龍の檻と青年

はる

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甘い夜①

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雨が窓を叩く音が、部屋に優しく響いていた。

暖房の音と、テレビのバラエティ番組の音だけがぼんやりと流れていて、

その中で、奏多は床に座ったまま、ココアの入ったマグカップを両手で包んでいる。

桐谷「寒くないか?」

ソファに腰かけていた桐谷が、ふと低い声で聞いた。

奏多「はい。これ、温かいし……ありがとうございます。」

奏多は膝を引き寄せて、マグに口をつける。

桐谷が作ってくれたココアは、甘さ控えめで、でもどこかやさしい味がした。

奏多「桐谷さんは?」

桐谷「ん?」

奏多「……寒くないんですか?ソファだけ、妙に冷たそう」

桐谷「俺は大丈夫だ。そっちこそ、身体冷やすなよ。ほら──」

そう言って、桐谷は自分のひざ掛けを半分、奏多にかけてくれる。

奏多「えっ……いいの?」

桐谷「風邪ひかれたら、こっちが困る」

ぶっきらぼうな口調のわりに、手つきはやさしい。

奏多はちょっとだけ笑って、布のぬくもりを抱きしめた。

奏多「桐谷さんって、やさしいですよね。
……見た目に反して」

桐谷「お前が勝手に怖がってただけだろ」

奏多「‥そうかもですね笑」

笑いながらそう言うと、ふと視線が交差した。
その一瞬、空気が少しだけ変わる。

奏多はゆっくりと、ソファの隣に移動した。

奏多「隣……座っても、いいですか?」

桐谷は少しだけ目を細めたが、何も言わずにひざ掛けを広げる。

それが答えだった。

奏多は、桐谷の隣に座り込む。

少し近すぎるかな、と思いながらも、桐谷は何も言わない。

──むしろ、肩先にそっと毛布をかけてくれる。

奏多「僕、桐谷さんの隣って、あったかくて安心します。」

桐谷「そりゃ俺は体温が高い方からな」

奏多「笑笑」





桐谷の腕のあたりに、そっともたれかかる。

彼の体は大きくて、包み込まれるような安心感がある。

奏多が上を見上げると桐谷と視線が交わる。


すると、桐谷は奏多に優しくキスをした。



桐谷「今日は最後まで、な?」



その言葉が、なぜか胸の奥にやさしく沁みた。

奏多は瞼を閉じて、微かに桐谷のシャツの匂いを感じながら、

心から力を抜いた。

そしてまた桐谷が深くキスをする。

雨音の中で、何も壊れない夜が、ゆっくりと過ぎていった。
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