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第1章 リアルドとジーヴス
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「やあアイリス、 いらっしゃい」
「カーマイン!会いたかったわ!」
アイリスがカーマインとベルライナの家に到着したのは10時に差しかかる時だった。
フワフワのコートを身につけたアイリスが満面の笑顔でカーマインに抱き着く。
広がる髪が綺麗だが、 少し量の多い香水が鼻を刺激する。
アイリスはカーマインの幼なじみ兼従姉妹だ。
今ではあまり会えていないが昔はよく一緒に遊んだ間柄である。
金髪の豊かな巻き毛がさらに彼女を豪華に見せた。
「まずは入って」
「ええ!!」
コートを脱ぎ、 アイリスのジーヴスに手渡す。
中からはピンクの豪華なドレスが姿を現した。
「この日の為に新しくしたのよ!どう?似合うかしら…?」
胸元が大きく開いたピンクのドレス。
腰のところは長いリボンがあり、 マーメイドラインが美しいドレスだ。
アイリスの綺麗な曲線美を美しく表していた。
ドレス姿を見たカーマインは微笑んで頷く。
「うん、 似合うよ」
「良かったぁ」
安心した、 と手を軽く握り頬を赤らめるアイリスは見るからに恋する女性である。
しかし、 カーマインと同じく25歳。
年頃の女性が着るには可愛すぎる色ではあるし、 何より釣り上がっている猫目のアイリスは印象がキツく見えがちでそもそもピンクは似合わなかった。
「(…………ベルに似合いそうだな)」
ニコニコと笑うカーマインはこのドレスを着てはにかむ様に笑うベルライナを想像していた。
「(今度何か服買おうかな)」
呑気にそんな事を考えている等アイリスにはつゆ知らず、 靴を脱いで家に入るアイリスをエスコートするカーマイン。
「ベル、 アイリスのコートを掛けてあげてくれるかな」
「はい」
アイリスのジーヴスであるオルセンからコートを受け取る。
その際、 オルセンが真っ直ぐベルライナを見つめ手を握ったのだが、 ベルライナは一瞬視線を向けるだけで手を離しコートを持って行った。
オルセンも、 ベルライナに好意を抱いていた。
何度もアイリスについてカーマインに会いにいく内に同じくカーマインの後ろに控えているベルライナに次第に惹かれていったのだ。
この事に気付いたアイリスはある計画を立てようとしている。
丁寧にコートをかけた後、 用意しているティーセットを持ち椅子に座るカーマインとアイリスに暖かなお茶を差し出す。
くるぶし丈のお仕着せに身を包んでいるベルライナはまるでメイドのようだ。
こういう時、 ジーヴスには何も用意しないのが常識。
立つジーヴスに飲み物を置く場所も無いのだが。
だが、 ベルライナは当然のようにオルセンの分もお茶を用意していた。
オルセンが立つ横に小さなサイドテーブルが置かれていて、 そこに花の匂いがするお茶を置く。
用意が終わったベルライナはカーマインの後ろに立つと、 振り向き笑顔を向けた。
「ベル、 ありがとう」
「いえ、 なんなりとおっしゃってください」
ほわほわと花が咲くような笑顔で話す2人。
微笑み合う仲の良い2人にアイリスは半眼になる。
「……カーマインは相変わらずジーヴスに…ベルに優しいわよね」
「え?家族だもの当然じゃないか」
「家族!?ジーヴスが!?まさか!」
大袈裟に驚きながら後ろに経つオルセンを指さして言うアイリス。
「こいつらはジーヴスよ?私達に付き従う者!同等じゃないわ」
少し俯くオルセン、 真っ黒の長髪が顔を隠した。
「アイリスはそういう風にジーヴスを育てたんだろ?俺はベルを家族として迎え入れて育てたんだ。……まぁ、 いいだろ価値観はそれぞれなんだし」
ベルの手を軽く握りながら言うカーマインに、 ベルライナも小さく微笑んで頷いた。
全てこの主人の価値観で、 ジーヴスは決まる。
ベルライナが微笑んでいられるのも、 カーマインが人として扱うからだ。
「……カーマインは変わっているわ…まぁ、 そんな優しい所も私は好きだけどね」
「ありがとう」
赤らめた顔をフイッとそらしながら言うアイリスに、 カーマインは笑って礼を言った。
その笑顔を直視したアイリスは更に顔を赤くしながら照れ隠しにお茶を飲み焼き菓子を口にする。
バターのコクと優しい口当たりが広がりアイリスは美味しい…と呟いた。
「そう、 よかった。」
「どこのお菓子なの?」
「ベルの手作りだよ」
「え?……まあ、 そうなの」
市販で売っているのと遜色ない美味しさに口元を手で覆い驚くアイリスはベルライナを見た。
軽く一礼するベルライナを見てからカーマインへと視線を戻す。
「ねぇ?相談なんだけど」
「ん?」
「オルセンもベルももう20代でしょ?番を探すより2人で繁殖させない?」
「………え?」
「30迄なんてあっという間よ?特にベルは子供を産むためにかなりの体力を使うわ。30間近ではおそいわよ。だから、 オルセンと子供を作りましょうよ!私達も仲がいいんだもの、 いつだって様子を見にこれるし、 あ!いっその事一緒に住むのもありではなくて?」
ね?いい案でしょう?
手を合わせてそういう風にアイリスに、 カーマインは眉を寄せている。
ベルライナも困惑してカーマインを見つめたが、 オルセンは顔を赤らめてベルライナに熱い視線を向けているのに気付き、 思わずカーマインの上着を握った。
引かれる服の感覚にカーマインは振り向くと、 不安そうにしているベルライナが視界に入った。
「ベルが妊娠して動けなくなってもオルセンがいるんだもの、 なんの支障もないしいい事だらけよ?ね?」
「…………俺はベルを繁殖の為だけに子を作らせるつもりは無いよ」
「どうして?ジーヴスの寿命は知ってるでしょう?今作らないとジーヴスは死ぬのよ?」
「…そうだね」
アイリスはどうして?と、首を傾げながら言い、 カーマインは眉を寄せながらコップを口元に運ぶ。
「短命種族だからこそ、 繁殖させないとダメでしょ?需要と供給が間に合わなくなるじゃない」
「………とにかく、 そんなふうに考えてないよ」
「っ………ベル!!あなたはどう思うの?子供、 欲しいわよね?」
アイリスの標的をベルライナに移し、 強い口調で聞く。
それにクーフェンが顔を上げた。
戸惑い口を開こうとした時、 カーマインはコップをテーブルに置いた。
カチャン…と音を立てて置いたことで視線を一気に集める。
「アイリス、 ジーヴスであるベルライナにはたとえ主人ではなくてもリアルドに強く反発が出来ないのは知っているよね?それなのにそんな事をベルライナに聞くの?」
「だって!……」
「そんなにオルセンに子を為したいなら、 店に連れて行くべきだろ?」
「……………そうじゃなくて、 私はオルセンとベルが…」
「この話はおしまい。」
「………わかったわ」
納得していない顔でカーマインを見てから顔を伏せるアイリスにカーマインはため息をつく。
そして口を開いた。
「別に遊びに来たいのなら、 来たらいいじゃないか。アイリスの感情にベルを巻き込まないで」
「……来てもいいの?」
「毎日は困るけどね」
「………2日に1回とか?」
「アイリス、 常識的に考えて」
「………わかったわ」
アイリスは、 カーマインの心を射止めたかった。
いつか結婚して子を為して一生をカーマインの隣で過ごしたいと思っている。
それが、 ベルライナには出来るのだ。
アイリスは悔しくて堪らなかった。
そんな時、 オルセンがベルライナに好意を抱いているのを知り2人を番にさせたら、 アイリスにとって都合がいい。
そうしたら、 主人である2人も強制的に仲良くならねばならないのだから。
しかし、 それはカーマインに断られた。
アイリスはガッカリと肩を落としたが、 今後の訪問の約束を取り付けた為、 今日は良しとしようと頷いたのだった。
「カーマイン!会いたかったわ!」
アイリスがカーマインとベルライナの家に到着したのは10時に差しかかる時だった。
フワフワのコートを身につけたアイリスが満面の笑顔でカーマインに抱き着く。
広がる髪が綺麗だが、 少し量の多い香水が鼻を刺激する。
アイリスはカーマインの幼なじみ兼従姉妹だ。
今ではあまり会えていないが昔はよく一緒に遊んだ間柄である。
金髪の豊かな巻き毛がさらに彼女を豪華に見せた。
「まずは入って」
「ええ!!」
コートを脱ぎ、 アイリスのジーヴスに手渡す。
中からはピンクの豪華なドレスが姿を現した。
「この日の為に新しくしたのよ!どう?似合うかしら…?」
胸元が大きく開いたピンクのドレス。
腰のところは長いリボンがあり、 マーメイドラインが美しいドレスだ。
アイリスの綺麗な曲線美を美しく表していた。
ドレス姿を見たカーマインは微笑んで頷く。
「うん、 似合うよ」
「良かったぁ」
安心した、 と手を軽く握り頬を赤らめるアイリスは見るからに恋する女性である。
しかし、 カーマインと同じく25歳。
年頃の女性が着るには可愛すぎる色ではあるし、 何より釣り上がっている猫目のアイリスは印象がキツく見えがちでそもそもピンクは似合わなかった。
「(…………ベルに似合いそうだな)」
ニコニコと笑うカーマインはこのドレスを着てはにかむ様に笑うベルライナを想像していた。
「(今度何か服買おうかな)」
呑気にそんな事を考えている等アイリスにはつゆ知らず、 靴を脱いで家に入るアイリスをエスコートするカーマイン。
「ベル、 アイリスのコートを掛けてあげてくれるかな」
「はい」
アイリスのジーヴスであるオルセンからコートを受け取る。
その際、 オルセンが真っ直ぐベルライナを見つめ手を握ったのだが、 ベルライナは一瞬視線を向けるだけで手を離しコートを持って行った。
オルセンも、 ベルライナに好意を抱いていた。
何度もアイリスについてカーマインに会いにいく内に同じくカーマインの後ろに控えているベルライナに次第に惹かれていったのだ。
この事に気付いたアイリスはある計画を立てようとしている。
丁寧にコートをかけた後、 用意しているティーセットを持ち椅子に座るカーマインとアイリスに暖かなお茶を差し出す。
くるぶし丈のお仕着せに身を包んでいるベルライナはまるでメイドのようだ。
こういう時、 ジーヴスには何も用意しないのが常識。
立つジーヴスに飲み物を置く場所も無いのだが。
だが、 ベルライナは当然のようにオルセンの分もお茶を用意していた。
オルセンが立つ横に小さなサイドテーブルが置かれていて、 そこに花の匂いがするお茶を置く。
用意が終わったベルライナはカーマインの後ろに立つと、 振り向き笑顔を向けた。
「ベル、 ありがとう」
「いえ、 なんなりとおっしゃってください」
ほわほわと花が咲くような笑顔で話す2人。
微笑み合う仲の良い2人にアイリスは半眼になる。
「……カーマインは相変わらずジーヴスに…ベルに優しいわよね」
「え?家族だもの当然じゃないか」
「家族!?ジーヴスが!?まさか!」
大袈裟に驚きながら後ろに経つオルセンを指さして言うアイリス。
「こいつらはジーヴスよ?私達に付き従う者!同等じゃないわ」
少し俯くオルセン、 真っ黒の長髪が顔を隠した。
「アイリスはそういう風にジーヴスを育てたんだろ?俺はベルを家族として迎え入れて育てたんだ。……まぁ、 いいだろ価値観はそれぞれなんだし」
ベルの手を軽く握りながら言うカーマインに、 ベルライナも小さく微笑んで頷いた。
全てこの主人の価値観で、 ジーヴスは決まる。
