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駆け足がしたい@セントーサ島
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「週末、セントーサに行かないか?」
近間が唐突に言い出した。
平日の夕食後のことである。
セントーサ島は、シンガポール本島の南にある小島でリゾート地だ。イコール、定番のデートスポットである。
「いいですよ。ユニバですか?」
近間が観光地に関心を示すのは珍しいので、直樹はうきうきと本棚から地球の歩き方を取り出した。
日本一有名なガイドブックは駐在員にとってもバイブルだ。
「ユニバ?」
「ユニバーサルスタジオ。セントーサといえば」
「あー、映画は好きだけど、テーマパークは興味ない」
「じゃあ、水族館ですか? あ、自衛官だからシロサ砦とか」
近間にも見えるようにガイドブックをダイニングテーブルに広げる。
ぱらぱらとページをめくるが、近間はちらりとも見ずに力強く言った。
「駆け足」
「は?」
「駆け足がしたい」
駆け足?
直樹は曖昧に頷く。
「それは、ランニングとかジョギングとかそういう」
「そう。シンガポールリバー沿いばっか走るのも飽きたからさ。景色がいいとこで思いっきり走りたい」
ということで、やってきたセントーサ島である。
「あっつ……」
直樹は流れ落ちる汗を腕で拭った。
午前8時だが、遮るもののない島には南国の太陽が容赦なく照りつけている。
二人は島の入口にある地図を眺める。
シンガポール本島からセントーサ島はボードウォークで繋がれており、その間もジョギングで移動してきたところである。
「とりあえず、15キロくらいか」
近間が地図上のルートを指先でなぞる。
「いや。15キロって」
なんのトレーニングだ。
「そんくらい走れるだろ」
「走れますけど、この炎天下ですよ? トライアスロンにでも出る気ですか」
躊躇う直樹を置いて、近間は軽快に走り出した。
「競争な」
「えー。折角の休日なんだし、そんなガチに走らなくても」
ぶつぶつ言いながらも、直樹は近間の後を追う。
「負けた方がメシ奢るってことで」
「そんなの全然競争意欲沸きません」
家賃も生活費もきっちり半分ずつ負担しているが、外食の際は直樹が払うのが常だ。
近間は毎回律儀に割り勘を申し出るが、美味そうに量を食べる近間を見ていると、つい奢りたくなってしまうのだ。
近間に食事をご馳走できるなんて、直樹にとってはご褒美にしかならない。
「じゃあ、負けた方が1週間家事全部やるとか」
「それ、どっちが負けても結局手伝っちゃいそうですよね」
「確かに」
5キロを超えると、おしゃべりする余裕はなくなった。
直樹は首を振って顔の汗を飛ばす。
日差しは強いが、潮を孕んだ海風が汗ばむ肌になびいて気持ちが良い。
ぎらつく地面を蹴りながら、少し前を走る近間の後ろ姿を追う。
互いのペースを気にしながら並んで走るよりも、近間のペースに合わせて後を追いかける方が走りやすいのだ。
近間の走り方は美しい。
重力など無いかのように、軽やかに飛んでいるように走る。
二人とも、ショーツにレギンス、キャップにサングラスの本格的なランニングスタイルだ。
直樹はブルーのシューズにトップスはオレンジ、ショーツは黄緑というド派手コーデで、近間は「おまえ、なんかの昆虫みたいだな」と呆れていた。
一方の近間は相変わらずのモノトーンだ。
小さな尻と長く形の良い脚はぴったりしたレギンスに覆われているが、朝の光を浴びて駆ける姿は健康的すぎて、邪念を抱く気にもならない。
「近間さん!」
「なに、もうギブか?」
「違います。走るの、楽しいですね!」
直樹は大声で言った。
全身汗だくで息は苦しいし、心臓は波打っているし脚もだるいが、それでも気分は爽快だ。
頭は空っぽにして、ただ、走る。それだけ。
近間はスピードは落とさずに一瞬だけ振り返ると、太陽のような笑顔を見せた。
「俺も、すっげー楽しい!」
「あー、なんか軽く限界。休んでもいいか?」
近間が速度を緩めたのは、ランニングウォッチが11キロをカウントした時だった。
意地が勝って自分から休憩を言い出せなかった直樹は、即座に同意する。
屋台で100Plusを買い、ベンチがある東屋まで歩いた。
塩レモン飴を舐めながら、ドリンクを流し込んだ。
汗をかきすぎて脱水気味だったので、五臓六腑に染み渡る。
近間も喉を逸らしてペットボトルを煽っている。
直樹は、こくこくと動く喉仏の上を透明な汗が流れていくのを眺めた。
眼福だが、流石に午前中の野外で欲情はしない。
寧ろ、爽やかで眩しいくらいだ。コカ・コーラだかアクエリアスのCMになりそうだ。
炭酸がはじける、みたいな。
スポドリを飲み終わると、近間は屈伸運動を始めた。
休憩する2人の前を、何人ものランナーがかけてゆく。
アジア系が多い中、ポニーテールを揺らした金髪碧眼の美女が走ってきた。
通りざま、ちらっと視線を投げてきたので、直樹は挨拶代わりに軽く手を挙げる。
「すげえ美人だな」
負けず劣らず整った顔をしている近間が感心しているのがおかしい。
「ハリウッド女優並みですね」
「胸でかかったなー」
恋人同士の二人であるが、普通に女性の話もする。
CMに出てくるあのアイドルが可愛いだとか、あの映画の女優はセクシーだとか、そういう風に。
「ポニーテールの女の子っていいですよね」
「おまえ、二十代なのにテイストが昭和なとこあるよな」
「じゃあ近間さんは、どういうのが好みなんですか?」
「俺は好きになった人が好みのタイプ。だから、今はおまえ」
膝を折ってしゃがんだ姿勢で見上げてくる。直樹は思わず口元を押さえた。
「……っ、あんたはまたそういうことをさらっと……」
折角、人が思考を健全に保っているというのに。
お約束の会話をしていると、件の金髪美人が方向転換して駆け戻ってきた。
二人の前まで来ると、ハイ!と明るく挨拶をした。
外国人女性の年齢は分かりにくいが、多分、二十代後半くらいだ。
バービー人形のような体型に本格的なジョギングスタイル。アメリカンドラマに出てくる女優のようだ。
近間が目で「知り合いか?」と問いかけるのに、「知りません」とやはり目で返事をする。
「間違ってたらごめんなさい。もしかして、日本大使館の方?」
女は、屈伸運動を続ける近間に屈託なく話しかけた。
ボストン訛りの英語はいかにも育ちが良さそうだ。
「どこかでお会いしましたか?」
立ち上がった近間が英語で応じる。
「いいえ、会うのは初めてよ。私、米国大使館のクロエ・ミルトンっていうの。リナの友達」
「リナ?」
「リナ・ミヤケ。経済アタッシェの」
それを聞くと、近間は姿勢を正してクロエに握手を求めた。
「それは失礼しました。初めまして。防衛駐在官の近間です」
「友人の梶直樹です」
梶も名乗って、クロエと握手をする。
「急に声をかけてごめんなさいね。以前、リナから、日本大使館の集合写真を見せてもらったことがあって。あ、私が無理やり見せてって頼んだのよ」
「集合写真だけでよく覚えてましたね」
近間は感心しているが、直樹は「だからあんたはもうちょっと自分の見てくれの良さに頓着してください」と内心で突っ込む。
「私、人の顔覚えるの得意だから」
クロエはそう説明するが、近間ほどの美形は集合写真でも目を引いたのだろう。
でもって、異性としての興味も持ったのかもしれない。
案の定、クロエは、
「良かったら、食事でもどう?」
とストレートに誘ってきた。
ほら来た、やっぱり近間さん狙いだ。
直樹は苦笑する。不思議なことに、アルベールの時のような嫌な気持ちにはならなかった。
「いいですね、機会があれば是非」
近間が社交辞令の模範的返答をすると、クロエは面白そうに笑った。
「あら、速攻で振られちゃったわね」
「すみません、俺、恋人いるので」
近間は肩をすくめて、直樹を見遣る。
「いや、そこで俺を見るのはNGですって」
直樹は日本語で注意するが、内心嬉しくて仕方ないので、顔がにやけてしまう。
「なんだ、つまんない。じゃ、邪魔者は退散するわね。またどこかで会いましょ」
クロエはあっさり引き下がると、二人にウィンクをして走り去った。
さすがあの三宅里奈の友達だ。潔くて気持ちのいい女性である。
「じゃ、俺らも駆け足再開しますか」
ノルマまで後4キロだ。手首足首をくるくる回す直樹の横で、しかし近間はベンチに座ってしまう。
「どうしたんですか?」
「んー、今日はもうおしまい」
甘えるような口調で見上げてくる。
「まさかバテたんですか?」
「違う。なんか今、すっげえおまえといちゃいちゃしたくなった」
「…………」
直樹は大きく溜め息をついた。
この人は、ほんとに。
心を鬼にして、理性を総動員して、きっぱり言った。
「却下します。15キロって決めたのあんたでしょうが。セントーサくんだりまで連れてきておいて、途中離脱は認めません」
「えー、まじかよ」
近間は頬を膨らませる。
だから、そういう可愛い仕草やめてくださいって。
「まじです。あと4キロ走ったら、ご褒美あげますから。はい、走りましょう」
腕を掴んでベンチから引き上げると、近間はいたずらっぽく笑った。
「ご褒美のための体力、ちゃんと残しとけよ」
近間が唐突に言い出した。
平日の夕食後のことである。
セントーサ島は、シンガポール本島の南にある小島でリゾート地だ。イコール、定番のデートスポットである。
「いいですよ。ユニバですか?」
近間が観光地に関心を示すのは珍しいので、直樹はうきうきと本棚から地球の歩き方を取り出した。
日本一有名なガイドブックは駐在員にとってもバイブルだ。
「ユニバ?」
「ユニバーサルスタジオ。セントーサといえば」
「あー、映画は好きだけど、テーマパークは興味ない」
「じゃあ、水族館ですか? あ、自衛官だからシロサ砦とか」
近間にも見えるようにガイドブックをダイニングテーブルに広げる。
ぱらぱらとページをめくるが、近間はちらりとも見ずに力強く言った。
「駆け足」
「は?」
「駆け足がしたい」
駆け足?
直樹は曖昧に頷く。
「それは、ランニングとかジョギングとかそういう」
「そう。シンガポールリバー沿いばっか走るのも飽きたからさ。景色がいいとこで思いっきり走りたい」
ということで、やってきたセントーサ島である。
「あっつ……」
直樹は流れ落ちる汗を腕で拭った。
午前8時だが、遮るもののない島には南国の太陽が容赦なく照りつけている。
二人は島の入口にある地図を眺める。
シンガポール本島からセントーサ島はボードウォークで繋がれており、その間もジョギングで移動してきたところである。
「とりあえず、15キロくらいか」
近間が地図上のルートを指先でなぞる。
「いや。15キロって」
なんのトレーニングだ。
「そんくらい走れるだろ」
「走れますけど、この炎天下ですよ? トライアスロンにでも出る気ですか」
躊躇う直樹を置いて、近間は軽快に走り出した。
「競争な」
「えー。折角の休日なんだし、そんなガチに走らなくても」
ぶつぶつ言いながらも、直樹は近間の後を追う。
「負けた方がメシ奢るってことで」
「そんなの全然競争意欲沸きません」
家賃も生活費もきっちり半分ずつ負担しているが、外食の際は直樹が払うのが常だ。
近間は毎回律儀に割り勘を申し出るが、美味そうに量を食べる近間を見ていると、つい奢りたくなってしまうのだ。
近間に食事をご馳走できるなんて、直樹にとってはご褒美にしかならない。
「じゃあ、負けた方が1週間家事全部やるとか」
「それ、どっちが負けても結局手伝っちゃいそうですよね」
「確かに」
5キロを超えると、おしゃべりする余裕はなくなった。
直樹は首を振って顔の汗を飛ばす。
日差しは強いが、潮を孕んだ海風が汗ばむ肌になびいて気持ちが良い。
ぎらつく地面を蹴りながら、少し前を走る近間の後ろ姿を追う。
互いのペースを気にしながら並んで走るよりも、近間のペースに合わせて後を追いかける方が走りやすいのだ。
近間の走り方は美しい。
重力など無いかのように、軽やかに飛んでいるように走る。
二人とも、ショーツにレギンス、キャップにサングラスの本格的なランニングスタイルだ。
直樹はブルーのシューズにトップスはオレンジ、ショーツは黄緑というド派手コーデで、近間は「おまえ、なんかの昆虫みたいだな」と呆れていた。
一方の近間は相変わらずのモノトーンだ。
小さな尻と長く形の良い脚はぴったりしたレギンスに覆われているが、朝の光を浴びて駆ける姿は健康的すぎて、邪念を抱く気にもならない。
「近間さん!」
「なに、もうギブか?」
「違います。走るの、楽しいですね!」
直樹は大声で言った。
全身汗だくで息は苦しいし、心臓は波打っているし脚もだるいが、それでも気分は爽快だ。
頭は空っぽにして、ただ、走る。それだけ。
近間はスピードは落とさずに一瞬だけ振り返ると、太陽のような笑顔を見せた。
「俺も、すっげー楽しい!」
「あー、なんか軽く限界。休んでもいいか?」
近間が速度を緩めたのは、ランニングウォッチが11キロをカウントした時だった。
意地が勝って自分から休憩を言い出せなかった直樹は、即座に同意する。
屋台で100Plusを買い、ベンチがある東屋まで歩いた。
塩レモン飴を舐めながら、ドリンクを流し込んだ。
汗をかきすぎて脱水気味だったので、五臓六腑に染み渡る。
近間も喉を逸らしてペットボトルを煽っている。
直樹は、こくこくと動く喉仏の上を透明な汗が流れていくのを眺めた。
眼福だが、流石に午前中の野外で欲情はしない。
寧ろ、爽やかで眩しいくらいだ。コカ・コーラだかアクエリアスのCMになりそうだ。
炭酸がはじける、みたいな。
スポドリを飲み終わると、近間は屈伸運動を始めた。
休憩する2人の前を、何人ものランナーがかけてゆく。
アジア系が多い中、ポニーテールを揺らした金髪碧眼の美女が走ってきた。
通りざま、ちらっと視線を投げてきたので、直樹は挨拶代わりに軽く手を挙げる。
「すげえ美人だな」
負けず劣らず整った顔をしている近間が感心しているのがおかしい。
「ハリウッド女優並みですね」
「胸でかかったなー」
恋人同士の二人であるが、普通に女性の話もする。
