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佐和子先生の章
第7話 深夜の教室での密事
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(これまでのあらすじ……)
佐和子先生の留守中の音楽部の指導はわたしが代わりを務めます。女子達も交歓を始める中、男子の特訓が始まります。女子の水着と制服を着た男子が水着と制服の持主の女子を当てる試験での正解率は50%、合格者には当てた持ち主と心行くまで交流を楽しんでいただきました。
**********
深夜、真っ暗な広いがらんとした部屋の中、たくさんのスチールパイプの机と椅子が整然と並んでいます。
机の向きからする正面と背後の壁に大きな黒板が設置してあり、その部屋は、どうみても、どこかの学校の教室にしか見えない作りになっています。
真っ暗とはいえ、外は月明かりがこうこうと照らしている夜で、教室の中の机の位置など、基本的にものを識別するのに困らない程度の明るさはありました。
そのような中、深夜の森閑として静まり返っている教室の中ですが、よく耳を澄ますとかすかな足音がしてきました。
(パタッ、パタッ、パタッ、パタッ、……。)
その足音はよく聞かないと分からないほどにかすかな足音でしたが、静まり返っている教室の中だからこそ、その足音でさえ、容易に聞き取ることができました。
その足音は、まもなく、教室の前ではたと止まりました。そして、教室前方の引き戸が、ゆっくと開けられました。
(カラカラカラ……。)
そして、ひとつの人影がゆっくりと中に入ってきました。
このような深夜、誰かは定かでありませんが、そうそう簡単に校舎に侵入できるとは、戸締まりにしても何にしてもセキュリティが甘いと言わざるをえません。
もっとも、窓が無数にある地方の公立中学校では、まだセキュリティが及ばない地域も少なくないようです。内福な私立の学校でもない公立学校では、自治体の裕福さの度合いが、そのような所に現れてくるようです。
その人影は、教室前方の教壇机に近づきました。そして、教壇の前に来ると、小さなペンライトの明かりをつけて、何かを必死になって見ているようでした。
どうやら、その人影は教壇にある生徒の机の配置図を見ているようでした。
**********
その人影は、目的とする名前を確認したのか、教壇を離れると、整然と並んだ生徒の机のひとつに近づきます。そして、その椅子の前に膝まづくと、何を思ったか頬擦りを始めました。
「あぁぁぁ……さち……ぁぁ……ぁぁ……ちえ……。」
途切れ途切れではありましたが、かすかにその人影が呟いているのが分かります。
その人影は、いつまでも椅子に執着を見せて、ひとしきり頬擦りを繰り返していました。
そして、ある程度、頬擦りをすると、机の中にペンライトを当てて観察していましたが、特に興味を引くものがなかったのか、頬擦りをやめて立ちあがりました。
**********
次にその人影が向かったのは、教室の後方でした。
後方には大きな黒板の下に、ロッカーが並んでいます。その人影は、ペンライトを当てながら、ロッカーの扉に貼り付けられている名前を確認しているようでした。
そして、あるロッカーを確認すると、その取っ手をゆっくりと開きます。
(カチャッ……。)
その人影は、そのロッカーの中から、置きっぱなしにしてある、小さめのバッグと巾着袋を取り出しました。
そして、ペンライトを口に咥えて、バッグや巾着の中味をゴソゴソと調べ始めています。
「あった……。」
その人影のつぶやいた言葉は、喜び、もしくは安堵に近いような感じをうける言葉でした。
バッグや巾着からは何か黒いものが取り出されて、口に咥えたペンライトを当てて、じっくりとその黒い物体を丹念に見ていました。
そして、その人影は取り出した物体を自分の顔に押し付けて、しばらくそのまま固まってしまったかのように動きませんでした。
先程の椅子への頬擦り以上に長い時間を顔に押し付けたままだったその人影は、おもむろに立ち上がると、急に自分の服を脱ぎ始めました。
次に、何らかの彼なりの作業が必要なのでしょう。
**********
その人影の上空、半透明な状態でわたしは中空に漂いながらその様子を観察していました。
わたしは、佐和子先生の姿のまま、この場にいます。私には時間の壁なぞ存在しません。音楽教室での指導の中、気になった生徒がいたので、ちょっと時空を越えて見に来ただけです。
それが「分身?」というものかどうかはわたしにはどうでも良いことです。わたしが時空の彼方に飛ばしたこの意識体が見ているものは、同時に音楽教室で生徒指導にあたるわたしと共有しているのです。
わたしは、その人影が行っている様子をつぶさに確認して確信しました。
その人影こそ、村田雄介その人でした。
その後の村田雄介の行動は、わたしの予測とほぼ同じでした。小一時間にわたり彼は自分の欲望を十分に満たしたのです。
「あぁぁぁ……さちえ……さちえ……ああん……さちえ……。」
彼は何度も何度も思い人の名前を呟きながら、自慰に耽っていたのでした。
**********
(おわりに)
試験の中、怪しい男子生徒を見つけたわたしは、時空を越えて深夜の教室に飛んでいきました。そして、そこで村田くんの秘密の行為を見つけたのです。
