東京ナイトピーチ

狗嵜ネムリ

文字の大きさ
23 / 23
バトルオブライブ――王者奪還戦

 ゆっくりと貫かれながら雀夜にしがみつく俺に、雀夜が言った。
「お前は心配し過ぎだ、色々とな」
「う、……だ、だって……あっ……」
「俺の評価だとか、売上だとか、自分が淫乱だとか、そんなモン気にしなくていい。お前が素直にやりたいことだけをやれ」
「あ……」
 俺のやりたいこと。……そんなの、決まってる。
「……でも雀夜、俺が突っ走ったら怒るでしょ」
「お前はまだ子供だから空気も読めねえが、今より成長すれば自然と物事の判断ができるようになるだろ。俺の傍にいてそれが出来ねえとは言わせねえぞ」
「う、うん……雀夜に怒られそうなことは、しないようにする……けど、あっ……」
「限度を超えそうになったら止めてやる。お前の口の塞ぎ方は分かってるからな」
「ど、どういう意味――あっ、あぁっ! やっ、雀夜っ……! やあっ……」
 雀夜の腰が打ち付けられ、その後はもう言葉にならなかった。激しく俺の中を前後する熱に思考が奪われ、萎えていたはずのそれが再び芯を持ち始める。
「は、あぁっ……、気持ちぃ、雀夜っ……」
「そうやって、素直に感じてろよ」
「う、あ……雀夜っ、雀夜ぁ、……! もっと、欲し……もっと……あぁっ」
 しがみついていた俺の腕を引き剥がし、雀夜が強く指を絡ませてきた。そのまま体を倒し自重で俺をベッドに押し付け、深く口付けられる。
 何度も激しく貫かれながら密着し、キスをして、舌を絡ませ合って――何だか、二人が一つの塊になって溶けて行くみたいだ。
 そんな甘い夢を見ているような感覚こそが、愛あるセックスの醍醐味なのかもしれない。


「……クソ、予定外に本気出した」
「ごめんね雀夜、大丈夫?」
「ガキに心配されるほどヤワじゃねえ」
 結局あの後「素直に」何回戦もねだった俺のせいで、雀夜の体力ゲージが一気に減ってしまった。それでも応えてくれるのは嬉しかったし、こうしてくっついて寝転がっているだけで幸せだ。……まあ雀夜のことだから、優しいのも今日だけなのかもしれないけれど。
「あ、凄いよほら。『今日のライブは雀夜と桃陽の付き合った記念日動画』だって、コメントされてる」
「だから、そういうものを見るなって言っただろうが」
「嬉しいコメントは見てもいいじゃん。『アーカイブ永久保存』だって」
「絶対残さねえ」
「自分でやった企画なのに? 俺も後でまた見返そうっと」
「お前のバカ面が何万回も再生されるのはいいかもな」
 そんな意地悪も雀夜らしくて好きだけれど、これからのことを思うと今まで通りにはいかない。
 俺と雀夜が「公式のカップル」になったってことは、今後の動画にも影響が出てくるということだ。本当のパートナーなのに下手な動画なんて見せられないし、これまで以上に気合を入れないと。
「無理矢理系の動画とか、ちょっと演技の方も頑張らないとね。雀夜はそのままでもいいけど、俺は嫌がる演技って苦手だからなぁ。どうせ付き合ってるんだしって思われちゃうと、設定にリアリティがなくなるよね」
「どうにでもなるだろ、そんなモン。下手な演技したら本気で犯し殺す勢いでヤるぞ」
「……冗談じゃないから怖いんだよなぁ……」
 溜息と同時にスマホを閉じて、俺は雀夜の胸板に頭を乗せた。
「まあでも、俺の場合は雀夜に尻叩かれるのが一番気合入るから。丁度いいかもね」
「今回のライブはお前にケツ叩かれた結果だったけどな」
「え?」
「……あいつらの再生数は軽く超えただろうよ」
 そう言って、雀夜が目を閉じ寝息を立て始めた。
 雀夜が本気になったのは、俺が康政に変なちょっかいを出されたからかと思ったけれど。
 ……もしかして、雀夜にずっと王者でいて欲しいという俺の思いが伝わったんだろうか?

