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やっぱり世の中はそんなもの。うまくいくことなんてそうそうない
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何日か経って、意外にも良夫の方から、少し嬉しそうに声をかけて来た。
「資格の専門学校の話だけどさ、ネットで調べたんだけど、DVD受講という方法があるらしい。自宅にテキストと、講義を録画したDVDが送られて来て、自分の好きな時に学習できるんだ。」
「えっ!?」
明美は嫌な予感しか感じなかった。
「DVDだと、聞き逃してもまた何回でも聞き直せるだろう。その方がいいじゃないか。質問だって電子メールを使ってできるんだ。それに通いの場合、交通費だって馬鹿にならないじゃないか。計算してみろよ。」
交通費に関してはそれもそうだが、絵のスクールに通う時は、交通費の心配など良夫は一切しなかったではないか、と、明美は内心憤慨した。
費用を聞くと、三十万だと言う。
「絵画スクールと同じじゃないか。」
良夫は平気で言い放ったが、あの時とは事情が違う。
これから少なくとも、夫は三年間は収入ゼロを宣言しているのだ。
『俺が働いて得た退職金だ。』
と、良夫はうそぶいたが、常識的に考えて、家事やパートで家庭を守った主婦のおかげを思わないのだろうか。
明美は、良夫がヒモのように見えてきて、気味悪く感じた。
しかし、子供たちの父親である。
ここは、とにかく耐え忍ぼうと、明美は覚悟した。
いずれ、目鼻が付くようになったら、夫も考え直してくれるだろうと、楽観的に考えるしかなかった。
二週間ほどして、教材が送られて来た。良夫は早速、勉強にとりかかった。
何日か経って、良夫はこんな感想を述べた。
「ふー、講義を聴くことが、こんなに体力を使うものだとは思わなかった。でもよく分かるよ。流石はプロだな。今まではやっぱり勉強方法が良くなかったんだな。」
そんな良夫の様子を見ていると、明美はひょっとしたら良夫は、世間のことを分かっていない甘ちゃんなのではないかと、今さらになって考えるようになった。
運よく大企業に就職できたけれど、その後は、与えられた仕事をこなすだけの会社人間だったので、修羅場をくぐってきたことが無いのではないかと。
毎月送られてくるDVDがペースメーカーになっているようで、良夫は予定通りの学習量をこなしているようだった。
もっとも、たいていの受講生は働きながら良夫と同じペースの学習課程をこなしているのであるから、できて当然とも言えた。
肝心なことは、良夫が合格ラインに達しているかどうかだ。
気が気でない明美は、良夫に講義の単元の終わりごとにある小テストの結果を見せてもらった。良夫はいつも高得点を取っていた。
「あなた、がんばってるのね。」
「そりゃ、そうさ。」
良夫は随分自信があるように見えた。それでも明美は不安を拭い去ることはできなかった。とにかく実際に合格するまでは。
月日は流れ、試験当日まで後二ヶ月を切った頃に、専門学校主催の模擬試験があった。良夫はこれも自宅で受けた。
結果は合格ラインに遠く及ばないものだった。
「大丈夫だ。模擬試験は本番の試験よりも、難度が高く設定してあるんだ。それに試験まで、まだ一ヶ月以上ある。想定通りだよ。」
良夫は珍しく強がりを言った。この強がりが結果に結びついてくれれば良いのだがと、明美は危惧した。
税理士の試験というのは、十一科目のうち五科目を選択して、それに合格すれば良い制度になっている。
しかも科目合格制度と言って、一年で五科目とも合格しなくてもよく、二年あるいは三年にまたがって合計五科目を合格しても良いのだ。
良夫は一年目は五科目合格をあきらめ、三科目に狙いを絞った。
半分以上合格できれば、勝算大いにありという心積もりであった。
明美はこっそり、良夫の小テストの結果を盗み見した。
いつも満点近い。
