な水音が曲がり角の死角からそこへ歩けば歩くほど、どんどん大きく聞こえてくる。そっと音のする曲がり角を覗くと...
サラリーマン「うわぁぁぁぁぁっっ!」
薄暗い夜道の道中にはおぞましい光景が広がった。何故なら、そこには謎の黒い影がOLらしき女性の身体の肉を貪っていた。辺りには大量の真っ赤な血がアスファルトを染め上げており、サラリーマンは顔を真っ青にして悲鳴をあげてしまった。当然、その影は声に反応し、ぐるりと振り向くとギランと真っ赤に光る眼を露わにしてサラリーマンに襲い掛かり、巨大な口を開けた。
サラリーマン「ぎゃあああああああ!!」
ガブッグチャッバキックチュッゴリュッゴキッゴクンッ
ー翌朝ー
噂好きの夫人A「ねぇ...聞いた...?」
噂好きの夫人B「聞いたわよ~...!昨晩、サラリーマンの男性の無惨な遺体が発見されたんですって...!」
噂好きの夫人C「他にも会社員の女性の遺体もあったらしいわ...」
噂好きの夫人B「それらの遺体...なんだか凄いぐちゃぐちゃで...原型が無くなりそうな程だったそうよ...」
髪が長めの少年「.....なんだか、とんでもない事件が起きてるらしいな...彼女の件に続いて妙な事件ばかりだ...」
学校にマルコスが奇襲し、杏奈が拉致されたあの日を思い出しながら、勉強の休憩がてらに散歩していたら、偶然噂話をしていた夫人の女性の話を耳にした。しかし大して気にせずに散歩を続けた。
髪が長めの少年「.......。(学級閉鎖も今日で2週間目か.....暇だな...かといって僕には勉強しかやることないし...)」
そう心の中で駄弁っていると、目の前には見覚えのある少女と、見知らぬ少女が何かを話し合っていた。しかも彼女たちの前には禍々しいドス黒い渦巻きのような裂け目がある。1人の黒髪の少女を凝視すると、すぐに杏奈だとわかった。
髪が長めの少年「....!(あれは白石さん...?と、その隣にいるのは...あ、体育館で白石さんを助けた人か!)」
ー杏奈sideー
杏奈「これが異世界ゲート...」
美琴「今から貴女にはこの中へ入り、探索をしてゲートの発生源を破壊して貰います。」
杏奈「見た感じ凄い不気味...この先は一体どうなってるんだろう?」
美琴「入ってみればわかりますよ。」
杏奈「...覚悟決めたんだ...絶対にやり遂げてみせる...」
美琴「私はいつどこで異世界ゲートが現れるか分からない故、氷室邸に戻って世界を監視下に置かなければならないので任務には参加できません。どうか頑張って!」
深呼吸をして緊張と恐怖心を落ち着かせ、杏奈は異世界への入り口の中へ入って行った。美琴は見送った後、ゆっくりとその場から立ち去って行った。
ー異世界ゲート 内部ー
入り口を通過し、中に入ってきたようだ。内部は見える光景全てはモノクロになっているだけで、建物などは現実世界と全く変わっていない。それが不気味だった。さらによく見ると、人間どころか、生命を持つものが何一つ見かけない。空も灰色で今にもいわく付きのものが出そうな感じだ。
杏奈「やっぱりちょっと怖い...」
無音な世界の果てしない道を歩いていると、何者かの気配がした。しかし、振り返っても何もおらず、完全にお化け屋敷に入った気分だ。
杏奈「.....!」
急に左右の一軒家の塀の向こうから何者かの足音が聞こえた。杏奈は咄嗟に戦闘態勢に入り、左右を交互に睨みつける。
異形の怪物A「グエェェッ!!」
異形の怪物B「ガァァァッ!!」
杏奈「コイツらねっ!!」
怪物が2体、咆哮を上げて杏奈の目の前に現れた。杏奈が右腕のレイジングの紋章を前に突き出すとそれは強く発光し、右足に光の粒子が集まると、銀色に輝くサッカーのスパイクシューズのようなアーマーがまとわりついた。
杏奈「おおっ!?凄い!これがレイジング能力か!」