 *

「おはよう、桃陽。昨日のライブ、社内でも好評だったぞ」
「松岡さん! もう本当にびっくりしたんですから、今度からはちゃんと俺にも教えといてくださいよ!」
「済まなかった。でもその反応が逆に良かった」
 松岡さんが上機嫌なのはきっと、俺と雀夜の望む結果が得られたということだ。俺はいつもより優しい笑みを浮かべている彼にしたり顔で訊いてみた。
「良かった、っていうことは?」
「ああ、南雲と康政を始め他のモデルの再生数をダントツで抜いた」
「やったぁ! イエス! よっしゃ!」
「お前たち全員のお陰でサイト全体の売上も右肩上がりだ。よくやってくれたな」
「へへ……」
「桃陽~」
 満面の笑みで頭をかいた俺の背後から、出勤したばかりの南雲がニュッと顔を出して言った。
「今回は抜かれたけど、次は俺達もいい企画考えて頑張るよ」
「俺達だって頑張るし。何たって公式パートナーだもんな」
「あれ、凄いグッときた。思わず俺も康政もパソコンの前で叫んじゃったもん」
 はしゃぐ南雲に鼻高々でふんぞり返る俺。呆れ顔で腰に手をあてる松岡さん。
 いつもの事務所の風景。スタッフ達もいつもの顔ぶれ。同じ仕事に同じ友人。
 そして――
「ガキみてえに騒いでんなよ」
「雀夜! 昨日の俺達のライブすっごい良かったって、松岡さんも南雲も言ってくれて――痛いっ! 痛い痛い痛い、何すんだよっ!」
「朝からキンキンうるせえ」
 そして、相変わらずの俺と雀夜。
「アイアンクローは嫌だっていつも言ってるのに……。もう公式パートナーなのに……」
「関係ねえ。お前の口の塞ぎ方は分かってる、って言っただろ」
「あれって、こういう意味っ?」
 だけどその「相変わらず」って、結構良いモノだ。それはだって、平穏な日常が続いているって意味でもあるのだから。
 そんな相変わらずの俺達に、松岡さんが手を叩いて言った。
「南雲は次の動画の打ち合わせ。雀夜と桃陽は午前中の写真撮り。てきぱき動けよ、『公式パートナー』」
「はいっ!」
「……はぁ。しばらくはネタにされそうだな」
 うんざりした顔で雀夜が溜息をつく。俺はそんな彼の手を取り、愛しくて堪らない「日常」の中へと今日も元気に飛び込んで行った。



 終
感想 5

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

ふわふわ
2019.12.19 ふわふわ

本日2度目のコメント失礼します…!
私のスマホ近況ボードの反映が遅くて、コメント送信した直後に見れました、、!
度々すみません!把握です!笑

2019.12.19 狗嵜ネムリ

いえいえ!
どうぞよろしくお願い致します!
╰(‘ω’ )╯三

解除
ふわふわ
2019.12.19 ふわふわ

自重すると言ったばかりですがお話が一先ず(?)終わったということでコメントしてしまいました笑
相変わらずとても面白かったです。新作の方もあるということは勿論分かっているのですが、短編は終了ですか…?それとも時間がある時に~という感じですか…?
どちらでもこれからも応援しています!
4度目?の長文失礼しました!笑

2019.12.19 狗嵜ネムリ

ありがとうございます(o^∀^o)
大変お待たせしてしまいすみません…!
ぜひまた書かせて頂きたいと思っていますので、どうぞよろしくお願い致します!
感想大変励みになっています(o^∀^o)
お付き合い下さいましてありがとうございました!

解除
ふわふわ
2019.12.05 ふわふわ

とっても面白かったです!ついに公式パートナー!本編から見てるともう感動っ!
攻めも受けもタイプがドンピシャで…()
えっちくてテンションが上がってしまい衝動のままにコメント書いてますがこう何度も書いては返信が大変ですよね…自重します。笑
これからはコメント控えますがずっと読み続けますので、、手が空いた時にでも続きを更新して頂きたいです…!(だから何様)

2019.12.05 狗嵜ネムリ

ありがとうございます!
コメント本当に嬉しいです、お気になさらないで下さいね(ノ´▽`)ノ!
公式パートナーになっても、今までと同じ相変わらずな関係が続きそうです笑
自分自身、雀夜は理想の攻め像なので書いていて楽しいです笑
これからもどうぞよろしくお願いします〜!

解除

あなたにおすすめの小説

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。