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第四章: 新人教育
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しおりを挟むこの場に来るのは祓い師や、その関係者しか居ないにも関わらず、男は失礼でしかない発言をした。
静まり返る事務所内。
男は悪いことを言ったなど微塵にも思わず、純粋な瞳を何度か瞬いて首を傾げる。
物音一つしない室内は居心地悪く、ティアは身動ぎした。
「……何を心配しているのか知らないが、そいつはお前にとったら先輩だぞ」
直ぐに復活したのはアルベルトだった。
注意と言うには随分と頭が痛くなるような内容だと、額に手を当て頭を揉む。
この場に無関係の人が居るわけないだろう……と呟くと、男は手を叩いて頷いた。
「そういえばそうですね」
抜けているのかなんなのか、男は何とも掴みどころのない雰囲気で頷いた。
そして、困惑しているセラフィエルに話しかける。
「ごめん。危ないって思ったから声掛けたんだけど……違ったんだね」
セラフィエルを思って言ってくれたのが、この言葉でやっとわかった。
何とも分かりずらい人だ。
体に力が入り警戒していたジェイクも小さく息を吐き出した。
「ところで、どなたですか? 声を聞いたことがありませんし……気配が感じ取れなかったです」
確認の意味合いでゆっくり手を伸ばすと、何故か握手された。
思わず首を傾げると、見えない先の男も同じように首を傾げている。
「第六支部から来た、ティモフェイ・オルロフです」
「……ティモフェイ? 珍しい響きですね」
「俺、ロシア出身だからじゃないかな」
「ロシア……また遠くから来たのですね」
「子供の頃に引っ越してきたから、あんまり違和感ないけどな」
首を傾げながら言うティモフェイに、小さく頷いた。
どうやらティモフェイは、悪魔災害被災者ではないらしい。
このご時世、悪魔は何処にでも跋扈している。
いつどこに現れても不思議ではない存在で、こんなに存在を確立しているというのに、不思議と未だに精神的な幻覚だと罵る人がいるのも事実。
それは、基本的に祓い師が悪魔を実体化させるまでは姿かたちがないからだ。
一見超常現象にも見えるこの不可思議な現象が早くに浸透したのは、やはり25年事に起こる悪魔の襲撃からだろう。
こうして、時間をかけて全員の中に悪魔という存在が植え付けられて祓い師という職業が確率しし、祓霊庁という大きな一つの会社が生まれ、全世界に根を張ったのだった。
侵蝕痕が残されて社会に出ることが難しい悪魔災害被害者だけでなく、一般人が祓霊庁の扉をくぐったのも最近ではない。
なにか起きた時に対抗出来る力を手に入れたいと、自らで祓い師としての選択を選ぶ人が急増したことで、支部の数が増えた経緯がある。
このティモフェイも、そのうちの一人であった。
セラフィエルは、よろしくお願いします。と笑みを浮かべて軽く挨拶をした後、自分の机へと向かった。
ジェイクが、そっと手を取り指先を動かす。
『気配に気づかなかったのか?』
小さく頷いたセラフィエルが椅子に座ると、その身体を隠すようにジェイクが机に腰掛けた。
一度話したことによりティモフェイの気配は覚えたが、その気配は希薄だ。
ボンヤリとしていたら、また見失うほどに。 これは生まれ持っての性質なのだろう。
これが悪魔にも通用するのなら大きな武器になる。
セラフィエルはそっとジェイクの手に指を這わせた。
『はい。気付きませんでした。今も気薄です。この特技が悪魔にも通用するのなら、それは脅威になりますね』
『そこら辺は後日の実験次第だな』
『そうですね』
指文字で会話をする二人の姿を不思議そうにティモフェイが見ていた。
_____
予定の時間になってもまだ残りの二人が来ていない。
不機嫌な表情のアルベルトの眉間に深い皺が生まれ、 それが消えることなく苛立ちに足をタンタンと鳴らす。
その音にジェイクがイラつき、組んでいる腕を何度も指先で叩いた。
「…………ちょっと。雰囲気悪いわよ」
「悪くもなるだろう」
イライラを隠しもなく言うジェイクに、アルベルトも「うむ」と頷く、
ティモフェイはキョトンとしてなんで怒っているのだろう? 首を稼げていた。
そんな様子に苦笑したセラフィエルはそっと立ち上がる。音を一切出さなかったのに、セラフィエルに背中を向けているはずのジェイクが振り返った。
「セラ、どこに行く」
「…………早いですよ気付くの」
何で分かるんですか……と呆れるセラフィエルを言葉なくじっと見るジェイクにため息混じりみ手を上げた。
「祈祷室です」
「……直ぐに戻れよ」
「はぁい」
「セラ!」
返事が気に入らないのか声を上げるジェイクに、ジュディは冷たく「あんまり束縛してたら嫌われるわよ」と言葉をかけ、グゥと喉をならした。
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