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第七章 罪の記憶よ、はじめまして

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 トンネルの先は、プラネタリウムのような開けた空間に繋がっていた。ドーム状の大きな天井の下。その中心で勢揃いする四人の仲間たちを見つけたマコトは、思わずぱっと顔を輝かせる。

「みんな!」

 繋いだ少女の手はそのままに、少しだけ早足になって仲間の元へと向かう。僅かな疲労の色は見えるものの、特に怪我などはなさそうだ。そこでようやく、ホッと安堵の息を吐く。

「お疲れ様、マコト。無事でよかった」真っ先に笑顔で出迎えてくれたのは、いつものようにユウだった。

「ユウくんたちも。大丈夫だった?」
「当たり前でしょ。アタシたちを誰だと思ってるの? ちなみに、マコトとその子のやり取りは、ここでバッチリ見てたから説明はいらないわ」

 胸をはったミサキが指を差した先には、さっき通って来たトンネルをそのまま圧縮して縮小したような半円のオブジェが鎮座していた。マコトのときは、マコトとカナエの共通の記憶を映し出していた六角形だが、ミサキの言葉によると、こっちのオブジェには監視カメラのようにマコトと少女のリアルタイムな映像が流れていたということになる。

「え、嘘! なんでそんなことになってるの、恥ずかしいっ」
「情報の共有は大事だと思って」
「だ、大事だけど! 事前に一言、欲しかったかもなって。ほら、心の準備とかあるし」

 まるで会社員の心得のようなことを得意げに言ってのける少女の姿自体は大変微笑ましかったが、その言葉の中身には納得がいかないものがある。

「全部見てたわよ、ぜーんぶね! マコトのほうこそ、カナエのことなんか言えないくらい色々なこと抱え込んでたんじゃない、もうっ! ちゃんと話しなさいよ、ばかばかばかっ」
「いててて。ご、ごめんね、ミサキちゃん」

 ミサキはマコトの正面にずいずいと立つと、こめかみの辺りを拳でぐりぐりとこねくり回す。少しどころではなく痛かったが、ミサキの心配してくれる気持ちが嬉しかったので、マコトは甘んじて受け入れることにした。しばらくして満足したのか、ミサキはついでとばかりにしゃがみ込み、マコトの隣にいた少女の頭をなでなでする。猫のように目を細めて嬉しそうに笑った少女を、そのまま優しくきゅっと抱きしめた。

「わたしは冷たいよ、ミサキ」自分が触れることで相手にどんな影響を及ぼすのか、少女はマコトの手を通して既に知っている。そんな少女の焦りの声を「いいのよ」と、ミサキは一蹴した。
「あちこち歩き回ったお陰で体温が上がってるから、ちょうどいいくらいだわ」
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