『おかしい。』
そう実感した明美は、テキストなどを調べてみた。
『やっぱり。』
教材には模範解答が付いていた。
良夫は、模範解答を見て、テストを解いていたのだ。
これでは、勉強にはならない。
こんな姑息な手段を取って、それで気休めを得ようとしている良夫に失望した。
『合格なんて、不可能だ。』
と、明美は絶望を感じた。
ついに試験の日がやってきた。
明美はそれでも、精魂込めて作ったお弁当を良夫に手渡して見送った。
朝でも太陽がじりじり照りつける、暑さの厳しい夏の日であった。
試験から帰って来た良夫は、できたともできなかったとも言わず、ただ黙っていた。
その顔は俯いていた。
そうして三日間の試験が終わった。
「あなた、手ごたえはどうだったの。」
と、明美は笑顔で尋ねてみた。
「そんなもの分からないよ。初めてだからな。」
良夫の返事はそっけなかった。
試験の後二週間ほどの間、良夫は惚けたような日々を過ごした。
それからおもむろに、残り二科目の勉強をぼつぼつ始めた。明美から見ても覇気は感じられなかった。
さらに月日は流れ、結果発表の日がやって来た。世間では人々がクリスマスの気分に浮かれ始める頃であった。
結果は散々であった。一教科も合格できなかったのである。
「くそっ、あの問題さえ、あそこで勘違いしていなければ!」
良夫はさんざん負け惜しみを並べたが、そもそも実力が足りていないことは、明美は感づいていたし、良夫も本心は分かっていただろう。
しかし、それを認められないところに、良夫の弱さがあった。
そもそも、専門学校からとっくに解答速報が出されていたのだから、自己採点で合否状況はとっくに把握できていたはずだ。
良夫は現実から目を背けていただけだった。
しかし、明美は夫を責めなかった。
「あなた、また次の年があるじゃない。家の中で籠ってばかりいないで、少しは外で働いてみたら?」
明美は良夫を励ましたつもりであった。
だが、それは良夫にとって、プレッシャーにしかならなかった。
良夫はますます意固地になって、部屋から出ないようになってきた。
良夫は三年の約束をしたのだから、後二回の受験で合格しなければならない。
合格の感触を経験したことの無い良夫にとって、それはとてつもなく高い壁に感じられた。
一年間毎日必死で勉強すれば、一発合格できるかもしれない。万一それができなくても、何科目か合格できているはずだから、三年かければ何とかなるだろうと、良夫は高を括っていた。
取らぬ狸の皮算用の当てが外れた今、とりあえずどこかに再就職して、給料をもらいながら税理士を目指そうか。良夫はそういう手段も考えたが、なかなか実行に移せなかった。
何の肩書きもない状態だと、またすぐに辞めてしまうようなつまらない仕事に就いてしまい、却ってジリ貧になるだろうと、良夫は臆病なことばかり考えていた。
良夫の顔にだんだん悲壮感が漂い始めた。口数もめっきり少なくなった。
その症状は深刻で、良夫の周りの空気がなんだかどんよりしているように思えるほどだった。
「あなた、勉強の進み具合はどうなの。」
ある日の夕食時、明美は思い切って聞いてみた。
「あっ、うん、やっているよ。」
何とか返事をしたが、返事をする時に、良夫の体は思わずびくっと身震いした。
その狼狽ぶりは、子供たちも気が付いたほどである。
良夫はさっさと食事を切り上げて、自分の部屋に閉じ籠ってしまった。
「お母さん、あんまりお父さんをいじめない方がいいんじゃない。」
小学六年の娘の裕美が父をかばった。
「いじめるだなんて、そんな・・・」
明美は言葉を失った。
「だけど、親父がずっと家にいるから、友達も呼べやしない。なんで仕事に行かないんだよ。」
と、中学二年の息子の浩一は、毎日家にいる父親を煙たがった。
「お父さんは資格を取る為に勉強しているのよ。前にも言ったでしょう。」
「けどさあ、社会人になったら働きながら勉強するんだろう。先生も言っていたぜ。なんで母さん一人が働いているんだよ。」
浩一は父親の行動に疑問を感じていた。
「あのね、お父さんの取ろうとしている資格はとっても難しいのよ。」
明美は何とか良夫の行動を弁解しようとしたが、そろそろ世間の事が分かり始めている息子は納得しなかった。
「資格の専門学校の話だけどさ、ネットで調べたんだけど、DVD受講という方法があるらしい。自宅にテキストと、講義を録画したDVDが送られて来て、自分の好きな時に学習できるんだ。」
「えっ!?」
明美は嫌な予感しか感じなかった。
「DVDだと、聞き逃してもまた何回でも聞き直せるだろう。その方がいいじゃないか。質問だって電子メールを使ってできるんだ。それに通いの場合、交通費だって馬鹿にならないじゃないか。計算してみろよ。」
交通費に関してはそれもそうだが、絵のスクールに通う時は、交通費の心配など良夫は一切しなかったではないか、と、明美は内心憤慨した。
費用を聞くと、三十万だと言う。
「絵画スクールと同じじゃないか。」
良夫は平気で言い放ったが、あの時とは事情が違う。
これから少なくとも、夫は三年間は収入ゼロを宣言しているのだ。
『俺が働いて得た退職金だ。』
と、良夫はうそぶいたが、常識的に考えて、家事やパートで家庭を守った主婦のおかげを思わないのだろうか。
明美は、良夫がヒモのように見えてきて、気味悪く感じた。
しかし、子供たちの父親である。
ここは、とにかく耐え忍ぼうと、明美は覚悟した。
いずれ、目鼻が付くようになったら、夫も考え直してくれるだろうと、楽観的に考えるしかなかった。
二週間ほどして、教材が送られて来た。良夫は早速、勉強にとりかかった。
何日か経って、良夫はこんな感想を述べた。
「ふー、講義を聴くことが、こんなに体力を使うものだとは思わなかった。でもよく分かるよ。流石はプロだな。今まではやっぱり勉強方法が良くなかったんだな。」
そんな良夫の様子を見ていると、明美はひょっとしたら良夫は、世間のことを分かっていない甘ちゃんなのではないかと、今さらになって考えるようになった。
運よく大企業に就職できたけれど、その後は、与えられた仕事をこなすだけの会社人間だったので、修羅場をくぐってきたことが無いのではないかと。
毎月送られてくるDVDがペースメーカーになっているようで、良夫は予定通りの学習量をこなしているようだった。
もっとも、たいていの受講生は働きながら良夫と同じペースの学習課程をこなしているのであるから、できて当然とも言えた。
肝心なことは、良夫が合格ラインに達しているかどうかだ。
気が気でない明美は、良夫に講義の単元の終わりごとにある小テストの結果を見せてもらった。良夫はいつも高得点を取っていた。
「あなた、がんばってるのね。」
「そりゃ、そうさ。」
良夫は随分自信があるように見えた。それでも明美は不安を拭い去ることはできなかった。とにかく実際に合格するまでは。
月日は流れ、試験当日まで後二ヶ月を切った頃に、専門学校主催の模擬試験があった。良夫はこれも自宅で受けた。
結果は合格ラインに遠く及ばないものだった。
「大丈夫だ。模擬試験は本番の試験よりも、難度が高く設定してあるんだ。それに試験まで、まだ一ヶ月以上ある。想定通りだよ。」
良夫は珍しく強がりを言った。この強がりが結果に結びついてくれれば良いのだがと、明美は危惧した。
税理士の試験というのは、十一科目のうち五科目を選択して、それに合格すれば良い制度になっている。
しかも科目合格制度と言って、一年で五科目とも合格しなくてもよく、二年あるいは三年にまたがって合計五科目を合格しても良いのだ。
良夫は一年目は五科目合格をあきらめ、三科目に狙いを絞った。
半分以上合格できれば、勝算大いにありという心積もりであった。
明美はこっそり、良夫の小テストの結果を盗み見した。
いつも満点近い。
『おかしい。』
そう実感した明美は、テキストなどを調べてみた。
『やっぱり。』
教材には模範解答が付いていた。
良夫は、模範解答を見て、テストを解いていたのだ。
これでは、勉強にはならない。
こんな姑息な手段を取って、それで気休めを得ようとしている良夫に失望した。
『合格なんて、不可能だ。』
と、明美は絶望を感じた。
ついに試験の日がやってきた。
明美はそれでも、精魂込めて作ったお弁当を良夫に手渡して見送った。
朝でも太陽がじりじり照りつける、暑さの厳しい夏の日であった。
試験から帰って来た良夫は、できたともできなかったとも言わず、ただ黙っていた。
その顔は俯いていた。
そうして三日間の試験が終わった。
「あなた、手ごたえはどうだったの。」
と、明美は笑顔で尋ねてみた。
「そんなもの分からないよ。初めてだからな。」
良夫の返事はそっけなかった。
試験の後二週間ほどの間、良夫は惚けたような日々を過ごした。
それからおもむろに、残り二科目の勉強をぼつぼつ始めた。明美から見ても覇気は感じられなかった。
さらに月日は流れ、結果発表の日がやって来た。世間では人々がクリスマスの気分に浮かれ始める頃であった。
結果は散々であった。一教科も合格できなかったのである。
「くそっ、あの問題さえ、あそこで勘違いしていなければ!」
良夫はさんざん負け惜しみを並べたが、そもそも実力が足りていないことは、明美は感づいていたし、良夫も本心は分かっていただろう。
しかし、それを認められないところに、良夫の弱さがあった。
そもそも、専門学校からとっくに解答速報が出されていたのだから、自己採点で合否状況はとっくに把握できていたはずだ。
良夫は現実から目を背けていただけだった。
しかし、明美は夫を責めなかった。
「あなた、また次の年があるじゃない。家の中で籠ってばかりいないで、少しは外で働いてみたら?」
明美は良夫を励ましたつもりであった。
だが、それは良夫にとって、プレッシャーにしかならなかった。
良夫はますます意固地になって、部屋から出ないようになってきた。
良夫は三年の約束をしたのだから、後二回の受験で合格しなければならない。
合格の感触を経験したことの無い良夫にとって、それはとてつもなく高い壁に感じられた。
一年間毎日必死で勉強すれば、一発合格できるかもしれない。万一それができなくても、何科目か合格できているはずだから、三年かければ何とかなるだろうと、良夫は高を括っていた。
取らぬ狸の皮算用の当てが外れた今、とりあえずどこかに再就職して、給料をもらいながら税理士を目指そうか。良夫はそういう手段も考えたが、なかなか実行に移せなかった。
何の肩書きもない状態だと、またすぐに辞めてしまうようなつまらない仕事に就いてしまい、却ってジリ貧になるだろうと、良夫は臆病なことばかり考えていた。
良夫の顔にだんだん悲壮感が漂い始めた。口数もめっきり少なくなった。
その症状は深刻で、良夫の周りの空気がなんだかどんよりしているように思えるほどだった。
「あなた、勉強の進み具合はどうなの。」
ある日の夕食時、明美は思い切って聞いてみた。
「あっ、うん、やっているよ。」
何とか返事をしたが、返事をする時に、良夫の体は思わずびくっと身震いした。
その狼狽ぶりは、子供たちも気が付いたほどである。
良夫はさっさと食事を切り上げて、自分の部屋に閉じ籠ってしまった。
「お母さん、あんまりお父さんをいじめない方がいいんじゃない。」
小学六年の娘の裕美が父をかばった。
「いじめるだなんて、そんな・・・」
明美は言葉を失った。
「だけど、親父がずっと家にいるから、友達も呼べやしない。なんで仕事に行かないんだよ。」
と、中学二年の息子の浩一は、毎日家にいる父親を煙たがった。
「お父さんは資格を取る為に勉強しているのよ。前にも言ったでしょう。」
「けどさあ、社会人になったら働きながら勉強するんだろう。先生も言っていたぜ。なんで母さん一人が働いているんだよ。」
浩一は父親の行動に疑問を感じていた。
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