異世界ラーメン屋台～俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい～

二杯目 お肌プルプル鶏皮醤油ラーメン

第８話 ラーメン屋、夜市に参加する

■ヴァルディール　月光広場

　あっという間に満月の夜がやってきた。
　その間に当日のバイトメンバーの育成もし、材料のラーシャモを確保したりと日々忙しく過ごす。
　孤児院の子達は俺が販売を始めてから、顔色が良くなり健康的になっていった。
　夜市では子供を働かせられないが、何か仕事をさせるようにできたらいいなぁ。
　夜市会場を歩いていれば、開始前の準備に人々が動いていた。
　夜店の準備中の雰囲気そのままで、俺は年甲斐もなくワクワクしている。
　空を見上げれば綺麗な星空と２つの月が満月で、優しい光が地上を照らしていた。
　普段は閑散とした広場なんだが、夜市になるとランタンなどが飾られて綺麗な雰囲気になっている。
　
「さて、ここが俺らの場所か」
「まぁまぁな場所じゃない？　金貨５枚だっけ？」
　
　指定の場所にたどり着いたら、ルーミラが姿を現して指定場所を飛び回った。
　飛び回れる範囲は結構広く、キッチンカーを出すには十分な広さである。

「屋台召喚！」

　俺は周囲の視線を気にすることなく、１ｔトラックキッチンカーを召喚した。
　ドンと巨大な屋台が一瞬で出たことにほかの屋台を立てていた人々は驚いてこちらを見ている。

「これが噂の『らぁめん屋台』ってやつかぁ……すごいスキルを持っているなぁ、あんた」

　隣で屋台を準備していたおっさんが俺の肩をたたいてきた。
　ガタイの良い肉体から放たれる肩パンチは正直言って痛い。

「いたたっ、まぁ……運、よくな？　俺はラーメン屋のタケシだ。あんたは？」
「俺はグレゴール。元冒険者で、クレープ屋をやっているぜ？」
「クレープ！？　こっちにもあるのか！」
「こっちに？」
「ああ……俺は、その〈異邦人〉ストレンジャーなんだ。だから、ついな？」
「そういうことか！　俺も昔、冒険者をやめるときに〈異邦人〉ストレンジャーから教わって、それからこの街でずっとやっているんだ」
　
　驚いたことに俺のお隣の店は俺の世界から来た人間に学んだ人が屋台を出していた。
　クレープを教えてもらった〈異邦人〉ストレンジャーについて聞きたかったが、お互い開店の時間が迫っているので作業に戻る。
　テーブルとイスを通行の邪魔にならない場所へ出して、キッチンカーの中で湯を沸かしたりと準備を進めていった。
　
「タケシさん、今日はよろしくお願いします」

　そうこうしているうちに臨時バイトをお願いしていたマイアが『一角亭』のウェイトレス姿でやってくる。
　『一角亭』のマイアとユウナは結果的に交代で協力してくれることになった。
　夕方から日付の変わる時間まではマイアの番である。

「『一角亭』の看板娘を口説いてくるなんて、あんたもやるねぇ～」
「口説くなんていうなよ、グレゴール」

　俺はグレゴールに突っ込みを入れてから、キッチンカーでの営業をはじめた。
　夜市での営業、ビールと餃子の初販売がどうなるかとワクワクしながら、お客を迎える。

「いらっしゃいませー、ここでしか食べれない、ラーメンの販売はじめます！」

　ルーミラが飛び回って、客寄せの声が大きく広場に響いた。