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第二章、〘飛び交う依頼〙

ギア11、臨時休業、やること決まってるってよ。

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「…皆様こんにちは。早速ですが質問です。近距離攻撃ができる剣と、遠距離攻撃ができる銃、あなたはどちらが好みですか?…なるほど?ふむふむ。…そんなことより前回、セナとの絆で誕生した、謎の黄金ギア、セナギア。このギアの火力は凄まじく、主人公ナルヤもといギアヒーローエヴォは、この謎のギアに対しての疑問をイチゲンに問いかけるが…あの方は長話がレベチですから、ナルヤさんもとても疲れていたそうですね……そして、あのギアについての詳細は結局不明のまま。いつかあのギアの詳細が分かる日が来るのでしょうか?…はい。では以上、今回のネストのあらすじコーナーでした。」

「…そういえばさ、お前ら的にはセナのギアはまんまで良いの?ジャアクギアよ?」
ソファで牛になりそうなナルヤは、ふと疑問を問いかける。
「う~ん、言うなればグレーですが、なんやかんや制御出来てそうですし。今は保留でいいですね。」
「そうなんだ。うん、じゃあさ、何でジャアクギア復活したん?」
「...PIG QUEENが遊び感覚でやったのだろう。あいつはそういうのが好きだからな。」
ナルヤが溜め録りしておいたヒーロードラマを(勝手に)見ながら、ナグラは答える。
「…あのさぁ、昨日から気になってたんだけど、お前とそのー…ぴっぐくいーん?とか言う奴隷使いの規制スレスレ野郎とは、一体どういう関係なんだよ?あと勝手にテレビ見んな。俺は前回の話を見てから一気見するタイプなの。」
テレビからの爆発音と共に、ため息をつく声が聞こえる。ガッツを決めるヒーローと心が燃えるbgmが流れる中、ナグラはテレビの音量を少し下げ、口を開く。
「...さぁな。誰にも怨みはあるものだ。時が来たら言おう。」
「...そか。」
ベルト玩具のCMが流れる。紫の筋の入った黒いキャラクターが映る。ネットではよく神様と言われているキャラクターだ。三人は思わず特徴的な姿をしたキャラクターを目に入れる。
「えっと、凄いキャラですね。何か、ヤバイ。」
「幻のアイムゴットのこと?あーこいつね、これでもめっちゃ強いしかっこいいのよ?変身するときも変な言語言うし。」
ナルヤは少しにやけながら、牛になりそうな格好から姿勢を整えキャラの説明をする。
「こんな特徴的なキャラクターはなかなか居なさそうだな。ナルヤ、お前はこんなキャラが好きなのか?」
ナグラは軽く腰に手を当て、ナルヤに視線を移す。
「うん、めっちゃ好み。」
「…そうか。…だからお前、俺の変身で興奮したのか?」
「御明答。」
するとナオタはテレビの電源を切り、ふとこんな提案をする。
「…あ、二人とも、せっかくの臨時休業ですし、パトロールに行きません?」
「パトロール?」
ナルヤは急に振られた提案に思わず聞き返す。
「えぇ。それも、デスブレイド探索です。」
「…えーとまぁ、良いんだけどさ…」
ナグラは彼の反応に「ん?」と首を少し傾げる。
「不服か?」
「え?あ、いやーパトロールするといってもさぁ、あいつらは全国で活動してるって言ってんのよ?多分そのーお前らが来た日から今日までの間ならマジで全国占領してると思うし、片っ端だとキリが無いんじゃ?」
ナオタは「ふ…」と鼻で笑い、灰色のギアを取り出す。
「なら、これの出番です!」
「...なにそのギア?」
伸び伸びとしながら寝転がり、少々面倒そうな態度でナオタをの持つそのギアに指を指す。
「まぁ来てくださいよ♪外へ行きましょう!」
「ほら行くぞ。…おい。」
「えー…ほわぁ…」
あくびをするナルヤ。ナグラはそんなナルヤの服の袖を掴み、サンタの袋のように担ぎ外へ連れ出す。

[お外]
「…んで、それは何のギア?」
「単刀直入に言いますと、マスタフォンギアですね。」
「マスタフォンギア?」
ナルヤは眠い中、目を擦りながらナオタの言葉を繰り返す。
「いわゆるまぁスマホだ。それも博士制作のな。」
「あの博士ってマジ何者なん?」
ナルヤは腰を軽いストレッチでポキポキ鳴らし、イチゲンの凄さを改めて理解する。ナオタは「ハハハ...」と人差し指で頭を掻きながら愛想笑いをしつつ、話を続ける。
「実は、ネストさんに色々やってもらっているんですよ。例えば、デスブレイドから助けて欲しい人とか、デスブレイドの目撃情報ある人とかを募集するサイトを設けたりとか。」
「ふむふむ。」
「それで来た情報やら依頼やら、それを受信することが出来るんですね。まぁ、まだ一部の人にしか信じて貰えてませんが…そして、これなら連絡取り合うのもよし、他にも色々なアプリがあるんです。」
ナオタの分かりやすい説明を聞いて、ナルヤは「なるほど」とポンッと手を打つ。
「イチゲンと違って分かりやすいなぁ。」
「言うな。...否定は一切しないが。」
ナルヤは早速、ナオタからマスタフォンギアを受け取る。
「表面押して起動っと。」
[マスタフォン起動。新規端末です。名前とお顔をどうぞ。]
機械感溢れる無機質な声が流れる。
「これは...ナルヤとマイナスのどっちを打てば?」
「マイナスで良いんじゃないですか?コードネームですし。」
「おけ。」
顔とコードネームを登録し、ナルヤは決定を押す。
[初めまして、マイナス様。]
「んじゃ、早速依頼行った方が良いよな。」
「なら、ここからは別行動とするか。依頼数は少ないが片っ端から終わらせていくぞ。」
ナオタは「うん」と頷き、ナルヤに最後のチュートリアルをする。
「因みに、このアプリを押せばバイクが出ますよ。」
「乗り物出んのか!良いねぇロマンあるわぁ。...ん?でも全国行くのはキツくない?」
ナルヤはロマンに浸った後、我に返り物理的に無理な話に気が付き疑問を得る。
「大丈夫ですよ♪ネストに連絡すればそのままワープさせてくれます♪」
「あ、なるほどね。確かにいつも通り生身で行くより乗り物に乗って行った方が色々助かるな。」
「おい、俺はもう行かせてもらうぞ。」
いつの間に出したのか、ナグラは白いシンプルなバイクに乗り、ワープホールを前にいつでも行ける準備をしていた。
「あ、うん。じゃあ、僕も行かなくちゃ!」
ナオタは[next]と書いてあるアプリを開き、ネストにメールを送る。
「じゃあ、僕たちは行かせていただきます!」
「危なくなったら言え。分かったな。」
そう言って二人は、各々のワープホールへと姿を消す。
「...さてと、依頼依頼...」
腰に左手を当て、[依頼一覧]と書いてあるアプリを開き、どういうものがあるかを見てみる。
「...ん?」
ナルヤは早速、気になる依頼を見つける。
[おかあさんへんたすけて]
「お母さん変、助けて...ん?お母さんへ助けて?どっちだこれ?まぁどっちにしろだな。これにしよっと。」
ナルヤは迷わず依頼を引き受ける。そしてナオタのようにアプリを起動しネストにメールを送る。
[この依頼へ行きます。頼みますた。]
「あ、やべ、誤字った。」
[分かりました。落ち着いて行動してくださいね。帰ったらコーヒーを一緒に飲みましょう。]
「優しいかよ。」
ネストの優しさに心を打たれたナルヤだった。すると、ナルヤの目の前にワープホールが現れる。青く、黒く、そして綺麗に回るそのホールを見つめる。まるで星のような。
「...」
(星みたいで綺麗だな。そして、毎回毎回見るたび景色が変わる。本当に星みたいで、まるで...)

まるでお前の夢みたいだな、ナルヤ。...今度の夢はなんだ?

「...夢っていうのは常に変わるもんだろ。」
そよ風がナルヤを仰ぐ。羽織っている黒いジャンパーを強く握り、ナルヤはバイクを召喚する。マスタフォンの画面からキューブ状の塊が無数飛び出し、バイクが構成される。
「...」
バイクに乗りながら、ナルヤはふと、ナグラの言葉を思い出す。
「誰にも怨みはあるもの...か。そうかもな。」
ナルヤは表情を険しくし、バイクを発進させる。
「...無免許だけど、気にしない方が良いのか?」

[人気のない住宅街]
「...ここか?まぁ辺りを見渡すと....」
風が木を優しく揺さぶる。
「...うん、こりゃ何もないな。さてと、次は何をすれば良いのかな...」
マイナスは、マスタフォンのバイクキャンセルのボタンを押す。バイクは再度キューブ状に分裂し、マスタフォンの画面に戻っていく。
「便利なやっちゃな。えーと、依頼確認...お、あの家か?」
依頼が送られてきたポイントを示す方向へ顔を向け、それらしい家を見つける。
「あれっぽいなぁ…んじゃ、訪問しますか。」

[吉口ヨシグチさんの家]
「ヨシグチ...ネームプレートにはそう書いてあるからそれでいいんよな...よーし押っそお....ってちょい待ち?もしこれで訪問するとしたらさ、もしこの依頼を送った奴が子供だとするやん?親に速攻バレてめんどいことになりかねないのでは?」
インターホンを押す手前に、そんな疑問が頭を過る。
「...誰がおかしいのかもあんま分からんし、まずは近所への聞き込みだな。よしそうしよう。うん。」
マイナスはヨシグチさんという方にバレないよう、念のため少し遠くで聞き込みを行うことにする。
[とある家]
ピンポーン...
「すみませーん!」
マイナスは躊躇わずインターホンを押す。
「はーい?」
家から出てきたのは、優しい顔つきの主婦っぽい人だった。
「初めましてです。あのー、聞きたいことがあるんですけど...」
「えっとあの、その前にどちら様で?」
マイナスは「え?」と不意を突かれる。
「あーちょっと待っててくださいねー。」
(何かあれ!何でも良いから何かあれ!ってぽいのあったぁ⁉)
慌ててマスタフォンを取り出し、指でなぞるようにアプリを確認すると、[名刺]と書かれたアプリがあった。すぐさまそのアプリを起動し、主婦に行儀よく両手持ちで見せる。
「あー俺、こういう者です。はい...」
[デスブレイド討伐隊員 マイナス]
大きい文字で書かれたその文を見た主婦は、「あ!」と何かに気付く素振りを見せる。
「もしかして、ヨシグチさんのことで?」
「え?知っているんですか?」
マイナスは少し驚く。
「知ってるもなにも、それを依頼したのはこの子ですよ。」
するとそこに、ショートヘアーの小さな女の子がひょこっと出てくる。
「ん?もしかしてじゃあ…変なお母さんって貴方のこと?」
「失礼な方ですね。」
とても礼儀の欠片もない言葉で放った言葉。流石の温厚そうな主婦も呆れ顔でツッコミを入れる。
「私はこの子を保護したのですよ。ついさっき急に家に来たと思ったら、助けてって言ってきてね。」
マイナスは「なるほど…」と女の子を見る。目の光はとても荒んでいた。
「でもまさか、本当に来るなんてね。私はてっきりただの相談所の人かと…」
「…まぁ、そうですよね。だってよく分からないお助けサイトの奴らしいですから…ところで君、あの家で何があったのか言ってくれるかな?」
女の子は震えながら、小さな声で喋り出す。
「お母さん....キレイなおっきい人形に話しかけてた....黒い何かを持って謝ってた....」
「キレイな人形?」
「うん....黄金の大きなキラキラした人形が....台に置いてあった...」
マイナスは想像力を存分に働かせ、「もしや...」と、とある可能性を見つける。
(デスブレイドの宗教的な奴か...?考え過ぎていることを承知で言うなら、その像はデスブレイド側が用意したとかか...?)
「...んー分かった。ありがとう。安心してな?今からお母さんの悪ーい所を消してくるかんな。」
「...うん...!」
マイナスはヨシグチさんの家に目線を向ける。
「合法的不法侵入、やっちゃいますか。...あ、貴重な情報ありがとうございました。終わったらまた来まーす。」
「え?あ、はい...」

