平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
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2章
32話 戻ってこい? 冗談だろ、誰が戻るものか。俺はすでに天職を見つけているから、もう遅い!!
しおりを挟む剣を交えたのは、ほんの一瞬だった。
鋼と鋼のぶつかり合う、甲高い音が辺りに響く。それはほんの一瞬のことだったが、
「……僕のソードが折れた…………だと?」
それで勝負はついていた。
柄のみになった剣を、信じられないといった顔つきで、サンタナは見つめる。
腕が剣の重さで痺れたのか、それさえ落としてしまった。
はっきり言おう。かなり手を抜いた。
魔力量が、剣技が、幼い頃から積んできた鍛錬の量が違う。
サンタナ相手に本気を出せば、万が一には命を奪いかねないのは、見るだけで、はかりとることができた。
こいつを刺した罪で捕まるなど、毛頭ごめんである。
ただそれでも、差は歴然だった。
「終わりでいいな?」
俺は、護身用のボロ刀を鞘へとしまう。
しばらくののち、サンタナはワナワナと震えだした。
壊れた仕掛け玩具のように、へらへらと笑いだす。
「な、なんのインチキを使ったというんだ、君! こんなこと、許されていいわけがなかろうっ! 僕が君に負けるわけがないっ!」
よっぽど認めたくないらしい。
決してインチキなどではないが、別にこれ以上、付き合ってやる義理もない。
心配なのは、二人の方だ。
俺が彼に背を向ければ、砂が擦れ、崩れ込む音がする。
振り見れば、サンタナが膝をついて、縋るように俺を見上げていた。
「……………認めるよ、認めようじゃないか。君は強い、とても強い。追放したのは僕の間違いだった!!
だから、もう一度やり直そうじゃないか。
『彗星の一団』に戻ってくるといいさ! 歓迎しようじゃないか!」
必死に身振りを交え、訴える。
俺は目を瞑り、彼らとの日々に思いをやった。
たとえば、うまくいっていた頃に戻れたとして、どうするか。
深く考えるまでもなかった。
「悪いけど、戻る気なんて微塵もないよ。形はともあれ、追放してくれてよかったとさえ思うぐらいだ」
「……なん、だと?」
「もう、信頼できるバディがいるんだよ、俺には。天職だって見つかったんでな」
朝顔の刺繍が裾をひらりと翻し、俺は今度こそ小屋へと向かった。
いきなり、影から飛びつかれる。
天真爛漫全開なロリっ子ちゃんと、美を極めたような麗人。
腰に、タイプの違う美少女二人がぴっとり張り付いてしまった。
「ヨシュアくん、信じてた……!」
「ヨシュっちぃ!! 急にいなくなるから、ルリ、寂しかったんだよぉ。ソフィアに話は聞いてたけどぉ。
助けに来てくれて、ありがとうっ!!」
じわり胸が熱くなる。
手当は、すでに終わったらしい。
そもそも早い段階で突入できたため、軽傷で済んでいたようだ。
「だーい人気だね。ちょっと妬いちゃうかも」
「……ミリリ。ありがとうな」
「ううん、力になれて嬉しい限りだよっ。えへへ。
早かったね。お疲れ様っ」
ミリリが陰りの一切ない笑みを、俺の方へと向ける。
大して体力を使ったわけでもないが、その労いは素直に嬉しかった。
ミリリの笑顔はすごいな、と思う。
勝手にこちらが微笑んでしまうのだから。
「あ。聞こえてたよっ、パーティーに戻る気ないんでしょ? えへへ、私のこと信頼してくれてるんだねっ♪ 」
「なっ……」
「照れるな、照れるな~! 私も、ヨシュアをあんな奴のところに戻させる気なんてないよっ」
ミリリまでもが、俺の腰に抱きついてくる。
……さっきまでのことを思えば、平和ではあるが。
シリアスだったはずが、一息で空気が抜けた感覚に近い。
色々と常軌を逸しすぎでは? いや、幸せではあるけれど。
俺が半ば混乱していると、その時だ。
突然、地面が大きく揺れた。
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