パパと一緒

kudamonokozou

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パパと遊びたい

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「ねえ、パパ、起きてよう。遊ぼうよう。」
今日はうららかな日曜日です。エリちゃんは、まだベッドで寝ているパパをり動かして起こそうとしています。

エリちゃんのパパは、サラリーマンです。毎晩帰ってくるのが遅く、そのころにはエリちゃんは、とっくに寝てしまっています。
休みの日も、パパは仕事に行ったりゴルフに行ったりで、エリちゃんはなかなか遊んでもらえません。そして今日も・・・

「しまった、今日は部長とゴルフに行く日だった!おい、今何時だ?」

さっきまでちっとも起きなかったのがうそのように、パパはベッドから飛び起きて、大慌おおあわてで出かける支度したくを始めました。手伝うママもてんてこまいです。エリちゃんは、一人つまらなさそうにしていました。

もうまるでどたばたして、パパは車を発進させました。
「部長怒ってるだろうな、まいったよ。」

パパは、なんだか情けない声を上げました。それからルームミラーに目をやって、ぎょっとしました。
なんと、エリちゃんが後部座席に座っているではありませんか。
「エリ、なんでここにいるんだ!」
パパはいきなり怒鳴りました。
「エリ、パパと一緒にいたかったの。」
エリちゃんは泣き出しそうになりながらも、そう答えました。

パパは携帯電話をかけて、ママにエリちゃんをゴルフ場まで迎えに来るように連絡しました。

「パパ、運転気をつけてね。」
と、エリちゃんが小さな声で言ったその時です。
ピカッと白い光が辺り全体をつつみ込み、何も見えなくなりました。
「うわー!」
「きゃー!」

大地震におそわれたのでしょうか、車は上下に大きく揺れました。次にふわっと宙に浮いたような感じがして、それっきり二人は気を失ってしまいました。

しばらく時が経ちました。

「パパ、起きて。」
エリちゃんが先に目を覚まして、パパを揺り動かして起こしました。
「うっ、ここはどこだ?」
パパはまだ半分けた様子でしたが、車から降りて、車体の周りをぐるりと確かめました。
「良かった、どこも傷ついてない。そうだ、部長に電話しなくっちゃ。あれ、つながらない、圏外けんがいだ。おかしいなあ。」

それからパパは周りの景色を眺めてみて、驚きました。
「あれっ、ここは山の上じゃないか。見たこともない場所だし、随分ずいぶん高いところに来ている。不思議だなあ。」

竜巻たつまきに巻き込まれて、飛ばされたのでしょうか。それにしてもひどく飛ばされたものです。無傷なのが不思議です。
わけが分からずぼんやりしていると、いきなり、パパの鼻先に、きらりと光るやり穂先ほさきが突き出されました。
「ひえー!」
パパは腰を抜かして、へたり込んでしまいました。

「お前ら、ここから出て行け!」
やりぬしがそう怒鳴どなりました。その男はとても小柄で、奇妙きみょう格好かっこうをしておりました。着ているものは、江戸時代の百姓のような着物でしたし、耳の先が異常にとがっていて、顔には傷のような深いしわが何本も刻まれております。まるで、映画やドラマに出てくる怪人のようです。

「いや、私たちは決して怪しいものじゃあありません。突然白い光に包まれて、それで車が・・・」
「だから、早く出て行けと言ってるんだ。俺が戻り口まで連れていってやる。」
パパもエリちゃんも、何がどうなっているのかさっぱり分かりません。
「あのー、ここは映画の撮影現場さつえいげんばか何かでしょうか。私、撮影さつえいをお邪魔じゃましましたかな。」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ!さっさと俺に付いて来い!」

「ユーリー、そこまでだ!」
やりを突きつけている男の後ろから、また別のけわしい声がしました。いつの間にか、二十名ほどの男たちが武器を持って、ユーリーと呼ばれた男を取り囲んでいました。その男たちも皆、非常に背が低く、耳先がとがって、顔に深いしわが刻まれています。ユーリーは観念して、やりを地面に落としました。何人かの男たちが、ユーリーをしばり上げてしまいました。

「危ないところでしたなあ。あの男は凶悪な殺人犯なのですよ。いや、これは失礼。私はこの国で軍隊長を務めておりますアレドと言います。」
リーダー風の男が親しげに挨拶あいさつしました。

