4 / 12
化け物退治の依頼(推理編)
しおりを挟む
一日置いて、弥三郎の痛みも少し良くなったので、角太郎は弥三郎を連れて、ワン七のところへ訪ねていきました。
「聞けばワン七さんは、岡っ引きのときに、熊もやっつけたことがあるそうですね。」
角太郎に昔の話を出されて、ワン七はちょっと照れくさくなりました。
「はっ、はっ、熊蔵の件ですか。あの時は私も必死でしたね。熊蔵の爪にやられたら、ひとたまりもありませんから。でも私の方が動きが速いので、何とか召し取ることができました。」
『ひょっとしたら、化け物というのは熊だったのだろうか。』
と角太郎は一瞬考えました。
『しかし熊にしては、弥三郎の傷は軽い。足跡も無かった。』と、角太郎は熊ではないと確信しました。
角太郎は意を決して、ワン七に伝えました。
「ワン七さんに依頼したいのは、他でもありません。化け物退治です。」
と依頼主の道具屋の若主人から依頼内容を聞かされて、ワン七もさすがに冗談かと思いました。
「化け物が出たのですか。お宅のお店には、色々古風なものが置いてありますからね。」
「ワン七さん、私はいたって真面目なのですよ。茶化さないでください。」
もともとふくよかな角太郎の顔が、ぷくーと膨れました。
「一昨日の夜、番頭が化け物に襲われて、代金の金貨を取られたのです。この後は、ささ、番頭さん、おまえさんから話しておくれ。」
顔中に傷を受けた番頭の顔は、一面晒し木綿でおおわれておりました。
角太郎に促されて、弥三郎は一昨日角太郎や店の者に話したことを、滔々とワン七に話しました。
ワン七は、話を聞き終わって、弥三郎にこう言いました。
「それは不幸中の幸いでしたね。」
弥三郎は一瞬きょとんとしてから、
「え?あ、まあそうです。命を取られなかっただけでも、全く不幸中の幸いでした。」
と答えました。
ここからワン七は、調査を始めていきます。
「熊の爪でさえ、もし体に食らったら、普通は致命傷になるほどの怪我を負うはずです。命を落とすかも知れません。ましてや化け物相手で、その程度の怪我で済んだとは、本当にようございましたね。」
ワン七にそう言われて、弥三郎は返事をせずに下を向いてしまいました。
さらにワン七は続けました。
「番頭さんを逆さまにして、上下に振ったのですか。変わった化け物ですね。」
「はい、まったくです。身の丈は八尺もあったでしょうか。たぶん、私の懐中のものを振り落とそうとしたのですよ。そのせいで私は、大事な代金を落としてしまったのです。」
ここで角太郎が、今朝発見したことを述べました。
「それがね、ワン七さん。今朝私は、化け物が出たというところを見に行ったのですよ。確かに弥三郎の足駄の跡はたくさん残っていたのですが、その他の足跡は全く見つからなかったのです。化け物だから、足跡を消し去っていったのでしょうか。」
これを聞いて、弥三郎はすごく困った顔をしました。
「ワン七さん、どうぞ化け物を退治してください。これは世の中のためです。金は惜しみません。」
と角太郎が言ったとき、弥三郎が苦虫をかみつぶしたような顔をしたのを、ワン七は見逃しませんでした。
「とにかく、現場を見に行きます。ちょっとその場所に案内してくれませんか。」
角太郎、弥三郎に案内されて、ワン七が化け物が出たという場所に到着しました。
そこは確かに人気の少ない、川沿いの道でした。
ワン七は足跡や、川の土手の様子を細かく観察しました。
そしてあちこちを、くんくん嗅ぎました。
「ようがす。弥三郎が見たという化け物退治を、お引き受けいたしやす。しかし角太郎さん、そうとうな出費になるかもしれませんが、覚悟はよろしいですか。」
「分かりました。この角太郎、男でございます。世の中のためになるなら、出費は覚悟の上です。」
角太郎の言葉を聞いて、弥三郎は顔が青白くなりました。
『これだからお坊ちゃんは困る。先代なら、こんな馬鹿な真似はしなかったのに…』
ワン七は、「あーあ。」という弥三郎の深いため息を聞き漏らしませんでした。
「聞けばワン七さんは、岡っ引きのときに、熊もやっつけたことがあるそうですね。」
角太郎に昔の話を出されて、ワン七はちょっと照れくさくなりました。
「はっ、はっ、熊蔵の件ですか。あの時は私も必死でしたね。熊蔵の爪にやられたら、ひとたまりもありませんから。でも私の方が動きが速いので、何とか召し取ることができました。」
『ひょっとしたら、化け物というのは熊だったのだろうか。』
と角太郎は一瞬考えました。
『しかし熊にしては、弥三郎の傷は軽い。足跡も無かった。』と、角太郎は熊ではないと確信しました。
角太郎は意を決して、ワン七に伝えました。
「ワン七さんに依頼したいのは、他でもありません。化け物退治です。」
と依頼主の道具屋の若主人から依頼内容を聞かされて、ワン七もさすがに冗談かと思いました。
「化け物が出たのですか。お宅のお店には、色々古風なものが置いてありますからね。」
「ワン七さん、私はいたって真面目なのですよ。茶化さないでください。」
もともとふくよかな角太郎の顔が、ぷくーと膨れました。
「一昨日の夜、番頭が化け物に襲われて、代金の金貨を取られたのです。この後は、ささ、番頭さん、おまえさんから話しておくれ。」
顔中に傷を受けた番頭の顔は、一面晒し木綿でおおわれておりました。
角太郎に促されて、弥三郎は一昨日角太郎や店の者に話したことを、滔々とワン七に話しました。
ワン七は、話を聞き終わって、弥三郎にこう言いました。
「それは不幸中の幸いでしたね。」
弥三郎は一瞬きょとんとしてから、
「え?あ、まあそうです。命を取られなかっただけでも、全く不幸中の幸いでした。」
と答えました。
ここからワン七は、調査を始めていきます。
「熊の爪でさえ、もし体に食らったら、普通は致命傷になるほどの怪我を負うはずです。命を落とすかも知れません。ましてや化け物相手で、その程度の怪我で済んだとは、本当にようございましたね。」
ワン七にそう言われて、弥三郎は返事をせずに下を向いてしまいました。
さらにワン七は続けました。
「番頭さんを逆さまにして、上下に振ったのですか。変わった化け物ですね。」
「はい、まったくです。身の丈は八尺もあったでしょうか。たぶん、私の懐中のものを振り落とそうとしたのですよ。そのせいで私は、大事な代金を落としてしまったのです。」
ここで角太郎が、今朝発見したことを述べました。
「それがね、ワン七さん。今朝私は、化け物が出たというところを見に行ったのですよ。確かに弥三郎の足駄の跡はたくさん残っていたのですが、その他の足跡は全く見つからなかったのです。化け物だから、足跡を消し去っていったのでしょうか。」
これを聞いて、弥三郎はすごく困った顔をしました。
「ワン七さん、どうぞ化け物を退治してください。これは世の中のためです。金は惜しみません。」
と角太郎が言ったとき、弥三郎が苦虫をかみつぶしたような顔をしたのを、ワン七は見逃しませんでした。
「とにかく、現場を見に行きます。ちょっとその場所に案内してくれませんか。」
角太郎、弥三郎に案内されて、ワン七が化け物が出たという場所に到着しました。
そこは確かに人気の少ない、川沿いの道でした。
ワン七は足跡や、川の土手の様子を細かく観察しました。
そしてあちこちを、くんくん嗅ぎました。
「ようがす。弥三郎が見たという化け物退治を、お引き受けいたしやす。しかし角太郎さん、そうとうな出費になるかもしれませんが、覚悟はよろしいですか。」
「分かりました。この角太郎、男でございます。世の中のためになるなら、出費は覚悟の上です。」
角太郎の言葉を聞いて、弥三郎は顔が青白くなりました。
『これだからお坊ちゃんは困る。先代なら、こんな馬鹿な真似はしなかったのに…』
ワン七は、「あーあ。」という弥三郎の深いため息を聞き漏らしませんでした。
0
あなたにおすすめの小説
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
ぼくのだいじなヒーラー
もちっぱち
絵本
台所でお母さんと喧嘩した。
遊んでほしくて駄々をこねただけなのに
怖い顔で怒っていたお母さん。
そんな時、不思議な空間に包まれてふわりと気持ちが軽くなった。
癒される謎の生き物に会えたゆうくんは楽しくなった。
お子様向けの作品です
ひらがな表記です。
ぜひ読んでみてください。
イラスト:ChatGPT(OpenAI)生成
不幸でしあわせな子どもたち 「しあわせのふうせん」
山口かずなり
絵本
小説 不幸でしあわせな子どもたち
スピンオフ作品
・
ウルが友だちのメロウからもらったのは、
緑色のふうせん
だけどウルにとっては、いらないもの
いらないものは、誰かにとっては、
ほしいもの。
だけど、気づいて
ふうせんの正体に‥。
黒地蔵
紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。
しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。
そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。
そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。
野良犬ぽちの冒険
KAORUwithAI
児童書・童話
――ぼくの名前、まだおぼえてる?
ぽちは、むかし だれかに かわいがられていた犬。
だけど、ひっこしの日に うっかり わすれられてしまって、
気がついたら、ひとりぼっちの「のらいぬ」に なっていた。
やさしい人もいれば、こわい人もいる。
あめの日も、さむい夜も、ぽちは がんばって生きていく。
それでも、ぽちは 思っている。
──また だれかが「ぽち」ってよんでくれる日が、くるんじゃないかって。
すこし さみしくて、すこし あたたかい、
のらいぬ・ぽちの ぼうけんが はじまります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる