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第3章
40話 第二の部屋「密着しなければ出られない部屋」
密着しなければ出られない部屋と書かれた文字を2人は静かに見上げた。
その下には注意書きとして、ピッタリと肌と肌を触れ合わせ、一定期間一緒に過ごす。 と、書かれている。
予想通りに体の触れ合いをさせる気だ……と、レティリアはチラリとヴェルクレアを見ると、腕を組んで眺めていた。
そして、ヴェルクレアがレティリアに手を伸ばす。
「おいで」
柔らかな笑みを称えて伸ばしてくる手に、レティリアは手を伸ばして掴んだ。
「…………これって、あってる?」
「大丈夫じゃないかな? ほら見て、カウントが始まったよ」
胡座をかくヴェルクレアの膝の上に座り、体を寄せる。
ショーツが無いので、ペチコートを無理やり引っ張り、おしりの下に敷いた。
そのせいで見えそうな胸はくっつけるという指示通り、ヴェルクレアの胸元に近い場所にぺたりとくっついている。
皮膚と皮膚が重なり、緊張と暑さからじんわりと汗をかく。
力の入っていないヴェルクレアの体は弾力があって、でも、女性のレティリアよりも硬い。
体の全てがヴェルクレアに包まれて、レティリアは巨大なぬいぐるみに全身を預けているのだと、何度も何度も言い聞かせる。
(じゃないと、恥ずかしさで、しぬ)
ほぼ裸と変わらない姿なのだ。
ペチコートを着ているとは言っても、それだけでは隠せない。
主張しだす胸も、少し足を動かしたら見えてしまいそうなペチコートの裾も、レティリアからしたら羞恥を煽る以外の何物でもない。
そんな姿を、ヴェルクレアに見られていると思うと、死んでしまいたいくらいに恥ずかしい。
ちらりと見上げると、最初に言ったようにレティリアに嫌な気持ちをさせないように顔を逸らしているヴェルクレアがいる。
太い首筋から肩にかけて、滑らかな曲線が出来ている。
鎖骨が浮き上がり、うっすらと汗をかいているせいで皮膚が光っていた。 少し体を動かす度に、腕や胸元の筋肉が動く。
至近距離の筋肉は見放題だ。 流石に無遠慮に触る事はしないが、観察くらいはいいだろう。
(意識をほかにやらないと、恥ずか死ぬ。)
目を伏せて、頭もヴェルクレアに預けると、背中に回っているヴェルクレアの手がピクっと動いた。
「…………レティ」
「なに?」
「あー……んまり、煽らないでね? おじさんこれでも、我慢してるのよ」
「煽ってない」
体が触れているだけで、十分煽られているのよっ……っと呟くヴェルクレアを見上げる。
普段見ない下着1枚の姿で密着しているのはレティリアもで。
気持ちが高揚して、心臓が早くなっているレティリアは、キュッと手を握った。
緊張で全身が脈打っているようだ。
だが、それはヴェルクレアも同じで。
いつもよりも高い体温に、早鐘を打つ心臓。
それは、密着しているからこそ分かりやすくレティリアにも伝わる。
「…………緊張する」
「そうだねぇ」
緩く背中を抱えるように抱きしめているヴェルクレアは、なるベく不用意に体に触れないように気を付けてはいる。 いるのだが、普段触れないペチコートから出ている肌は、指先を動かすだけで簡単に触れてしまう。
それほど、露出しているのだ。
とくに、足はいけない。
下着1枚の足の上に、ショーツも履かないで座っているのだ。
そんなの、簡単に想像ができてしまう。
さっきのレティリアの様子で、既に熱を持っている自身を避けるように座るのはなかなか難しいだろうに、レティリアは静かに体を寄せている。
この従順すぎるレティリアも、催淫効果によりものなのかなんなのか。
レティリアと、こういった雰囲気になったことが無いヴェルクレアには想像も出来ない。
とにかく、動きそうな腰を必死に諌めることしかヴェルクレアには出来なかった。
無言の時間が過ぎていく。
肌はじっとりと汗をかき、触れ合う面積が広いからこそ、少しの動きに皮膚が擦れる。
レティリアの胸がふにゃりと形を変える度に、ヴェルクレアの熱が震えてレティリアの足を撫でた。
「………………カウントが終わるよ」
「ほん、とうだ」
はふっ……と息を吐き出して、レティリアが顔を上げる。
トロンとした目は眠気からではないだろう。 あれほど空腹を感じるレティリアは、今、それすらない。
感覚が全て、性にまつわるものに敏感に反応しているのだろう。
レティリアの姿にゾクリと体が震えるヴェルクレアは目を強く閉じた。
そして、次に表示される文字に絶句する。
《第三の部屋:「愛撫しなければ出られない部屋」》
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