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おさがり女装
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二日連続の粗相により、タカシの持ち合わせの服は全滅した。デニムもスウェットも、独特の臭いと共に洗濯機の渦の中だ。
「……これ、着てなさい。それしかないんだから」
母が申し訳なさそうに(、でもどこか面白そうに)持ってきたのは、サキが数年前に着ていたパフスリーブのカットソーと、丈の短いショートパンツだった。
「待て、母さん。これは流石に……サイズ以前にデザインが……」
「文句言わないの! 従姉妹のユナちゃんも見てるんだから、清潔な服に着替えなさい!」
鏡の前に立ったタカシは、自分の姿に絶望した。
中に入っているのは、食い込むピンクのフリルショーツ。その上には、太ももが露骨に出る短いショートパンツ。上半身は、肩のラインが強調されたパステルカラーのカットソーだ。
高校生男子の骨格に、無理やり詰め込まれた「女の子」の記号。
「ぶふっ……! あはははは! 似合う、最高に似合うよお兄ちゃん!」
リビングに戻ると、サキが床を叩いて爆笑していた。
「見てよユナちゃん! 新種の生き物だよ。**『おねしょして服がなくなったから妹のお下がりを着る高校生』**っていう新種!」
「お兄ちゃん、お姉ちゃんみたい! でも脚が毛むくじゃらで気持ち悪いー!」
ユナが無邪気にタカシの露出した太ももを指差して笑う。親戚のおじさんたちも、流石にこの姿には言葉を失い、「……まあ、最近はジェンダーレスっていうしな」と、力のないフォローを投げかけるのが精一杯だった。
「ねえ、その格好でちょっとコンビニまでアイス買いに行こうよ」
サキがとんでもない提案をした。
「ふざけるな! この格好で外に出られるわけないだろ!」
「えー? じゃあ、その格好で親戚みんなの前で『僕は赤ちゃんです』って宣言する? それか、おねしょしたシーツを掲げて庭を一周してくる?」
サキの瞳は完全に獲物を追い詰めた猛獣のそれだった。
「さあ、どっちがいい? 『妹の服でコンビニ』か、『おねしょ宣言』か。選ばせてあげる」
タカシは震える手で、サキが差し出した(これまた妹のお下がりの)可愛らしいレディースのパーカーを羽織るしかなかった。
「……わかった。やればいいんだろ、やれば……」
コンビニという「外部の目」に晒される恐怖より、身内という「逃げ場のないコミュニティ」での屈辱を選んだタカシ。しかし、それが大きな間違いであったことに彼はすぐ気づくことになります。
「はい、みんな注目ー!」
サキがパンパンと手を叩き、リビングでくつろいでいた親戚一同を呼び集めました。タカシはリビングの中央、妹のパフスリーブとショートパンツ、そして中にはピンクのフリルショーツという**「完全敗北スタイル」**で立たされています。
「お兄ちゃんが、みんなに大切なお知らせがあるんだって。……ほら、アニキ。はやく」
サキに背中をド突かれ、タカシは震える声で口を開きました。
「……ぼ、僕は……」
「聞こえなーい。ユナちゃんにも聞こえるように、大きな声で!」
「……僕は! 昨日も今日も、おねしょをしてしまいました……。着る服がなくなったので、妹の女の子の服を借りています……」
静まり返るリビング。しかし次の瞬間、ユナの「わははは!」という笑い声を合図に、親戚たちの忍んでいた笑いが爆発しました。
「お兄ちゃん、もう一回! もっと可愛く言って!」
ユナがタカシの短いショートパンツの裾を引っ張りながらはしゃぎます。
「……僕は、赤ちゃんお兄ちゃんです……」
「あはは! じゃあさ、これ履いてる理由も言ってよ。その、ピンクのやつ!」
サキがタカシの腰を指差すと、親戚のおじさんが「おいおい、もう勘弁してやれよ」と言いつつ、スマホを構えて動画を回しています。
「……自分の下着を全部濡らしたので、サキの……昔の、ピンクのショーツを履いています……」
「よし、合格! じゃあ最後、その格好でユナちゃんに『お姉ちゃんって呼んでください』って言って。そしたら解放してあげる」
サキの最後の要求は、高校生としての尊厳を粉々に砕くものでした。
タカシは涙目で、自分を指差して笑い転げる小学生の従姉妹に向かって、絞り出すように言いました。
「……ユナちゃん、僕を、お姉ちゃんって……呼んでください……」
「いいよ! おねしょお姉ちゃん! あはは、変なのー!」