杏奈は驚いているが、その暇も与えまいと怪物2体が同時に襲って来た。杏奈は後ろにバク宙して華麗に回避した。
杏奈「身体が軽い!じゃあやっぱり、本当に身体能力が上がってるんだ!」
異形の怪物A「シャァァァァァッ!!」
杏奈「そんなに私をたべたいわけね...だったらもっといいもん食べさしたげるよ!」
杏奈は怪物の一体の噛みつき攻撃を躱し、高くジャンプした。その直後、右脚のスパイクが蓄電を始め、杏奈がさらに空中で身体を逆さにするとスパイクから電撃の球体が生成され、それを直接オーバーヘッドキックで蹴り飛ばし怪物の頭部にヒットさせると、断末魔を上げながら感電して倒れた。そして肉体が消えると同時に青白い魂、ソウルが出現した。
異形の怪物B「グギギッ!?」
地面に上手く着地した杏奈がもう一体の怪物を睨むと、怯えてどこかへ逃げていった。気にせずに杏奈は自分の紋章をソウルに近づけると、ソウルはレイジング紋章の中に吸引された。
杏奈「こうやって回収すればいいのか...」
杏奈は改めて異世界ゲートが開く原因を調査する為にまた先へと進んだ。
ーその頃ー
髪が長めの少年「.....ここは....何処なんだ...?」
杏奈とは全く別の場所で、彼は異世界の中へ迷い込んでいた。
髪が長めの少年「気がついたら何故か周りが全部白黒になってるなんて...非科学的すぎる...!」
現実主義の彼がそう嘆いているが、そこから更に現実ではありえない事が起きた。突然背後から巨大な腕が彼の首に巻き付き、意識を奪った。
髪が長めの少年「あ......がっ...!?」
彼を気絶させたのはマルコスとは違い、腕が2本の紫肌の悪魔のような怪物だった。
悪魔「見ない顔の小僧だな...丁度腹が減って来たところだ。本当なら人間の女の肉の方が柔らかくて美味いんだが、まあ、贅沢は言えんな。」
髪が長めの少年「離せっ!このっ!」
少年は腕を振りほどこうと藻掻くが悪魔の圧倒的な力の差の前では無意味だった。
悪魔「どーれ、まずは頭からだな」
少年の頭部を喰らおうと悪魔は大きく口を開ける。体格差もあってか、悪魔の口は意図も容易く成人を丸々飲み込めそうなくらい広範囲で、少年は絶望した表情で悲鳴を上げる。
髪が長めの少年「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
悪魔「あー....ぶっ!?」
頭部を噛み砕こうとしたその瞬間、どこからか電撃の球体が飛んできて、悪魔の顔面にクリーンヒットした。そのお陰で悪魔の手が少年から離れ、彼は尻餅を付いた。
髪が長めの少年「な、なんだ!?」
悪魔「くそっ!誰だ!」
杏奈「彼には指一本触れさせないよ!」
髪が長めの少年「君は...白石さん!?」
杏奈「君は確か...」
髪が長めの少年「僕だよ!喜多川卓郎!」
杏奈「喜多川くん!?なんでこんなとこに!?」
喜多川「わ、分からない...気がついたら迷い込んでいたんだ!」
杏奈「とにかく下がってて!そいつは私が倒すから!」
悪魔「.....いってぇ....このアマが...!」
杏奈「悔しかったら掛かっておいでよ!」
悪魔「図に乗るなぁぁっ!!」
杏奈の挑発に悪魔は激昂し、片手に持っている黒い三又の槍を投げつけるが、杏奈はそれを電撃の球体を蹴り飛ばす事でぶつけ、相殺。
悪魔「馬鹿な....!お前本当に人間か!?」
杏奈「正真正銘の人間様だよ!!悪いけどいきなり決めさせて貰うからね!」
そういうと再び電撃玉を生成し、もう一度それを蹴り飛ばす事でトドメを刺そうとしたが、悪魔は体格に似つかわしくないスピードで迫り、杏奈を巨大な手で鷲掴みにした。
杏奈「しまった!?」
喜多川「白石さん!!」
悪魔「完全に油断したなぁ?所詮は人間の女だ.....♪」