「助けていただいてありがとうございます。私は凸凹でこぼこ商事で係長かかりちょうを務めております小林と言います。これは娘のエリです。」
「これはかわいいおじょうちゃんだ。お見受けしたところ、あなた方はよその国の方のようですなあ。それではまず入国手続きのために、役所に同行していただきます。それでは私たちに付いてきてください。」
「あのう、でも車が。」
「車?ああ、あれですか。山道は狭くて険しいし、途中には橋もあります。あんな大きな物では下りることはできませんよ。」

とても気がかりでしたが、パパは仕方なく車を見捨てて、アレドの一行に付いて行きました。エリちゃんもパパと手をつないで、遅れないように一生懸命に歩きました。

役所に着くと、パパとエリちゃんはたたみの部屋に通されました。役所と言うより、屋敷のような建物です。ここで手続きをするのかと座って待っていると、ごちそうが目の前に並べられました。

「やあやあ、これはようこそ。」
ふすまが開いて、きらびやかな着物を着た男がにこやかに入ってきました。

「私はこの国の将軍のニチリです。ま、どうぞ召し上がれ、召し上がれ。」
この男も背が低く、ユーリーやアレドたちと同じような格好かっこうです。この国の男たちは皆、小学校低学年くらいしか背丈せたけがないのでした。その分、何でも小さく作られているわけで、パパは門をくぐる時も、部屋に入る時も、ずいぶんかがまなければならないのでした。

パパとエリちゃんは、お腹が空いていたので、遠慮なくごちそうを平らげました。
一息ついたころあいを見はからって、ニチリ将軍がたずねてきました。

「小林さん、あなたは随分ずいぶん大きな体をしてますねえ。相撲もさぞお強いでしょう。」
「ええっ、相撲ですか。いやあ、子供の頃遊びでとったことはありますが、全然・・・」
パパが言い終わらないうちに、相撲のまわしを締めた男が庭に現れました。

「この男は関脇です。小林さん、食後の運動に一番とってみてください。」
パパは本当はやりたくありませんでしたが、断ると将軍の機嫌きげんそこねてしまうと思い、しぶしぶ庭に降りました。

「はっけようい、残った、残った!」
将軍が勝手に行司のかけ声をかけました。パパは夢中で相手のまわしをつかみ、力いっぱい投げをうちました。すると、あっけなくその関脇は地面に転がってしまったのです。

「ああっ!うそです、うそです。その男は関脇なんかじゃありません。序の口です。」
将軍は随分ずいぶんあわてて、関脇だと言ったことを取り消しました。
そして続けて、さらにおかしなことを言いました。
「はははっ、お見事、お見事。何、そいつはたかが素人しろうと相撲の力士です。それにしてもお強いですなあ。」
余裕を見せようとする将軍でしたが、冷や汗をかいているようでした。

パパとエリちゃんは、それからも手厚いもてなしを受けて時を過ごし、夜の眠りにきました。
ところが、エリちゃんは目が覚めてしまって、のどが乾くので水をもらおうと思い、寝室を出ていきました。
ちょうどその頃、ニチリ将軍の部屋にアレド隊長がやってきました。

「ご苦労、で、調査はどのようであった?」
「はっ、将軍殿。あの車は鉄の箱でありました。速度計がついていまして、時速二百キロまで目盛りがきざまれております。」
「な、なにっ、時速二百キロ!鉄の箱がそのような速さで走ったら、我々はどれほど犠牲者ぎせいしゃを出すことになるのか、たまったものではない!」
「それから大関の具合ですが、脾臓ひぞうを強く打ったようで、今場所の出場はどうも危ぶまれます。」
「うー、やはり小林はとんでもない野蛮人やばんじんであった。よし、予定通り小林は明朝処刑だ。娘の方は研究材料として生かしておけ。」
廊下を歩いていたエリちゃんは、偶然この二人の会話を聞いてしまいました。

『大変!』
エリちゃんは恐ろしいのをがまんして、気付かれないようにそっと寝室へ戻りました。

「パパ、起きて、大変よ。」
「むにゃむにゃ、大変?部長が怒ってるのかい。」
パパは寝ぼけています。
「将軍と隊長が話しているのを聞いたの。パパを処刑するって話してたのよ。」
「何だって!そんな馬鹿な!」
パパはいっぺんに目が覚めました。

「おい、あんたたち。」
ふすまの隙間から、押し殺したような低い声が聞こえました。
「誰だ!」
「俺だ、ユーリーだよ。脱走してきたんだ。俺は何としても、あんたたちを元の世界へ戻してやりたいのだ。」
ふすまを開けてユーリーが入って来ました。
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