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狗嵜ネムリ

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亜利馬、VSフリーズの「リーダー」

3

〈んあぁっ……!〉
 毟られた何枚もの薔薇の花弁と一緒に、縛られたままの夕兎のペニスが激しく扱かれる。こんなことして大丈夫なんだろうか。夕兎の苦悶の表情を見る限りだと、何だか凄く痛そうだ。──だけど夕兎のそれは全然萎えていないし、先端からは体液も飛び散っている。
〈──ん、くっ、……! うぅっ……〉
 もはやまともに立っていることすら辛いらしく、夕兎の上体はガクガクと震えていた。
〈イきたいか? その程度か、夕兎〉
 左側の男が囁く。夕兎は歯ぎしりしてその男の顔を睨むが、辱められて反応している男の証は隠すことができない。
〈……殺せ!〉
 ああ、何か憧れるその台詞。何の脈絡もなく始まったVだけど、一応ストーリー的なものはあるらしい。

「んっ、ん……ぁ」
 だけど今の俺は自分のそれを扱くのに精いっぱいで、裏ジャケットの説明を読む余裕なんてなかった。夕兎の褐色肌。薄らと印影を落としている筋肉。体中のあちこちに食い込む縄と薔薇の花、狂気と絶望を宿した赤い瞳──。
 まだ第一チャプターの半分も見ていないのに、既に俺のそれはカウントダウンに入っていた。
「ふあ、あ……」
 握ったそれがビクビクと脈打つ。手のひらが熱くて汗も止まらず、息も荒い。画面の中では夕兎も俺と同じくらい息使いを荒くさせ、今にも達してしまいそうな快楽に必死で耐えている。
〈やめ、ろ……! もう、や、め……〉
 当然それは作られた企画だと分かっているが、苦痛に満ちた台詞が自然と耳に入ってくる。夕兎の演技は上手かった。
「あ、……やば、……イッちゃ……」
 一瞬ふらりと頭が後ろに倒れ、次いで電流が全身を駆け巡り、俺は自分の手で射精した──これからグループ同士でコラボレーションする予定の、モデル仲間のVを見て。

「はあぁ……」
 画面の中の夕兎より先にイッてしまい、少し恥ずかしくなる。夕兎はまだ頑張っていて、今は男の口で奉仕されながら泣きそうな顔になっている姿をカメラに映されていた。
「………」
 罪悪感に襲われたが、抜いてしまったものは仕方ない。リモコンでDVDを止めようとしたその時、──

「ブレイズの亜利馬ァ──ッ!」
「いやあぁぁぁッ!」
 勢い良く玄関のドアが開け放たれ、本物の夕兎が猛然とリビングへ駆け込んできた。……その真っ黒な出で立ちと耳をつんざくほどの大声に、一瞬本気で強盗か化物が入ってきたのかと思ってしまった。
「なっ、何ですか! 夕兎さん、突然人んちに……!」
 鍵をかけ忘れていたのは俺のミスだとしても、モデル仲間だからって許可なく勝手に上がり込むのはマナー違反だ。
「……ブレイズの、……亜利馬……」
「な、何ですか……」
 肩で息をする夕兎が、視線を俺から部屋の隅へ向けた。
〈──あっ、あ、もう……許して、くれ……我慢できないっ……ぃ、……!〉
 瞬時にして俺の顔が蒼くなる。画面ではまだ夕兎が縛られ、喘いでいた。
「あ、ち、違う。夕兎さん、これはっ……」
 画面の中で乱れる夕兎。床には丸まったティッシュ。……萎えた俺のソレ。

 どう言い訳しても通用しない状況を目にした夕兎が、真っ赤になって肩を震わせている。怒られるだろうなと思って覚悟を決めたが──意外にも夕兎は俺を見据え、笑った。
「お、俺の勝ちだ……!」
「え?」
「お前など、俺の敵ではない!」
 Vよりもよっぽど芝居がかった台詞を吐いて、夕兎がその場で踵を返した。
「邪魔したな」
「え? ど、どういうことですか? 何だったんですか、今の!」
 慌てて下着とパンツを上げ、夕兎を追いかける。
「夕兎さんっ!」
 しかし俺の呼びかけに答えることなく、夕兎はそのまま部屋を出て行ってしまった。

 ……何がしたかったんだろう、本当に。
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