捕まって苦しそうにもがいている杏奈を嘲笑しては、彼女の服越しからでも判るその発育の良い肉体をじっくり眺めては舌なめずりをした。
悪魔「小娘、中々いい身体してるじゃねぇか??そうだ、取引をしようか。もし小娘の身体を好きにさせてくれるんだったら...小僧は見逃してやるぞ?」
杏奈「!?」
喜多川「汚いぞっ!ぐわっ!」
悪魔「黙ってろ。」
あまりにも聞き捨てならない悪魔の取引内容に喜多川は憤慨するが、悪魔に胴体を踏みつけられた。
杏奈「喜多川くん!!」
悪魔「さあ、どうする?己の身体を差し出すだけで人の命が救えるんだぞ???」
杏奈「っ......。」
喜多川「.....。(ふざけるな...クソッ!!散々好き勝手しやがって...!!!)」
喜多川は中学時代、偶然杏奈と同じ学校に通っていた。しかし、当時の彼は引っ込み思案で性格も大人しく、同級生からいじめられていた。そんな時、彼を救っていたのは杏奈だった。彼女は正義感が強く、誰にも優しかった。そんな彼女とは正反対の彼はいつしか彼女に微かな憧れを抱いたまま中学を卒業し、高校に上がって2年間、異なるクラスに配属され、次第に彼女への憧れは薄れていった。しかし、3年、高校生最後の学年に上がった時、奇跡的に杏奈と同じクラスになったのだ。憧れの熱は再び舞い上がったのだ。そんな彼女が今、自分を庇った結果、容姿も中身も醜い化け物によって好き勝手されようとしている...。
喜多川「....今目の前にいるコイツが腹立たしい...でも...それ以上に憧れの人が酷い目にあってるのに、こうして何も出来ずにただ黙って見ている自分自身に腹が立つっ!!!!」
悪魔「うひひ...それじゃあまずは邪魔な布切れを引っペがしてっと...」
杏奈「や...やめろっ!この変態悪魔!」
喜多川「......。」
悪魔が杏奈の服の胸元に指の爪を引っ掛け、引き裂いて丸裸にしようとした瞬間、急に周辺の気温が下がり始めた。あまりの寒さに凍えた悪魔は杏奈をパッと手放し、身体を震わせる。
悪魔「なななんだ!?この寒さ!?」
杏奈「これは.....!?」
杏奈が驚きながら周りを見渡すと、周りが冷凍庫になったかのように霜や氷で白く染まっていた。冷気が発生している方を見ると、サラサラな黒髪と衣服の布が吹雪でヒラヒラと揺れている。その時の表情は静かだが激しい怒りを感じる。
喜多川「悪いけど...もう我慢の限界だ」
杏奈「喜多川........くん.....?」
喜多川「ごめんね...白石さん...僕が弱かったせいで君が傷付く事になってしまって...今度は、僕が助ける番だ!!」
杏奈「.......っ!!」
その瞬間杏奈は、過去の記憶が蘇った。そうか...あの子だったんだ...身体が小さくて大人しいからよくいじめられてたっけ...その度に私が助けてたんだったな.....そんな子が...私を助けるために...。
喜多川「お前を絶対に許さない!命諸共氷漬けにしてやる!!」
悪魔「あっ!?」
喜多川の右腕が突然藍色に光り出した。袖を捲ると、そこには色は違うが、杏奈と全く同じ形の紋章が浮かび上がっていた。
杏奈「まさか!レイジング!?」
悪魔「ま、眩しい...!」
喜多川「さあ、いくよ...全てを凍てつかせる槍..."アイシクルランス"」
喜多川がレイジング能力を発動させると、右手に冷気が集まり、出来たのは、ほぼガラスのように透き通っている氷の槍だった。矛先にはマイナス数千万℃の冷気がまとわりついている。
悪魔「何が...氷の槍だぁ!!貴様の骨ごとへし折ってくれる!!」
悪魔の怒りが限界を超え、自分に向かって走ってくる喜多川に向かって黒い三又の槍を突き出す。武器の長さ、力の差、明らかに自分が有利だと思い、勝利を確信しながらニヤリと笑う悪魔だったが、その予想は大きく外れた。何故なら、喜多川が自分の槍を躱し、そのままそれをジャンプ台にして高く飛び、勢いが着いたまま悪魔の額から後頭部にかけて氷の槍を貫通させた。
喜多川「いくらパワーや武器が強くたって頭が悪ければ意味が無いよね♪動きが単純過ぎてあくびが出たよ」
悪魔「....ば.....か....な.....あり...えん...」
喜多川「僕が走った時、君も走り出してくれたのは有難かったよ♪その勢いのおかげで槍の貫通力が増した、君は頭が悪いからそんな事が分からなかったんだよ、来世はもっと賢い頭で生まれ変わりな♪」
そう言い終わると、悪魔は槍の強力な冷気によって全身が凍りついた。そこで喜多川が指をパチンと鳴らすと氷のオブジェとなった悪魔は粉々に砕け散り、絶滅した。
杏奈「すっっっっご!」
喜多川「ふぅ...うっ...」
バタッ
杏奈「喜多川くん!!!」
杏奈はとりあえずレイジング覚醒の反動で気を失った喜多川を担いで異世界ゲートの出口を通り、現実世界に帰還した。
ー氷室邸の病室ー
大門「心配ございません、杏奈様と同じく、レイジング覚醒の反動で気絶しただけです。すぐに意識は戻るかと♪」
美里「よかったわね、杏奈♪」
健「よくやった、お前も、彼も大手柄だったぞ♪」
杏奈「うん、ありがとう♪」
手当てが終わった杏奈は、ベッドで静かに寝息を立て、穏やかな顔で眠っている喜多川の耳元で囁く。
杏奈「.....ありがとう.....卓郎くん♪」
次回へ続く
杏奈がレイジングの覚醒の反動で気を失ってからどれだけ時間がたったであろう...一足先に意識を取り戻した美里、負傷はしたが大事には至らなかった健と大門がそう案じて見守る中、彼女は遂に目を覚ました。健と大門は安堵の溜息をつき、美里は涙ぐんで杏奈を強く抱き締めた。
美里「杏奈ぁっ!良かった...!本当に良かった...っ!!」
杏奈「お母さん....お父さん...大門さん...私...一体...」
健「嗚呼...レイジングの覚醒反動で昏睡状態に陥っていたそうだ...詳しくは、この御方から聞いたがね」
杏奈「...え?」
少女「...はじめまして...ではないわね、これで会うのは2回目ね♪」
杏奈「.....あーーーっ!!?」
いつの間にかいた赤い髪の少女を暫く見つめていると、杏奈は思い出したように声を上げた。
少女「ふふ...思い出してくれた?」
そう、学校で遭遇したマルコスの個体に襲われかけた所を助けてくれた"美琴"と名乗っていた少女だった。証拠に、片手に黒い日本刀を持っている。
杏奈「たしか...氷室...美琴...さん?」
健「なるほど、前に会ったことがあるとうのは真実だったのか。」
杏奈「ありがとう...ございます...また助けて貰っちゃって.....」
美琴「良いのよ、それより、貴女の診断結果の用紙を見て欲しいの。」
杏奈「?あー、あのレイジングがあるか調べてた時のやつ?」
美琴「どうも気になる結果が出てね...検査中に、大門にレントゲンを撮ってもらったの。」
美琴はそういうと、レントゲンで撮影した杏奈の体内の写真を何枚か机に置き、皆に見せた。どの写真も健康かつレイジングが発動する際のオーラのようなモヤがかかっている。しかし、とある1枚だけ、なにやら異常があるものを見つけた。それは、杏奈の胸の辺りに、白い球体のような物体が宿っていた。
杏奈「なんだろこれ?」
美琴「私にも分からないわね...ただ貴女、普通のレイジング使いとは少し違うようね...何か得体の知れない力が沢山眠ってるかも...」
健「......杏奈、母さんがさっき言った事をもう一度言うぞ?レイジングは封じて、普段通りの生活を続けるか、それとも、神々との厳しい戦いに挑むか...お前が選ぶんだ。」
杏奈「......私は.....戦うよ!!」
健「...その選択、後悔はしないな?もう後戻りは出来ないぞ?」
杏奈「うん、戦うよ....決めたんだ...お父さんとお母さんは、今までその力で私を守り続けてくれたんでしょ...なら、今度は私が守る番!!神様なんかに世界を滅ぼさせたりはしない!」
美里「.....杏奈.....立派になったわね...」
健「そうか...なら今からお前もレイジング使いとして、神々から皆を守って欲しい...未来あるお前を巻き込んでしまうのは辛いが...決めたからにはやり遂げてみせろ?」
杏奈「うん!」
大門「いやはや、ご立派な娘様で」
美琴「では...我々の目的をお教えしましょう...神が出現する扉、異界の扉は...この世界の至る場所に無数に存在しています。その中に入った人間は自力では2度出られない恐ろしい場所です、しかし、レイジングを扱える者なら自由に行き来出来ます。そして異界の扉を消滅させる為、どの神よりも最も力を持つ7体の神、化神を全て倒すのです!」
杏奈「なるほど...」
美琴「そして、レイジング使いはこの世界の何処かに何人か適正する者が存在します。」
健「なんと...他にも、何処にいるのかわかりますか?」
美琴「残念ですが...居場所までは分かりません...ただ1人だけ...ただ1人だけ、杏奈さん、貴女に近い人物に適正があるかと...」
杏奈「私に...近い人物...?」
美琴「さあ...誰でしょう...もしかしたら..."学校関係者"かも知れません。」
杏奈「.......学校関係者って.....先生...とか...?いや、生徒かも...?」
美里「...今は考えても仕方ないわ」
大門「さて、今日はもうお話は以上です、屋敷の外まで案内しましょう。」
こうして、白石一家は大門と美琴と別れ、再び車に乗り我が家へと帰宅した。杏奈は疲れていたのか、フラフラと自室へ向かい、ベッドに倒れ込み、寝入った。
ーその頃ー
サラリーマン「~♪」
子供が寝静まっている頃の深夜1時頃、静かな道を歩いて鼻歌を歌いながら自宅に戻ろうとするサラリーマンの中年男性だったが、次の曲がり角に近づいた瞬間、妙な音が聞こえてきた。
グチュッ....ゴリッ....クチャッ...
サラリーマン「....なんだ、この音?」
まるで生ものを咀嚼しているかのような不快な水音が曲がり角の死角からそこへ歩けば歩くほど、どんどん大きく聞こえてくる。そっと音のする曲がり角を覗くと...
サラリーマン「うわぁぁぁぁぁっっ!」
薄暗い夜道の道中にはおぞましい光景が広がった。何故なら、そこには謎の黒い影がOLらしき女性の身体の肉を貪っていた。辺りには大量の真っ赤な血がアスファルトを染め上げており、サラリーマンは顔を真っ青にして悲鳴をあげてしまった。当然、その影は声に反応し、ぐるりと振り向くとギランと真っ赤に光る眼を露わにしてサラリーマンに襲い掛かり、巨大な口を開けた。
サラリーマン「ぎゃあああああああ!!」
ガブッグチャッバキックチュッゴリュッゴキッゴクンッ
ー翌朝ー
噂好きの夫人A「ねぇ...聞いた...?」
噂好きの夫人B「聞いたわよ~...!昨晩、サラリーマンの男性の無惨な遺体が発見されたんですって...!」
噂好きの夫人C「他にも会社員の女性の遺体もあったらしいわ...」
噂好きの夫人B「それらの遺体...なんだか凄いぐちゃぐちゃで...原型が無くなりそうな程だったそうよ...」
髪が長めの少年「.....なんだか、とんでもない事件が起きてるらしいな...彼女の件に続いて妙な事件ばかりだ...」
学校にマルコスが奇襲し、杏奈が拉致されたあの日を思い出しながら、勉強の休憩がてらに散歩していたら、偶然噂話をしていた夫人の女性の話を耳にした。しかし大して気にせずに散歩を続けた。
髪が長めの少年「.......。(学級閉鎖も今日で2週間目か.....暇だな...かといって僕には勉強しかやることないし...)」
そう心の中で駄弁っていると、目の前には見覚えのある少女と、見知らぬ少女が何かを話し合っていた。しかも彼女たちの前には禍々しいドス黒い渦巻きのような裂け目がある。1人の黒髪の少女を凝視すると、すぐに杏奈だとわかった。
髪が長めの少年「....!(あれは白石さん...?と、その隣にいるのは...あ、体育館で白石さんを助けた人か!)」
ー杏奈sideー
杏奈「これが異世界ゲート...」
美琴「今から貴女にはこの中へ入り、探索をしてゲートの発生源を破壊して貰います。」
杏奈「見た感じ凄い不気味...この先は一体どうなってるんだろう?」
美琴「入ってみればわかりますよ。」
杏奈「...覚悟決めたんだ...絶対にやり遂げてみせる...」
美琴「私はいつどこで異世界ゲートが現れるか分からない故、氷室邸に戻って世界を監視下に置かなければならないので任務には参加できません。どうか頑張って!」
深呼吸をして緊張と恐怖心を落ち着かせ、杏奈は異世界への入り口の中へ入って行った。美琴は見送った後、ゆっくりとその場から立ち去って行った。
ー異世界ゲート 内部ー
入り口を通過し、中に入ってきたようだ。内部は見える光景全てはモノクロになっているだけで、建物などは現実世界と全く変わっていない。それが不気味だった。さらによく見ると、人間どころか、生命を持つものが何一つ見かけない。空も灰色で今にもいわく付きのものが出そうな感じだ。
杏奈「やっぱりちょっと怖い...」
無音な世界の果てしない道を歩いていると、何者かの気配がした。しかし、振り返っても何もおらず、完全にお化け屋敷に入った気分だ。
杏奈「.....!」
急に左右の一軒家の塀の向こうから何者かの足音が聞こえた。杏奈は咄嗟に戦闘態勢に入り、左右を交互に睨みつける。
異形の怪物A「グエェェッ!!」
異形の怪物B「ガァァァッ!!」
杏奈「コイツらねっ!!」
怪物が2体、咆哮を上げて杏奈の目の前に現れた。杏奈が右腕のレイジングの紋章を前に突き出すとそれは強く発光し、右足に光の粒子が集まると、銀色に輝くサッカーのスパイクシューズのようなアーマーがまとわりついた。
杏奈「おおっ!?凄い!これがレイジング能力か!」
杏奈は驚いているが、その暇も与えまいと怪物2体が同時に襲って来た。杏奈は後ろにバク宙して華麗に回避した。
杏奈「身体が軽い!じゃあやっぱり、本当に身体能力が上がってるんだ!」
異形の怪物A「シャァァァァァッ!!」
杏奈「そんなに私をたべたいわけね...だったらもっといいもん食べさしたげるよ!」
杏奈は怪物の一体の噛みつき攻撃を躱し、高くジャンプした。その直後、右脚のスパイクが蓄電を始め、杏奈がさらに空中で身体を逆さにするとスパイクから電撃の球体が生成され、それを直接オーバーヘッドキックで蹴り飛ばし怪物の頭部にヒットさせると、断末魔を上げながら感電して倒れた。そして肉体が消えると同時に青白い魂、ソウルが出現した。
異形の怪物B「グギギッ!?」
地面に上手く着地した杏奈がもう一体の怪物を睨むと、怯えてどこかへ逃げていった。気にせずに杏奈は自分の紋章をソウルに近づけると、ソウルはレイジング紋章の中に吸引された。
杏奈「こうやって回収すればいいのか...」
杏奈は改めて異世界ゲートが開く原因を調査する為にまた先へと進んだ。
ーその頃ー
髪が長めの少年「.....ここは....何処なんだ...?」
杏奈とは全く別の場所で、彼は異世界の中へ迷い込んでいた。
髪が長めの少年「気がついたら何故か周りが全部白黒になってるなんて...非科学的すぎる...!」
現実主義の彼がそう嘆いているが、そこから更に現実ではありえない事が起きた。突然背後から巨大な腕が彼の首に巻き付き、意識を奪った。
髪が長めの少年「あ......がっ...!?」
彼を気絶させたのはマルコスとは違い、腕が2本の紫肌の悪魔のような怪物だった。
悪魔「見ない顔の小僧だな...丁度腹が減って来たところだ。本当なら人間の女の肉の方が柔らかくて美味いんだが、まあ、贅沢は言えんな。」
髪が長めの少年「離せっ!このっ!」
少年は腕を振りほどこうと藻掻くが悪魔の圧倒的な力の差の前では無意味だった。
悪魔「どーれ、まずは頭からだな」
少年の頭部を喰らおうと悪魔は大きく口を開ける。体格差もあってか、悪魔の口は意図も容易く成人を丸々飲み込めそうなくらい広範囲で、少年は絶望した表情で悲鳴を上げる。
髪が長めの少年「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
悪魔「あー....ぶっ!?」
頭部を噛み砕こうとしたその瞬間、どこからか電撃の球体が飛んできて、悪魔の顔面にクリーンヒットした。そのお陰で悪魔の手が少年から離れ、彼は尻餅を付いた。
髪が長めの少年「な、なんだ!?」
悪魔「くそっ!誰だ!」
杏奈「彼には指一本触れさせないよ!」
髪が長めの少年「君は...白石さん!?」
杏奈「君は確か...」
髪が長めの少年「僕だよ!喜多川卓郎!」
杏奈「喜多川くん!?なんでこんなとこに!?」
喜多川「わ、分からない...気がついたら迷い込んでいたんだ!」
杏奈「とにかく下がってて!そいつは私が倒すから!」
悪魔「.....いってぇ....このアマが...!」
杏奈「悔しかったら掛かっておいでよ!」
悪魔「図に乗るなぁぁっ!!」
杏奈の挑発に悪魔は激昂し、片手に持っている黒い三又の槍を投げつけるが、杏奈はそれを電撃の球体を蹴り飛ばす事でぶつけ、相殺。
悪魔「馬鹿な....!お前本当に人間か!?」
杏奈「正真正銘の人間様だよ!!悪いけどいきなり決めさせて貰うからね!」
そういうと再び電撃玉を生成し、もう一度それを蹴り飛ばす事でトドメを刺そうとしたが、悪魔は体格に似つかわしくないスピードで迫り、杏奈を巨大な手で鷲掴みにした。
杏奈「しまった!?」
喜多川「白石さん!!」
悪魔「完全に油断したなぁ?所詮は人間の女だ.....♪」
捕まって苦しそうにもがいている杏奈を嘲笑しては、彼女の服越しからでも判るその発育の良い肉体をじっくり眺めては舌なめずりをした。
悪魔「小娘、中々いい身体してるじゃねぇか??そうだ、取引をしようか。もし小娘の身体を好きにさせてくれるんだったら...小僧は見逃してやるぞ?」
杏奈「!?」
喜多川「汚いぞっ!ぐわっ!」
悪魔「黙ってろ。」
あまりにも聞き捨てならない悪魔の取引内容に喜多川は憤慨するが、悪魔に胴体を踏みつけられた。
杏奈「喜多川くん!!」
悪魔「さあ、どうする?己の身体を差し出すだけで人の命が救えるんだぞ???」
杏奈「っ......。」
喜多川「.....。(ふざけるな...クソッ!!散々好き勝手しやがって...!!!)」
喜多川は中学時代、偶然杏奈と同じ学校に通っていた。しかし、当時の彼は引っ込み思案で性格も大人しく、同級生からいじめられていた。そんな時、彼を救っていたのは杏奈だった。彼女は正義感が強く、誰にも優しかった。そんな彼女とは正反対の彼はいつしか彼女に微かな憧れを抱いたまま中学を卒業し、高校に上がって2年間、異なるクラスに配属され、次第に彼女への憧れは薄れていった。しかし、3年、高校生最後の学年に上がった時、奇跡的に杏奈と同じクラスになったのだ。憧れの熱は再び舞い上がったのだ。そんな彼女が今、自分を庇った結果、容姿も中身も醜い化け物によって好き勝手されようとしている...。
喜多川「....今目の前にいるコイツが腹立たしい...でも...それ以上に憧れの人が酷い目にあってるのに、こうして何も出来ずにただ黙って見ている自分自身に腹が立つっ!!!!」
悪魔「うひひ...それじゃあまずは邪魔な布切れを引っペがしてっと...」
杏奈「や...やめろっ!この変態悪魔!」
喜多川「......。」
悪魔が杏奈の服の胸元に指の爪を引っ掛け、引き裂いて丸裸にしようとした瞬間、急に周辺の気温が下がり始めた。あまりの寒さに凍えた悪魔は杏奈をパッと手放し、身体を震わせる。
悪魔「なななんだ!?この寒さ!?」
杏奈「これは.....!?」
杏奈が驚きながら周りを見渡すと、周りが冷凍庫になったかのように霜や氷で白く染まっていた。冷気が発生している方を見ると、サラサラな黒髪と衣服の布が吹雪でヒラヒラと揺れている。その時の表情は静かだが激しい怒りを感じる。
喜多川「悪いけど...もう我慢の限界だ」
杏奈「喜多川........くん.....?」
喜多川「ごめんね...白石さん...僕が弱かったせいで君が傷付く事になってしまって...今度は、僕が助ける番だ!!」
杏奈「.......っ!!」
その瞬間杏奈は、過去の記憶が蘇った。そうか...あの子だったんだ...身体が小さくて大人しいからよくいじめられてたっけ...その度に私が助けてたんだったな.....そんな子が...私を助けるために...。
喜多川「お前を絶対に許さない!命諸共氷漬けにしてやる!!」
悪魔「あっ!?」
喜多川の右腕が突然藍色に光り出した。袖を捲ると、そこには色は違うが、杏奈と全く同じ形の紋章が浮かび上がっていた。
杏奈「まさか!レイジング!?」
悪魔「ま、眩しい...!」
喜多川「さあ、いくよ...全てを凍てつかせる槍..."アイシクルランス"」
喜多川がレイジング能力を発動させると、右手に冷気が集まり、出来たのは、ほぼガラスのように透き通っている氷の槍だった。矛先にはマイナス数千万℃の冷気がまとわりついている。
悪魔「何が...氷の槍だぁ!!貴様の骨ごとへし折ってくれる!!」
悪魔の怒りが限界を超え、自分に向かって走ってくる喜多川に向かって黒い三又の槍を突き出す。武器の長さ、力の差、明らかに自分が有利だと思い、勝利を確信しながらニヤリと笑う悪魔だったが、その予想は大きく外れた。何故なら、喜多川が自分の槍を躱し、そのままそれをジャンプ台にして高く飛び、勢いが着いたまま悪魔の額から後頭部にかけて氷の槍を貫通させた。
喜多川「いくらパワーや武器が強くたって頭が悪ければ意味が無いよね♪動きが単純過ぎてあくびが出たよ」
悪魔「....ば.....か....な.....あり...えん...」
喜多川「僕が走った時、君も走り出してくれたのは有難かったよ♪その勢いのおかげで槍の貫通力が増した、君は頭が悪いからそんな事が分からなかったんだよ、来世はもっと賢い頭で生まれ変わりな♪」
そう言い終わると、悪魔は槍の強力な冷気によって全身が凍りついた。そこで喜多川が指をパチンと鳴らすと氷のオブジェとなった悪魔は粉々に砕け散り、絶滅した。
杏奈「すっっっっご!」
喜多川「ふぅ...うっ...」
バタッ
杏奈「喜多川くん!!!」
杏奈はとりあえずレイジング覚醒の反動で気を失った喜多川を担いで異世界ゲートの出口を通り、現実世界に帰還した。
ー氷室邸の病室ー
大門「心配ございません、杏奈様と同じく、レイジング覚醒の反動で気絶しただけです。すぐに意識は戻るかと♪」
美里「よかったわね、杏奈♪」
健「よくやった、お前も、彼も大手柄だったぞ♪」
杏奈「うん、ありがとう♪」
手当てが終わった杏奈は、ベッドで静かに寝息を立て、穏やかな顔で眠っている喜多川の耳元で囁く。
杏奈「.....ありがとう.....卓郎くん♪」
次回へ続く
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