笑い声に包まれる中、タカシは股間に食い込むフリルの感触を、一生忘れられない呪いのように感じていました。
「おねしょ宣言」という儀式を終え、魂が抜け殻のようになったタカシ。しかし、サキの追撃は止まりません。
「はい、じゃあ約束通りアイス買いに行こ。お兄ちゃん……あ、今は『お姉ちゃん』だっけ? その格好で歩くの、楽しみだね」
タカシは抵抗する気力すら奪われ、サキに手首を掴まれて玄関へ引きずり出されました。
外の空気は冷たいですが、タカシの顔は羞恥心で沸騰しそうです。
数年前のサキの服は、高校生のタカシが着るとツンツルテン。パフスリーブは肩に食い込み、ショートパンツからは、女子でもなかなか見ないほど露骨に生足が伸びています。
「ねえ、歩き方変だよ? もっと背筋伸ばして。フリルがチラ見えしちゃうよ?」
サキがわざと大きな声で指摘します。
すれ違う近所のおばさんが、「あら、サキちゃん……と、……お友達?」と、タカシの顔を見て絶句しました。知り合いにこの姿を見られる――タカシの心の中で、何かが音を立てて崩れました。
ついにコンビニの自動ドアが開きました。
店内には数人の客と、同年代らしきバイトの店員。タカシはできるだけ体を丸め、棚の陰に隠れようとします。
「お兄ちゃん、隠れないでよ。ほら、アイス選んで。ユナちゃんの分もね」
サキがわざとタカシを広い通路へ押し出します。
かがんでアイスを選ぼうとした瞬間、ショートパンツの裾がずり上がり、例の「ピンクのフリル」が完全に露出してしまいました。
「あ、お兄ちゃん、パンツ見えてる! ピンクのやつ!」
後ろからついてきたユナが、静かな店内に響き渡る声で叫びました。
レジの店員が二度見し、近くにいた女子高生グループが「えっ、ヤバくない?」「女装……? 趣味かな?」とヒソヒソ声を漏らします。
「……もう、帰らせてくれ……」
「何言ってんの。おねしょして着替えがない赤ちゃんは、妹に服を借りるしかないでしょ? ほら、レジ。お兄ちゃんが自分でお金払ってね」
サキに促され、タカシはその「妹コーデ」のまま、震える手で財布を取り出しました。レジに立つタカシの目線には、ちょうど鏡に映った自分の姿――パステルカラーの服を着て、生足を出した、情けない顔の高校生男子――が映っていました。
「……あ、温めますか?」
店員の、同情と困惑が混ざったような声が、タカシの心に深く突き刺さりました。
「……これ、着てなさい。それしかないんだから」
母が申し訳なさそうに(、でもどこか面白そうに)持ってきたのは、サキが数年前に着ていたパフスリーブのカットソーと、丈の短いショートパンツだった。
「待て、母さん。これは流石に……サイズ以前にデザインが……」
「文句言わないの! 従姉妹のユナちゃんも見てるんだから、清潔な服に着替えなさい!」
鏡の前に立ったタカシは、自分の姿に絶望した。
中に入っているのは、食い込むピンクのフリルショーツ。その上には、太ももが露骨に出る短いショートパンツ。上半身は、肩のラインが強調されたパステルカラーのカットソーだ。
高校生男子の骨格に、無理やり詰め込まれた「女の子」の記号。
「ぶふっ……! あはははは! 似合う、最高に似合うよお兄ちゃん!」
リビングに戻ると、サキが床を叩いて爆笑していた。
「見てよユナちゃん! 新種の生き物だよ。**『おねしょして服がなくなったから妹のお下がりを着る高校生』**っていう新種!」
「お兄ちゃん、お姉ちゃんみたい! でも脚が毛むくじゃらで気持ち悪いー!」
ユナが無邪気にタカシの露出した太ももを指差して笑う。親戚のおじさんたちも、流石にこの姿には言葉を失い、「……まあ、最近はジェンダーレスっていうしな」と、力のないフォローを投げかけるのが精一杯だった。
「ねえ、その格好でちょっとコンビニまでアイス買いに行こうよ」
サキがとんでもない提案をした。
「ふざけるな! この格好で外に出られるわけないだろ!」
「えー? じゃあ、その格好で親戚みんなの前で『僕は赤ちゃんです』って宣言する? それか、おねしょしたシーツを掲げて庭を一周してくる?」
サキの瞳は完全に獲物を追い詰めた猛獣のそれだった。
「さあ、どっちがいい? 『妹の服でコンビニ』か、『おねしょ宣言』か。選ばせてあげる」
タカシは震える手で、サキが差し出した(これまた妹のお下がりの)可愛らしいレディースのパーカーを羽織るしかなかった。
「……わかった。やればいいんだろ、やれば……」
コンビニという「外部の目」に晒される恐怖より、身内という「逃げ場のないコミュニティ」での屈辱を選んだタカシ。しかし、それが大きな間違いであったことに彼はすぐ気づくことになります。
「はい、みんな注目ー!」
サキがパンパンと手を叩き、リビングでくつろいでいた親戚一同を呼び集めました。タカシはリビングの中央、妹のパフスリーブとショートパンツ、そして中にはピンクのフリルショーツという**「完全敗北スタイル」**で立たされています。
「お兄ちゃんが、みんなに大切なお知らせがあるんだって。……ほら、アニキ。はやく」
サキに背中をド突かれ、タカシは震える声で口を開きました。
「……ぼ、僕は……」
「聞こえなーい。ユナちゃんにも聞こえるように、大きな声で!」
「……僕は! 昨日も今日も、おねしょをしてしまいました……。着る服がなくなったので、妹の女の子の服を借りています……」
静まり返るリビング。しかし次の瞬間、ユナの「わははは!」という笑い声を合図に、親戚たちの忍んでいた笑いが爆発しました。
「お兄ちゃん、もう一回! もっと可愛く言って!」
ユナがタカシの短いショートパンツの裾を引っ張りながらはしゃぎます。
「……僕は、赤ちゃんお兄ちゃんです……」
「あはは! じゃあさ、これ履いてる理由も言ってよ。その、ピンクのやつ!」
サキがタカシの腰を指差すと、親戚のおじさんが「おいおい、もう勘弁してやれよ」と言いつつ、スマホを構えて動画を回しています。
「……自分の下着を全部濡らしたので、サキの……昔の、ピンクのショーツを履いています……」
「よし、合格! じゃあ最後、その格好でユナちゃんに『お姉ちゃんって呼んでください』って言って。そしたら解放してあげる」
サキの最後の要求は、高校生としての尊厳を粉々に砕くものでした。
タカシは涙目で、自分を指差して笑い転げる小学生の従姉妹に向かって、絞り出すように言いました。
「……ユナちゃん、僕を、お姉ちゃんって……呼んでください……」
「いいよ! おねしょお姉ちゃん! あはは、変なのー!」
笑い声に包まれる中、タカシは股間に食い込むフリルの感触を、一生忘れられない呪いのように感じていました。
「おねしょ宣言」という儀式を終え、魂が抜け殻のようになったタカシ。しかし、サキの追撃は止まりません。
「はい、じゃあ約束通りアイス買いに行こ。お兄ちゃん……あ、今は『お姉ちゃん』だっけ? その格好で歩くの、楽しみだね」
タカシは抵抗する気力すら奪われ、サキに手首を掴まれて玄関へ引きずり出されました。
外の空気は冷たいですが、タカシの顔は羞恥心で沸騰しそうです。
数年前のサキの服は、高校生のタカシが着るとツンツルテン。パフスリーブは肩に食い込み、ショートパンツからは、女子でもなかなか見ないほど露骨に生足が伸びています。
「ねえ、歩き方変だよ? もっと背筋伸ばして。フリルがチラ見えしちゃうよ?」
サキがわざと大きな声で指摘します。
すれ違う近所のおばさんが、「あら、サキちゃん……と、……お友達?」と、タカシの顔を見て絶句しました。知り合いにこの姿を見られる――タカシの心の中で、何かが音を立てて崩れました。
ついにコンビニの自動ドアが開きました。
店内には数人の客と、同年代らしきバイトの店員。タカシはできるだけ体を丸め、棚の陰に隠れようとします。
「お兄ちゃん、隠れないでよ。ほら、アイス選んで。ユナちゃんの分もね」
サキがわざとタカシを広い通路へ押し出します。
かがんでアイスを選ぼうとした瞬間、ショートパンツの裾がずり上がり、例の「ピンクのフリル」が完全に露出してしまいました。
「あ、お兄ちゃん、パンツ見えてる! ピンクのやつ!」
後ろからついてきたユナが、静かな店内に響き渡る声で叫びました。
レジの店員が二度見し、近くにいた女子高生グループが「えっ、ヤバくない?」「女装……? 趣味かな?」とヒソヒソ声を漏らします。
「……もう、帰らせてくれ……」
「何言ってんの。おねしょして着替えがない赤ちゃんは、妹に服を借りるしかないでしょ? ほら、レジ。お兄ちゃんが自分でお金払ってね」
サキに促され、タカシはその「妹コーデ」のまま、震える手で財布を取り出しました。レジに立つタカシの目線には、ちょうど鏡に映った自分の姿――パステルカラーの服を着て、生足を出した、情けない顔の高校生男子――が映っていました。
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