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女装者の夢
第21話 真実の証
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(これまでのあらすじ……)
様々に自慰にふける少年の前に愛する少女を連れて、私が少年の未来の存在だと伝えます。驚きながらも少年は目前の愛する少女の誘惑には勝てません。しかし、少女の目に光るものを見た少年は、私からの少女征服の強要を頑なに拒み、最後にはネームプレートのピンで自らの腕に深々と差し貫きます。少年は遂に未来の存在に打ち勝ち、愛する少女を守り抜きました。夜が明け、まるで昨夜の出来事が夢のように思われましたが、腕には夢ではないことを証明する証が残っていました。
**********
教室から逃げるように、少年が帰宅しようと生徒用玄関に向かおうとした時でした。突然、少年は何者かにより右腕を強く引っ張られました。
「ちょっと、来て……。」
それは思いがけないことに栄理の手でした。もちろん、少年はそれだけのことでもドキリとしました。突然の思いがけない行動には必ず理由があります。
つまり、少年の脳裏に昨夜の記憶が再び蘇えっただけでなく、栄理もまた同じ記憶を共有しているのではないのか、栄理の脳裏にも昨夜のおぞましい記憶が蘇ったのではないか、という恐れが出てきたからです。
「おいおい……いったい、どこに……。」
少年は努めて冷静に言葉を返します。しかし、栄理はそれには答えず、無言のまま、少年の右の手首をつかんで下級生のクラスのある南棟の手前、保健室に向かって少年を連れていきました。
不思議なことに少年は焦るでもなく、栄理に手を引かれながら、少年は栄理を抱きしめた昨夜のことを思い出していました。裾を揺らすプリーツスカート、真っ白なブラウスの袖、そして、少年が顔を埋めた濃紺のサージ地のベスト、そこに見えるブラウスの可愛い丸衿……。
(夕べはあんなに近かったのに……。)
あと数㎝、あの時、その僅かな距離を埋められたならば、栄理と二人だけの別な人生が開けたかもしれない……今でもそう思わないことはありません。栄理と愛し合う、少年には夢のような毎日。あの時、たった数㎝……。
それなのに、今は二人の片腕のリーチ分の距離があります。でも、今のその距離が、なぜか永遠に埋められないのではないかという、漠然とした不安に今はさいなまれています。栄理の制服に顔を埋めた自分の記憶が栄理にもあるのならば、このまま行きつく先は破滅かもしれません。
今まで信じていたクラスメート、お隣さんとして仲良くもしていたクラスメート、その隣人に裏切られ、自分の制服を穢され、自分に抱きつき体中をまさぐった卑劣な男なのです。冷静に考えてみれば、そんな状況分析となるのが当然ですし、糾弾されて当たり前です。
栄理は無言のまま少年の腕を引っ張ります。その無言の様子は、まるで少女の怒りを表しているように少年には感じられました。少女の後頭部に揺れる美しい髪のツヤを眺めながら、しかし、少年には彼女の手を振りほどいて逃げ出す勇気もありませんでした。
栄理はそのまま保健室のドアを開けて、少年を引っ張ったまま、中に入っていきました。幸いにも?保健室にいる保険の先生は不在のようです。もっとも、事前に調べ上げていたのか、少女は既にそれを承知のようでした。
どうやらここが少年の処刑場のようです。誰もいない場所でまずは真偽を問い詰めるつもりなのでしょう。ゆうべは様々な快楽に身をゆだねた少年でしたが、天国のあとには地獄が控えていました。それも、閻魔大王ならぬ最愛の少女から刑を宣告されるという地獄が。
ベッドの前に連れて来られると、少年は栄理から両肩を押さえられて、ベッドの上に腰を掛ける形となりました。栄理は少年の前に膝立ちになると、少年の顔をじっと見上げます。無表情というよりは、やや怒りに近いような憤りを感じさせる視線を少年に投げかけていました。
その視線に耐えきれなかった少年は、つい横に顔をそむけてしまいます。すると、少年が横を向いた隙に、栄理が少年の左腕のシャツをめくりました。
「あっ……。」
少年にはなすすべもありませんでした。なぜ、栄理が少年の左腕の傷のことを知っているのか、それだけで少年には事態が明白になりました。栄理はそこで確証を欲している、そう少年は思いました。その確証とは何のためか……、もちろん、少年を糾弾するために他なりません。
その少年の腕には、絆創膏が貼り付けてあり、絆創膏の周りは赤黒い痣のようになっていました。栄理はその絆創膏を ベリッと剥がしました。
「痛っ……。」
栄理はその傷をしばらくまじまじと眺めて、小さくつぶやきました。
「……やっぱり、……。」
遂に少女は動かぬ確証をつかみました。もはや少年は終わりです。ゆうべのあの得体の知れない未来人の言う通り、今日から少年は破廉恥な変質者の烙印を押されるのです。
少女の視線の先には、針を刺した穴がそのまま見えて、傷口が膿んでいるのか、濁ったようなトロッとした膿のようなものが傷口廻りに付いていました。更に、かなりの内出血もしているのか、周辺の肌の色も赤黒く変色しています。明らかに夕べの出来事が夢なんかではない事実であった動かぬ証拠がそこにありました。
絆創膏を剥がされて、ちょっと苦痛に歪んだ表情を見せた少年を、チラリと少女は見上げました。しかし、すぐに手元の救急箱を開けて消毒液をその患部の傷口にかけました。
「うっ……。」
消毒液が傷口に沁みた少年でしたが、我慢して少女のなすがままにまかせていました。栄理は少年には構わず、坦々と左腕の手当てを続けます。ガーゼに膏薬を塗り、患部に当てると、包帯で少年の腕に巻き付け始めました。
(とうとうばれちゃったか……もう、栄理から嫌われるだけじゃない。ほどなくクラスの女子には知れ渡るんだろうな。とりあえず手当だけはしてから、制裁はその次ということか。)
少年は観念しました。これが最後の栄理の肌の温もりと思えばあきらめがつくと思ったのか、少年はうなだれたまま抵抗する気力も残ってはいませんでした。
「こんなんで痛がるくせに……まったく、バカみたいに無茶するんだから……。絆創膏を貼り付けただけなんて、バイ菌が入ったらどうする気よ。バカじゃない。明日も私に腕を見せなさいよ。……ほんと、バカなんだから。」
少女は少年に対して何度も「バカ」を連呼しながら淡々とその左腕の手当てを続けます。しかし、少年は閉口しながらも少女には何も言い返せませんでした。やはり少女は夕べの一部始終を知っていたのです。である以上、少年にはなんの発言権もありません。
そして、少年の手当がひととおり終わると、2人は交わす言葉も見つからないまま、重苦しい沈黙に包まれました。
少年にとっては、大好きな少女との二人きりの空間に心ときめきながらも、それとはまったく正反対の非常に気まずい居心地の悪い思いも強かったのでした。目の前の少女の下着や制服を着てオナニーしたという、淫らで破廉恥な変態行為をしていたと告白し、ましてやその制服女装姿をしっかりと彼女に見られていたのですから。その記憶を栄理とも共有していることは明白です。
少年は覚悟して待っていました。栄理からの制裁を。
しかし、沈黙を破って少年を救ったのは少女の方でした。
「……ありがとう、助けてくれて。……それと。」
少女の御礼の言葉に意外な驚きを少年は受けました。しかし、その感謝の言葉にさえ、バツの悪さを感じた少年でしたが、少女は少年の返答を待たずに言葉を続けました。
「それと……私のこと、大好きだって言ってくれて、……私も、……嬉しかった。」
少女は顔を真っ赤にしながら言いました。
「……ご、ごめん。」
驚くべきことに、そして、少年には幸いなことに、少年にとっての最悪の事態はどうやら免れたようです。覚悟をしていた少年は意外なことの成り行きに気持ちの整理がつきません。
しかし、予想外の僥倖とは言え、彼女に大変な目を合わせた事実は事実、少年は何も返す言葉もないままに、情けなく首をうなだれ、ひと言、「ごめん」と言うのが精一杯でした。
**********
(おわりに)
少女は少年を保健室へと連れていき、少年の腕に昨夜の出来事が真実であった事の証を見つけました。少女は少年の腕を手当てしますが、少年はこれで自分の恥ずかしい性癖や彼女への恥ずべき背信行為があらわになってしまった事を実感しました。少年は彼女の裁きを待たねばなりません。
様々に自慰にふける少年の前に愛する少女を連れて、私が少年の未来の存在だと伝えます。驚きながらも少年は目前の愛する少女の誘惑には勝てません。しかし、少女の目に光るものを見た少年は、私からの少女征服の強要を頑なに拒み、最後にはネームプレートのピンで自らの腕に深々と差し貫きます。少年は遂に未来の存在に打ち勝ち、愛する少女を守り抜きました。夜が明け、まるで昨夜の出来事が夢のように思われましたが、腕には夢ではないことを証明する証が残っていました。
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教室から逃げるように、少年が帰宅しようと生徒用玄関に向かおうとした時でした。突然、少年は何者かにより右腕を強く引っ張られました。
「ちょっと、来て……。」
それは思いがけないことに栄理の手でした。もちろん、少年はそれだけのことでもドキリとしました。突然の思いがけない行動には必ず理由があります。
つまり、少年の脳裏に昨夜の記憶が再び蘇えっただけでなく、栄理もまた同じ記憶を共有しているのではないのか、栄理の脳裏にも昨夜のおぞましい記憶が蘇ったのではないか、という恐れが出てきたからです。
「おいおい……いったい、どこに……。」
少年は努めて冷静に言葉を返します。しかし、栄理はそれには答えず、無言のまま、少年の右の手首をつかんで下級生のクラスのある南棟の手前、保健室に向かって少年を連れていきました。
不思議なことに少年は焦るでもなく、栄理に手を引かれながら、少年は栄理を抱きしめた昨夜のことを思い出していました。裾を揺らすプリーツスカート、真っ白なブラウスの袖、そして、少年が顔を埋めた濃紺のサージ地のベスト、そこに見えるブラウスの可愛い丸衿……。
(夕べはあんなに近かったのに……。)
あと数㎝、あの時、その僅かな距離を埋められたならば、栄理と二人だけの別な人生が開けたかもしれない……今でもそう思わないことはありません。栄理と愛し合う、少年には夢のような毎日。あの時、たった数㎝……。
それなのに、今は二人の片腕のリーチ分の距離があります。でも、今のその距離が、なぜか永遠に埋められないのではないかという、漠然とした不安に今はさいなまれています。栄理の制服に顔を埋めた自分の記憶が栄理にもあるのならば、このまま行きつく先は破滅かもしれません。
今まで信じていたクラスメート、お隣さんとして仲良くもしていたクラスメート、その隣人に裏切られ、自分の制服を穢され、自分に抱きつき体中をまさぐった卑劣な男なのです。冷静に考えてみれば、そんな状況分析となるのが当然ですし、糾弾されて当たり前です。
栄理は無言のまま少年の腕を引っ張ります。その無言の様子は、まるで少女の怒りを表しているように少年には感じられました。少女の後頭部に揺れる美しい髪のツヤを眺めながら、しかし、少年には彼女の手を振りほどいて逃げ出す勇気もありませんでした。
栄理はそのまま保健室のドアを開けて、少年を引っ張ったまま、中に入っていきました。幸いにも?保健室にいる保険の先生は不在のようです。もっとも、事前に調べ上げていたのか、少女は既にそれを承知のようでした。
どうやらここが少年の処刑場のようです。誰もいない場所でまずは真偽を問い詰めるつもりなのでしょう。ゆうべは様々な快楽に身をゆだねた少年でしたが、天国のあとには地獄が控えていました。それも、閻魔大王ならぬ最愛の少女から刑を宣告されるという地獄が。
ベッドの前に連れて来られると、少年は栄理から両肩を押さえられて、ベッドの上に腰を掛ける形となりました。栄理は少年の前に膝立ちになると、少年の顔をじっと見上げます。無表情というよりは、やや怒りに近いような憤りを感じさせる視線を少年に投げかけていました。
その視線に耐えきれなかった少年は、つい横に顔をそむけてしまいます。すると、少年が横を向いた隙に、栄理が少年の左腕のシャツをめくりました。
「あっ……。」
少年にはなすすべもありませんでした。なぜ、栄理が少年の左腕の傷のことを知っているのか、それだけで少年には事態が明白になりました。栄理はそこで確証を欲している、そう少年は思いました。その確証とは何のためか……、もちろん、少年を糾弾するために他なりません。
その少年の腕には、絆創膏が貼り付けてあり、絆創膏の周りは赤黒い痣のようになっていました。栄理はその絆創膏を ベリッと剥がしました。
「痛っ……。」
栄理はその傷をしばらくまじまじと眺めて、小さくつぶやきました。
「……やっぱり、……。」
遂に少女は動かぬ確証をつかみました。もはや少年は終わりです。ゆうべのあの得体の知れない未来人の言う通り、今日から少年は破廉恥な変質者の烙印を押されるのです。
少女の視線の先には、針を刺した穴がそのまま見えて、傷口が膿んでいるのか、濁ったようなトロッとした膿のようなものが傷口廻りに付いていました。更に、かなりの内出血もしているのか、周辺の肌の色も赤黒く変色しています。明らかに夕べの出来事が夢なんかではない事実であった動かぬ証拠がそこにありました。
絆創膏を剥がされて、ちょっと苦痛に歪んだ表情を見せた少年を、チラリと少女は見上げました。しかし、すぐに手元の救急箱を開けて消毒液をその患部の傷口にかけました。
「うっ……。」
消毒液が傷口に沁みた少年でしたが、我慢して少女のなすがままにまかせていました。栄理は少年には構わず、坦々と左腕の手当てを続けます。ガーゼに膏薬を塗り、患部に当てると、包帯で少年の腕に巻き付け始めました。
(とうとうばれちゃったか……もう、栄理から嫌われるだけじゃない。ほどなくクラスの女子には知れ渡るんだろうな。とりあえず手当だけはしてから、制裁はその次ということか。)
少年は観念しました。これが最後の栄理の肌の温もりと思えばあきらめがつくと思ったのか、少年はうなだれたまま抵抗する気力も残ってはいませんでした。
「こんなんで痛がるくせに……まったく、バカみたいに無茶するんだから……。絆創膏を貼り付けただけなんて、バイ菌が入ったらどうする気よ。バカじゃない。明日も私に腕を見せなさいよ。……ほんと、バカなんだから。」
少女は少年に対して何度も「バカ」を連呼しながら淡々とその左腕の手当てを続けます。しかし、少年は閉口しながらも少女には何も言い返せませんでした。やはり少女は夕べの一部始終を知っていたのです。である以上、少年にはなんの発言権もありません。
そして、少年の手当がひととおり終わると、2人は交わす言葉も見つからないまま、重苦しい沈黙に包まれました。
少年にとっては、大好きな少女との二人きりの空間に心ときめきながらも、それとはまったく正反対の非常に気まずい居心地の悪い思いも強かったのでした。目の前の少女の下着や制服を着てオナニーしたという、淫らで破廉恥な変態行為をしていたと告白し、ましてやその制服女装姿をしっかりと彼女に見られていたのですから。その記憶を栄理とも共有していることは明白です。
少年は覚悟して待っていました。栄理からの制裁を。
しかし、沈黙を破って少年を救ったのは少女の方でした。
「……ありがとう、助けてくれて。……それと。」
少女の御礼の言葉に意外な驚きを少年は受けました。しかし、その感謝の言葉にさえ、バツの悪さを感じた少年でしたが、少女は少年の返答を待たずに言葉を続けました。
「それと……私のこと、大好きだって言ってくれて、……私も、……嬉しかった。」
少女は顔を真っ赤にしながら言いました。
「……ご、ごめん。」
驚くべきことに、そして、少年には幸いなことに、少年にとっての最悪の事態はどうやら免れたようです。覚悟をしていた少年は意外なことの成り行きに気持ちの整理がつきません。
しかし、予想外の僥倖とは言え、彼女に大変な目を合わせた事実は事実、少年は何も返す言葉もないままに、情けなく首をうなだれ、ひと言、「ごめん」と言うのが精一杯でした。
**********
(おわりに)
少女は少年を保健室へと連れていき、少年の腕に昨夜の出来事が真実であった事の証を見つけました。少女は少年の腕を手当てしますが、少年はこれで自分の恥ずかしい性癖や彼女への恥ずべき背信行為があらわになってしまった事を実感しました。少年は彼女の裁きを待たねばなりません。
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