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第2章 水の都アクアエデンと氷の城

お料理を食べよう

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「今度一緒にクエストしようね!」

軽く話して2人は解散。
スイは大量の食材を手に入れてクランハウスに戻ってきた。
中にはお花を花瓶に活けたり、カーテンを付け替えたりと忙しく動く人が数名。
扉が開く音に反応してアレイスターが振り返った。

「あら、おかえりなさい」

頬に手を当ててエプロン姿で出迎えたアレイスターの声に振り向き全員がお帰りと声をかける。

「ただいま、です」

「スイちゃぁぁあああん!今日もかっわいいーね!」

「タク、アウト」

バチィィィイイン!!!

「いっっっっ!!!」

ナズナがタクの大事なアレをまた蹴り上げ男性プレイヤーが顔を青ざめる。
ひっ!!と息を呑む声が聞こえた。

全員に精神的ダメージクリティカルヒット!!

「……………最近ナズナが過激になってきた」

「日々努力」

イズナが口端がヒクヒクとさせながら言うと親指を立てて答えたナズナに全員がさっと視線を外した。

あぶねぇ、更に危険度増したナズナあぶねぇ……‼

全員がタクを見てナズナあぶねぇ、呟く。
ナズナの目が光る。
デオドールが動きナズナを抱き上げた。

「スイちゃんも帰ってきたしちょっと休憩を提案したいのですよー」

「さ………さん、せい……」

ピクピク痙攣しながらふるふる手を挙げたタクに全員で合掌した。



「これ、色々あるんですけど皆さん一緒に食べませんか?」

出されたのは色とりどりの食べ物や焼き菓子。
テーブルに並べられた食事に全員が目を輝かせた。

「そう言えばそろそろ空腹ゲージ危ない、かな」

イズナが自分のステータスを見て言うと、アレイスターがキッチンに向かっていった。

「紅茶の葉を買ったから飲み物作るわね!」

「…………クッキーだ」

アレイスターが鼻歌混じりに紅茶を入れて、ファーレンが焼き菓子に気づきじっと見た。
青じゃない色とりどりの焼き菓子。
マドレーヌやフィナンシェなども入っていて種類は豊富だ。

「どうしたの?こんなにたくさん」

もちろん嬉しいけど
セラニーチェが笑顔で聞いてくる。
この街で見かけたお米で出来た料理もあって、セラニーチェが見てるのは一個一個フィルムの包装に巻かれたおにぎりだった。
しかも、店頭に並んでいない天むすがある。

「えっと、試食を頼まれたんです。」

「あら、クエスト?まぁ、料理系のクエストがあってもおかしくないわよねー」

入れた紅茶をテーブルに並べながら言うアレイスターに、全員がそれぞれ礼を言いながら受け取る。
タクはまだ床にいるが。

「……大丈夫、ですか?これどうぞ」

セラニーチェが見ていた天むすを1個取り、フィルムを開けてタクへと差し出す。

「!!やさしいぃぃ」

そのまま受け取るのではなく、スイが持ったおにぎりに食いついた。

「あ……」

「ずうずうしい」

「自重しろ!ナズナァァァ」

ナズナが足を動かそうと準備運動しているのをイズナが掴み抑えている。

「…………うまい」

「あ、良かったです。」

とりあえずクリスティーナの願い、タクに1番に食べさせる。は完了!とスイはこっそりガッツポーズ。
起き上がったタクはスイからおにぎりを受け取りあむあむと食べだした。

「っおー!うまいー」

一個ペロリと食べたタクは紅茶を1口飲んでテーブルを見た。
その量に目を見開く。

「………すごいなぁ」

「あの、皆さん食べてください。」

スイの一言で全員いっせいに食べだした。
ここに居るのはタクにセラニーチェ、ナズナといずな、アレイスターとデオドール、ファーレンだ。
他はまだ来ていない

「これおいしーい」

「蕩けるのですよー!チーズかしら?」

「あむ…あむ……クッキー美味しい」

「ナズナ、先にご飯食べなよ」

「これ、なんだ………?アボガド?」

それぞれに手をつけだして食べ始める。全員が美味しいと話している時、クランハウスの扉が開いた。

「おー?なんだ、いい匂いするな」

「お?カガリー」

ガチャガチャと音を鳴らして近づくカガリ。
その後にはリィンとクラーティア、グレンがいた。

「わぁ!なんですか、パーティですか?」

リィンがテーブルまで来て見ると、クラーティアもそれに続いた。

「へぇ、すごいな……うまい」

カガリが近くにあるサンドイッチを手にして口にすると、口に広がるレタスのシャキシャキ感に肉の甘辛な味が広がった。

「こんなの、売ってたか?」

グレンがミニイクラ丼を取ってマジマジと見ると、デオドールからスプーンを渡され、そのまま食べ始めた。

「……美味いな」

「…………あの、実は……………」






『これ、プレイヤーメイキング!?』

「は、はい」

スイがプレイヤーが作ったのを貰って試食を頼まれたことを伝えると、全員が驚き目を見開いた。

「凄い完成度ですね…焼き菓子まで」

「今回は貰ってないですけど洋菓子も作れるって言ってましたよ」

「………まじか」

「………クッキー気に入ったのですかー?」

「え!?」

作り込みが凄いと話すクラメンたち。
その間にもファーレンはクッキーをずっと食べ続けていた。

「……こっちも食べる」

「あ、はい」

ナズナに渡されたフィナンシェを口にすると、ファーレンは目をキラキラとさせて食べ、紅茶を飲む。
満足そうな息を吐き出した。
バターの風味と香り豊かなフィナンシェに、甘さ控えめのダージリンがとても良くあった。

「……料理人なのか?」

ファーレンの様子を見てからカガリがスイに聞くとコクリと頷く。

「βからずっと料理人してるって言ってました。………その、リア友なんです」

「………そうか」

顎に手を当ててそう言うカガリは何かを考え込んでいた。

「……………スイ、今度会えるか?」

「……………はい」

スイはクリスティーナを思い出し、引き攣りながら返事を返した。

(はぁぁぁぁああい!あなたのお腹も心も満たしちゃう!!愛の料理人、クリスティーナちゃんよ!!)

筋肉ムキムキのクリスティーナが、真っ白なエプロンをしてボールを持ち、お玉を掲げてポーズを取る脳内クリスティーナがクネクネと踊っている。

だから!自重しろクリスティーナ!!!
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