ベルライナが微笑んでいられるのも、 カーマインが人として扱うからだ。
「……カーマインは変わっているわ…まぁ、 そんな優しい所も私は好きだけどね」
「ありがとう」
赤らめた顔をフイッとそらしながら言うアイリスに、 カーマインは笑って礼を言った。
その笑顔を直視したアイリスは更に顔を赤くしながら照れ隠しにお茶を飲み焼き菓子を口にする。
バターのコクと優しい口当たりが広がりアイリスは美味しい…と呟いた。
「そう、 よかった。」
「どこのお菓子なの?」
「ベルの手作りだよ」
「え?……まあ、 そうなの」
市販で売っているのと遜色ない美味しさに口元を手で覆い驚くアイリスはベルライナを見た。
軽く一礼するベルライナを見てからカーマインへと視線を戻す。
「ねぇ?相談なんだけど」
「ん?」
「オルセンもベルももう20代でしょ?番を探すより2人で繁殖させない?」
「………え?」
「30迄なんてあっという間よ?特にベルは子供を産むためにかなりの体力を使うわ。30間近ではおそいわよ。だから、 オルセンと子供を作りましょうよ!私達も仲がいいんだもの、 いつだって様子を見にこれるし、 あ!いっその事一緒に住むのもありではなくて?」
ね?いい案でしょう?
手を合わせてそういう風にアイリスに、 カーマインは眉を寄せている。
ベルライナも困惑してカーマインを見つめたが、 オルセンは顔を赤らめてベルライナに熱い視線を向けているのに気付き、 思わずカーマインの上着を握った。
引かれる服の感覚にカーマインは振り向くと、 不安そうにしているベルライナが視界に入った。
「ベルが妊娠して動けなくなってもオルセンがいるんだもの、 なんの支障もないしいい事だらけよ?ね?」
「…………俺はベルを繁殖の為だけに子を作らせるつもりは無いよ」
「どうして?ジーヴスの寿命は知ってるでしょう?今作らないとジーヴスは死ぬのよ?」
「…そうだね」
アイリスはどうして?と、首を傾げながら言い、 カーマインは眉を寄せながらコップを口元に運ぶ。
「短命種族だからこそ、 繁殖させないとダメでしょ?需要と供給が間に合わなくなるじゃない」
「………とにかく、 そんなふうに考えてないよ」
「っ………ベル!!あなたはどう思うの?子供、 欲しいわよね?」
アイリスの標的をベルライナに移し、 強い口調で聞く。
それにクーフェンが顔を上げた。
戸惑い口を開こうとした時、 カーマインはコップをテーブルに置いた。
カチャン…と音を立てて置いたことで視線を一気に集める。
「アイリス、 ジーヴスであるベルライナにはたとえ主人ではなくてもリアルドに強く反発が出来ないのは知っているよね?それなのにそんな事をベルライナに聞くの?」
「だって!……」
「そんなにオルセンに子を為したいなら、 店に連れて行くべきだろ?」
「……………そうじゃなくて、 私はオルセンとベルが…」
「この話はおしまい。」
「………わかったわ」
納得していない顔でカーマインを見てから顔を伏せるアイリスにカーマインはため息をつく。
そして口を開いた。
「別に遊びに来たいのなら、 来たらいいじゃないか。アイリスの感情にベルを巻き込まないで」
「……来てもいいの?」
「毎日は困るけどね」
「………2日に1回とか?」
「アイリス、 常識的に考えて」
「………わかったわ」
アイリスは、 カーマインの心を射止めたかった。
いつか結婚して子を為して一生をカーマインの隣で過ごしたいと思っている。
それが、 ベルライナには出来るのだ。
アイリスは悔しくて堪らなかった。
そんな時、 オルセンがベルライナに好意を抱いているのを知り2人を番にさせたら、 アイリスにとって都合がいい。
そうしたら、 主人である2人も強制的に仲良くならねばならないのだから。
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