CMに出てくるあのアイドルが可愛いだとか、あの映画の女優はセクシーだとか、そういう風に。
「ポニーテールの女の子っていいですよね」
「おまえ、二十代なのにテイストが昭和なとこあるよな」
「じゃあ近間さんは、どういうのが好みなんですか?」
「俺は好きになった人が好みのタイプ。だから、今はおまえ」
膝を折ってしゃがんだ姿勢で見上げてくる。直樹は思わず口元を押さえた。
「……っ、あんたはまたそういうことをさらっと……」
折角、人が思考を健全に保っているというのに。
お約束の会話をしていると、件の金髪美人が方向転換して駆け戻ってきた。
二人の前まで来ると、ハイ!と明るく挨拶をした。
外国人女性の年齢は分かりにくいが、多分、二十代後半くらいだ。
バービー人形のような体型に本格的なジョギングスタイル。アメリカンドラマに出てくる女優のようだ。
近間が目で「知り合いか?」と問いかけるのに、「知りません」とやはり目で返事をする。
「間違ってたらごめんなさい。もしかして、日本大使館の方?」
女は、屈伸運動を続ける近間に屈託なく話しかけた。
ボストン訛りの英語はいかにも育ちが良さそうだ。
「どこかでお会いしましたか?」
立ち上がった近間が英語で応じる。
「いいえ、会うのは初めてよ。私、米国大使館のクロエ・ミルトンっていうの。リナの友達」
「リナ?」
「リナ・ミヤケ。経済アタッシェの」
それを聞くと、近間は姿勢を正してクロエに握手を求めた。
「それは失礼しました。初めまして。防衛駐在官の近間です」
「友人の梶直樹です」
梶も名乗って、クロエと握手をする。
「急に声をかけてごめんなさいね。以前、リナから、日本大使館の集合写真を見せてもらったことがあって。あ、私が無理やり見せてって頼んだのよ」
「集合写真だけでよく覚えてましたね」
近間は感心しているが、直樹は「だからあんたはもうちょっと自分の見てくれの良さに頓着してください」と内心で突っ込む。
「私、人の顔覚えるの得意だから」
クロエはそう説明するが、近間ほどの美形は集合写真でも目を引いたのだろう。
でもって、異性としての興味も持ったのかもしれない。
案の定、クロエは、
「良かったら、食事でもどう?」
とストレートに誘ってきた。
ほら来た、やっぱり近間さん狙いだ。
直樹は苦笑する。不思議なことに、アルベールの時のような嫌な気持ちにはならなかった。
「いいですね、機会があれば是非」
近間が社交辞令の模範的返答をすると、クロエは面白そうに笑った。
「あら、速攻で振られちゃったわね」
「すみません、俺、恋人いるので」
近間は肩をすくめて、直樹を見遣る。
「いや、そこで俺を見るのはNGですって」
直樹は日本語で注意するが、内心嬉しくて仕方ないので、顔がにやけてしまう。
「なんだ、つまんない。じゃ、邪魔者は退散するわね。またどこかで会いましょ」
クロエはあっさり引き下がると、二人にウィンクをして走り去った。
さすがあの三宅里奈の友達だ。潔くて気持ちのいい女性である。
「じゃ、俺らも駆け足再開しますか」
ノルマまで後4キロだ。手首足首をくるくる回す直樹の横で、しかし近間はベンチに座ってしまう。
「どうしたんですか?」
「んー、今日はもうおしまい」
甘えるような口調で見上げてくる。
「まさかバテたんですか?」
「違う。なんか今、すっげえおまえといちゃいちゃしたくなった」
「…………」
直樹は大きく溜め息をついた。
この人は、ほんとに。
心を鬼にして、理性を総動員して、きっぱり言った。
「却下します。15キロって決めたのあんたでしょうが。セントーサくんだりまで連れてきておいて、途中離脱は認めません」
「えー、まじかよ」
近間は頬を膨らませる。
だから、そういう可愛い仕草やめてくださいって。
「まじです。あと4キロ走ったら、ご褒美あげますから。はい、走りましょう」
腕を掴んでベンチから引き上げると、近間はいたずらっぽく笑った。
「ご褒美のための体力、ちゃんと残しとけよ」
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