佐和子先生の留守中の音楽部の指導はわたしが代わりを務めます。女子達も交歓を始める中、男子の特訓が始まります。女子の水着と制服を着た男子が水着と制服の持主の女子を当てる試験での正解率は50%、合格者には当てた持ち主と心行くまで交流を楽しんでいただきました。
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深夜、真っ暗な広いがらんとした部屋の中、たくさんのスチールパイプの机と椅子が整然と並んでいます。
机の向きからする正面と背後の壁に大きな黒板が設置してあり、その部屋は、どうみても、どこかの学校の教室にしか見えない作りになっています。
真っ暗とはいえ、外は月明かりがこうこうと照らしている夜で、教室の中の机の位置など、基本的にものを識別するのに困らない程度の明るさはありました。
そのような中、深夜の森閑として静まり返っている教室の中ですが、よく耳を澄ますとかすかな足音がしてきました。
(パタッ、パタッ、パタッ、パタッ、……。)
その足音はよく聞かないと分からないほどにかすかな足音でしたが、静まり返っている教室の中だからこそ、その足音でさえ、容易に聞き取ることができました。
その足音は、まもなく、教室の前ではたと止まりました。そして、教室前方の引き戸が、ゆっくと開けられました。
(カラカラカラ……。)
そして、ひとつの人影がゆっくりと中に入ってきました。
このような深夜、誰かは定かでありませんが、そうそう簡単に校舎に侵入できるとは、戸締まりにしても何にしてもセキュリティが甘いと言わざるをえません。
もっとも、窓が無数にある地方の公立中学校では、まだセキュリティが及ばない地域も少なくないようです。内福な私立の学校でもない公立学校では、自治体の裕福さの度合いが、そのような所に現れてくるようです。
その人影は、教室前方の教壇机に近づきました。そして、教壇の前に来ると、小さなペンライトの明かりをつけて、何かを必死になって見ているようでした。
どうやら、その人影は教壇にある生徒の机の配置図を見ているようでした。
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その人影は、目的とする名前を確認したのか、教壇を離れると、整然と並んだ生徒の机のひとつに近づきます。そして、その椅子の前に膝まづくと、何を思ったか頬擦りを始めました。
「あぁぁぁ……さち……ぁぁ……ぁぁ……ちえ……。」
途切れ途切れではありましたが、かすかにその人影が呟いているのが分かります。
その人影は、いつまでも椅子に執着を見せて、ひとしきり頬擦りを繰り返していました。
そして、ある程度、頬擦りをすると、机の中にペンライトを当てて観察していましたが、特に興味を引くものがなかったのか、頬擦りをやめて立ちあがりました。
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次にその人影が向かったのは、教室の後方でした。
後方には大きな黒板の下に、ロッカーが並んでいます。その人影は、ペンライトを当てながら、ロッカーの扉に貼り付けられている名前を確認しているようでした。
そして、あるロッカーを確認すると、その取っ手をゆっくりと開きます。
(カチャッ……。)
その人影は、そのロッカーの中から、置きっぱなしにしてある、小さめのバッグと巾着袋を取り出しました。
そして、ペンライトを口に咥えて、バッグや巾着の中味をゴソゴソと調べ始めています。
「あった……。」
その人影のつぶやいた言葉は、喜び、もしくは安堵に近いような感じをうける言葉でした。
バッグや巾着からは何か黒いものが取り出されて、口に咥えたペンライトを当てて、じっくりとその黒い物体を丹念に見ていました。
そして、その人影は取り出した物体を自分の顔に押し付けて、しばらくそのまま固まってしまったかのように動きませんでした。
先程の椅子への頬擦り以上に長い時間を顔に押し付けたままだったその人影は、おもむろに立ち上がると、急に自分の服を脱ぎ始めました。
次に、何らかの彼なりの作業が必要なのでしょう。
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その人影の上空、半透明な状態でわたしは中空に漂いながらその様子を観察していました。
わたしは、佐和子先生の姿のまま、この場にいます。私には時間の壁なぞ存在しません。音楽教室での指導の中、気になった生徒がいたので、ちょっと時空を越えて見に来ただけです。
それが「分身?」というものかどうかはわたしにはどうでも良いことです。わたしが時空の彼方に飛ばしたこの意識体が見ているものは、同時に音楽教室で生徒指導にあたるわたしと共有しているのです。
わたしは、その人影が行っている様子をつぶさに確認して確信しました。
その人影こそ、村田雄介その人でした。
その後の村田雄介の行動は、わたしの予測とほぼ同じでした。小一時間にわたり彼は自分の欲望を十分に満たしたのです。
「あぁぁぁ……さちえ……さちえ……ああん……さちえ……。」
彼は何度も何度も思い人の名前を呟きながら、自慰に耽っていたのでした。
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(おわりに)
試験の中、怪しい男子生徒を見つけたわたしは、時空を越えて深夜の教室に飛んでいきました。そして、そこで村田くんの秘密の行為を見つけたのです。
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