平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
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2章
30話 レンタル冒険者、推理力まで一流だとベタ褒めされる。
しおりを挟むパン屋から出てきてすぐの、ミリリを呼び止める。
にまにまと、チーズフォッカチャを立ち食いしていた彼女だったが、俺が現状を整理すると、
「…………えぇ、えぇ!? でも、クエストは明日だって聞いてたよ!?」
それを落としてしまった。
よっぽどショックが大きかったらしい。
いつもなら、「チーズちゃん! 食べてあげられなくて、ごめんよぉ~」なんて泣いていそうな場面だが、見向きもしなかった。
「どうするのっ。ソフィアちゃん、もう遠くにいるんだよね?」
「あぁ、そうらしい。探知魔法が届かない範囲だから、少なくともこの街の外だ」
「よーし、じゃあ外へゴーするしかないねっ」
いやいや、それはアバウトすぎる。
俺は既に前のめりになっていたミリリの襟を、くいっと引っ張った。
「外ってどこだよ、範囲が広すぎるって。せめて方角くらい定めないと無駄足になるだろー」
「そっか、それもそうだね……。じゃあ、えっと、聞き込みとか?」
「いいな、それ。早速やろうか」
すぐに街ゆく人を捕まえては、目撃情報を得んとする。
最近は、レンタル冒険者としての名も知れてきているらしい。
たくさんの人が、こころよく協力してくれた。
そうして掴んだサンタナの足取りは、こうだ。
魔法具屋で、防寒アイテムを買ったのち、携帯型の食料を購入。
正確には、乾パンの類のみを購入していったらしい。
「ふむふむ、ミリリ探偵にはさっぱりだよ。ヨシュアは?」
「分かったかもしれない」
「えっ、すごっ。本当に探偵さんだっ!?」
あくまで推理であるが、サンタナをよく知っていることもある。
ある程度、自信もあった。
「北の方角にあるダンジョン、ノースリバーサイドじゃないかな」
「防寒具買ってたから、寒いところだろうってこと?」
「それだけじゃない。乾パンをわざわざ買うということは、途中に町を通らないルートだろうなと思ってさ。
それから、もう一つ」
「そ、それは一体!?」
ミリリが唾を飲む音が聞こえる。
「乾パンしか買わなかったってことは、水は買ってない。つまり、豊富に手に入る場所だってことだよ。
あいつらに、水魔法を使える奴はいないしな」
普通、魔法属性は一人に一つだ。
サンタナは火、ソフィアは風、ルリは光である。俺が、水属性を担っていた。
「……鳥肌たったかも、私。しかも、アイシングドラゴンがいそうな場所でもあるし!
すごい、見事だよっ! 芸術だよ! レンタル探偵事務所気付けるレベルのそれだよっ」
「あんまり褒めると調子乗るぞー?」
「少しは乗っちゃいなって。ヨシュアは控えめすぎなんだよ」
そんなわけで、向かう方角が確定する。
前回たるサーニャの時の反省を生かして、今回はちゃんと承諾を得た上で、お姫様抱っこ。
「め、めっちゃ目立たない!? これ!? 嬉しいような恥ずかしいような、やっぱり嬉しいような、そんな感じなんだけど!!」
「大丈夫だっての」
どうせ、屋根の上をトップスピードで駆ければ、視認されることもあるまい。
風魔法に加え特殊スキル『俊敏(高)』を駆使して俺は、怒涛の追い上げを開始した。
「……ノースリバーサイドって、普通、馬でも半日かかる距離だよね?」
「あー、そうなんだ?」
「そうなのったらそうなの! この調子じゃ、一時間も掛からないんじゃない!?」
緊急事態である。
首につけていた魔力抑制ネックレスは外していた。
『平均』でいるためのリミッターを完全に解除してあった。
サンタナの悪行をいましめるため。そしてなにより、ソフィア、ルリを救うためだ。
手抜きなど出来てしまえば、それは嘘というものだろう。
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