[ヨシグチさんの家]
[EVO THE HENSHIN![パンサーカメレオン!]]
マイナスはエヴォに変身し、右サイドにパンサーカメレオンギアを予めセットしておく。
「まずは、このギアで様子見っと。」
エヴォは透明化し、インターホンを押す。
「はーい?」
出てきたのは、痩せ細ったおばあさんだった。と思いきや、にしては髪色が若々しく、歳によるシワが無さそうであった。
「こりゃ...詐欺宗教でお金ぶん盗られたみたいな感じなんだろーな....お邪魔しまーす....」
家は少し暗く、所々がボロボロであった。ただ、その家の傷や壊れた飾り物はまだ新しかった。
「最近の傷…っぽいなぁ…というかこの人、自分の子をどう思ってるのやら....普通なら探しに行くと思うけど…」
おばあさんは首を傾げながら玄関のドアをゆっくり締め、よろよろの足取りでリビングらしき部屋へと戻る。
「何だったんだろう?まぁ、良いか。さてと…」
「...このマザー、何を取り出したんだ?紙?」
エヴォはゆーっくりその紙を見る。
「...うっそだろおい。ジャアクギアどんだけあるんだよ....」
そこには、宗教勧誘をする用であろう紙と、その上に複数個、ジャアクギアが置かれていた。
「これで、あのお方の素晴らしさを広げられる。デスブレイド万歳!」
「…片っ端から、こうやってギアとチラシ配ってたのかよ…」
エヴォはリビングの端に置かれている、禍々しい姿をした人物の像を見つける。おそらくこれがノーネームとかいう奴なのだろう。
「…おいお前。」
「!」
おばあさんは静かな呼び声に反応する。エヴォは構わず姿を公にする。
「お前は⁉」
「ヨシグチさん...だっけ?その歯車全部くれないかな。俺もノーネームの信者になりたいのよ。」
エヴォは右手を出し、クイックイッと頂戴アピールをする。
「...いや、お前はギアヒーローエヴォ!!間違いない...騙されないぞ!!」
[インドガビアル!]
「デスブレイドは永遠だぁぁぁ!!!」
[JARKGEAR the インドガビアル!]
おばあさんはワニのジャアクカルマに変貌した。無数の刃が張り付いた釘バットを片手に、エヴォに容赦なく叩きつけようとする。
「フォームチェンジ!」
左サイドにクロサイギアをセットし、ジャアクインドガビアルの釘バットを受け止める。
[見えないステルス!硬いタックル!真っ向不意打ちお手のもの!クロパンサーサイレオン!]
「ぬぬぬぬ...ぬあぁっしょぉ!!!」
釘バットを思いっきり持ち上げ、体勢を崩したジャアクインドガビアルにすかさずタックルする。
「おおっさぁぁ!!!」
そしてそのまま窓に向かってぶん投げ、外に追い出す。
パリーンッ!!!
ジャアクインドガビアルは飛ばされつつもすぐに体勢を整え、エヴォを睨む。
「う、うぅ....行けぇ!!」
「ジャク!」「ジャクジャク!」
ぞろぞろとジャアクロイドが姿を現し、エヴォに向かって走り出す。
「ほっ!よっと!そいや!」
カメレオンの身軽さとクロサイのパワーで、ジャアクロイドを確実に倒していく。だが、その数は増していく一方だった。
「めんどいなぁもう!ん?そーいやこれに気になるアプリが...」
エヴォは攻撃を避けつつマスタフォンを取り出し、[ウェポンポン]というアプリを開く。
「よっと!んーとどれどれ?」
そのアプリには色々な武器が映っていた。剣、銃、ナイフ、ムチ...
「おー、これ押したら出るんかな?ポチッと。」
エヴォは剣をタップする。すると、どこからともなくシンプルな剣が現れ、剣自らが意志を持っているようにジャアクロイドをスパスパと斬っていく。
「ホントにきちゃー!!よーし!」
エヴォは剣を握り、構える。剣は輝き、その刃は敵を写す。
[ギアバッシャー!]

次回ギア12、切り裂けギアバッシャー!貫けギアシューター!

おまけ
「えっと、これで良いのかな?皆さん!はじめまして.....かな?セナです!...今?今はですね...」
「ねーねーセナさん?なーんでナルヤくんと仲良くなってるのかなー?」
「…恐怖の殺気溢れる人アカバネ マイに監禁されてます…」
「ねぇ、許して欲しい?」
「え、は、はい……」
「じゃーさ?この歯車は何なのか教えてくれないかな?」
「あ、それは⁉返してよ⁉」
「え?その反応…もしかして、これって結構大切なもの…?」
「だったら何なの⁉」
「返してあげるよ♪」
「………え?」
....
「(この人何がしたかったの....⁉)」
その後、なんやかんやマジで恐くなって色々教えてしまったセナであった。
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