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二章 商品企画部のエリート部長は独裁者?
30話 YES!!!!
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仲川は興味深そうに、パフェグラスを一周くるりと回す。そのあと、一口含んだ。
「……たしかによく合っていますね」
はじめに漏れたのが、これだった。希美は、一つほっと息をつく。
「でも、もう企画は始まってます。変更することは……」
「むしろ始まったばかりです。テレビ放送前なら、まだ引き返せます。緊急の案件は、部長会で決定してるんですよね? ならチャンスはあります。仲川さんならやれるはずです」
なにも、根拠がないことを言っているわけじゃない。
「私、知ってますよ。仲川さんが実は料理に熱い思いを持ってること!」
あたかも初めから知っていたように言ったが、確信したのはさっき話を聞いてからだ。
部長会での積極的な態度は、なにも偉ぶっていたわけじゃない。少しでもいい料理を提供したいからこそ熱くなったのだろう。
団子さくらんぼパフェにしてもそう。一見投げやりだが、味は悪くなかった。あれは上部の意見を押さえつつも、せめても食べられるものにしようという努力の結晶に違いない。
そこから導けるのは、彼も本当は料理を愛しているということだ。
でなければ、わざわざ中小の飲食会社の本部に就職などしない。秀才でルックスも申し分ない。引く手あまただろう中から、仲川自身がここを選んだのだから。
「……生放送までは一週間。時間がたりませんよ。部長会を通して、各店舗へ通知を出すだけならできるかもしれませんが。まだ味がばらついています」
「それは、はい。分かってます」
希美の思いつきから、阪口には即興で作ってもらった。
砂糖の量や、水・片栗粉などの微調整は、考慮の余地がある。
「私が商品企画部のお手伝いをします。店舗円滑化推進部は、こういう時のために便利屋を兼ねてきたんです! ……たぶん」
「あなたは鴨志田の後輩でしたね。正直、あなた方をどこまで信用していいか分かりかねますね」
仲川は渋るように、腕組みをした。
そこから無言になって、パフェを黙々と食べ進める。
実力を計られているのかもしれない。希美は固唾を呑んでそれを見守った。ペースが落ちることもなく、無事に平らげられる。
「……木原さん。お力を借りてもいいですか?」
もちろん、希美の答えはYESだった。握り拳を固める。
「任せてください!」
「……では明日からもう動き出します。時間がないですから。私はまず部長会に掛け合います。木原さんたちは、明日こちらへ行ってください」
そう言うと、仲川は手帳にペンを走らせる。用紙をちぎって、希美に手渡した。
それを見るや希美は目が開きっぱなしになる。
いや、まさか生真面目そのものたる仲川に限ってそんなはずはない。
けれど、丸みを帯びたその文字は、あの悪戯ラブレターとよく似ていた。
「本社とは別にキッチンがあります。そこへ、手すきの人員を回します。それから……」
話そっちのけで、希美は仲川の顔を凝視してしまう。
条件だけ見れば揃っていた。あの手紙が入っていたのは、商品企画部のボックスだ。
たしか内容は、デートのお誘いだった。
流れは全く違えど、こうして二人で食事にきている。
でも、ついさっきまで不躾な態度を取られていた。照れ隠しという風にも見えなかった。
「木原さん、そう見つめられると恥ずかしいのですが……。どういう魂胆ですか」
こっちが聞きたいよ! 心の中で希美は悲鳴を上げた。
「……たしかによく合っていますね」
はじめに漏れたのが、これだった。希美は、一つほっと息をつく。
「でも、もう企画は始まってます。変更することは……」
「むしろ始まったばかりです。テレビ放送前なら、まだ引き返せます。緊急の案件は、部長会で決定してるんですよね? ならチャンスはあります。仲川さんならやれるはずです」
なにも、根拠がないことを言っているわけじゃない。
「私、知ってますよ。仲川さんが実は料理に熱い思いを持ってること!」
あたかも初めから知っていたように言ったが、確信したのはさっき話を聞いてからだ。
部長会での積極的な態度は、なにも偉ぶっていたわけじゃない。少しでもいい料理を提供したいからこそ熱くなったのだろう。
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そこから導けるのは、彼も本当は料理を愛しているということだ。
でなければ、わざわざ中小の飲食会社の本部に就職などしない。秀才でルックスも申し分ない。引く手あまただろう中から、仲川自身がここを選んだのだから。
「……生放送までは一週間。時間がたりませんよ。部長会を通して、各店舗へ通知を出すだけならできるかもしれませんが。まだ味がばらついています」
「それは、はい。分かってます」
希美の思いつきから、阪口には即興で作ってもらった。
砂糖の量や、水・片栗粉などの微調整は、考慮の余地がある。
「私が商品企画部のお手伝いをします。店舗円滑化推進部は、こういう時のために便利屋を兼ねてきたんです! ……たぶん」
「あなたは鴨志田の後輩でしたね。正直、あなた方をどこまで信用していいか分かりかねますね」
仲川は渋るように、腕組みをした。
そこから無言になって、パフェを黙々と食べ進める。
実力を計られているのかもしれない。希美は固唾を呑んでそれを見守った。ペースが落ちることもなく、無事に平らげられる。
「……木原さん。お力を借りてもいいですか?」
もちろん、希美の答えはYESだった。握り拳を固める。
「任せてください!」
「……では明日からもう動き出します。時間がないですから。私はまず部長会に掛け合います。木原さんたちは、明日こちらへ行ってください」
そう言うと、仲川は手帳にペンを走らせる。用紙をちぎって、希美に手渡した。
それを見るや希美は目が開きっぱなしになる。
いや、まさか生真面目そのものたる仲川に限ってそんなはずはない。
けれど、丸みを帯びたその文字は、あの悪戯ラブレターとよく似ていた。
「本社とは別にキッチンがあります。そこへ、手すきの人員を回します。それから……」
話そっちのけで、希美は仲川の顔を凝視してしまう。
条件だけ見れば揃っていた。あの手紙が入っていたのは、商品企画部のボックスだ。
たしか内容は、デートのお誘いだった。
流れは全く違えど、こうして二人で食事にきている。
でも、ついさっきまで不躾な態度を取られていた。照れ隠しという風にも見えなかった。
「木原さん、そう見つめられると恥ずかしいのですが……。どういう魂胆ですか」
こっちが聞きたいよ! 心の中で希美は悲鳴を上げた。
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