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116話 小さな攻防戦(挿絵あり)
しおりを挟む今日はメディトークが夜間泊まりの順番が巡って来た。
場所は領主館の芽依の自室。
ここで芽依は、メディトークと小さな戦いを繰り広げていた。
「だから、1人は駄目だ」
「すぐ! すぐ出るから!」
「それでなんかあったら危ねぇだろ。ただでさえ連れ去られたばっかりなんだから」
「で……でもっ」
「それとも何か? 俺だと嫌だって?」
「ちがっ……ちがうのっ」
「ならいいだろ。もうグダグダ言うな、口塞ぐぞ」
グイッと腕を引っ張られて歩く先は芽依の部屋にある浴室。
今日は色々ありハストゥーレと入浴していない為、メディトークとの入浴となる。
実は芽依は、ハストゥーレと入浴はしていてもメディトークとはしていない。
むしろ、ハストゥーレとしか入浴していない。
以前のリビングでしてしまった芽依は、かなり反省していた。
途中で入ってきたパピナスにはバレて、その後も好き勝手され動けなくなった芽依を連行したメディトークはその後もベッドで拘束していた。
まだ明るい時間帯もあり、体をしっかりと見られた芽依は羞恥で死にたくなったくらいだ。
そう、メディトークの強い攻めに完全に負け越しの芽依は、他の3人より恥ずかしさが強く直ぐに逃げようとする。
それにニヤニヤと追いかけるメディトークは楽しいと逃げるウサギを追いかける肉食獣のようだが、流石に今回は違った。
以前、この世界に来る前は疲れから入浴を後回しにしていた。
だが、今では以前のように後回しにせず自ら浴室に向かう。
ママであるセルジオの教育の賜物でもあり、習慣化されて文句はないが、やはりたまにはひとりで入りたい気分なのだ。
だが、安全を考慮したてと芽依を1人にはしない家族たち。
「…………いまさら緊張かよ」
「だって……」
『ほら、これなら良いだろ』
「蟻さぁぁぁん!! すきっ! あいしてるっ!!」
『……これはこれで複雑だな』
くねくねしている芽依の服を剥ぎ取っていくが、本当に蟻なら喜んでと思っている芽依は抵抗がない。
直ぐに剥かれた芽依はメディトークと共に浴槽に入っていった。
『……なるほど、いいな』
巨大な蟻であるメディトークと湯船につかる。
メディトークよりも湯船は小さかったはずなのに、何故か大きくなっていてゆとりすらある。
そして、改装したことにより天井が取り外され露天風呂と変わる浴室で芽依は空を見上げた。
ふたつある満月は夜空に輝いていて暗い空を照らしている。
魔術によって外が見れるようになっているが、外から見えるわけでも声が聞こえるわけでもないのでまったりと穏やかに過ごせている。
メディトークに寄りかかり空を眺めると、前に来る足が芽依を包み込んでギュッ……と抱き締めた。
「メディさん?」
『なんだ』
「お腹のさ……ここら辺が熱くなるの……何でかな」
『……ああ、俺の魔力が体を巡っている証拠だな。ここの奥に魔力溜りがあって、そこで俺とメイと……ディメンティールの力が合わさり時期に全てお前の力になるんだ』
「…………メディさん、どれくらい私に魔力をくれたの? メディさんどれくらい位が落ちた?」
通常なら伴侶に力の半分を明け渡す。
元々ある力が強ければ強いほどに渡される魔力は多く移民の民も強くなる。
その反面、明け渡した人外者は力を無くして位が落ちるが、移民の民を食べる事で回復する。
「……食べても、いいよ」
『いらねぇよ。確かに俺の力を入れたが、途中からディメンティールの力が溢れてきて俺と縄張り争いしたからな』
「縄張り争い?!」
『ああ、だからそこまでじゃねぇよ』
衰弱していた芽依の空っぽな中身は、ディメンティールの力ごと喰われていた。
だが芽依自身がディメンティールの力を受け継いだから、喰われるくらいで消滅するものではない。
力を継承したことにより、全ての力を引き継いで片翼となった芽依は今ではディメンティールと同等の力を得た。
それを本質的な体の作りが違う芽依がディメンティールのように使う事は出来ないが。
「で、メディさんは大丈夫なんだよね」
『問題ねぇ。だが……そうだなぁ……くれるならもらった方が回復は早いな』
「いくらでも!」
『……いくらでも?』
芽依がそう言った時、ふわりと人型に戻ったメディトークが芽依を抱き込み口を塞いだ。
「んっ! ……ン……っ……はっ……あっ……」
舌を絡めて呼吸が止まるくらいに激しい口付けをされる。
上に乗り上げるように抱え込んでくるから逃げ場がない。
「ッ……はっ……はぁはぁ……も……なんで……」
「だから、喰っただろう」
「……え?」
「体を傷つける事はしねぇ。ハストゥーレも喰うしな。だから、俺はこっちを喰う」
「んっ……やっ……また……も……ちょっ……とぉ」
押したり顔を横に向けたりと抵抗するが、直ぐに捕まる。
楽しそうに背中をなぞり、唇を遊ぶように重ねてくるメディトーク。
つい最近体を重ねたばかりだから今はする気が無いのか、イタズラに唇を貪った。
(挿絵はイメージです)
「…………ばか」
「なんだよ、嫌か?」
「嫌じゃないから……ばかって言ってるの」
「わかりずれぇ」
くすくすと笑って芽依を抱き締めるメディトークは、既に傷が消えてる右肩を撫でた。
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