21 / 588
教育には時間と根気が必要です
しおりを挟む『じゃあ、やるぞ』
「はい」
芽依とメディトークは午前の仕事を終わらせ食卓を囲みながらお勉強を開始した。
少し広めのテーブルに出されたパンとジャム各種に野菜がクタクタに煮込まれたスープを見て、どれから食べようかと思案する。
『まず、知らないといけねぇのから教えていく。人間、妖精、精霊、幻獣が居るのは知ってるな?ここいらから説明するか』
器用にパンを持ち半分にちぎるメディトークは、イチゴジャムをスプーンで取るメディトークは自信作だとニヤリと笑った。
たっぷり付ける様子を見る限り、甘党なのだろうか。
『まずは人間からだ。お前に1番近い存在の人間は統治などに力を発揮しやすい。だが純粋な力では人外者には到底及ばず、魔術の力を伸ばし対抗出来るようになったが、それも全員ではない。これが人間の特性だ』
「まぁ、理解できる。メディさん、私の場所では領主とか居なかったから見当違いな事言ったらすぐに教えてね」
『領主がいない……?』
「うーん、市議?とかになるのかな?いるけど正直私興味なくて全然わかんない」
『興味くらい持てよ、自分の住んでる場所じゃねぇか……』
芽依も同じくパンをちぎり、イチゴジャムを付けてパクリと口に入れる。
甘いイチゴジャムが口いっぱい広がり頬が落ちそうだ。
『次に精霊だな。精霊は全部で6属性いて、光、闇、火、風、土、水がある』
「あ、セルジオ様は闇なんだよね?」
『そう、闇の最高位精霊』
「最高位」
1個食べ終わったパンの次はスープだと、器用に器を持ち口に運んでいる。
見慣れたが、未だに巨大蟻の食事風景に驚きすぎて顎が外れそうになる。
『精霊、妖精、幻獣全てに位があんだ。強さだけでなく、その季節や天気なんかで強さが変わるヤツらも居るけど、基本的には下位、中位、上位、最高位と位付けられて、上に行けば行くほど数は少ない』
「え、本当にすごい人だったんだセルジオ様」
『精霊な』
「精霊ね、精霊。メディさんは?」
『俺は中位』
「そんなメディさんも好き」
芽依も食べ終わりスープを飲む。
コンソメみたいな味付けが味わい深く、はふぅ……と息を吐き出した。
『位に関係なく人格はそれぞれだ。付け込まれないように気を付けろよ』
「つけ込まれる」
『お前、パクっとやられそうだからなぁ』
「パクっ……」
『次、妖精な。妖精は自然から発生する生き物で明確な属性ってもんが無い。土から生まれたつくしからだって妖精は生まれるんだ』
「つくし……?」
『土の気が強いつくしの妖精だな。妖精は何からでも生まれるぞ、綺麗な花からもボロボロに破れ穴が空いたタオルなんかからもな』
「フェアリーフワフワなイメージが崩れるんだけど……」
『妖精にフワフワは無いな。あの種族こそ執着が強く諦めが悪い。何より善と悪の振り幅が1番激しい』
「大好きな妖精のイメージがグズグズに溶けていく……」
『妖精に夢なんか見るんじゃねーよ』
スープを半分飲んだメディトークはもう1個パンに手を伸ばす。
次は杏のジャムで、こちらは市販品らしい。
『あとは幻獣だな。幻獣はどの種族も獣型をしていて総じて幻獣と呼ばれてる。俺みたいな守備型蟻から肉食ウサギ、他も色々ひっくるめて幻獣だ。お前が前言ってたのは、幻獣の1部で食用にもなる。肉食ウサギもそうだな』
「ウサギ肉!」
『そのスープの肉、ウサギだぞ』
「まじか、美味いよウサギ。ありがとう」
『ブレねぇな』
スープの中の肉に拝みながら、遠慮なく食べる芽依にメディトークは乾いた笑いを吐き出した。
『幻獣の最大の特徴が、高位以上になったら人型を取れる事だ。特に毛を持つ種族が多いか』
「……見たい」
『興味を持つなよ、移民の民だって自覚をもて』
「自由を奪われているみたいで嫌だなぁ」
『自由どころか命ごと全て囚われるぞ』
「…………信じられないんだよね、私は普通だから」
『まあ、移民の民自体は普通の人間だしな』
難しいなぁ……と呟きつつもご飯の手は止めない。
色々あるんだなぁ、と呟きスープを飲み干した芽依はこれ以上は無理かなと箸をおいた。
それを確認したが、パン籠に入っている山からメディトークはさらに1個取る。
『いいか、移民の民が1番気を付けないといけないのは俺たちに気を許しすぎる事だ。伴侶が居ないお前は格好の餌食になる。いくらでも喰えるんだよ』
「喰う?」
『…………移民の民はな、人間には教えない秘密があるんだ。これは、移民の民にはぜってぇ教えて自己防衛を徹底させる。……いいか、ちゃんと聞いて理解しろよ。お前ら移民の民は、俺らにとっちゃ美味い餌なんだ』
「……餌?」
『そうだ、だからこそ精霊や妖精、幻獣に何かを頼むな。対価にお前の血肉を奪われるぞ。お前からする花の匂いは誘惑で、血肉は甘露だ。そしてその恩恵は力の増量と位を上げる』
「……まって、そんなの初めて聞いた……」
『だろうな、だからしっかり覚えろ。肌に触れるだけでその甘さの風味を感じるし、名を呼び呼ばれる事を繰り返せば否応なく絆が深まる。絆が深まれば香りは強まり甘みも増す。だがな、そうなれば食欲を駆り立てるか独占欲を増すかどちらかだ。そばに居たい、触れていたい。そこまで来たら伴侶争いが起こる。奪い合いだな』
あまりにも暴力的な厳しい内容に、水を持ったまま芽依は動きを止めていた。
それなのに、メディトークはまるで世間話をする様に話を続けるではないか。
『だから、無闇に名前を呼ばない方がいいし、仲良くなりすぎるのも良くない。本来他者の移民の民を奪うのは良しとしないからな、良識ある精霊や妖精、幻獣は無闇矢鱈に触れたり名を呼んだりはしないから、そこら辺は安心しろ。ただ、それに該当しないのもある。所謂一目惚れみたいなもんだな、そいつの性質なのか好みなのか知らねぇが、初見で噎せ返るほどの花の香りを感じる奴が居る。それには気を付けろ、奪いに来るからな』
そこまで話してパンを1口で食べたメディトークは果実水を飲みながら床に倒れふしている芽依を見た。
『俺以外にそういう隙は見せるなよ』
「この世界怖い……」
『見方によっちゃそうかもな。俺はそれに該当しないから安心しとけや』
「メディさんは大丈夫なの?花の香りするんでしょ?」
『するが俺にはアロマオイルでリラックスしてる気分だ。幻獣の特に攻撃性の少ない俺たちは移民の民への執着はさほど強くねぇ。仲良くなりたいなら、アロマオイルを感じるくらいのヤツにしとけ』
「メディさん本当に好き」
『それも、他の奴には言うんじゃねーぞ。そうだな、俺はアリステアと契約していてお前を守る立場にいるから身構える事はねぇ、だが他は違う。お前の好意に漬け込んでお前を絡み取ろうとする。だから、不用意に信頼すんじゃねぇぞ』
「この世界怖い……」
98
あなたにおすすめの小説
私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。
さら
恋愛
私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。
そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。
王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。
私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。
――でも、それは間違いだった。
辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。
やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。
王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。
無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。
裏切りから始まる癒しの恋。
厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない
春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。
願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。
そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。
※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる