ワン七探偵物語

kudamonokozou

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化け物退治の依頼(推理編)

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一日置いて、弥三郎の痛みも少し良くなったので、角太郎は弥三郎を連れて、ワン七のところへ訪ねていきました。

「聞けばワン七さんは、岡っ引きのときに、熊もやっつけたことがあるそうですね。」
角太郎に昔の話を出されて、ワン七はちょっと照れくさくなりました。

「はっ、はっ、熊蔵の件ですか。あの時は私も必死でしたね。熊蔵の爪にやられたら、ひとたまりもありませんから。でも私の方が動きが速いので、何とか召し取ることができました。」

『ひょっとしたら、化け物というのは熊だったのだろうか。』
と角太郎は一瞬考えました。
『しかし熊にしては、弥三郎の傷は軽い。足跡も無かった。』と、角太郎は熊ではないと確信しました。

角太郎は意を決して、ワン七に伝えました。

「ワン七さんに依頼したいのは、他でもありません。化け物退治です。」
と依頼主の道具屋の若主人から依頼内容を聞かされて、ワン七もさすがに冗談かと思いました。

「化け物が出たのですか。お宅のお店には、色々古風なものが置いてありますからね。」
「ワン七さん、私はいたって真面目なのですよ。茶化さないでください。」
もともとふくよかな角太郎の顔が、ぷくーとふくれました。

一昨日おとといの夜、番頭が化け物に襲われて、代金の金貨を取られたのです。この後は、ささ、番頭さん、おまえさんから話しておくれ。」

顔中に傷を受けた番頭の顔は、一面さらし木綿でおおわれておりました。

角太郎に促されて、弥三郎は一昨日おととい角太郎や店の者に話したことを、滔々とうとうとワン七に話しました。

ワン七は、話を聞き終わって、弥三郎にこう言いました。
「それは不幸中の幸いでしたね。」

弥三郎は一瞬きょとんとしてから、
「え?あ、まあそうです。命を取られなかっただけでも、全く不幸中の幸いでした。」
と答えました。
ここからワン七は、調査を始めていきます。

「熊の爪でさえ、もし体に食らったら、普通は致命傷になるほどの怪我けがを負うはずです。命を落とすかも知れません。ましてや化け物相手で、その程度の怪我けがで済んだとは、本当にようございましたね。」
ワン七にそう言われて、弥三郎は返事をせずに下を向いてしまいました。

さらにワン七は続けました。
「番頭さんを逆さまにして、上下に振ったのですか。変わった化け物ですね。」
「はい、まったくです。身の丈は八尺もあったでしょうか。たぶん、私の懐中のものを振り落とそうとしたのですよ。そのせいで私は、大事な代金を落としてしまったのです。」

ここで角太郎が、今朝発見したことを述べました。
「それがね、ワン七さん。今朝私は、化け物が出たというところを見に行ったのですよ。確かに弥三郎の足駄あしだの跡はたくさん残っていたのですが、その他の足跡は全く見つからなかったのです。化け物だから、足跡を消し去っていったのでしょうか。」
これを聞いて、弥三郎はすごく困った顔をしました。

「ワン七さん、どうぞ化け物を退治してください。これは世の中のためです。金は惜しみません。」
と角太郎が言ったとき、弥三郎が苦虫をかみつぶしたような顔をしたのを、ワン七は見逃しませんでした。

「とにかく、現場を見に行きます。ちょっとその場所に案内してくれませんか。」

角太郎、弥三郎に案内されて、ワン七が化け物が出たという場所に到着しました。

そこは確かに人気ひとけの少ない、川沿いの道でした。
ワン七は足跡や、川の土手の様子を細かく観察しました。
そしてあちこちを、くんくんぎました。

「ようがす。弥三郎が見たという化け物退治を、お引き受けいたしやす。しかし角太郎さん、そうとうな出費になるかもしれませんが、覚悟はよろしいですか。」
「分かりました。この角太郎、男でございます。世の中のためになるなら、出費は覚悟の上です。」

角太郎の言葉を聞いて、弥三郎は顔が青白くなりました。
『これだからお坊ちゃんは困る。先代なら、こんな馬鹿な真似はしなかったのに…』
ワン七は、「あーあ。」という弥三郎の深いため息を聞き漏らしませんでした。
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