異世界ラーメン屋台~俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい~

橘まさと

文字の大きさ
6 / 38
一杯目 出会いのニンニク醤油ラーメン

第6話 ラーメン屋、己のスキルを試す

しおりを挟む
■『夜鴉』ホーム・裏庭

 ダンジョン潜った日は打ち上げをする夜鴉は翌日はお休みを設けている。
 昨夜の酒盛りの様子からすればさもありなん。
 俺は朝食をセリーナやエドガーさんと共に済ませたあと、昼ご飯まで裏庭でスキルの練習をすることにした。

「屋台召喚!」

 俺はアニメとかでありそうなポーズを決めて、意識してみた。
 裏庭には昨日納車された1tトラックキッチンカーが姿をみせる。

「食材とかはどうなっているのかな」

 キッチンカーの荷台にあがり、冷蔵庫などを確認していった中身は出発前と同じような状態になっていた。
 昨日は食べ終わった調理器具類は洗っていなかったのだが、再召喚したら全て真新しくなっている。
 
「洗い物しなくていいのは楽だなぁ~」

 昨日使った器類も復活しているので、消耗品は自動補充されるようだ。
 同じ背脂ラーメンを出すだけなら、問題はなかった。

「ただ、創作系を出すためには食材変えたいんだよなぁ……」

 俺が悩んでいると、ウィンドウが目の前に現れる。


 【屋台召喚 レベル 1】

 購入した屋台を召喚することができる。

 購入した屋台に限り最善の状態に保ち、課金に応じてメニューを追加することができる。

 『効果』破壊不可、自動補充


「課金と来たか……やはり世の中は金なんだなぁ……」

 異世界でも金を稼いでいかなければならないが、屋台の食材は自動補充されていくとなるなら原価は0円。
 売れば売るだけ儲かるじゃないかと思ったが、そこに俺の労力は加味されていない。

「課金はどうやるんだ?」

 ウィンドウを眺めていると、ウィンドウが切り替わり追加メニューと費用がでてきた。
 『アルコール販売』『ソフトドリンク販売』『餃子販売』といった売り出すメニューが並ぶ、費用はこちらの通貨でもある金貨〇枚といった表示である。
 
「金貨を集めなきゃか、ちゃんと値段を決めて冒険者相手に売っていくが一番やりやすいか」

 俺は一人で納得してウィンドウを閉じようとしたら、カリンの顔が目の前にあった。

「わぁ!? いつの間に!」
「結構前からいたけど、屋台の中でうんうん唸っていたから、気づかなかったんじゃない?」

 シャツにズボンといった普段着のカリンがクスクス笑っている。
 黒髪のポニーテールが白いシャツに映えて、絵になる美人だと思った。

「今日は休みのようだけど、何か俺に用か?」
「そうそう、ほかのメンバーとも相談したんだけどね、昨日の討伐はタケシのおかげもあるから、『らぁめん代』の含めて報酬を一部渡そうって話になったのよ」

 そういって、カリンは金貨の入った袋を俺に渡してくれた。
 中には1枚の金貨と40枚の銀貨が入っている。

「ここだと金貨1枚で何ができるんだ?」

 通貨の価値は何が対価として使えるかが重要だ。
 ただ単に餃子を増やすために使っていいものではない。

「そうね、大体の宿で1泊は銀貨5枚前後、金貨1枚なら2~3日泊まれるわね。ちょっと高い宿なら金貨2,3枚はいるわ」

 カリンの説明を受けて、俺はここでの金貨は1万円くらいだと予想した。
 それならば、餃子に使ってもいいだろう。

「じゃあ、新しいメニューを増やしてみるな」

 ウィンドウを開き、メニュー画面から『餃子販売』を選択すると、手に持っていた金貨がふわっと浮かび上がり消えていった。
 そうすると、冷蔵庫が光って商品が追加されたことを示す。

「ちょっと待っててくれ、今から味見がてら作るから」
「やったわ、みんなより先に異世界の料理を味わえちゃうなんて、ラッキーね」

 キッチンカーの前で待ってもらい、俺は冷蔵庫からチルド餃子を取り出してフライパンで焼いていった。
 チルドなのですぐに焼いて使えるのがいい。

「ほらよ、餃子お待ち!」
「不思議な見た目をしているのね……」

 窓の前にあるカウンターに餃子をスチロール皿に載せて、プラスチックフォークと共に置いた。
 フォークを手に取り、カリンは餃子を突き刺して食べる。

「肉汁が出てきて、おいしい! これって、お酒に合うわよね! あ、お代わりあるなら食べたい!」
「あいよ……まぁ、俺のいた世界でも酒と一緒に食べるのは普通だな」

 リクエストに応えて、俺はチルド餃子をもう一人前焼いていった。
 冷蔵庫の大きさからストック量はそれほどでもない、一旦収納して、再召喚したら復活するけどもその手間が面倒くさそうである。

「あ! カリン! こんなところにいたっス! 何やってんスか? いい匂いしているし、抜け駆けっスか!」
「ずるい……屋台だすなら、先に行ってほしい……らぁめん食べたい」

 ミアやフェリシアが中庭にやってきて騒がしくなる。
 この二人は特に料理に目がない二人なので、餃子もラーメンもたくさん食べられるだろう。
 
「お昼前だから、ほどほどに……」

 俺は頭にタオルを巻き、ラーメンの方も作り始めた。
 会社勤めの時は休日に仕事なんて、ブラックだと思ったが、美女の笑顔を前にしてはそんな気持ちは浮かばない。
 ところ変われば、やりがいも変わるものだった。



 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

外れスキルと言われたスキルツリーは地球の知識ではチートでした

あに
ファンタジー
人との関係に疲れ果てた主人公(31歳)が死んでしまうと輪廻の輪から外れると言われ、別の世界の別の人物に乗り替わると言う。 乗り替わった相手は公爵の息子、ルシェール(18歳)。外れスキルと言うことで弟に殺されたばかりの身体に乗り移った。まぁ、死んだことにして俺は自由に生きてみようと思う。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...