女装マニアな魔法使いが愛を伝道する

清十郎

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深雪先輩の章

第10話 深雪先輩とヨシくん

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(これまでのあらすじ……)

とある中学校に侵入したわたしは可愛い美少年を見つけ、その少年の思いを叶えてあげるために、少女を教室に拉致し、可愛い女装少年と対面させてました。そして、少女は遂に可愛い女装少年と心から結ばれひとつになりました。わたしは魔法でほんの少しだけ、力を貸して二人の愛の営みを応援してあげたのでした。

**********

「みゆき~! 」

爽やかな月曜日の朝、登校する中学生たちの中、ひとりの少女が友人の名前を叫びながら駆けてきます。

自分の名前を呼ぶ、その聞き覚えのある声に、ひとりの少女が立ち止まり、ゆっくりと優雅に振り返ります。

「おはよう、愛美。」

追いかけてくる少女に応えて振り向いた少女は、同級生の女子もドキリとする妖艶さをたたえていました。親友の愛美ですら、初めて見る深雪の艶やかさに、同性でありながらドキリとすると共に、その美しさに吸い込まれそうになりました。

「あ、……ああ、深雪、おはよう……。」

中学生らしからぬ、あまりの美しさに、愛美は、かえって気後れするほどの戸惑いをおぼえ、返す返事さえ言葉を失ってしまうほどでした。

その時、愛美は少女の右隣にいる少年の存在に気づきました。しかも、ふたりは手をつないでいます。それも、すべての指を一本一本交差させる恋人つなぎです。

「あれあれ~、ふたりは、いつの間にそういう仲になったのかな~? 」

すると、振り返った少年は、1年生らしからぬ大人びた涼しげな眼差しを愛美に向けました。その優しく妖しい視線に、再び愛美はドキッとしてしまいました。

「太田愛美先輩、おはようございます。」

落ち着いた涼しげな声で少年が挨拶をします。愛美は、一瞬、人違いをしたかと思いました。しかし、顔形容貌は紛れもなく先日見かけた深雪の陸上部の後輩です。

つい一昨日、部活帰りに見たウブでシャイな男の子が、まるで別人のような色香をまとった美少年になっていたのです。見た目はその同じ男の子でも、雰囲気がまるで違いました。

「あ、……ああ、お……おはよう。」

愛美は深雪の左に並んで、深雪の左耳に耳打ちします。

「なに、深雪、どうなってんのよ? ほんといつの間に? それにあの子、別人みたいに大人っぽいじゃん? 」

深雪は柔らかな笑顔をたたえつつ、穏やかな声色で答えます。

「愛美からも言われたけど、あのあと、わたし、ヨシくんを好きになっていることに気づいたの。ヨシくんもわたしのことを大好きだと言ってくれたから。」

(ええっ! 急転直下、なんでそうなるの~! なに? 恋って、そういうもんなの~! 深雪、なんか間違ってない~? )

目が点になって、呆気にとられている愛美に、横あいから少年も笑顔で答えます。

「ぼく、深雪先輩のことを心から愛しています。」

(ひぇ~! 1年坊主が今度は愛してるときた~! 何がどうなっているの~! 誰か教えて~! )

それを聞いている深雪もまた、少し頬を染めながらも嬉しそうに微笑んでいました。

「あ、あら、そう、……よ、良かったわね~。アハッ、あははははっ! 」

中学生ではなかなか言葉にするのも恥ずかしい「愛している」なんて言葉をさらりと聞かされて、本来は関係ない筈の愛美の方が逆に恥ずかしいほどに真っ赤になりました。

しかし、唐突なこんな展開、愛美ならずとも不審をおぼえるのも無理なきことです。再び、愛美が深雪に耳打ちします。

「ほんと、あんたら、おかしいよ? いったい、どうしたの? 」

愛美の問いかけに、深雪は微笑んでゆっくりと答えますが、それは問いかけの答えにはなっていませんでした。

「うん、みんな、優子のおかげ。……優子、じゃないかもしれないけど……やっぱり、優子のおかげ……かなぁ。」

答えにもならない深雪の言葉に、愛美の思考は再び混迷の度を深めていきます。

「なに言ってるか、さっぱり意味わかんないよ。優子、あれからショックで、ずっと家で寝込んでいるってよ。今の優子には、愛のキューピットどころか、なんもできない筈よ。」

深雪はその美しい大きな瞳を更に大きくして、まるで驚いたように答えます。

「あら、それは大変。お見舞いに行ってあげなきゃ。……ヨシくん、今日は部活はいいから一緒に行かない?」

少年も瞳をキラキラに輝かせて答えます。

「ぜひ、行かせていただきます。優子先輩には、ぼくもぜひ、お礼をさせていただきたいです。それに、優子先輩とはこれからもっともっと親しくさせてもらいたいです。」

そう言うと、ふたりは妖しげな微笑みを交わします。

(なんだよ、みゆき~。そこは、わたしを誘うべきだろ~。宏樹のバカのお陰で、どうせテニス部も部活なんかできないのになぁ。)

心の中でそう思いつつも、そんなことはおくびにも出さず、変に硬い作り笑いで愛美が答えます。

「あ、そ、そうだね。じゃ、仲良く行ってらっしゃい。アハッ、あははは! 」

すると、意外なところから声が返ってきました。

「愛美先輩、先輩も一緒に行っていただけませんか。」

唐突な申し出に、愛美としては、行く気は満々にありながらも、半分すねたように、素直に誘いに乗っかるようなことはありません。

「あたしなんか行ったら、あんたらのお邪魔虫でしょ。おふたりで、どうぞ仲良くいってらっしゃいまし。」

しかし、そこで少年は、なぜか不思議と食い下がります。じとっと上目遣いに悲しく潤んだ瞳を見せて少年は言いました。

「そんなこと言わずどうかお願いします。ぼく、深雪先輩の親友の愛美先輩とも、ぜひ、仲良くさせていただきたいのです。どうか、お願いします。」

深雪との恋人つなぎをしていた手をほどき、改めて愛美に向かい、丁寧に頭を下げて少年はお願いをしました。

「愛美ぃ、ヨシくんもこんなに言ってくれてるし、一緒に行こう。」

そこに深雪の掩護射撃も入ります。そこで断ったら、まるで愛美の立場がありません。

(な、なによ、これ。まるで情のない冷たい先輩にされそうじゃないの! もお……。)

「ま、まあ、そこまで言うんなら、仕方ないなぁ。一緒に行ってやらんでもなくなくないかなぁ。……へへっ、……へへへへへっ! 」

愛美は、てれ笑いをしながら、満更でもないように了解の返事をしました。いえ、もはやそうせざるを得ないところに、知らず知らず追い込まれていました。

「ありがとうございます。愛美先輩と一緒に行けて、ぼく、嬉しいです。」

少年は愛美の前で、自分の両手を胸元に組んで、まるで少女のような可憐さで、嬉しそうに感謝の言葉を言いました。

愛美はその姿に、つい頬を染めてドキドキしてしまいました。そして、それを誤魔化すように豪快な高笑いをします。

「アハッ、アハッ、あははははははは! 」

「うふふっ。」

深雪と少年は再び見つめ合い、妖しげな微笑みを交わしました。

**********

わたしは魔法使い……女装の好きな魔法使いです。でも、わたしは人を陥れる悪い魔法使いのお婆ちゃんではありません。わたしは可愛い少年少女に愛を伝道して、少年少女を美しく彩ってあげるのです。

この町でもまた、新たなわたしの美しい作品が出来上がりました。彼女たちもまた、わたしの薫陶を受けて街の人々を美しく染め上げてくれることでしょう。

では、わたしはまた新たな街で、可愛い素材を見つけることといたしましょう。次のご紹介まで、しばらくお別れいたします。ありがとうございました。

**********

(おわりに)

お互いに愛を確かめあった深雪とヨシくんに、深雪の友人の愛美が追い付きます。そして、不思議な雰囲気の二人に違和感を感じつつも、三人一緒に優子のお見舞いに行く約束をしたのでした。
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