【完結】英雄小学生アフター~氷の女王と春の歌姫~

森原ヘキイ

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第八章 寂しがりやに、さようなら

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 タイシの言葉をかき消すように、ぱきんという硬質な音が会場内にこだまする。思わず身構えた瞬間、タイシの背丈をゆうに超えるほどの巨大な氷の結晶が、まるで群生する樹木のように乱立しながら野外音楽堂を取り囲んだ。

 異世界で何度も目にした、氷の女王の力。封印が更に弱まったことで、現実世界にもここまでの影響を与えることができるようになったのだろう。ライブ会場を外と遮断し、マコトとエリヤの侵入を阻んだ。間接的な妨害ばかりで直接的な攻撃を行わないのは、氷の女王のポリシーなのか。異世界でも、真綿で首を締めるようなことばかり仕掛けてきたことを思い出す。けれど、この期に及んでその信念を貫くことができるものだろうか。氷の女王から生まれたというあの少女が女王を抑制しているのか。あるいは、少女本人が――。

「ッ!」

 余計な思考に時間を取られたタイシが、己の判断ミスに気づいて息を呑む。
 突然の不可思議な出来事に怯えたファンの間から、一度でも恐怖の悲鳴が上がってしまえば、会場中が混乱する。間違いなく、ライブは中断されるだろう。そうなれば、最後の手段を行使する機会はなくなる。仕切り直そうにも、既にカナエは仲間全員の記憶を取り戻している。氷の女王の封印は、限界を迎えているはずだ。今を逃してしまえば、カナエを救うことは、もう――できない。

 真っ先に行うべきことは、事態の原因究明ではなく、事態の現状打破だった。初動を完全に間違ったタイシの耳に飛び込んできた、第一声は――。

「うわー、すっごーい! これってデコレージョンなんでしょ!? こんな大がかりな演出ができちゃうなんて、さっすがファントムカンパニーよねっ!」

 棒読みな説明台詞が、すぐ隣から上がったことに驚いて、タイシは反射的に顔を向ける。両手をメガホンのように使ったミサキが、誰よりも早く大声を上げていた。

「あ、あまりにもリアルだから、何かの事件かなってちょっとびっくりしたけど! でも警備のロボットがこんなに落ち着いてるんだから、何も怖がることなんてないよね!」と、ミサキに続いたユウが、抱き上げたペンギンを頭の上に掲げて安全安心をアピールしている。ユウに遊んでもらえたと思っているのか、呑気なペンギンが嬉しそうに鳴く声が、会場中に響いた。
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