68 / 216
監禁
しおりを挟む
目を開けた瞬間、見慣れない天井が目に入った。
白い――けれど、どこか鈍く、病院とも違う無機質な白。
視界の端には、柔らかなシーツのしわ。
それなのに、空気が重く、息を吸うのも難しい。
奏多「……ここ……は……」
ぼんやりと呟いた声が、静かな部屋に吸い込まれた。
身体を起こそうとした瞬間、
右手首に“何か”が引っかかる感覚。
カチリと音がして、腕が途中で止まった。
奏多「……っ!?」
反対の手で確かめると、
金属の冷たさが肌を伝った。
ベッドの端に、手錠のような金具。
そこから伸びた鎖が、彼の右手を繋ぎとめていた。
その瞬間、胸の奥で何かが跳ねた。
脈が速くなり、呼吸が浅くなる。
冷や汗が背中を伝い、指先が震えた。
辺りを見渡す。
大きなベッド、壁際に置かれた洗面台、
奥にはガラス張りの風呂と、トイレが仕切られている。
一見、快適そうで――けれど、どこにも窓がない。
唯一あるのは、
重たそうな鉄製の扉がひとつと、部屋の奥に胸騒ぎのする古びた扉。
外の音はまったくしない。
まるで世界から切り離されたような静けさ。
奏多「……どうして……」
頭の奥がずきりと痛む。
思い出そうとすると、
如月の顔が脳裏に浮かんだ。
あの冷たい笑み、
甘い薬品の匂い。
奏多「やっぱり……俺、捕まったのか」
声に出した途端、
現実が一気に重みをもって押し寄せた。
右足を動かす。
鈍い感覚と、いつもの違和感。
手首の鎖がわずかに鳴る。
奏多「桐谷さん……」
その名を口にした瞬間、
胸がぎゅっと締めつけられた。
――彼に心配をかけている。
――きっと探している。
それでも、今の奏多にはどうすることもできなかった。
視線を天井に向ける。
そこには、黒い小さなカメラのような影。
誰かが見ている。
そう気づいた瞬間、体が強張った。
奏多「……監視、されてる……」
声は震えていた。
それでも、恐怖の奥にほんの少し、
“覚悟”のような光が灯る。
逃げることも、抵抗することもできない。
でも、諦めるつもりはなかった。
奏多「……絶対、帰る。桐谷さんのところに」
奏多は小さく息を吸い、
鎖を握る手に、力をこめた。
カチリ――
金属の音が、静まり返った部屋に小さく響いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
鎖の音だけが響く。
息を整えようとしても、胸の鼓動が落ち着かない。
右手の金具を無理やり外そうとして、赤くなっており、少し動かすだけでも痛みを訴えた。
その時だった。
低く、ゆっくりとした音。
重そうな鉄の扉が、内側から解錠される音がした。
ギィ……。
空気がわずかに動く。
奏多は反射的に身を強張らせ、
視線を扉の方へ向けた。
薄暗い照明の下、
黒い影がゆっくりと現れる。
スーツの袖口を整えながら、
何も急ぐ様子もなく、ゆったりとした足取りで。
如月だった。
如月「……やあ」
まるで旧友にでも会ったかのような、穏やかな声。
その笑みは柔らかいが、
瞳の奥には氷のような冷たさが宿っていた。
如月「よく眠れたか?」
奏多は言葉を失った。
喉が渇いて、声が出ない。
ただ、目だけが必死に彼を追っていた。
如月はその反応を見て、微かに笑う。
如月「そんなに怯えるなよ。
俺は、お前にひどいことをしたいわけじゃやい笑」
奏多「……じゃあ、なんで……俺を……」
如月「お前は、もう俺のものだからだ。
だって、自分から来たのだろ?もう覆せな
い。笑
そして、お前の安全はお前の態度次第だ。」
如月は軽く肩をすくめて不気味な笑みを浮かべたままそう言った。
奏多「桐谷さんに、何かしたら――」
如月「おっと」
如月がゆっくりと手を上げる。
奏多の言葉を遮るように、
静かに、だが有無を言わせぬ圧で。
如月「忠告だ、そういう言葉を口にする前に、
自分の状況を見た方がいい」
一歩、二歩。
如月がベッドに近づく。
奏多の肩越しに身を屈め、
繋がれた鎖を指先で軽く弾いた。
カチン、と金属音。
如月「ね? 今のお前には、何もできない」
その声音には優しさすら混じっていて、
だからこそ、心が凍りつくような恐怖を呼んだ。
如月は立ち上がり、
部屋を一巡して見渡すように歩いた。
如月「悪くない部屋だろ?
食事もある。風呂もついてる。
必要なものは全部、ここにある」
奏多「……監禁、って言うんですよ、こういうの」
奏多の声は震えていた。
それでも、
その震えの奥には微かな反発があった。
如月はその言葉に一瞬だけ表情を緩めた。
如月「ふふ……いいね。まだ反抗する余裕がある」
そして、顔を近づける。
冷たい声で、囁くように。
如月「でもな、奏多。
俺は“お前を壊す”ことができる。そうだろ?笑」
奏多「……?」
如月「まだ反抗した態度をとるなら、俺もそれなりの態度をとる。」
その言葉の意味が、
奏多の胸の奥にゆっくりと沈み込んでいく。
如月はポケットから鍵を取り出し、
鎖を一瞬だけ見つめたあと、
「逃げるなよ」と静かに言い残して扉の方へ歩いた。
如月「……お前がどこまであいつを信じていられるか――
見せてもらうよ」
扉が閉まる。
重い音が部屋に響き、再び静寂が戻った。
奏多はその場で息を吐き、
冷たい鎖を見つめたまま、
わずかに拳を握りしめた。
白い――けれど、どこか鈍く、病院とも違う無機質な白。
視界の端には、柔らかなシーツのしわ。
それなのに、空気が重く、息を吸うのも難しい。
奏多「……ここ……は……」
ぼんやりと呟いた声が、静かな部屋に吸い込まれた。
身体を起こそうとした瞬間、
右手首に“何か”が引っかかる感覚。
カチリと音がして、腕が途中で止まった。
奏多「……っ!?」
反対の手で確かめると、
金属の冷たさが肌を伝った。
ベッドの端に、手錠のような金具。
そこから伸びた鎖が、彼の右手を繋ぎとめていた。
その瞬間、胸の奥で何かが跳ねた。
脈が速くなり、呼吸が浅くなる。
冷や汗が背中を伝い、指先が震えた。
辺りを見渡す。
大きなベッド、壁際に置かれた洗面台、
奥にはガラス張りの風呂と、トイレが仕切られている。
一見、快適そうで――けれど、どこにも窓がない。
唯一あるのは、
重たそうな鉄製の扉がひとつと、部屋の奥に胸騒ぎのする古びた扉。
外の音はまったくしない。
まるで世界から切り離されたような静けさ。
奏多「……どうして……」
頭の奥がずきりと痛む。
思い出そうとすると、
如月の顔が脳裏に浮かんだ。
あの冷たい笑み、
甘い薬品の匂い。
奏多「やっぱり……俺、捕まったのか」
声に出した途端、
現実が一気に重みをもって押し寄せた。
右足を動かす。
鈍い感覚と、いつもの違和感。
手首の鎖がわずかに鳴る。
奏多「桐谷さん……」
その名を口にした瞬間、
胸がぎゅっと締めつけられた。
――彼に心配をかけている。
――きっと探している。
それでも、今の奏多にはどうすることもできなかった。
視線を天井に向ける。
そこには、黒い小さなカメラのような影。
誰かが見ている。
そう気づいた瞬間、体が強張った。
奏多「……監視、されてる……」
声は震えていた。
それでも、恐怖の奥にほんの少し、
“覚悟”のような光が灯る。
逃げることも、抵抗することもできない。
でも、諦めるつもりはなかった。
奏多「……絶対、帰る。桐谷さんのところに」
奏多は小さく息を吸い、
鎖を握る手に、力をこめた。
カチリ――
金属の音が、静まり返った部屋に小さく響いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
鎖の音だけが響く。
息を整えようとしても、胸の鼓動が落ち着かない。
右手の金具を無理やり外そうとして、赤くなっており、少し動かすだけでも痛みを訴えた。
その時だった。
低く、ゆっくりとした音。
重そうな鉄の扉が、内側から解錠される音がした。
ギィ……。
空気がわずかに動く。
奏多は反射的に身を強張らせ、
視線を扉の方へ向けた。
薄暗い照明の下、
黒い影がゆっくりと現れる。
スーツの袖口を整えながら、
何も急ぐ様子もなく、ゆったりとした足取りで。
如月だった。
如月「……やあ」
まるで旧友にでも会ったかのような、穏やかな声。
その笑みは柔らかいが、
瞳の奥には氷のような冷たさが宿っていた。
如月「よく眠れたか?」
奏多は言葉を失った。
喉が渇いて、声が出ない。
ただ、目だけが必死に彼を追っていた。
如月はその反応を見て、微かに笑う。
如月「そんなに怯えるなよ。
俺は、お前にひどいことをしたいわけじゃやい笑」
奏多「……じゃあ、なんで……俺を……」
如月「お前は、もう俺のものだからだ。
だって、自分から来たのだろ?もう覆せな
い。笑
そして、お前の安全はお前の態度次第だ。」
如月は軽く肩をすくめて不気味な笑みを浮かべたままそう言った。
奏多「桐谷さんに、何かしたら――」
如月「おっと」
如月がゆっくりと手を上げる。
奏多の言葉を遮るように、
静かに、だが有無を言わせぬ圧で。
如月「忠告だ、そういう言葉を口にする前に、
自分の状況を見た方がいい」
一歩、二歩。
如月がベッドに近づく。
奏多の肩越しに身を屈め、
繋がれた鎖を指先で軽く弾いた。
カチン、と金属音。
如月「ね? 今のお前には、何もできない」
その声音には優しさすら混じっていて、
だからこそ、心が凍りつくような恐怖を呼んだ。
如月は立ち上がり、
部屋を一巡して見渡すように歩いた。
如月「悪くない部屋だろ?
食事もある。風呂もついてる。
必要なものは全部、ここにある」
奏多「……監禁、って言うんですよ、こういうの」
奏多の声は震えていた。
それでも、
その震えの奥には微かな反発があった。
如月はその言葉に一瞬だけ表情を緩めた。
如月「ふふ……いいね。まだ反抗する余裕がある」
そして、顔を近づける。
冷たい声で、囁くように。
如月「でもな、奏多。
俺は“お前を壊す”ことができる。そうだろ?笑」
奏多「……?」
如月「まだ反抗した態度をとるなら、俺もそれなりの態度をとる。」
その言葉の意味が、
奏多の胸の奥にゆっくりと沈み込んでいく。
如月はポケットから鍵を取り出し、
鎖を一瞬だけ見つめたあと、
「逃げるなよ」と静かに言い残して扉の方へ歩いた。
如月「……お前がどこまであいつを信じていられるか――
見せてもらうよ」
扉が閉まる。
重い音が部屋に響き、再び静寂が戻った。
奏多はその場で息を吐き、
冷たい鎖を見つめたまま、
わずかに拳を握りしめた。
33
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【柳原学園】いやいや、俺は『俺様生徒会長』だから
西園 斎
BL
家の都合で『俺様』を演じてる生徒会長が、生徒会やら風紀やら教師やらから好かれるお話。
演技俺様会長総受け(愛され)/後固定CP
*10年以上前の作品を、やや加筆修正していきます
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる