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第3章 ホワイトライスケーキと疫病の話
失礼なプレイヤー
しおりを挟む「…………ゲートオープン」
横になりゲームに入るためにギアを被った翠はゆっくりと目を閉じる。
浮遊感が来た後、目を開けた先は第1の街の噴水広場だった。
約1週間ぶりのゲームにワクワクしながら、 軽く腰をひねり体の調子を確認したスイは、今度こそ装備を見に行こうと歩き出す。
しかし、 突然の衝撃でその足は止まる。
「なに…?」
背中から急に押されてたたらを踏むスイは後ろを見ると、女性が自分の手を見ながらグッパーグッパーと握ったり開いたりしている。
いきなり知らない人に押されて眉を寄せるが、その女性は憎々しげに表情を歪めている。
また急にスイの体を押してきたが、彼女のモーションに気付き足に力を入れて腰を落とし、 彼女の伸びてくる手を払い除けた。
それにより女性は目を見開いて地面に倒れる。
「…………信じらんない、なんなのよその医療って」
それは一般プレイヤーには知りえない、ギアが自動で体の一部と捉える医療について聞いてきた。
運営には注意されているが、やはりそれはみんな気になる所だ。
女性は、起き上がり唐突にスイの腕を掴む。
「………あんまりあたし達と変わんないし、なんなのかしら…ねぇ、病気?それとも怪我?」
あまりに不躾な質問に、スイの機嫌は急降下。
目が冷たくなっていく。
そんなスイをみていた周りのプレイヤーもハラハラと、しかし気になり黙って見ていた。
[ハラスメント警告、ハラスメント警告、運営に通報しますか?]
これは、医療に関わる事を聞いて来たプレイヤーを相手に現れる警告である。
受けているスイにその文章が現れ、迷わずハイを押した。
すると、警報が鳴り響き女性、そして周りのプレイヤーは驚き目を見開いた。
「そこの女!大人しくしろ!!」
現れたのは街の警備兵である。
スタンガンのような物を遠距離から使い女性の動きを拘束した後、 すぐに衛兵に捕えられる。
「ちょっ……なにするのよ!!」
4人の警備兵に押さえつけられた女性は、 暴れるがすぐに動きを止める。
[通報されました。アカウントの1ヶ月停止を言い渡します。]
「えぇ!?」
アナウンスが流れ、女性も周りのプレイヤーも驚きざわめく中、 警備兵に連れられ投獄後に強制ログアウトされた女性。
この処置は既に運営が全プレイヤーに言い渡した事だった。
しかし、女性はそんなに簡単にアカウント停止や凍結になるはずが無いとスイに直接絡み聞いたのだ。
通報された事で運営が今までの会話と行動を確認し、 処置を決める。
初犯であるため、 1ヶ月のアカウント停止であった。
この後女性はキャラメイクした空間で運営にこっぴどく怒られる事になる。
「…………時間取られた、久々のゲームだったのに」
ムスッと不機嫌に言ったあと、スイは第3の街へと向かう。
そんなスイをプレイヤーは青ざめながら見ていた。
最初の時は恐怖で震えていたスイ、 図太くなったものである。
余談ではあるが、 この他に必要以上の接触や嫌がる行動にもハラスメント警告が表示されるように改善された。
「いつもありがとうございます」
«いや、気にするな。ではな、 気を付けて行けよ»
蜂さんに移動を頼んだスイは第3の森に到着する。
流石に街までは無理なので、街近くの森に降ろしてもらったのだ。
蜂を見送ったあと、スイは街へと向かう。
あまりまだ来たことのない第3の街も賑わっている。
働く大人達や買い物している主婦に、犬の散歩する家族や走り回る子供。
平和がそこにあった。
楽しそうな雰囲気に微笑んで歩き噴水広場に差し掛かった時、 見つけたのだ、 ボロボロのファーレンを。
「!?えぇ!?どうしたのファーレン!!」
噴水広場に死に戻ったファーレンは、呼ばれた声に反応してスイを見る。
そしてバツが悪い顔をしてから息を吐き出した。
「死んだ」
「いや、見たらわかる」
盾を作ってもらっているファーレンは、色々な情報を手に入れていた。
それは盾の店、 リーゼロッテから聞いた情報である。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「よしよし、それじゃあ君の盾を作る準備をしよっか!」
くるっと向きを変えてカウンターの中に入りゴソゴソと何かを探し出す。
「はい、おまたせー!」
メジャーを取り出しピンと伸ばしたリーゼロッテはふっふっふっ…と笑いながら近付いてきて、ファーレンはうっ…と2、3歩後ろに下がった。
「はい、まずは体のサイズをみるよ。体型に合わせたサイズの盾を作るためにね!体にあったサイズを作らないと、武器に遊ばれちゃうからね」
「………遊ばれる?」
「そう、体に似合わない物を使うとね、振り回されたり逆に力を発揮されなくて受けきれないなんて事は結構あるのよー……………って、 知らなかったの?」
「初めて聞きました」
「ふーん、最初のお店で聞けばよかったのに」
リーゼロッテはなんでもない事の様に言うが、聞いたら何か情報が貰えたのか!?と驚いた。
「………教えてくれるんですか?」
「え?そりゃーそうでしょ。だって、専門のお店なのよ?誰よりも盾に詳しいでしょーに。盾初心者が聞かないのは逆にどうやって盾使う気よって思うわねー」
まさか、そんなにNPCがしっかり物事を考えて行動してるなんて…そういえばスイもNPCとはかなり話してたみたいだし………
ファーレンは唇を噛み締めて考えが足りないんだと認識する。
「…………体にあった盾を使ったら何かいい事ありますか?」
背中や腕、胸部や足なども全身測るリーゼロッテはファーレンを見上げて笑った。
「うんうん、向上心があるのはいいことだよ!体にあった物を使う事で無理に力を入れること無くガードや突進が出来るようになる。動きは段違いに良くなるよ。」
「…………なるほど、あと、既製品とオーダーメイドの違いは?」
「………へ?」
測り終わったリーゼロッテがしゃがみながらポカンとファーレンを見る。
それ知らないでオーダーメイド作る事にしたの?と笑いだした。
「ふふっ!いいよいいよ!教えてあげる」
メジャーを仕舞いに歩くリーゼロッテ、そしてファーレンには職業クエストの文字が浮かんでいた。
震える手ではいを押すと、リーゼロッテは椅子に座り、ファーレンにも椅子を進めてきた。
「さっきも言ったように体にあった盾を作れる。1番はね、その人個人に作るから体格や力、体重なんかも計測して一番いい状態で盾を作るの。そうしたら、強くなった時やレベルが上がったりすると力とか脚力とか色々変わるじゃない?その状態に合う盾にオーダーメイドは変わるのよ。毎回体にあった盾を買う必要はないって訳!あとは、自分に合わせた形状に出来るのも魅力よね!」
思っていたよりも既製品との違いが多く認識が違った。
ファーレンは頷き、じゃあ……と話し出す。
「ふむふむ、じゃあ鎖を付けて?うん、それなら収納出来た方がいいかな?うんうん、あ、これなんかは?」
新しい盾の能力や形状について2人は話し始めた。
それは思っていたよりも自由度があり、ファーレンはどんどん熱を持って話し出す。
リーゼロッテはそれに真剣に受け取り一番いい盾をファーレンに渡す為に2人は色々な案を練りだした。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「いやぁ、いい一時を過ごせたよー!いいのが作れそう」
リーゼロッテはデザインが書かれた紙を数枚持ちそれを眺めながら言った。
ファーレンも満ち足りた表情をしていて、新しい盾を楽しみにしている。
「そうだ!大事な話忘れてた!君獣型にはなれるの?」
「獣型?」
「うん!熊族の盾なんて最強じゃん!!獣型になれるなら体用の盾も作ったげるし!」
ワクワクと言うリーゼロッテだが、ファーレンのよく分からないといった顔を見てあれ?と首を傾げる
「………今半獣型じゃん?」
「………………半獣?」
「そっからかい!」
えー!と驚くリーゼロッテはもう一度ファーレンを椅子に座らせる。
そして紙に絵を書き出した。
人の姿に耳と尻尾が書いてある、猫だろうか
「人の姿に耳や尻尾があるのを半獣型、体全てが獣の姿に変わるのが獣型。種族によって変わりはあるけど獣型の方が断然強いからね。まぁ、半獣型の方が小回りはきくけども、特に熊族なら力倍増!盾にはさいっこう!!」
初めて聞いたその話にファーレンは身を乗り出した。
「どうやったらなれますか!?」
「………私は人族だから詳しくは…巨兎族に行ってみたらどうかな?あそこは全員獣型になれるはずだし」
「場所は!?」
「この街から北に、歩きで3日くらいかな」
「3日!?」
「うん、まぁ、その間に小さな街とか村があるから休みながら行けるよ」
場所が思ったより遠いみたいだ。
今まではひとつのフィールドに街はひとつだったが、この第3のフィールドには複数あるようだ。
「わかりました、行ってみます」
「まーった!!」
「はい?」
行こうとするファーレンを掴まえて止めるリーゼロッテ。
ガクンと膝が折れ転びそうになりながら振り向く
「今までよりも敵が強くなってるから1人での行動はおすすめしないよ。せめて盾が出来てから。その方がいい」
「…………わかりました、盾はいつ出来ますか?」
「そうだね、2週間は欲しいかな。しっかりしたものを作りたいからね!」
2週間…と呟き、ファーレンは顔を上げる。
「わかりました、2週間後にまた来ます」
「ん、待ってるよーん!」
ヒヒッと笑って胸をドンと叩くリーゼロッテに笑いかけてからファーレンは店を出た。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「って言われてたのに、1人でフィールドに出たの?」
「うぅ………」
せめてレベル上げにと歩き出したファーレン。
第2のフィールドに近い森はそんなに強くなかったが、それ以外のフィールドの敵は一気に難易度が上がっていた。
死に戻りして愕然としたファーレンは、 悔しくて悔しくて、 またフィールドへと向かって行き死に戻りを繰り返している時にスイに目撃されたのだった。
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