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鬼神の里
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ふう、と瞼を持ち上げると、知らない天井が目に映った。格子状に張り巡らされた竿縁(さおぶち)が美しい天井板には、美しい大桜が描かれており、贅をつくしたその光景に、咲は驚いて起き上がった。
「……っ?」
気づけば、咲がいま手にした布団も、家で宛がわれていたボロではない。ふかふかで、まるで雲の上に寝たらこのような感触なのではないかと思う程だった。そうして周囲を見渡せば、部屋は家の広間の三倍はあろうかという広さ。さわやかなイ草の香りが漂い、開け放たれた障子の向こうには、痩せた邑の土ではありえない、緑豊かな庭園があった。
(ここは……)
一体どこだろう。そう思い巡らせたとき、静かに襖がひらいた。
「お目覚めですか?」
現れたのは、大人の女性と咲より四、五歳くらい年下に見受けられる少女だった。女性の落ち着いた面持ちに対して、少女の方ははちきれんばかりの喜びを我慢したような表情をしている。二人は咲が彼女たちを見つめていることを理解すると、楚々と咲の傍に近寄り、女性は少女に、水差しと湯飲みの載った盆を置かせた。
「お加減は如何ですか? 薬湯は飲めるでしょうか」
穏やかに問う女性の声は、見知らぬ場所に身を置いている咲の気持ちを、やや安心させた。
「や、薬湯ですか……? あの、それより、あなた方は一体……。それに、ここは……」
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