コバナシ

鷹美

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第3話

第3話 3

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「気にしないで、子供がした事だから。
怪我がないようでお姉さんも安心したわ。」


「…迷惑ついでに一つ聞いていい?」


クスクスと笑う女性に対して籐麻は、そう口にした。

かなり図々しい感じに言ってしまったかな?
そう言った後に後悔した籐麻だったが女性は気にする様子も無く、どうぞと腕を組んで籐麻を見た。



「まずは自己紹介。
はじめまして、俺は籐麻。
この領土の守護者候補だ。

戦の各地で不審な死と事故が起きてる話を聞いてて、他の領地から来た人に情報を聞いているんだ。

何か情報は知らないか?」

「あら、こんな愛らしいのにしっかりしてるのね。
お姉さん感心。」


女性は、艶っぽい声で籐麻にそう言った。

子供に使う声色でもないし、答えにもなってないし…話が進まない。
そんな事を考えながらジトーっと籐麻は女性を見る。

籐麻の考えている事が何となく分かったのか、面白そうにクスクスと笑う。



「はじめまして、お姉さんはピオ。
あちらこちらを気ままに歩くお医者さんよ。

一応、倭出身だけど…何年も帰ってないわね。


変死や事件ねぇ…。
確か港町で、そんな話を聞いたわ。」



女性は、鎖骨に手を当てながらピオと名乗った。
意外にも彼女は、医師のようで早速情報を得られた。

港町。
これからの目的地に情報がもっと集まりそうだ。


変死や怪事件は、他人事ではない。
後で蓮父様や護様に報告せねば…。


籐麻達は、ピオからその話を詳しく聞く。

海に転落して事故死したのかと思いきや、身体中に奇怪な斑点がついた死体が浮かび上がった事。

なんの前触れもなく人が突然倒れて、亡くなったり。


あとは、港町から少し離れた所で人が行方不明になったり。


まるで怪談話のような事が続いているようだ。



「その噂を聞いて、お姉さんも心配で調べたのよ。
これでも医者の端くれだから。

でも、全然ダメ…何も分からなかったわ。
他殺なのか、食中毒なのか、病死なのか…。

すこし滞在したけど、お姉さんも巻き込まれたら困るから港町から抜け出してきたの。」


お手上げ。
そう言わんばかりに、ピオは困った表情で両手を上げる。

ここに来るまで不衛生な生活をしていたが、そんな風に人が死ぬ話は聞いた事がない。
複数の毒キノコを食べてもそんな風に死なないだろう。

籐麻もうーんと頭を悩ませた。


「なるほど…ありがとう、参考になったよ。」

「いいえ、気にすることはないわ。
代わりに…というわけではないけど、お姉さんに和国を少し案内して欲しいの。

道にまよってしまって…急いではいないけど、せっかくだから詳しい人に教えて欲しいわ。」


スーが頭を下げてお礼を言うと、気にしないでとピオは手を振って笑う。

続け様にお願いをしたが…勿論、そちらの都合が良ければだけど…と付け足してピオは言った。

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