18 / 151
プロローグ
プロローグ18
しおりを挟む「昨日は眠れましたかな?」
「それはとても。
しかし、夜に騒いでしまって申し訳ない。
他の者にもそう言っておいてくれないか。」
穏やかにそういう大介に対し、護はすこし恥ずかしそうに言った。
夜があけ、東のいる領主の部屋へと大介に護達は案内された。
領主の部屋には既に朝食が用意されており、ギクシャクする藤麻の手を椿は引いて隣に座らせる。
改めての自己紹介や趣味や近況など様々な談笑をしながら食事を行った。
特に盛り上がったは話は、下戸の剛に酒を飲ませて椿に怒られた話だ。
酒を飲まされ赤子のように泣く剛をあやし、蓮や優だけではなく主である護でさえも目の前で正座させて淡々と説教していたというものだ。
椿は本気で怒らせはいけない…そんなオチで終わった話を剛は気にせず笑っていたが、椿は恥ずかしそうに俯いていた。
朝食が終わり、お茶を飲んで一呼吸を置くと東は口を開く。
「私は…先日、言った通り…難民の者の為に賊の討伐を本日から行うことにする。
大介を筆頭に行うため、他にも用事があれば早めに言ってくださると助かる。」
東も先ほどの話で多少は打ち解けたみたいで、昨日ほど声は震えておらず吃ってはいない。
昨日の今日で、作戦を進める行動力に護は感心した。
行えるということは、ある程度情報も集まっているのだろう。
うんうんと頷き、話をきいた護は少し前をおいて口を開く。
「なるほど…それでは、私達も同行して構わないか?」
驚く東と大介だったが、護はお構いなしに言葉を続ける。
「腕の立つ山賊に私も興味がある。
他の領地が派遣した戦士を返り討ちにあうほどの強さなのであれば、私達も他人事ではない。
和国からも近いだろうし…盟友だけにそんな危機な目に合わせるわけにもいかない。」
危険な芽は、早急に摘んで置きたい。
せっかくの同盟もあるし、連携をとっておくのも悪くない。
「分かりました、お言葉に甘えさせていただきます。」
そう話がまとまると、次のように話が進む。
山賊の討伐に護、蓮、大介。
東野の守りに東、優。
先日話した物資の支援に剛。
優の補佐と東野に物資を届けた人の指揮で、椿。
剛は、討伐隊に加わりたいとゴネていたが…人の指揮を取るのに慣れてほしいと護に言われると渋々承諾した。
籐麻は、オロオロとしていたが…今回は椿と一緒だそうだ。
「よし…坊主!
早速のお仕事だ、張り切っていくぞ!」
不安そうな籐麻の肩をすこし強めに叩き、にっこりと剛は笑う。
そんな激をもらった藤麻は不安そうな表情をやめて、キリッとした表情に変わり力強く返事をした藤麻を満足そうに見た後に軽い足取りで和に戻っていった。
しかし、やや小走り気味なのを見ると早く切り上げて討伐隊に加わりたいからだろか…。
「若、我々も出陣いたします。
護殿、よろしくお願いいたします。」
「こちらこそ宜しく頼む。
それでは、東殿いってくる。
吉報に期待していてくれ。」
大介と護もそういうと、討伐隊の所に向かっていく。
蓮も椿や藤麻に無茶をしないように優や東の指示に従うように釘を刺すと二人の後に続く。
討伐隊と言っても、3人を除いて戦闘員5人と集落の人間だった2人の小規模のものだった。
東野の人口が少ないせいもあるのだろう。
戦争をするわけでもないから、問題はないだろう。
蓮はそう考えながら戦闘員である5人を見る。
屈強な強面の男が5人。
顔などには火傷や傷が目立っており、強面をさらに引き立てていて武装は旧式の鎧と兜で少し心許ない感じだ。
資金不足もあると思うが、技術も足りていなさそうだ。
物は悪くないため武具などは、技術があれば化けそうだ。
山賊の件が終わったら、彼らの装備をしっかりと見てみようか。
鍛治師でもある蓮は、彼らの姿を見て少しだけ血が騒ぐ。
「隣の領土の主人である護だ。
東殿に代わり、指揮を取らせてもらう。
皆で、山賊に囚われた民を助けようではないか。
出発!」
大介に紹介され、隊員にそういう護がそういうと蓮は思考の海から帰ってきた。
何はともあれ、山賊を撃退してからだろう。
余計な事に気を取られて怪我をしたのなら、椿の他に妻という大ボスからの説教を食らってしまう。
蓮は、両頬を軽く叩き気持ちを切り替えると最後尾で隊員達の後ろを追っていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる