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第二章:セントクレア郊外・少女憑依事件録
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しおりを挟むジェイクが直ぐにエリオットとクラリッサを見た。 その表情は少し険しい。
「直ぐに今言った4人の家に人を派遣。悪魔科、祓霊庁どちらにも出動要請をかけて確認に走らせろ」
「は……はい!!」
直接悪魔と契約を交わして体を開け渡したのはトレイニーだが、儀式の場に人がいた場合は、その影響が出やすい。
悪魔からの接触が今後ないとも言いきれないし、既に何らかの影響が知らないうちに発現しているかもしれないのだ。
いち早く確認した方がいいのは、4箇所同時に悪魔の影響が現れて暴れるなんてことがあったら大惨事だという事と、自宅は勿論、子供が集まる学校なども悪魔が好む「悪魔温床(デモニック・ネスト)」になりやすいから。
その場で暴れる、巣を作る、別の悪魔を呼び寄せる等、やろうと思えばいくらでも祓い師たちを翻弄出来るだろう。
その可能性に気付いたのか、2人はそれぞれスマホを取り出し、悪魔科と祓霊庁に連絡を始めた。
「トレイニーの残り時間は?」
「…………そうですね、あと20分でしょうか」
トレイニーの体内を浄化して神聖な場に変えたから今は悪魔はそばに来ない。
最初に祓い清めた祝詞、更に延長を2回掛けた。 だが、そこまで長い時間トレイニーの体を保護し続けるのは難しい。それに、長期間悪魔に体を支配されていたトレイニーの体は限界に近かったのだった。
「準備をしよう。今日中にこの問題は解決する」
ジェイクが言うと、セラフィエルは穏やかに笑ったまま頷いた。
_________
エリオットとクラリッサが直ぐに連絡をしている中、セラフィエルとジェイクがコールマン夫妻とトレイニーに説明をする。
嫌に静まりかえる室内の中で鳴る音は、少し離れた場所で連絡している2人が動く度になる床の軋みくらい。
落ち込むチャールズは力無く椅子に座っていて、そのすぐ隣でマーガレットがトレイニーを抱きしめていた。
「時間がないから簡単に説明する」
ジェイクが言うと、3人の視線が集まる。
緩慢な動きで感情を無くしたようなチャールズはただぼんやりと話を聞いていた。
「今トレイニーは体内を清浄化させて悪魔を寄せつけなくしている。 だが、それもセラフィエルの力を削るだけでもある」
トレイニーが恐怖に震えながらセラフィエルを見た。
ジェイクの腕を掴んで真っ直ぐ前を向いているセラフィエルは、その視線に気付き少しだけ下を見る。
視線は絡まないが、おおよそいる場所の検討がつくので、微笑み返すとトレイニーは眉尻を下げて自分の手をぎゅっと握った。
「これから、悪魔祓いの儀式をおこないますね。先程の簡易的なものではなく、この1回で完全に祓える強力な儀式として行います。前回よりもショックな様子を見せると思いますが、決められた場所から動かないこと。 トレイニーさんに近付かないこと。 絶対に守ってください。 もし破ったら命の保証はできかねますので、決して忘れないでくださいね」
笑みを消してコールマン夫妻に言ったあと、手を伸ばしながらしゃがみ、トレイニーを探した。
その手を小さな暖かい手が握る。
(決して、この手を冷たくさせたりしません)
誓うように両手でトレイニーの手を握ってから、微笑んだ。
「トレイニーさん。これからあなたは椅子に座って頂きます。その際に、暴れたりしないように手足を繋ぎますが、全て終わったら外しますのでご安心くださいね。あなたの体をまた悪魔に明け渡す事になりますが、これで終われるように尽力を尽くします。なので、諦めず、神に祈りながら時が過ぎるのを待っていてください」
「…………うん」
「いいこです」
指先で頬をひとなでしてから、セラフィエルは立ち上がり手を伸ばした。 その手をジェイクが掴む。
大きなボストンバックを持っているジェイクは、そのままコールマン家族を見て2階に行くように促した。
階段に来ると、ジェイクは片腕でセラフィエルを抱き上げた。
ボストンバッグを持っている為、腕にセラフィエルを載せて歩いているのだ。
そんなジェイクの首に両腕を回して、下唇を噛んでいたセラフィエルに気付く。
「セラ」
「………………はい? んっ!!」
一瞬気づくのが遅れたセラフィエルは、遅れて返事を返すのに下を向くと、顔を上げたジェイクに唇を奪われた。
はむっ……と食いつく様に唇全体を覆われてセラフィエルは目を見開く。
下唇をゆっくりと舐められて肩が跳ねるセラフィエルを、また新人二人が目を見開いて見ていた。
「ごちそうさまで……」
「やめろ! ばか!!」
真後ろで見ていたクラリッサが、まるで拝むように手を合わせて言うと、エリオットが慌てて止めていた。
(あぁ!! この二人でしかわからない栄養!! 理解した!! 理解したわ!! 私も祓霊庁の事務やりたい!!)
はぁはぁ……と、呼吸を荒くしているクラリッサにエリオットが顔を引き攣らせながら必死に止めている間に、軽く触れた唇は直ぐに離れた。
一瞬の触れ合いに、セラフィエルは一瞬気の所為?とでも言うように首を傾げる。
そっと指先で唇に触れると、少しだけ湿いる。
「……今、口付けました?」
「また考え事に集中していただろう、下唇噛んでる。血ぃ出るぞ」
「……大丈夫です。出血していません」
鉄の味はしないと、何処かぼんやりと答えたセラフィエルは、はっとしたようにジェイクへと顔を向ける。
「いきなり辞めてください」
「両腕塞がってるから」
「声を掛けて下さいよ」
「声を掛けたくらいじゃ気付かないだろう」
困ったようにセラフィエルが言うと、ジェイクは鼻を鳴らした。
階段を登りきったジェイクはセラフィエルを降ろし、頭をぐしゃりと撫でてから、一つ叩く。
「別に今さらキスの一つや二つで、恥ずかしがることないだろう」
「循祈契(じゅんきけい)とキスは違うじゃないですか」
「ヤッてることは変わらないだろう」
「ジェイク!!」
もぅ! と怒るセラフィエルと笑うジェイクを見て、エリオットが「循祈契(じゅんきけい)……」と呟く。
「循祈契(じゅんきけい)って、あの……」
驚きに目を見開いたまま呟いたエリオットに、クラリッサは無言で小さく頷いた。
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