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狗嵜ネムリ

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亜利馬、落ちた先はセクハラ大地獄

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 デカい買い物袋を持たされて、とぼとぼと休憩スペースに向かう俺。見られたら絶対潤歩に笑われるというのに、紙袋からしてピンクのファンシー柄で隠しようがない。
「何買ったんだよ、それ」
 案の定潤歩に言われてしまったが、動揺する俺に代わって獅琉が曖昧に場を濁してくれた。
「後のお楽しみ。企画のインスピレーションに使えればと思ってさ!」
 とにかくこの紙袋を持って歩きたくなくて、荷物が大きいからという理由で獅琉を説得しコインロッカーへ預けることになった。
 気を取り直して、次だ。
「皆さんは、何の店が見たいですか?」
「亜利馬。良かったら猫グッズを一緒に見立ててくれないか」
 竜介が親指を立ててウィンクする。猫グッズ……シロとクロのためなら、大歓迎だ。
「是非行きたいです!」

 ──と、やる気満々で出向いた先は。
「……コ、コスプレ専門店……?」
「亜利馬はこういうのが似合うだろう。割と定番だが、やはり黒猫が無難かな」
「お、俺のなんですか? てっきりシロ達のオヤツとかオモチャかと……!」
「あいつらの物は全て通販で頼んでるんだ。食い物は体調に合わせた天然素材のオーダーメイドだしな」
「それはいいんですけど……どうしてまた俺に」
 いいからいいから、と竜介が店内へ俺を連れて行った。今回は他の三人も一緒に来て、ギラギラと目を輝かせながら店内の衣装や小物を物色している。

「亜利馬、……これがいい」
 大雅が俺にふわふわの白猫ワンピースを見せ、
「やっぱこれだろ!」
 潤歩がボンテージ風のレザーセット(猫耳付き)を見せ、
「ダメダメ、亜利馬はこっち」
 獅琉が三毛猫柄のフリフリ浴衣(超ミニ丈)を見せる。
「ぜ、全部嫌です……」
「そうだよな。亜利馬は男なんだから、もっとカッコいい男らしいデザインじゃないと」
 そう言って、俺の背後にいた竜介が「それ」を見せた。
「………」
 それはトラ柄のビキニだった。完全に女の人が着るやつだ。
「お揃いのハイソックスもあるぞ。尻尾も耳もセットだし、完璧だな。強そうだ」
「ど、どこを見て『強さ』を感じてるんですかっ!」
 俺の憤りを無視して、竜介がそれらのセットをレジへと持って行く。
「これを全部頂こう。勿論、プレゼント用で包んでくれ」
「か、かしこまりました」

 獅琉も竜介も、どうして俺に恥ずかしい衣装を買い与えるんだろう。企画のインスピレーションと獅琉は言っていたけど、別にモデルの俺達がそこまでする必要なんかないのに。
「そ、そろそろ休憩にしませんか」
 僅か二店回っただけでもう疲れてしまっている。さっきと同じコインロッカーに新たに紙袋を入れ、俺達は最上階のレストラン街へ行くことにした。
「亜利馬、何食べたい?」
「いいですよ、皆さんが好きな物で」
「敢えて一つ挙げるとしたら」
「……そう言われると……オムライスとかですけど」
 オッケー決まり、と四人が洋食屋に入って行く。何なんだ一体。


 店に入ってからも、俺に対する変な雰囲気は続いていた。
「亜利馬、ソーダきたよ。ストロー俺が差してあげるね」
「……亜利馬。俺の分のサクランボもあげる」
「亜利馬のオムライス遅せぇな。言った方がいいんじゃねえのか?」
「やめておけ潤歩。亜利馬が腹を空かせて待っている姿も可愛いじゃないか」
 みんな変だ。とにかく変だ。今日になってみんなして急に俺を甘やかして……って、もしかしてこの方達、「末っ子を溺愛する俺達」を実践しているのでは。

「………」
 もしそうだとしたら、好きにさせておくべきか迷う。みんな企画のために一生懸命ということだし、ここで俺が空気を読まずにツッコミを入れたらみんなの頑張りを無駄にしてしまうのではないだろうか。
 そうだ。昨日、竜介が「家族サービスをするぞ」と言っていた。あの時点でもうこの「家族劇」は始まっていたのかもしれない。
 だとしたら俺の役割は、末っ子らしく振る舞うということか? 家族からの溺愛ぶりを理解した上でワガママを言ったりするべきか、それとも良い子でいるべきか。
「うーん……」
「亜利馬、大丈夫? お腹痛い? さすってあげようか?」
「いえいえ、大丈夫です!」
 それとも、普段のままでいるべきか。
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